第3新東京市立第壱中学校、2−A、 ヒカリが入院して1週間、ヒカリは、ショックと投薬の副作用とから言語に障害が発生していた。 トウジは毎日放課後、お見舞いに行っている。 一方クラスは、唯一のまとめ役がいなくなり、クラスの一体感が損なわれてきている。 シンジ、レイ、アスカの3人は、罪悪感を感じているのか元気が無いし(レイは見かけ上は変わらない)ケンスケも暇を持て余していた。 しかし、それどころでは無かったのだ。 南極、調査艦隊、旗艦、展望室、 「南極、如何なる生命の存在も許されない死の世界、まるで死海だな。」 「それがどうした?必要な事だ。お前も分かっているだろうが」 「与えられた罰にしては余りにも大き過ぎる」 「罰?何を言っている。ここは、世界で最も浄化された世界だ。唯一人間の原罪から解放された世界なのだ。」 「俺は、罪に塗れていたとしても、人が生きている世界を望むよ。」 空母の飛行甲板には100メートルはある巨大な棒状の物ロンギヌスの槍がシートを掛けられて置いてあった。 そして、サハクィエルが確認された。 リツコが司令代行を務めている。 「チルドレンは?」 「到着しました」 「衛星軌道上の使徒・・・どうやって倒せば」 「NN航空爆雷も効果ありませんね」 3時間後、ネルフ本部某所、 「手で受け止めるんですか」 「あら?あんまり驚かないのね」 予想外の事のようだ。 「ミサトの考えてる事くらい分かるわ」 「そう?」 「葛城1尉、説明を続けてください」 「はいはい」 マップが切り替わった。 「これが予想マップ、このどこかに落ちるはずよ」 「で、これがエヴァの配置、どこにきても2体以上で支えられるわ」 「勝率は69.5%上々ねん」 そして、作戦がスタートした。 3体のエヴァが使徒目掛けて一直線に走っている。 マギの支援が消えた。 「早いよ!」 『シンジ、そっちは?』 「大丈夫、前と同じ場所だよ」 『零号機が初号機より2秒前に到着するわ』 そして、零号機が一番最初に到着した。 『ATフィールド!』 瞬間レイと零号機のATフィールド共鳴し、使徒を空中に押し返した。 初号機が到着した。 「たあああ!!!」 初号機が飛び上がった。 弐号機が到着した。 初号機は使徒のコアを突き破った。 使徒は爆発を起こした。 ・・・・ ・・・・ 「リツコさん、使徒殲滅しましたけど」 反応が無い。 『本部で何かがあった』 『まさか停電?』 『急ぎましょう』 そして、3人はネルフ本部に向かった。 発令所、 『人工知能バルタザールより自立自爆が提訴されました。』 『否決・・・否決・・・・否決』 なんとイロウルが襲来していた。 そして、3人が発令所についた時、マギの半分がハッキングされていると言う恐怖の状態を見ることになった。 作戦会議室、 「進化の終着点は、自滅」 「そうね、それが良いわね」 「リツコ、司令代行だからって、こんな事独断で決めれないわよ」 「じゃ、多数決を取りましょう」 「逆ハックが良いと思う人」 ミサトと日向以外全員 「マギの破棄が良いと思う人」 ミサトと日向、 「と言う事で、賛成多数により、本案は、可決されました。」 「く」 展望室、 「今は、管理システムもずたずた、もし、テロでも起こされたら一溜まりも無いわ」 「そうだね」 「・・歴史が余りにも変わりすぎている・・」 レイが呟いた。 「どう言うこと?」 「私が与えた影響だけでは説明できない、誰か私以外にも戻っている」 「そんなバカな、あの世界、生きていたのは、レイだけじゃないか」 「・・・・そう、だけど・・・・」 流石にレイも自信は無い。 「・・・・ねぇ、レイ、あんた本当に過去に戻ったの?」 「どう言う事?」 「私の性格が変わってるって言ってたじゃない」 レイは頷いた。 「近い平行世界に来たんじゃないの?」 「・・・・否定は出来ない、」 「ま、使徒の正体を知っているだけでも大きいわよ」 『マギ、通常モードに移行します』 「さて、帰るわよ」 2人は頷いた。 翌日、マンション、 レイが料理をしていた。 「何作ってんの?」 「チンジャオロース」 「そ」 レイの肉嫌いは急速に治って来ていた。 第3新東京市立東病院、ヒカリの病室、 トウジが花瓶に花を挿した。 「委員長、大丈夫か?」 ヒカリは頷いた。 「そか」 その後、トウジは第3新東京市立第壱中学校での事、家族の事を話した。 ヒカリは黙ってその話を聞き、時々笑顔を浮かべた。 言葉がない分いっそうその笑みが強いものとなる。 翌日、旧東京、国立第3実験場、 先程から延々とJA(ジェットアローン)に関する説明がされていた。 「質問を宜しいですか?」 「これは、これは、御高名な赤木リツコ博士、どうぞ。」 「動力機関を内蔵とありますが?」 「ええ、JAの大きな特徴です。核分裂炉を搭載する事で最高180日間の連続戦闘が可能です。」 得意そうに言っている。 「しかし、格闘を前提とする接近戦において動力機関を内蔵するということは危険過ぎます。」 「5分しか動けない決戦兵器よりはマシだと思いますがねぇ。」 「くっ、外部操作では判断に遅れが生じますが」 「暴走させた挙句、精神汚染を発生させる物よりははるかに人道的と考えますがねぇ」 「それを押さえるのが人の心とテクノロジーです。」 「まさか、御冗談を、あの怪物を人の心でどうにかなると?そんな事だから、国際連合はまた余分な予算を使わなければならない、某国では10万人近い餓死者が出ようとしているのですよ。」 「なんと言ってもうちの主力兵器以外は使徒は倒せません。」 「ATフィールドですか?それも時間の問題ですよ。ネルフ、ネルフ、という時代はもう終わったんですよ。暴走してしまう決戦兵器など、ヒステリーを起こした女性と同じです。手におえません。」 会場中から笑いがこぼれた。 「すみません、質問を宜しいですか?」 国連軍代表の席に座る少女が手を上げている。 茶色い髪に透き通るような蒼い目を持つ少女だ。 「あや?貴女は?」 「国際連合軍陸上自衛隊特殊兵器開発部所属、天城ミクです。」 「で、どのような質問ですか?」 「何故JAは人型なのですか?先日ネルフが徴発した戦略自衛隊の自走陽電子砲も完成しましたし、さしたる利点も無いように見受けられますが」 「・・・それは、だね、未知の生物との対決と言う事は、どのようなことが有るか分からないんだし」 「因みに、ネルフの赤木博士にお尋ねします。エヴァの場合、搭乗者による全身コントロールですから、人型である点は、パイロットの判断を迅速にする上で、有効かと思われますが、パーツ単位で遠隔操作のJAに人型である利点は存在しますか?」 「・・・・どうかしらね、農作業には向いてるかもしれないけど」 JAと農協を掛けた厭味。 「次の質問は、反応速度です。使徒の攻撃は、もっとも早かったのは、第六使徒の加粒子砲で秒速約10キロ、他の使徒では、第四使徒の光の鞭の秒速約900メートル等も有ります。マッハ3の速さを持つ攻撃に対して、JAはどのような判断を」 「ええとそれはだな」 「仮に、1キロメートル離れていたとしても、1秒余りで攻撃が飛んでくるんですよ、第六使徒なら0.1秒、JAの通信速度では、例え瞬間移動が出来ても直撃な気がしますが」 「・・・・」 「次に耐久性、第拾使徒を受け止めたエヴァは・・・・まあよく考えついたもんだと思いますが、500万トン以上の力を受けていますよ」 「・・・・」 「更に、第拾壱使徒は、コンピューターをハッキングしました。コンピューターだらけのJAは乗っ取られるんじゃないんですか?」 そして、起動実験での暴走、メルトダウン直前で停止。 翌日、ネルフ本部、総司令執務室、 ミクが立っていた。 「国際連合軍より、派遣されてきた天城ミク少佐です。」 「うむ、君には、技術部顧問を頼もうと思っている」 「はい」 「では、下がれ」 「はい」 ミクは退室した。 「碇、どう見る?」 「放って置け、所詮子供だ、何も出来ん」 (今、世界最強の力を握っているのは、日本の内閣総理大臣でも、アメリカの大統領でもなく、ネルフの子供達なんだぞ) 翌日、第3新東京市立第壱中学校、 「今日は皆さんに転校生を紹介します。」 ミクが入って来た。 「ネルフ本部技術部顧問天城ミク少佐です」 全員が固まった。 「守秘義務の存在しない質問には答えます」 休み時間、屋上 「だれ?」 「知らない」 そして、ネルフ本部、発令所、 「天城ミク少佐です。国際連合軍より出向して参りました。」 「私のここでも任務は、ネルフの監察及び対使徒用兵器の開発の補助です。」 (監察だってわざわざ言うのか?) 副司令執務室、 冬月はチルドレン3人を召喚した。 「君たち、これをどう思う?」 《天城 ミク 父 碇シンジ 15歳で他界 母 惣流アスカ 14歳で他界 経歴 1歳 養父、天城タイゾウに引き取られる 10歳 ハーバード大学工学部主席で卒業 13歳 国際連合軍に就職 14歳 ネルフに出向》 2人の額に青筋が浮かんだ。 「ふ、ふふざけんじゃないわよ!!」 「いったい何なんですか!」 「分からん、しかも今回の出向、ゼーレや委員会ではなく、国際連合軍統合本部長からの正規の出向命令だ」 「しいて言うならば、誰かの嫌がらせか、警告と言ったところか」 「警告?」 「逆らうならば、二人はこの歳までしか生きていられないと言うところかな」 「・・・いったい誰よ?」 「分からない」 『副司令、報告書を持ってきました』 マヤの声が響いた。 「ああ、入ってくれ」 扉が開きマヤが入って来た。 「御苦労」 「あ、はい」 マヤは報告書を冬月に渡した。 「お邪魔だったでしょうか?」 「いや、ちょうど良い」 「はい、では失礼します」 マヤは部屋を出て行った。 冬月は報告書を見て驚愕の表情を浮かべている。 「どうしたんですか?」 「・・・DNA鑑定の結果、天城ミクが君達の子供である事が断定された」 「は?」 「へ?」 ・・・しばし沈黙・・・ 「ちょっと待ってよ!どう言う事よ!」 「そうですよ!僕達まだ・・・・」 シンジは真っ赤になっている。 「バカシンジ!違うでしょうが!何で同年代の子が私達の子供なのよ!」 「私にも分からん」 「私も」 「とにかくあの娘には気をつけてくれ、何者か分からん、ゼーレの刺客ということも十分に考えられる」 夜、マンション、リビング 「どう思う?」 「どうなんだろ・・・」 「あからさまに変ね」 「彼女は怪しい」 チャイムが鳴った。 「は〜い」 シンジは映像をチェックしたが誰も映っていない。 「あれ?」 シンジはドアを開けてみた。 ドアの前に黒髪でレイと同じ髪型の少女が倒れていた。 「ちょっと、大丈夫ですか?」 少女を抱え起こした。 レイそっくりの顔をしているが、ずいぶんやつれている。 気を失っている原因は衰弱のようだ。 「ちょっとシンジ!その子誰よ!」 「玄関で倒れてたんだけど」 「・・・・私に似てる」 「うん」 「・・・・何なのよ!2人とも!」 取り合えず少女をベッドに寝かせた。 そして翌日、 少女は目を覚ました。 直ぐにシンジは温めていたお粥を与えた。 少女は目を潤ませながら、食べている。 少女の瞳は赤い。 「うう〜〜、美味しいよ〜」 「そ、そう?おかわりはまだ有るから」 結局、お粥を5杯も食べた。 「美味しかった」 「あのさ、君の名前教えてくれるかな?」 「伊吹レナです」 「伊吹?」 「養母の苗字です。」 「養母・・・」 「はい、遺伝子上の父親は、貴方、碇シンジさんで、母親が、貴女、綾波レイさんで、養母が、伊吹マヤとなります。」 「「「・・・・・・」」」 3人沈黙。 「少し話しますね。」 「2016年にサードインパクトが発生し、全ての人間はLCLに還りました。そして、LCLから人の姿に戻ったものは世界で6万人程度だと言われています。」 「そして、サードインパクト調査団は、サードインパクト発生地点を調査し、ネルフ本部から伊吹マヤを含む7名のネルフ職員と4名の戦略自衛隊員を発見します。そして、もう一つ、極秘にされましたが、地上で碇シンジと、惣流アスカラングレーの遺体を発見し、サードインパクト解明の為に冷凍保存します。」 「日本での最終的な生き残りは699人でした。そして、本部と松代のマギの解析から、使徒の復活が判明しました。マギは使徒再来は2030年若しくは2031年と6体が判断しました。」 「新たなチルドレン候補作成のため、伊吹マヤ率いる技術部は、冷凍保存されていた碇シンジと惣流アスカ、赤木リツコ博士の手によって破壊された綾波レイの素体から、2人の子供を誕生させます。それが、私、レナとミクです。ミクは、誕生間も無く日本以外の組織に連れ去られます。ゼーレの生き残りと推測されています。」 「伊吹マヤは、私を養女として育てる事にしました。日本は、量産型エヴァやリリスなどから新たなエヴァを作り出そうとしましたが、これは遂に達成されませんでした。一方で、各地で生き残った人々が昔の国を名乗る組織を作っていました。そして、日本が発した使徒再来は世界を恐怖に陥れました。」 「そして、日本はエヴァの新造、他は、サードインパクトを生き残った兵器を集めました。この時、使徒は第3新東京市を目指すものだと言う認識があったため、世界は、第3新東京市の防衛を固め被害を気にせず核やNN兵器を注ぎ込めばいいと考えていました。」 「しかし、伊吹マヤが、使徒は、アダムを目指して襲来していた。だが、リリスの発するパルスはアダムに非常に近く、第伍使徒までは、勘違いをして第3新東京市に侵攻していたと言う真実が発表され、世界は絶望に落とされました。もはや、世界のどこに現れるか分からない使徒と戦うすべはありませんでした。そして、日本のエヴァ新造計画断念はそれを証明しました。」 「伊吹マヤは、本来ならば、私たちは、サードインパクトで全て滅んでいたはずです。しかし、サードインパクト後に生まれた子供がいます。私達が過ちを犯したことの象徴でもある少女が、ミクが行方知れずなのは残念極まりない事ですが、レナには生きる権利があります。私達が与えた命、そして、それを生きる権利を与える事は我々の責務です。私は、提案します。レナを過去に送ります。2015年、運命の道を踏み外した年です。レナには、歴史を変えてもらいます。そして、レナはその世界で生きる権利と幸福を得る権利が得られます。我々人類には絶滅しか残っていません。残された食料も5年分を切っています。エネルギーも、間も無く、尽きます。しかし、我々には、彼女に希望を残す事が出来ます。それが、私達の最後の仕事なのです。と、幹部を説得しました。」 「サードインパクト後、人間の妊娠率は0%となっており、人類滅亡は確定でした。そして、2030年、私は、2015年に送られました。でも、与えられた歴史とは異なっていました。碇シンジは、葛城ミサトと同居しておらず、綾波レイもマンションには住んでいませんでした。苦労した結果、私は、漸くここにたどり着く事が出来ました。」 「大変だったのね」 レイがレナを抱き締めた。 「・・・はい・・・」 「レナ、」 「はい」 「今の話、副司令にしてもらえないかな?」 そして、冬月が、マンションを訪れた。 「そうか・・・伊吹君がな・・・」 「はい」 「では、天城ミクはゼーレがこの時代に送り込んだ者というわけか」 「多分、そうだと思います」 「となると、君は会わないほうが良い、天城ミクがこの時代のゼーレと接触している可能性も強い」 「はい」 「3人とも、私からも、この子を宜しく頼む」 「当然よ」 「勿論です」 レイは頷きレナは微笑んだ。