11月10日(火曜日)、ネルフ本部、起動実験室、 七号機の起動実験は順調に進んでいた。 「ふむ・・流石に専用のコアを使えばそれなりの結果が得られるわね」 「はい、絶対境界線まで0.6、0.2、絶対境界線突破、七号機起動しました。」 「これで、戦力が一つ増えたわね」 「・・・シンクロ率は、52.3%です。」 「ふむ・・初起動の数値としてはかなりの数字ね。」 「ええ、」 「このまま機体連動試験に移ります。」 リリン本部、特別執務室、 郁美がアスカを連れて入ってきた。 「レイラさん、アスカさんをお連れしました。」 「アスカ」 「漸く来れたわ、これから良いでしょ」 「ええ、どうぞ」 「じゃあ、これを片付けたらね」 レイラは作業速度を上げた。 (・・・あれは・・明日ね・・・) 郁美は先ほど届いた新しい書類は明日に回す事にした。 確かに、1日遅れることで多くの損失が生まれるだろう。 しかし、郁美には今レイラにこれを渡す事はできなかった。 東京、東京帝国グループ総本社ビル会長室、 レイラは郁美と電話で話をしていた。 『そ、その・・・申し訳ありません・・』 ちなみに秘書課長とは中級秘書官の長であり、上級秘書官の蘭子の方が上司に当たる。 「いえ、レイラさんの状況から考えて、私でもそうするでしょう。」 『・・・』 「苦労かけますね」 『い、いえ、そんな・・』 「・・・レイラさんのサポートをしっかりと頑張ってくださいね」 『は、はい・・全力を尽くします。そ、それでは又』 「ええ、又」 蘭子は電話を切って、大きく溜息をついた。 「・・・直ぐにでも飛んでいきたいけれど・・・」 机の上には書類の山脈が築かれている。 「そうはいかないわね・・・榊原さんも第3新東京市にいてもあまり身動きが取れないし・・・」 耕一、ルシア・・・二人の実際の役割は勿論大きい、だが、それ以上に精神的にも大きな役割を果たしていたのだ。 機能的に統一が取りにくくなったと言う事もあるが、それ以上に、精神的な統一が取りにくくなった・・・ そしてそれはシンジにも当てはまる部分はある。 「・・・・」 「失礼します」 ミユキが入ってきた。 「ミユキさん、」 「報告書です」 ミユキは蘭子に報告書を渡した。 「・・・皆頑張ってくれていますね。」 「ええ、」 夜、第3新東京市、ネルフ本部、職員食堂、 起動実験を含めた一連の実験を完了させたヒロは職員食堂で遅い夕飯を取っていた。 そんな中、トレイにチャーシュー麺を乗せたマナがやってきた。 「江風君、ここ良いかな?」 「・・霧島さんだっけ、」 「あってるわよ」 「構わないよ」 マナはヒロの正面に座った。 「ねぇ、江風君、ヒロ君って、下の名前で呼んで良いかな?」 「え?・・・べ、別に構わないけど」 「ありがとね♪ヒロ君」 「あ、うん・・・」 マナはチャーシュー麺を食べながら、話を始めた。 「・・それで、ヒロ君に少し聞きたいことがあるんだけど、良いかな?」 「うん、別に良いけど」 「あのさ・・・ヒロ君はなんで、エヴァに乗っているの?」 「え?僕がなぜエヴァに乗っているか?」 「そう、」 ヒロは箸を止めて少し考え始めた。 「・・・う〜ん、ちょっと分からないなぁ」 苦笑いを浮かべながら返したヒロにマナはずっこけそうになった。 「・・か、考えた事ないって・・・」 「あはは・・・・戦闘任務に就くなんて思ってもいなかったから、まだよくわからないや。テストパイロットだったから・・・」 「そっか・・・」 「乗っているうちに見つかればいいんだけどね」 軽く苦笑しながら言う。 「そうね」 総司令執務室、 「七号機の起動実験は無事成功しました。」 「そうか、」 「続いて九号機のコアの換装の準備に入ります。」 「どのくらいで終了する?」 「色々と手順が複雑で時間がかかりますが、1週間程度を見れば大丈夫かと」 「そうか、任せた」 「はい、」 「・・・次の使徒の襲来に間に合えば良いが・・・」 「そうですね・・・」 電話が掛かってきた。 「・・私はこれで失礼します。」 「ああ、」 リツコが退室した後碇は電話を取った。 「・・君か、」 ・・・・ ・・・・ 「そうか、ご苦労だった。」 ・・・・ ・・・・ 「ああ、引き続き頼んだ」 ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ 「そうか、」 ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ 「問題ない、方法は君に任せる。存分にやりたまえ」 11月11日(水曜日)、リリン本部、司令執務室、 漸く状況がそれなりに安定してきたため、榊原は次の手を考えていた。 「今しかないか・・・」 榊原は蘭子に電話をかけた。 『はい、』 「蘭子さん、お願いがあります」 『何ですか?』 「彼女をできる限り早期に呼び寄せてください」 『・・分かりました。』 『・・・やはり、難しいですか?』 「ええ・・少しでも集めておきたいところです。」 『頑張ってください』 「分かっています。それでは、」 『ええ、』 榊原は電話を切った。 ゼーレ、 「東京帝国グループの混乱もずいぶん収まってきた。現在の勢力は安定に近付いているだろう」 「しかし、ここでその手を止めてはならない、少しでも勢力を確保しなければならない」 「左様、」 「・・・現在の勢力は、我らがやや優勢と言ったところか?」 「しかし、油断はできん」 「当然だ」 「元々東京帝国グループには我々を上回る人材が揃っている。皇耕一、皇ルシアの両名を消えた事による東京帝国グループ内部の精神的混乱も完全に収まれば、相当に厄介になることは目に見えている。」 「ああ、更なる手を打ちたいところではあるが、打ちすぎてもいかん」 「東京帝国グループを必要以上に弱体化させてはいかん。ただでさえ世界は限界の状態、薄氷の上にある状態なのだからな」 「・・・そうだ。暫く様子を見たほうがいい、今後は、単純な勢力拡大を続行し、それと平行して、東京帝国グループ側が打って来るであろう手に備えるのだ。但し、もしも、やりすぎてしまった場合、使徒戦やその他の事で東京帝国グループが余りに傷つくようであれば助け舟を分からないように出す。」 昼、東京、東京帝国グループ総本社ビル会長室、 蘭子は書類の処理を1段落させ、これからのことを考えていた。 「・・・・」 「・・・会長ならどうするのかしら?」 耕一であればどうするのかそれを考える。 「・・・・」 「・・会長であれば」 緊急の通信が入った。 「どうしたの?」 『蘭子さん、先ほど、デトロイトで大規模な衝突が発生しました。』 モニターに映る可憐の表情は酷いものである。 ずっと対応に追われているというのがありありと伺える。 「・・・」 『・・・アメリカ全土が極限の緊張状態にありました。それが、その衝突をきっかけに、ほぼ全土で大規模な衝突が発生し、民間人同士での殺戮強奪等が発生し、まさに地獄絵図ともいえます・・・』 「・・・銃社会の悲劇ね・・・セカンドインパクトの時も発生したけれど、今はそれよりも状況が悪いわね・・・」 『・・ええ、』 「・・・できる限りで頑張って、但し無理はしないで」 『分かりました。』 夜、第3新東京市、ネルフ本部、総司令執務室、 「・・アメリカの大混乱、これはどう影響するかな?」 「現状から考えるに、東京帝国グループは、アメリカを放棄、少なくとも積極的介入を中止するかと」 「やはり、そう思うか」 「はい、アメリカの回復は、明らかに決戦に間に合いません。ならば、アメリカに力を注ぐのは無駄が大きすぎるかと」 「・・そうだな・・・ところで、赤木博士、ひとつになる情報が入った。」 「気になる情報ですか?」 「ああ、葛城元作戦部長の事だ」 「ミサト・・いえ、葛城2尉がですか?」 「ああ、リリンがスカウトするつもりだ」 「・・リリンが?」 「うむ、どう思う?」 「・・・確かに、彼女の能力には秀でたものがあります。その性格からそれを生かすのは難しく、結果として我々ネルフは切るに至りましたが・・」 「・・・上手く扱えれば確かに大きいと言う事か」 「ある意味、追い込まれているからの行動なのかもしれません」 「確かに急といえる行動だったな」 11月13日(金曜日)、早朝、リリン本部、司令執務室、 「失礼します。」 ミサトが入ってきた。 「よく来てくれた」 「・・・・」 ミサトは少し険しい表情をしている。 「・・・ある程度の事実は伝えられたと思う」 「はい」 「・・・これが記録にある事実、これを見てから回答を聞きたい。」 榊原はファイルの束をミサトに渡した。 ミサトはそれらのファイルに目を通していく、 ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ 「・・・・・」 ミサトは全てを読み終え、ファイルを閉じた。 「どうかな?」 「・・・しかし、」 「君が犯した過ちは、君が責任を感じるものではない。だが、どうしても振り切れないのならば、君の行動で償えばいい、」 「・・・私は、」 「君には作戦を立ててもらうだけが、その作戦立案が成功すれば大きなものとなる。逆に、失敗する事は心配する必要はない。君が実行させるわけではないのだからな、」 「・・・・」 「・・・・チャンスを与えられるが、マイナスになることはない、いい話では有ると思うが・・どうかな?」 「・・・分かりました。」 「では、作戦立案課所属の葛城2尉として、これから宜しく頼む」 榊原は握手を求め、ミサトはゆっくりと握り返した。 リリン本部付属病院、 今日も、レイとレミがシンジの事を見つめていた。 「・・・レイ、」 レミがレイに呼びかけた瞬間携帯が鳴り、警報も鳴った。 「・・・使徒・・」 二人は本部のケージへと急ぐ、 リリン本部、特別執務室、 書類を処理していたレイラは警報に顔を顰め手を止めた。 「・・発令所に向かいましょう」 「え?」 レイラは郁美の言葉に驚いた。 「あ、あの・・・」 「・・・」 「・・・そ、その・・レ、レイラさんの精神状態では・・・エヴァに乗るのは余りにも・・・」 「・・そう・・・私、もう・・普通の人じゃないんだもんね・・・」 元から普通の者ではなかったが・・・レイラが考える普通と言う行動もできなくなってしまったのだ。 郁美は本当に悲しげですまなさげな表情を浮かべた。
あとがき ミク 「ありゃ〜、この世界も随分大変ね」 レナ 「本当ね・・お父さんお母さんたちも、随分大変な状況みたいね・・」 ミク 「東京帝国グループはやっと纏まってきたけど、次何かあるとやばいかも・・」 レナ 「お祖父さん達も何か裏でしている見たいだし・・」 ミク 「確かに酷いといっても、レナちゃんのあの世界からすればまだまだ良い状況なんじゃない?」 レナ 「・・うん・・・でも、私は、お父さんやお母さん達の時代に戻してもらったから・・・」 ミク 「あ、ごめんね・・」 レナ 「ううん、いい・・・ミクちゃんも、まだまだこれから大変だろうけど頑張ってね」 ミク 「ありがと、ミク頑張るね。」 レイラがやってきた。 ミク 「あ、レイラさん」 レイラ「あ、えっと、ミクちゃんとレナちゃん?」 ミク 「うん、惣流ミクです宜しくお願いします♪」 レナ 「伊吹レナです。宜しくお願いします。」 レイラ「皇レイラ、宜しくね」 ミク 「・・レイラさん大変ですね」 レナ 「頑張ってください」 レイラ「ありがとう、私頑張るね。二人も頑張って幸せになってね」 レナ&ミク「はい」