リリン〜もう一つの終局〜

◆第4話

10月5日(木曜日)第3新東京市、ネルフ本部、総司令執務室、
「・・赤木博士、朝鮮政府にゼーレが接触している」
「朝鮮にですか?」
「ああ、」
「しかし、東京帝国グループの勢力の中心である東アジア、それも、日本の隣国で?」
「並みのものであればとても不可能だろう。だが、並みのものでなければ、」
「まさかキール議長自ら!?」
「いや・・・おそらくは孫のエリザベートだろう・・・」
「エリザベート・・・ですか?」
「・・・エリザベートの能力はわからんが・・・」
「・・・もし、成功するとしたらとんでもない事になりますね・・」
「ああ、東京帝国グループに更なる混乱が起きる」
「それに乗じて、ですか?」
「ああ、そう言うことだ。」
「分かりました。」


リリン本部、特別執務室、
レイラは今日も書類を片付けていた。
「・・郁美さん」
「はい、」
「・・・終わりました。」
郁美は書類の束を受けとり、封筒に入れた。
「・・レイラさん、午後からアスカさんが来る事ができると言う事です」
様ではなくさん付けで呼ぶ、
「・・アスカが?」
「はい」
レイラの表情に少し元気が戻る。


マンション、
最近、レイはレイラと会っていない、会おうとすればいつでも会えるが、お互いに会おうとはしない・・・特に、嫌だからと言うわけではないのだが・・・
レミが作った料理が食卓の上に並ぶ。
「どう?なかなかのもんでしょ」
「・・ええ、」
二人はその料理を食べ始めた。
「どう?」
「・・ええ、美味しいわ、」
「そっ」
レミは笑顔を浮かべる。
しかし、レイの方は反応が鈍い、


10月6日(金曜日)、人類補完委員会、
「碇、いいニュースだ。」
「・・どのようなものでしょうか?」
「先ほど、第2支部においてSS機関の搭載実験が成功した。」
「ほお」
「十分なデータも取れた。これで、補完計画は一気に近くなったよ」
「現在の対使徒戦力の不足は論を待たない、そこで、これを緊急輸送する」
「しかし、チルドレンがおりませんが、」
「試験パイロットをそのまま正規チルドレン、10thに昇格する。」
「・・・10thですか」
碇の前にデータが表示される。
「・・江風ヒロ・・・日本人ですかな?」
「ああ、到着は明後日になる。」
「わかりました。シナリオの遂行に全力を尽くします。」


東京、東京帝国グループ総本社ビル会長室、
蘭子は信じがたい報告を受けた。
「朝鮮がゼーレに?」
「はい、」
「・・しかし・・いえ・・・・そう・・・・・・はぁ・・やられたと言うべきですね・・」
「どうされますか?」
「・・・救也副会長は?」
「現在中国にいらっしゃいます。」
「できる限り早く朝鮮に向かうように連絡して」
「かしこまりました。」
「・・・朝鮮がゼーレ側に傾くと拙いわ・・・」


第3新東京市、ネルフ本部、総司令執務室、
「・・10thか、」
「ああ、」
「・・・テストパイロットに日本人か・・・」
「そんなところで肌の色が出てくるとはな」
「全くだな・・・」
「しかし、その10thが主力になるのか?」
「いや、コアの換装を行う、少し特殊な換装だがな」
「では、セカンドをのせるのか」
「ああ、10thは、空いている七号機に移す。」
「かしこまりました。その準備をします。」


11月8日(日曜日)、ネルフ本部付属空港、
九号機を搭載したウィングキャリアーが着陸態勢に入っている。
そして、着陸する。
タラップを10thチルドレン江風ヒロが降りて来た。
リツコが職員と共に出迎える。
「10thチルドレンの江風ヒロ君ね」
「あ、はい、そうです。」
「私は本部の技術部長を勤めている赤木リツコよ、宜しく」
リツコは握手を求めた。
「あ、宜しくお願いします」
ヒロは握手をした。


ネルフ本部会議室、
アスカ、トウジ、ヒカリ、ケンスケ、マナが顔合わせのために待っていた。
ドアが開きリツコと日向といっしょにヒロが入ってきた。
皆の視線がヒロに集中する。
「紹介するわ、10thチルドレンの江風ヒロ君よ」
「あ、宜しくお願いします」
ヒロはペコリと頭を下げた。
「・・・じゃあ、貴女達も自己紹介しなさい」
「そうね、惣流アスカツェッペリンよ、」
「鈴原トウジや宜しゅう」
「相田ケンスケだ、宜しくな」
「洞木ヒカリよ、宜しくね」
「霧島マナ、宜しくね」
「さて・・江風君はコアの換装が終了し次第七号機で戦ってもらう事になるわ」
「七号機・・・ん?でも、九号機といっしょにきたんじゃないの?」
アスカの声に皆はっとし、リツコの言葉を求める。
「ええ、そうよ、」
「じゃあ、九号機は?」
「九号機にはアスカ、貴女に乗ってもらうわ」
「え?」
アスカはきょとんとしてしまった。
「九号機はつい先ほど完成したSS機関を搭載しているわ」
「SS機関・・・確か半永久機関ね」
「そう、使徒の動力源でもある機関ね。」
「SS機関を搭載する事でアンビリカルケーブルというエヴァをの機動力を押さえつけていたものがはずす事ができ、制限時間も搭乗者の集中力が続く限り無制限になる。又ダイレクトにエネルギーが変換されるため出力も上がっているわ」
「・・それで?」
「現時点で考えた場合、アスカが九号機を使うのがベストなのよ、」
「アタシが・・・弐号機以外に?」
「ええ、人類が生き残るための最善の方法よ」
「・・・・少し考えさせてくれる?」
「ええ、貴女が納得しない限りシンクロ率は伸びないわ、1晩時間を上げるわ、ゆっくり考えなさい、」
「江風君は今日のところは本部施設内を案内させるわ、残りのものはシミュレーションシステムに向かって」


リリン本部、司令執務室、
「・・・九号機と10thチルドレンの到着か・・・」
蘭子はいない、
「・・・一人と言うのは、物足りないな・・・」
榊原は一人ごちた。


東京、東京帝国グループ総本社ビル会長室、
救也が戻ってきた。
「お帰りなさいませ」
「・・・早速だが、かなり拙い・・既にかなりゼーレの手が回っていた。」
「・・・出遅れたと」
「そうなるな」
「・・・東アジアにゼーレ側の勢力の誕生を許してしまいましたか・・・」
「ああ、だが、一喜一憂している暇はない・・・明日には中東に飛ぶ」
「御苦労様です」
「ああ、君もな」
「いえ」
救也は会長室を出て行った。
蘭子は山のような書類の処理を再開した。


第3新東京市、リリン本部、特別執務室、
レイラの執務机の上には、書類の束が置かれている。
「・・・」
レイラはのろのろと処理をこなしている。
それを見守りながら郁美は本当にすまなげな表情をしている。
「・・・終わりました。」
「御苦労様です。」
郁美は書類の束を受け取り深く頭を下げた。


ネルフ本部、総司令執務室、
「なかなか順調のようだ。」
「そうですか」
「ああ、日本政府は実にいい仕事をしてくれる」
「政府ですか」
「ああ、全ては使いようだ」
「なるほど・・・危険なものでも上手く使えば、それから得られるものは大きいですからね」
「そう言うことだ・・・で、10thは?」
「特に、これと言って・・・」
「そうか、他のチルドレンの反応は?」
「そうですね・・・順調でしょうか、ただ、セカンドだけは良く分かりません」
「そうか・・・まあ、仕方ない」


夜、アスカのマンション、
アスカは九号機の事をレミに相談した。
「・・・そう、弐号機を降りて九号機にね」
「うん・・・」
「ママは弐号機じゃなくてコアにいるのよ、九号機に移っても同じよ」
「そうだけどさぁ〜」
「・・まあ、気持ちはわかるわ、家族がいっしょでも、なかなか住み慣れた家から引っ越したくないのといっしょね」
「そうね」
「とは言っても、はっきり言って九号機に移った方が良いわよ」
「・・・そうね・・」
「ま、今日は飲んでややこしい事は忘れましょ」
レミはブランデーのボトルを取り出した。


シンジのマンション、
レイはシンジの部屋のドアを開けて中をじっと覗く、今、ここには他に誰もおらず、当然その部屋も無人である。
「・・・碇君・・・」
レイのむなしい呟きが暗い部屋の闇に吸い込まれていった。
・・・・
・・・・
・・・・
どれだけの時間がたったのか、レイはそっとドアを閉め寝るために自分の部屋に向かった。


11月9日(月曜日)、ネルフ本部、総司令執務室、
「セカンドチルドレンは九号機搭乗を了承しました」
「そうか、」
「はい、本日正午から七号機のコア換装作業に入り、明日午後には起動実験を行います」
「ん?・・冬月が帰ってきたようだ」
ドアが開き冬月が入ってきた。
「お疲れ様でした。」
「ああ、今回は、いい収穫だ。」
冬月はリストを渡した。
「・・・ほお」
碇は少し驚きの声を漏らした。
「東京帝国グループよりだった企業もいくつか協力を取り付けた。あと、ゼーレ側に移った企業にもな」
「流石ですね」
「俺にできるのはこのくらいの事だからな」
「・・・碇グループ系列は当たったか?」
「いや、これからのつもりだ。あそこはやはり色々と関わりたくは無いのだがな」
「そうだな・・・」
「・・・・」
「・・・では碇、明日京都に向かう」
「頼んだ」
「頑張ってください」


リリン本部、特別執務室付属秘書官室、
10人ほどの秘書官が色々と作業をしている。
そんな中、今日も郁美のもとにレイラの決裁を必要とする書類が届けられた。
「・・・・・」
郁美は封筒をじっと見つめる。
「秘書課長、」
「いえ、良いわ・・・」
郁美は立ち上がり特別執務室に向かった。


リリン本部付属病院、
レイが今日もシンジの病室の前にやってきていた。
暫くしてレミもやってくる。
「シンジは?」
軽く首を振る。
「・・・そう、」
「まあ、そのうちめぇさますわよ、死んでるわけじゃないんだし」
「・・そうね」


ネルフ本部、シミュレーションシステム、
アスカとヒロが、起動試験用のシミュレーションを受けていた。
(これが終わったらレイラに会いに行くか、)
『アスカ、集中して』
「わかったわよ」
アスカはシミュレーションに集中した。


シミュレーション司令室、
「この調子だと後1時間で終了します。」
「そうね、予定より早く終わりそうね」
リツコはマヤの言葉に少し考えた。
「ついでだから、仮想シンクロの実験もしておきましょう、そうすれば後のシンクロ実験がスムーズに行えるわ」
「分かりました。」
「アスカ、江風君、実験が終了したら仮想シンクロの実験を行うわよ」
『ええ〜〜!』
「仮想シンクロ実験は、起動後のシンクロ実験をスムーズに行う上で役に立つわ」
『でも〜』
「明日の午後の実験は空きにするから、それで良いわね?」
『・・分かったわ』
アスカはしぶしぶ了解した。

あとがき
ミサト「う〜ん、なんか、難しい事になってるわねぇ〜」
ルシア「そうですねぇ、まあ、皆が頑張って良い方向に持っていってくれるでしょう」
ミサト「ん〜そうですね〜」
ルシア「ところで、葛城さん、料理が得意なんですって?」
ミサト「ええ、最近はあまり作ってませんけど、カレーなんかは専門店に近いと思ってます。」
ルシア「そう、それは凄いですね。私も料理の腕にはそれなりに自信が有るんですけど、」
ミサト「もしかして料理勝負ですか?」
ルシア「ええ、してみませんか?」
ミサト「それは面白そうですね。よしっ、やりましょう」
ルシア「どうなるのか楽しみですね♪」


審査員に選ばれたのは、
耕一、シンジ、加持の3人であった。
皆ど〜んと言う雰囲気に包まれている。
シンジ(・・・ミサトさん張り切って、カレー作ってたなぁ・・・胃薬飲んどいた方がいいかな?)
加持 (・・・俺は、未だ死にたくないぞ・・・)
シンジ&加持((まあ、でも皇妃の美味しい料理が食べられるのがせめてもの救いか))
耕一 (・・・・まあ、仕方ないか・・・。)
耕一 (それはそうとミサト君の料理の腕はどの程度のものなのかな?)
ルシア「出来ました〜」
ミサト「こっちも出来たわよ」
ミサトのカレーとルシアの作ったビーフシチューとサラダとライスが運ばれてくる。
シンジ「美味しそうですねぇ〜」
加持 「ああ、これはホントに美味そうだ」
ルシア「さっ食べてください」
ミサト「負けませんよ」
そして、3人はそれぞれ料理を食べ始めた。
・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
ルシア「あれ?3人とも寝てしまいましたよ」
ミサト「あんら、あんまりにも美味しくて意識飛んじゃったのかしら?」
ルシア「残念ですけど、これでは勝敗は分かりませんね。」
ミサト「ん〜、今回は引き分けってことで、又機会があったら勝負しましょう」
ルシア「ええ、」