リリン

◆第24話

強羅絶対防衛線にネルフとリリンのエヴァが集結した。
『メインの攻撃は、初号機と弐号機、他はサポートに回る様に』
初号機は元々かなりのものであったが更に攻撃力と耐久性を上げた新型プログソード、弐号機も同じ新型プログソードである。
他の装備を見てみると、零号機がポジトロンライフル、参号機がエヴァ用ロケットランチャー、四号機が新型スナイパーライフル、伍号機がレーザーキャノンである。
『目標の能力は桁外れだ。絶対に無理をしようとするんじゃないぞ』
支援兵器もネルフとリリンそして戦自と東京軍の一部が展開されている。
レイはじっと目を閉じて待っている。
他の者もある程度の情報は伝えられており、これまでの使徒とは一線を描く能力を持っていると言う事は分かっており、皆、緊張している。


リリン本部、発令所、
「間も無く外輪山を越えます」
「よし、攻撃準備、」
そして、それぞれのエヴァが攻撃準備を始めた途端、警報が鳴り響いた。
「何事だ!!?」
「分かりません!!」
オペレーターたちが慌てて原因を探る。
「特別実験室です!!」
「「「何!!?」」」
メインモニターに拘束具を剥がそうともがく八号機が映った。
「なっ!」
「・・どうやら、最も恐れていた、同時侵攻の形になりましたね。」
榊原は対策を考える。
「・・そうですね、」
明かに同時に戦うには戦力が足りない。
「・・・初号機に二人乗せるしか有りませんね」
蘭子が目を大きく開いた。
「しかし、」
「戦力が明かに不足しています。」
「未だ戦闘には耐えられる状況では、」
「余裕がありません。負ければ彼も死にます」
「・・・・・そうですね。分かりました。」
「初号機を戻します。シンジ君を直ぐにケージに」


ケージにシンジが到着した。
軽くふらつき少し足元が怪しい。
「くっ」
「大丈夫ですか?」
「ええ」
初号機からプラグがハーフイジェクトされ、シンジは乗り込む。
中ではレイが心配そうな目で見詰めている。
「大丈夫だよ、」
普段はシンジが主操縦者だが、今はレイがメイン、フィードバックもその大半がレイであり、シンジはシンクロに関わるだけである。
『シンクロ始めるわよ』
「ええ」
シンクロがスタートした。


地上、強羅絶対防衛線、
全ての火力がゼルエルに向けて発射されている。
アスカの操縦桿を握る手に力が入る。
あまりの桁外れの力・・・感じているのは・・恐怖である。
「くっ」
軽く頭を振り恐怖を振り払い、プログソードをしっかりと構えさせる。
「・・・アスカ、行くわよ、」


零号機は、使徒が爆煙に包まれ視界を失っている隙に、随分接近していた。
爆煙が薄れてきて、使徒の姿が見えた瞬間、複数のビームがそこいら中に向けて放たれ、あちらこちらで火柱が上がる。
「行くわよ!」
レイラも頷き、一気に零号機は使徒に向けて加速する。
「ATフィールド全開!!」
レイラがATフィールドを全開にして中和に専念する。
「くらえええ!!!!」
ポジトロンライフルを口のような物の中にいれて零距離射撃、
瞬間、顔のような部分が爆発し、零号機もその衝撃で弾き飛ばされる。
使徒の頭部を抉り、これでビームは使えなくなっただろう。
しかし、帯のような触手が一直線に零号機に伸びて来た。
「「ひっ」」
体勢が悪く回避する事はかなわない。
二人が目をつぶった瞬間、それに気付いた者達による集中砲火で触手の進行方向が変わり、零号機の右肩を切断し更に右脇腹を深く抉った。
「「きゃああああ!!!!」」
凄まじい激痛が二人を襲う。
『レミ!!レイラ!!大丈夫!!?』
激痛を堪えながらも直ぐになんとか体勢を立て直し、次の攻撃を避けて後退した。


リリン本部特別実験室、
拘束具が次々に崩壊し、落下していく。
実験室の壁面自体にも次々に大きな亀裂が入ってくる。
もうそんなに長くは持たないだろう。
そんな中に初号機が入って来た。
「碇君・・大丈夫?」
「僕は大丈夫だから・・綾波は戦闘に集中して」
レイはコクリと頷き、初号機は新型プログソードをしっかりと握る。
凄まじい轟音と共に拘束具が弾け飛ぶ、
初号機はATフィールドで拘束具の残骸などを弾いた。
「・・・バルディエル、」
前回、自分が不甲斐無いばかりに参号機を攻撃するのを戸惑い、ダミーシステム稼動に至ってしまい、結果としてトウジの片足を奪う事に成った使徒・・・
初号機は新型プログソードを構えたままゆっくりと近付いていく、
(力が漲ってる・・)
シンクロ率は190%台を示している。
倍近い出力になる。無論このクラスの初号機を扱うのはレイにとっては初めてである。
八号機が跳躍し一気に飛び掛って来た。
初号機は横っ飛びで交わし、一気に間合いを詰め斬りかかる。
それに対し八号機は腕を伸ばして襲いかかってくる。
初号機はその腕をプログソードで捌きながら、懐に飛び込みそのまま八号機を斬った。
八号機は右肩から左脇腹にかけて切断され、二つに分かれた。
「ふぅ・・・」
意外に結構あっけなく終わった。
レイがホッと息をつこうとした時、発令所からの通信がその雰囲気を一変させた。
『八号機の自爆スイッチが入った!!』
「「え?」」
『後20秒で爆発する!!』
エヴァの自爆・・・前回のアルミサエル戦での零号機の自爆が思い起こされる。
「綾波!ATフィールドを全開にして押さえ込むんだ!ここで自爆されたらリリン本部は消滅する!」
レイはコクリと頷き、八号機を強靭なATフィールドで覆っていく。
衝撃が施設全体を揺らす。
ゼルエルが強羅絶対防衛線を突破し、第3新東京市まで到達したのだ。
一瞬それに気を取られそうに成るが、軽く頭を振って二人はATフィールドで押さえ込む事に集中する。
モニターにカウントが表示されている。
・・・・3・・・・
・・・・2・・・・
・・・・1・・・・
凄まじい光と衝撃が初号機を襲う。
「きゃああ!!!」
「ぐぶっ!!」
初号機が受けたダメージをレイはフィードバックしその身に激しい衝撃が走ったが、プラグ自体にもかなりの衝撃を受けた。それがシンジにも伝わり、傷口が開いてしまったのであろうか血を吐いた。
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
レイは周囲を見まわした。
爆発は殆どがATフィールドで押さえ込めた様でこの実験室が入っている建物が大破しただけで済んだ様である。
初号機の状態をチェックする。
あちこち破損しているが、機能が低下するほどではない。
何か違和感を感じ首を傾げる。
赤い靄が視界に入った。
「・・何?・・・碇君!!」
その赤い靄がシンジの血である事が分かったレイは勢い良く振りかえった。
シンジは血を吐き、苦しいのか胸を押さえている。
「大丈夫・・それよりもゼルエルを・・」
「碇君・・・」
「負けられないんだ・・」
施設全体を衝撃が襲う。
暫く二人は無言でじっとお互いの目を見ていたが、レイが先に折れた。
「・・・無理はしないで・・・」
シンジは軽く頷く、
実験室を出てケージに向かう。
その途中で回線が復旧した。
『先ずは、御苦労様・・・3番のルートを使ってくれ』
レイはコクリと頷く


その頃地上ではまだ激戦が続いていた。
零号機は遠距離からの支援攻撃に回っているが、片腕ではその命中率は大きく落ちている。
他にも、参号機は右足を切断され機動力を奪われ、四号機は腹部を貫通され、伍号機は大きな被害こそ無いものの無数の小さな損傷を負っている。
そして、弐号機は新型プログソードを手に、無数の支援攻撃の中斬りかかっている。
しかし、肉に食い込みはするが、斬る事は出来ない。
多少機能を落とした所で直ぐ様回復してしまう。
零号機の特攻で破壊した頭部も修復がほぼ完了している。
そして、その顔の中が光り、弐号機に向けて次々にビームが放たれる。
弐号機は後方に飛んでそれを交わす。
しかし、次々にビームを繰り出してきてきりが無い。
装甲ビルも一瞬で消し飛ばされ盾にはならない。
「くっ」
疲労も限界に近付きつつある。
「あっ」
大きな瓦礫に躓きバランスを崩した。
次の瞬間、胴を横に貫く激痛が走った。
「きゃああああああああああ!!!!!」
ビームが弐号機の身を横に貫いた。
直ぐに神経接続が切られたが、それでも尚、かなりの痛みが走る。
「く・・・」
弐号機は戦力を失った。
それ即ち、ネルフとリリンの戦力が大幅に落ちたと言う事を示す。


初号機が射出され、地上に姿をあらわした。
「これは・・」
地上の惨状に目を奪われた。
ビルは粗方瓦礫と化し、町中穴だらけ・・・各所で爆発が起き、火の手や煙が上がっている。
レイは嫌な気配を感じ直ぐにその場を飛びのいた。
次の瞬間先ほどまでいた位置にゼルエルの放ったビームが着弾し射出口とその周りが吹っ飛んでいた。
新型プログソードを構える。
ゼルエルは無数の攻撃を受けているがATフィールドを中和していない以上それは無効である。
更に言えばゼルエル相手では、例えATフィールドが無かったとしても殆ど無意味であろう。
シンジは胸を押さえている。
苦しいがそれをレイに感じさせてはいけない。
初号機は一気にゼルエルに向けて駆ける。
そして跳躍し、そのまま全体重をかけて斬り込む。
しかし新型プログソ−ドは、肩口から入って途中で止まった。
「くっ、」
直ぐに引きぬいてその場を離れる。
それを追って次々にビームが放たれる。
「くっ」
脇腹の辺りが熱い・・・
掠った様である。
そして、ビームを交わすと次は帯状の触手の襲撃、これはプログソードで捌く、
レイは眉間に皺を寄せた。
シンジが全快であれば又変わりもしただろう。
弐号機や他のエヴァも五体満足であれば又代わりもしただろう。
しかし、現状では打つ手が無い。
レイは軽く目を閉じる
「駄目だ!」
直ぐにレイの意図を感じ取ったシンジが制止した。
「・・他に方法が有るの?」
「でもだめだ!それだけ・・つぅ・・」
「碇君!」
『アンタ達何ボケっとしてんのよ!!前見なさい前!!』
レミの声が響いた瞬間、腹部を抉るような激痛が走る。
「きゃあああああああ!!!!」
一瞬堪えた物のシンクロ率190%台の余りの激痛でレイは意識を失った。
「ぎゃあああああああ!!!!!」
そして、シンクロ率が90%台に急降下したが、フィードバックがもろにシンジに掛かる。
シンジは再び激しく吐血し、そのまま意識を失った。


零号機、
「シンジ君!!レイさん!!」
「シンジ!!!レイ!!!」
レミは直ぐに初号機を貫いている触手に向けて陽電子をぶっ放す。
半ば運良く直撃し触手をちぎる事に成功した。
初号機がゆっくりと崩れる。
「くっ」
初号機、弐号機ともに戦闘不能、
支援兵器もその大半は壊滅状態。
エヴァもまともに稼動しているのは無し、まさに、絶体絶命の状態である。
「・・レイラ、特攻するわよ」
レイラはコクンと頷く。
そして、零号機が駆け出そうとした時、初号機がゆらりと立ち上がった。
「初号機が・・・」
そして、腹部に突き刺さっている触手を取り込み傷口を見る見る修復させた。
「・・まさか、」
初号機が顎部拘束具を破壊して咆哮を上げる。
「・・覚醒・・」


リリン本部、発令所、
メインモニターに咆哮を上げる初号機が映っている。
ゼルエルの方も、初号機の状態が気に成るのか或いは・・何かあるのかは分からないが、動きを止めている。
同じく、人類の軍隊も・・・
そして、この発令所まで飲まれてしまっている。
「・・暴走ですか・・」
「そのようですね・・・」
「・・これで、この戦いの勝ちは決まりましたか?」
「恐らくは・・でも、未だ安心は出来ません。」


ネルフ本部、第1発令所、
メインフロアー以下はリリンの発令所と同じような状況で、皆只モニターに釘付けになっている。
「・・・暴走か・・・」
「ああ、」


東京、東京帝国グループ総本社ビル会長室、
耕一はモニターをじっと見ていた。
「・・ふむ・・初号機の暴走ですか・・」
「これで一先ず、この戦いは勝利しましたね・・」
「そうですね・・」
二人の表情は余り思わしくない。
「でも、記録によると、」
「ええ・・・シンジは溶けたそうですね・・・」
「二人同時・・と成ると」
「・・・サルベージは少し難しいかもしれませんね。」


第3新東京市、
初号機は咆哮を上げるのを止め、ゼルエルを目標に定め、ゆっくりと歩み寄っていく。
ゼルエルはビームを集約して放つ。
初号機はそれを強靭なATフィールドで弾き、そのままゼルエルに近づいていく。
続いて触手を伸ばしてくるが、ATフィールドを纏った手刀で切り裂く。
ゼルエルは繰り返しビームを放つが、全てATフィールドで弾く、
そして、有る程度の距離まで近づくと、一気に飛び掛りゼルエルを押し倒す。
ビームを発射しようとしたが、頭部を一撃の元に粉砕しビームの発射を阻止する。
更に触手も肩の部位から引き千切る。
「・・・これが、初号機の力・・・」
「・・そうみたいね・・」
レイラは勿論の事、レミも実際に初号機の暴走を実際に目にするのは初めての事である。
戦場に亜現れた圧倒的な力を持つ者に皆只目を奪われている。
その時、突然初号機がゼルエルに食らい付き始めた。
「な・・た、たべてる・・」
(・・そうだったわね・・)
記録上でしか知らないが、前回ゼルエル戦の時に初号機はゼルエルを捕食し、SS機関を手に入れた。
それと、同時にシンジが溶けた。
(・・二人は無事かしら・・)
そして、食べ終った初号機は再び大きな咆哮を上げ、拘束具を内側から破壊していく。
「・・・」
「・・・・」
二人は恐怖とどこか心配そうな視線でじっと初号機を見詰めている。
やがて初号機はゆっくりと動きを止め活動を休止した。


リリン本部、発令所、
「・・覚醒してしまいましたようですね。」
「ええ・・それに、勝ちはしましたが・・・余りにも被害が大きすぎますし・・・」
「これからが色々と大変そうですね」
「すばやい対応が必要ですね。」
「早速手を打ちましょう・・・と言いたいですが、我々の権限を越えていそうですね。」
「ええ、会長にお願いするしかありませんね。」


ネルフ本部、第1発令所、
司令塔の二人は複雑な表情をしている。
「・・・初号機の覚醒か、」
「確かに、大きな一歩を進んだ。しかし、初号機その物を我々の手に取り戻す必要が有る」
「それだけでも、計画達成への道は厳し過ぎるか」
「・・そういうことだな。」
「・・・後、2体か・・・」
バルディエル、ゼルエルと一気に殲滅した。
確かにその代償としての被害はこれまでになく桁外れに大きい。
しかし、残された時間はよりいっそう少なくなった。
「計画を進めるどころか、予算も集める事自体困難。カードも手元に揃っていない・・・更には、残された時間も少ないと来た・・・」
「・・・・」
碇はいつものポーズでじっと悩んでいる。
「・・・・」
もはや完全に手詰まりである。
その二人をメインフロアからリツコが見上げていた。
リツコも勿論現状は理解している。
(・・・どうするのかしら、)
確かに計画へのステップは進んだ。しかし、それ以上に時計の針が進んでしまった。
実行はもはや不可能と言って良いだろう。
あの二人はこれからどのような決断をするのだろうか?
そして、ネルフの運命は・・・


リリン本部、予備ケージ、
初号機が拘束具に拘束されている。
「本ケージは使用不能・・・零号機はネルフのケージを借りる事になりましたね」
零号機はネルフ本部のケージを借りて修復を行っている。かなりの情報や技術が流れるが別にそれは構わない。むしろ今後の使徒戦を考える上では好ましいことでもある。
「ええ・・・」
「しかし・・この拘束具もどこまで役に立つやら」
「今の所は、落ちついているけれど・・・」
ジュンコはキーボードを叩いた。
「状況は・・不明・・・困ったわね・・・」
「・・そうですね」


東京、東京帝国グループ総本社ビル会長室、
耕一は今回の被害で分かっているものだけだがその報告書を読んでいた。
いずれも推定値ではあるがはっきり言ってふざけている。
例えば、東京軍は、海軍が17%、空軍が24%、陸軍が19%、
戦略自衛隊は、海上戦力の37%、航空戦力の27%、陸上戦力の11%、
海上自衛隊の47%、陸上自衛隊の14%、航空自衛隊の18%、
ネルフ軍の89%、リリン軍の77%、第3新東京市の防衛施設の98%が
それぞれ壊滅もしくは使用不能に陥った。
この他の被害も今までの使徒戦とは比べ物にならない。
耕一は机に突っ伏した。
「・・・洒落にならん・・・」
これらの中には勿論、元に戻す必要がないもの、できることなら戻した方が良いもの、できる限り戻すべきもの、絶対に戻さなければならないものがあるが・・・絶対にもどささなけれ成らないものと、できる限りもどすべきものだけでも恐ろしい額の予算が必要となる。
「・・・・50・・いや80は行くか・・これ・・・・・」
恐ろしい・・・又予算を修正しなければならない・・・
今度はどこから持ってくるかから苦労しそうだ。
「国際連合と日本政府にどれだけ持たせられるか・・・」
とは言え、持ってきすぎても行けないのは当然である。
「・・・・はぁ〜〜」
溜息が出る。
「このままでは復興予算が無くなってしまう・・・」
最近は復興予算を削って使徒戦に注ぎ込んで来た。
しかし、その復興予算そのものが当初では復興を果たすのに十分な予算から、復興のきっかけを作るだけになってきている。
次、予算をオーバーすれば、復興のきっかけどころか、予算の穴を埋める為に、現在の資本活動に使っている予算を削る事になる・・・そうすれば、更に経済が急速に悪化する事になり、復興は程遠いものになってしまう・・・
「・・・更に・・・」
初号機の報告書を見る。
不明だらけ・・・
二人の事も一切分からない。
「・・・頭が痛い・・・」
耕一は首を振ってとりあえず現時点で出来る事をすることにした。


第3新東京市、リリン本部予備ケージ、
検査を受けて異常無しと診断されたレミとレイラが心配そのものと言った視線を初号機に向けている
「・・・今の所未だ何も変化は無いわ・・・何か変化があったら直ぐに伝えるから、それまで・・他の子の御見舞いにでも行った方が良いんじゃないかしら?」
確かに、このままじっと待つだけでは息が詰まってしまう。
二人はジュンコのすすめに従いネルフの中央病院に向かう事にした。


ネルフ中央病院の病室でアスカはベッドに寝ていた。
神経を痛めており腰を動かすと痛いのでコルセットなどで固定してある。
「ふぅ・・・」
詳しくは分からないが、初号機が暴走したとか覚醒したとかとか言う話を聞いた。
まあ、いずれにせよ初号機があの使徒を葬ったと言う事は事実・・・そして、その初号機は今制御不能となり乗っていた二人の状態はさっぱり分からないとの事・・・
足音が二つ近付いてくる。
「・・レミとレイラかしら?」
そしてその二人が病室に入って来た。
「あら、意外に元気そうじゃない」
「まね。腰以外は何とも無いから」
「それは、良かったね」
アスカが何か言おうとした時二人の携帯が同時に鳴った。
「ごめんアスカ!又後で!」
「ごめんね!」
二人は走り去った。
「・・なんなの?」


リリン本部、予備ケージ、司令室、
レミとレイラが走り込んで来た。
「どうしたの!?」
「初号機に反応があったの!」
オペレーターたちが慌しく様々な機器を操作している。
「プラグと回線繋がりました!!」
モニターにプラグの中の映像が映った。
プラグの中ではシンジとレイが寄り添う様にお互いの身を預けあって眠っていた。
無事な二人の姿を見て、皆一斉にホッと息をつく。
「コントロール可能になりました。プラグ排出します。」
プラグが排出され二人は担架に乗せられて付属病院に運ばれていく。


司令執務室、
二人の無事、そして検査の結果の異常無しとの報告受けて二人はホッと息をついていた。
「良かったですね」
「ええ、これで何とかなりそうですね。」
「で、今後の戦力ですが、」
「・・そうですね、エヴァは当然必要ですが、それだけではいけませんからね」
「初号機が使用可能かどうかは未だ分かりませんし、難しいですね。」
「どれくらいの予算が回ってきますかね?」
「さあ・・会長に直接聞かないことにはなんとも」
「・・そうですね、」


ネルフ本部、総司令執務室、
「初号機が自己サルベージを行ったということです。」
「・・自己サルベージか」
「はい、詳細は不明では有りますが、」
「・・・そうか・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「さて話は変わるが・・・エヴァの修復だが・・・」
「はい、現状の予算ではその全てを修復するのは不可能です。」
「1機は七号機のコアの変更でまかなえる。問題は、どのエヴァを変更するかだ」
「・・・修復には弐号機が最も予算が必要とし、又戦力が高いですが・・・」
「弐号機のコアを七号機に変更しろ。修復は参号機を最優先、四号機と伍号機は後回しだ。」
「・・・分かりました。ですが、」
「セカンドチルドレンかね?」
「はい、アスカが弐号機を降り別のエヴァに乗ることを承認するとは・・・」
「本人に選ばせろ」
「え?」
「本人に選ばせろ、弐号機のコアを七号機に移しそれに乗るか、エヴァを降りるか」
「・・・確かに、弐号機の修復には金が掛かりすぎるからな・・・」
「・・分かりました。」


11月18日(水曜日)、第3新東京市ネルフ中央病院病室、
アスカの病室にリツコが入って来た。
「調子はどうかしら?」
「そうね・・腰は痛いけど、後は全く問題ないわ。」
「そう、それは良かったわ。」
「・・・何か用でもあるわけね。」
「ええ、今日はアスカに聞きたいことがあるのよ」
「何かしら?」
「今回、ネルフの受けた打撃は極めて大きいわ。勿論、ネルフ以外も大きいけれど、」
アスカはじっとリツコの顔を見つめてその言葉の続きを待つ。
「・・・今回特に弐号機の受けたダメージは大きく、現在のネルフの財政では修復は極めて困難。よって、弐号機のコアを空いている七号機に移し、以後、アスカには七号機に乗ってもらうわ」
「アタシが・・七号機に?」
「弐号機は修復されることはないわ、弐号機を降りて七号機に乗るか、エヴァそのものを降りるか決めなさい」
・・・・・
・・・・・
・・・・・
「分かったわ・・・で、いつ移すの?」
リツコは少し驚いていた。
これだけ短時間でアスカが弐号機を降りるということを決断するとは・・・
「え、ええ・・・準備が出来次第できるだけ早く・・・来週中には起動実験が行われると思うわ、その頃には貴女も退院できる筈よ」
「・・そう、」
とは言ってもやはりアスカはかなり複雑な思いがあるのであろう。表情にそれが出ている。


リリン付属病院、特別病室、
ゆっくりとシンジは目を開いた。
「・・病院か・・・」
視線を向けた横のベッドにはレイが寝ている。
何かユイが出てきた夢を見ていたきがする。
本当に初号機の中で会ったのかもしれないが・・・・内容はぼやけていてちょっと思い出せない。
まあ、いずれにせよ無事助かったようだ・・・
足音がかなりの勢いで近づいて来る。
ドアが開くと同時にレイラが飛び込んで来た。
「シンジ君!!レイさん!!」
レイラの声でレイも目を覚ました。
「レイラ・・」
「良かった、」
「・・レイラさん・・」
レミも入ってきた。
「元気そうじゃない」
「まあね・・それより、今何日なの?」
「18日水曜日、戦いは昨日よ」
その事を聞いてシンジはほっと息をついた。
「まあ、今日のところはゆっくりと休んでなさいよ、どうせ、今は何もできないんだからさ」
「・・そうだね、」
「・・そうね、」
その後、4人でいろいろな話をしていた。

あとがき
ゼルエル、そしてバルディエルと言う、使徒の同時侵攻が発生してしまいました。
初号機の暴走により、何とか切り抜けられ、更にシンジとレイが無事戻ってきましたが、単純には喜べない様子ですね。
残る使徒は後わずか、物語ももう直ぐクライマックスを迎えますね。
今のままですと恐らくは第29話が最終話になると思います。
ひょっとしたら話を分割して第30話になるかもしれませんが、いずれにせよ多分春には完結を迎えると思います。
最近執筆速度が落ちてきていますが、完結に向けて頑張っていこうと思います。
それでは、