第3新東京市、リリン本部、司令執務室、 ミサトが蘭子と榊原の前に立っている。 「やはり、貴女の作戦立案能力は素晴らしいですね。」 「結果的には恐らくは辿り着けた作戦だろう。だが僅かな時間でそれに辿り着いた。」 ミサトは微妙な笑みを浮かべる。 「正式にリリンの作戦立案官に成って欲しいのですが、どうでしょうか?」 「・・・」 「君が優れた作戦を立案してくれれば、リリンだけでなく、子供達、そして人類全体の為にも成る。」 「・・・・分かりました。それが、私にできるせめてもの事でしょうし・・・」 「では、作戦部作戦立案課所属の2尉として、これから宜しくお願いします。」 蘭子は握手を求めて来た。 ミサトは少しの間何かを考え、それからその手を握り返した。 ネルフ本部、総司令執務室、 「これで、残す所後4体か・・・」 「ああ、」 「タイムリミットは刻一刻と迫っているな・・」 「使徒を全て駆逐してしまえば、ネルフは必要無くなる。」 「そうだな・・・」 「ゼーレも大混乱状態だしな」 「・・・もはや老人達はあてにならん。別ルートで予算を何としても手に入れなければ成らない」 「・・碇財閥か?」 「ああ、既に手を回した。」 「・・そうか、」 「明日、決行される。」 上層部が様々な思惑を張り巡らしている中、ネルフの中層以下は勝利に沸きあがっていた。 補完委員会、そして大国から離反して初めての勝利、確かに、リリンとの共同作戦であり、リリンのエヴァが主力ではあった。 しかし、それでも嬉しい。 かなり厳しい経費削減によって人件費も削減され、職員の私生活も冷え込んではいたが、今日ばかりはと、作戦部はチルドレンも交えて食堂でパーティーを催していた。 一方の技術部はエヴァの修理で大忙しではあるが、 「御苦労様、全ては君達のおかげだ、思いっきり楽しんでくれ」 パーティーはバイキング形式で様々な料理や飲み物が並んでいる。 「「「「「はい」」」」」 早速5人は皿を取ってそれぞれ、自分の好きな料理を取っていく。 そして、テーブルにつく。 「「「「「かんぱ〜い」」」」」」 5人のグラスにはワインが入っている。 「うん、美味しいわね」 「勝利の美酒は美味い!」 (こんな日だし、ちょっと位なら良っか) (う〜ん・・ワシはビールの方が・・) (やっぱり、安もんねぇ・・・レミが持ってきたあのワイン美味しかったなぁ〜) ・・・・ ・・・・ 「正しい事をするってのは大変だけど、ヤッパリ気持ち良いね」 笑顔を浮かべて言ったマナの言葉にヒカリ、トウジ、ケンスケの3人は同じく笑みを浮かべながら頷く。 「そうね・・自分の信じている信念を貫きとおすって事は気持ちいいわね」 正しいかどうかは別としてと言う部分は言わなかった。 11月14日(土曜日)、京都、碇邸、 夜勤の警備員は大きな欠伸をした。 「もうすぐ交代の時間か・・・」 近くの藪の中で何かが音を立てている。 「なんだ?」 表情を緊張させて藪の方に歩いていく。 そして、藪に後一歩という距離まで近付いた時、突然何かに掴まれて藪の中に引き込まれた。 暫くして、藪の中から数人の武装した男達が出てきた。 突然辺り一帯が停電した。 男達は何か手振りで合図をし合い、屋敷の中へと突入した。 泰蔵は、寝室で目を覚ました。 「・・なんだ?」 何か違和感がある。 「どうした?」 反応が無い。 「むぅ・・・」 上半身を起こす。 それだけで辛い・・・ 「・・随分と衰えたものだ・・・死期も近いか・・・ん?」 24時間泰蔵の体調を監視している筈の医療機器が全て止まっている。 「・・・停電か?」 暫くして襖が開き、誰かが入ってきた。 「おお、」 男は泰蔵の首元に無針注射を押し当て薬液を打ち込んだ。 「なっ、何!?」 「ぐぐぐ・・ぐおおおお!!!」 泰蔵は布団の上でのた打ち回る。 ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ 数分ほどして泰蔵は絶命した。 泰蔵が完全に死んだのを確認してから男達は直ぐに引き上げた。 朝、東京、東京帝国グループ総本社ビル会長室、 「会長、碇泰蔵が死亡しました。」 「そうか、」 耕一の表情はどこか嬉しそうである。 「で、やはり、ネルフか?」 「はい、ネルフの保安部と諜報部の精鋭が行動を起こしたようです。」 「そうか・・・で、泰蔵の遺産はどうなりそうだ?」 「死期が迫っていた様ですから、遺言状くらいは有るでしょう。」 「そうだな」 ユナが入ってきた。 「碇泰蔵の遺言状の内容がわかりましたわ」 耕一はファイルを受け取り、内容を読む。 「・・・ゼーレにか、」 「はい、個人資産に碇グループ関連も含めて全てです。」 「まあ、泰蔵が死んだのなら、碇グループもゼーレへの資金援助はしないだろうし、グループの資産を動かすのは難しいだろうな」 「ええ、」 「ふむ・・・シンジは未だ動かせないしな・・・」 「はい、遺言状も正式なものですのでこれを覆すのは少々難しいかと」 「強権を発動させても良いと言えば良いのだが・・・どうするかな・・・」 二人の秘書官は耕一の決定をじっと待っている。 「・・・そうだな、今回の事は碇財閥を乗っ取ろうとした委員会の仕業だと言う情報を各機関に流せ。まあ、彼等も邪推はするだろうが、」 「噂が広まるのを早めると言う事ですね」 「ああ、」 第3新東京市、ネルフ本部、総司令執務室、 「ゼーレに先回りをされていたか、」 「むぅ・・・」 「碇財閥が駄目と成ると・・・どこから予算をひねり出すかな・・・」 「・・・・」 「我々の計画も崩壊かな・・・」 「・・・・・」 11月15日(日曜日)、第3新東京市、ネルフ本部、発令所、 「碇家当主の死亡か・・・」 「遺産は全額ゼーレとか言う怪しげな宗教かなんかの団体に寄付されるそうだけどな」 青葉の言葉に日向は目を大きく開いた。 「どうした?」 「い、いや・・なんでもない」 「そのゼーレとか言うのが毒殺したって言うのがもっぱらの噂だ」 「・・シゲル・・その噂どこで?」 「いや、皆言ってるぞ」 (どう言う事だ?) 総司令執務室、 「ゼーレの仕業だと言う噂が職員の間に流れています」 「その事は、我々にとっては好ましい事だが・・・いったいどう言う経緯で流れたのだ?」 「残念ながら分かりかねます。」 「これだけの芸当ができる組織は・・・東京帝国グループ、リリン、そして、ゼーレ自身か・・・」 「そうだな、」 「どう見る?」 「・・・分からん・・・」 その頃、リリン本部付属病院の通路をレイとレイラが走っていた。 「走らないでくださ〜い!」 「す、済みません!」 看護婦の注意に、謝りつつも走る事は止めない。 二人はシンジがいる特別病室に走りこんだ。 シンジの覚醒が間近に迫っていると言う報告を受けたのである。 「碇君!」 「シンジ君!」 「・・・う・・・・うん・・・」 二人の声に反応したのか、シンジは軽く声を漏らした。 ややあって、ゆっくりと、目を開いた。 視線を動かして今、自分の置かれている状況を把握する。 そして、レイとレイラの2人を捉えた。 「・・綾波・・レイラ・・」 シンジから名を呼ばれ、大きな嬉しさが込み上げて来る。 「碇君!」 「シンジ君!」 2人は半ば衝動的にシンジ抱き付いた。 シンジは突然の事に驚くが、胸に痛みが走った。 「・・つぅ・・」 表情を見うめき声を聞き今度は慌てて飛び退く。 「「ご、ごめんなさい」」 「いや・・・良いよ・・・それよりも、何があったの?」 その後蘭子やアスカもやってきて、一連の出来事をシンジに話した。 話が終わるとシンジは何事か考え始めた。 基本的に組織は、蘭子や榊原に任せておけば間違いは無いし、事実そうであった。 アメリカの事やゼーレとの対立も同様で任せておけば良い・・・ 今、シンジが思っていることは・・・カヲルと泰蔵の事である。 嘗て、悲劇的な結果になったとは言え、心を通わせた少年・・・絶望に陥っていた自分を救い、そして再び更なる絶望に叩き落した少年・・・ 今回は、ゼーレの手先として自分を狙撃し、そして、ゼーレの手によって葬られた。 怒り・・哀れみ・・・その他様々な気持ちが生まれる。 「・・・」 そして、泰蔵・・・自分の祖父である。しかし、会った事は無い・・いや、とても会えない・・・ 原因は知らないが、ユイの事を凄まじく憎んでおり、その遺伝子を受け継ぐ自分も憎んでいる。 そして、リリンに対立していたネルフとゼーレに協力し様々な支援を行い・・結果最後まで利用されて命を落とした。 最も、その息の根を止めたのは父で有る碇ゲンドウの手のものでは有るが・・・ 「シンジ君、暫くの間は難しいことは考えないで、静養の事を考えた方が良いわよ」 「・・・そうですね、蘭子さん」 シンジは軽い笑みを浮かべて答えた。 東京、東京帝国グループ総本社ビル会長室、 「会長!」 ミユキが勢い良く駆け込んで来た。 「どうした?」 「ゼーレ内部でクーデターが発生した模様です!」 「・・クーデター?」 「はい、ゼーレの現在の主流派の上層部が次々に捕らえられ、軟禁状態に追い込まれているとの事です。既に死者も相当数出ている模様です。」 「内部分裂か・・・好都合なのかな?」 「ええ」 「調査を続けろ、それと、クーデターの首謀者を洗い出せ」 「分かりました。」 第3新東京市、ネルフ本部、総司令執務室、 「ゼーレ内部でクーデターか・・・」 「老人どもは消え去ったか・・・」 「そうだな」 「問題は、誰がゼーレの実権を握ったかだ」 「だれだろうな・・・・・誰が握るかによっては我々も大きな影響を受けるしな」 「ああ」 リリン本部、司令執務室、 蘭子と耕一が通信回線で話をしていた。 「今回の事、心配です」 『蘭子もか』 「はい、余りにも手際が良過ぎます。」 『旧政権の中に手引き、このクーデターに協力したもの・・・即ち企て準備をしたものが入るのかもしれんな』 「・・そうすると、このクーデターは、」 『ゼーレ内部を一本化する為の偽装・・・或いは、半偽装かもしれんな・・・』 「全容が掴めない以上我々が介入するのは難しいですね」 『自分達が政権から離れる事によって自分達の目的を達成するか・・・なかなか・・・』 「いかがされます?」 『難しいな・・・しかし、彼等にできる手段と言えば、ゼーレ内部を一本化し、その上で補完計画に必要な予算を確保し準備を進め、只じっと実行の時を待つだけだろう。』 「・・放置、と、言う事ですか?」 『難しい、こうなってしまった以上、ゼーレと言う組織を中途半端に叩いた所でその時期が遅れるだけだろう』 「・・・世界の復興の為には好ましくありませんね」 『ああ、全面衝突で蹴りをつけて大多数に諦めさせた方が良いかもしれん』 「その後も、一部の者は活動を続けるでしょうがね」 『しかし、もはやインパクトを起こす力は無くなる。せいぜい大規模なテロ止まりに成るだろう』 「世界の復興が、遠くなるのは、民衆にとっても不幸ですが・・・東京帝国グループの方もきつくなりますからね」 『ああ、既に当初の予定していた予算もかなり使ってしまった。未だ使徒も4体残っている上に、ゼーレ戦、更に世界の復興まで残っている・・・どこまで掛かるかも分からん。』 「経済の崩壊は起こしてはいけませんからね」 『その通りだな・・・可憐に言って米軍と米州東京軍の一部を日本に回してもらうか』 「それが宜しいかと、リリンの方はレリエルの能力変化も踏まえ、作戦案を0から別に練り上げます。」 『それが良いな、変化した内容によっては、命取りになっていたからな』 「はい」 『初号機の能力が大幅に落ちていることは辛いだろうが何とかサポートでカバーしてやれ』 「ええ」 その後暫く話をした後、通信回線を切った。 ・・・・ ・・・・ 榊原が入ってきた。 「先ほど、八号機のリリン輸送が決定しました。明後日ドイツを発ちます。」 「随分遅れたけれど、漸くね、」 「ええ、ネルフ本部が反旗を翻した以上、リリンに送るしかありませんからね。」 「大国は随分と渋ったでしょうけれどね」 「ええ、ドイツは最後まで渋りましたが、グループや米国系の企業の方から圧力を掛けてもらって何とか」 「・・そう、」 「で、問題はバルディエルですね」 「ええ、」 能力が変わっていないとしたら、輸送中の八号機を狙う筈である。 「・・・どうすしますかね。」 「難しいわね。起動させずに検知できれば良いけれど、そうでなければ、難しいわ」 「使徒の同時侵攻は避けたいですしね・・・」 「ええ、かと言って、チルドレンを乗せる訳にも行きませんし・・・」 「まあ、やってみなければ分かりませんがね・・・」 ネルフ本部、総司令執務室、 「・・・サードチルドレンが目を覚ましたそうだ。」 「・・・そうか、」 「やはり複雑か?」 「・・そうだな、」 夜、リリン本部付属病院、特別病室、 シンジは、蘭子と榊原の二人と話をしていた。 その話の中でミサトの話が出てきた。 「・・そうですか、ミサトさんが・・・」 「ええ、リリンにとっていいことであるということは言うまでも無く、又本人にとってもいい方向に進んでいます」 シンジは軽い笑みを浮かべた。 「・・それは良かった・・・けれど、どうして昼に言わなかったんですか?」 「本人の希望でもあります・・・やはり、まだ会わす顔が無いと思っているようですね・・」 「・・・そうですか、」 シンジは軽く応え、夜のジオフロントに視線を向けた。 11月16日(火曜日)、リリン本部付属病院、特別病室、 今シンジ、レイ、レイラ、レミ、アスカの5人が病室にいる。 「さっさと元気になんなさいよ」 「そうしないと、この二人がね」 「うん・・・ところで、軽いものならもう食べても良いそうなんだ。だからさ、その・・・お弁当作ってきてくれないかな?」 シンジは少し恥ずかしげに顔を赤らめながら言い、レイとレイラの二人は笑顔で頷いた。 「・・・そろそろ訓練の時間だろ、もう行った方が良いよ」 「そうね、本当はシンジについていたけど、それで使徒に負けたら元も子もないもんね」 レミとそしてレイの表情は真剣なものに成る。 あのゼルエルの襲来が近付いているのだ。 シンジ無しであれと戦わなければいけない可能性が高い。 「碇君、又明日」 「うん、又明日」 「お弁当作ってくるね」 「ついでにアタシ達の分もお願いして良い?」 レイラは笑顔で頷いた。 そして4人が去り、病室は静寂に包まれる。 「・・・ちょっと淋しいかな・・・」 シンジの呟きが零れた。 夜、シンジのマンションのリビングでは、レイとレイラが色々と料理雑誌を広げていた。 「これなんか良いんじゃないかな?」 「・・これも良いと思う。」 「そうね、これとこれとこれ・・あと、これをつければ」 「それで良いと思う」 どうやら、作るものが決まった様である。 11月17日(火曜日)、ドイツ、第3支部付属空港、 エヴァ八号機を搭載したウィングキャリアーが滑走路に向かっていく。 管制塔ではドイツ政府の高官や第3支部の幹部が忌々しいと言った顔でウィングキャリアーが離陸するのを見送っている。 彼等にとって八号機は非常に大きな戦略兵器であった。 後々使えなかったとしても、引き渡す代わりに大きな条件を引き出すつもりが・・・ろくな条件を引き出す事が出来なかった。 確かに巨額の予算は手に入った・・しかし、それは実際に建造に使われた予算よりも少ない・・・赤字と言うものでもないが・・・この次の機体を作る予算を捻出するのが極めて難しい。 アメリカでの第2支部の事故も踏まえ、全体的に弱腰に成っている。 早朝、第3新東京市、シンジのマンション、 キッチンでレイとレイラの二人が料理をしている。 料理雑誌を見ながらの料理である。 「えっと・・塩が・・小さじ2杯半と・・」 レイはレタスを刻んでいる。 二人ともなかなか手つきが良い。 料理が次々に完成し、レイラが鼻歌を歌いながら重箱に詰めていく。 やがてそれも終わったようだ。 「レイさん、少し休憩したら行きましょうか?」 コクリと頷きで返す。 リリン本部付属病院、特別病室、 ジオフロントから射し込んで来る爽やかな光の中、シンジは目を覚ました。 「・・・朝か、」 二つの足音が近付いてくる。 「綾波とレイラかな?」 暫くして二人が入ってきた。 「おはよう」 「おはよう」 「・・おはよう」 「お弁当作ってきたわよ」 レイラは台に重箱を置いて、蓋を開けた。 中には、色取り取りの料理がぎっしり詰まっている。 (・・ぜ、ぜんぜん、かるくない・・) 流石にレイの関係から肉や魚は少ないが、それでも・・・シンジは苦笑を浮かべながらもお礼を言うしかなかった。 リリン本部付属滑走路、管制塔、 榊原がゆっくりと高度を下げて来るウィングキャリアーを見詰めていた。 「八号機か・・・」 ウィングキャリアーが着陸した。 「司令補佐、」 「ああ、」 榊原は管制塔を出ていった。 リリン本部、技術棟、特別実験室、 八号機には通常の数倍の拘束具がつけられていて、更にこの実験室自体かなりの装甲で覆われている。 司令室にジュンコ達が入って来た。 「どう?」 「現在のところ何も」 無数の機器で調査しているが、今の所は反応は無い。 「弱ったわね・・・」 「3人にはそれぞれエヴァで待機してもらっていますが、」 3人は訓練と言う名目でエヴァに搭乗している。 「長引く・・・下手をすれば・・・」 ジュンコは眉間に皺を集めた。 「どうしますか?」 「・・・・もう一度隅から隅まで洗い直して!」 作戦部、作戦立案課、 ミサトはボールペンを額につけて考え事をしていた。 「どうしました?」 「ん〜・・いや、今日の訓練と八号機の調査・・・なんか違和感バリバリ・・・まるで八号機が暴走する事を前提にその時に備えて迅速に行動できるようにエヴァに搭乗している。その為の口実の訓練に思えるのよ」 「事実そうかもしれませんよ、九号機の事も有りますし・・・用心に用心を重ねて損は無いかと」 「まね、」 「使徒の能力に合わせて7の基本作戦パターンを新たに作りましたが、見てもらえますか?」 「ええ」 ミサトはファイルを受け取ってぱらぱらと捲った。 ネルフ本部、総司令執務室、 「まるで、八号機が暴走する事を前提にしている様だな・・」 「ああ、」 「・・・リリンは何を考えている?」 「・・・分からん。」 リリン本部、司令執務室、 「今回の事、用心し過ぎですかね?」 「そんなわけでもないと思いますが、」 「調査しても結局何も出てきませんでしたね」 「ええ、バルディエルはいない・・・能力が変わったのか?、それとも、」 その時、警報が鳴り響いた。 「来ましたか、」 「その様ですね」 発令所に入った二人が見た物は、日本南海上空を第3新東京市にむけて一直線に進んでいる影・・ゼルエルであった。 「・・ゼルエルの様ですね」 「直ぐに東京軍、国際連合軍、戦略自衛隊に出撃命令を」 「同時にネルフにも出撃命令、強羅絶対防衛線にて防衛戦を展開する」 「海上自衛隊の艦隊が間も無く接触します」 「決して、殲滅を目的にするな、目標の能力把握と時間稼ぎだ」 海上自衛隊の戦艦や護衛艦がミサイルを発射する。 無数のミサイルはゼルエルに向かって行ったが、ATフィールドによって全て阻まれる。 ゼルエルは爆煙に包まれている。 そして、その煙が晴れた瞬間、数発のビームが放たれ、艦船が次々に消し飛ばされた。 「これは・・・想像以上かもしれませんね・・・」 水蒸気の茸雲が発生し、直ぐ傍にいた艦船を巻き込んでいく。 「ええ・・・」 リリン本部、中央病院、 ゼルエル襲来を聞いたシンジが病室を抜け出そうとして医師達に止められていた。 「駄目です!!未だ戦闘なんてとんでもない!!」 「未だ寝ていてください!!」 「で、でも!」 「でもも何もありません!!」 手術と、長い間寝ていた事でやはり体力その他が落ちていることもあって、医師や看護婦達の制止を振り切れずに、ベッドに戻される事に成った。 その後もしっかり看護婦数人が見張っておりとても抜け出せそうに無い 「・・・無事でいて・・・」 シンジの願いが呟きと成って零れた。
あとがき 碇泰蔵暗殺とその遺産に関する争い、シンジの復活、ゼーレ内部でのクーデター、八号機のリリン本部への譲渡・・・物語が高速で動いていますね。 そして、ゼルエルの襲来、全使徒中最強の戦力を備えていると思われるゼルエルに果たしてどうやって戦うのか、この戦いで受けるであろう被害いかんによっては、その後の戦局に大きく影響しかねませんね。 それでは又〜