リリン

◆第21話

アメリカ、シカゴ、東京帝国グループアメリカ支社ビル、記者会見場、
会見場に可憐だけで無く耕一とルシアの二人の姿が現れ、その場にいた者全てが、極大の驚愕に包まれた。
「随分と・・・驚かれていますね。」
耕一は楽しそうな笑みを浮かべている。
「さて、本来、私はここで、東京帝国グループがアメリカを支援すると言う事を公約する為に来たのですが、その前に、残念なことを言わなくては行けなくなりました。」
「・・・東京帝国グループ会長専用機は、撃墜されました。」
一瞬理解できない事に、騒然となる。
「墜落では有りません。撃墜です。」
「・・・撃墜したのは、米国空軍と、米国太平洋艦隊です。」
会見場は一気に騒がしくなった。
「お静かに、」
「会長専用機に付いていた護衛機との交戦の結果、米国空軍は、その約4割を、太平洋艦隊はその約3割を失っています。調べれば直ぐに分かるでしょう。それだけの被害を隠し切るのは不可能ですから、」
「私達は、別の便、民間機で来ました。」
「もしもの場合に、備えての事だったのですが・・・・残念です。」
「このような、・・・ん?」
秘書官が駆けこんで来た。
「どうした?」
秘書官は報告書を3人に渡し、3人はその報告書を読み始める。
「・・・」
記者達は何事かとがやがやし始めた。
「・・・・皆さん・・・合衆国大統領が死亡したとの事です。」
驚きの声が次々に漏れた。
「・・・・大統領選にも深く関わる事態ですから、その把握の為に、今日の会見は中止します。」
記者達から次々に質問が飛び出る中、耕一達は会見場を出た。
「暗殺か?」
「はい・・・ですが、自殺として処理されます。公式な発表は、1時間後です。」
「可憐、合衆国民を護ってやれよ」
「当然です。」
「じゃあ直ぐに裏を、合衆国政府幹部に相当数のゼーレ派がいるはず、暗殺揉み消しをした者を割り出して!一人ではない筈よ!」
「「「「はい」」」」
可憐の指示で秘書官や幹部が各部署へと飛んだ。
耕一は軽く上を向いて考えた。
「可憐」
「はい」
「・・今回の処理、全ての指揮をお前に任せる。」
可憐は驚きで少し目を大きく開いた。
「・・・はい、全力を尽くします。」
可憐は軽く頭を下げ、喜びの表情を浮かべながら小走りに司令室に走っていった。
「これで良いですか?」
「ええ、皆が万事上手くやってくれますよ、」
二人は笑みを浮かべあった。


第3新東京市、リリン本部、発令所、
使徒を殲滅でき、シンジが助かり、更には耕一とルシアも生きていたと言う事で雰囲気は喜びに満ちていた。
「敵を欺くには先ず味方から・・・ちょっとやりすぎだけれど、これでアメリカは落ちたわね」
「そうですね」
ジュンコの声に大空が返した。
「流石ですね」
「ええ」
「・・・もう少し部下を信用して欲しいけれどね、」
「会長時々やるんですよ、私達をびっくりさせる為に」
大空の言葉にジュンコは驚いた。
「・・・・ふっ・・・子供みたいな人ね」
「そうですね」
二人は軽く耕一の事を笑った。


ネルフ本部、総司令執務室、
「完全に嵌められたな」
「ダミーにあれだけの戦力を持たせる事が出来るとは・・・流石と言った所か」
「そうだな、で、問題は、」
「老人達の責任問題だな」
「ああ・・・これは、只事では済まんな」
「2人・・いや、3人は飛ぶな」
「いや、そんな物では済むまい」
「・・召集が無い・・・使徒の事で呼び出す余裕も無いとは、本当に拙い状況のようだな」
「ああ・・・もはや一刻の猶予も無い・・・」
「何をするつもりだ?」
「表向きは完全に離反した事にする」
「ふむ」
「正規予算がストップされ、特務権限発動できなくなり、作戦の優先権も完全にリリンに移る」
「むぅ」
「しかし、放置すれば反乱の可能性が高い・・・更に、今の老人達と深く結びついていても余り利益があるとはいえん」
「だが、計画を進めるためには大きな予算が必要だぞ」
「分かっている・・・極めて難しいが不可能ではない・・・」
「・・そうか、」
「・・・賭け、だがな・・・」


リリン付属病院、特別病室、
大きなカプセルにシンジが入れられて寝むっている。
既に様々な知らせを受け、それを見守っている5人の表情は明るかった。
医師がやって来た。
「有難う御座いました。」
蘭子は頭を下げ、それに続いて皆が頭を下げた。
「いえ、当然の事をしたまでですよ」
「それよりも、これが、報告書です。」
蘭子は報告書を受け取り目を通した。
移植された臓器の数は当初の予定よりも多い。
これは、損傷が大きく、臓器移植をするしかなかった臓器だけでなく、一応自己治癒が可能な範囲でも、ある程度以上の損傷を受けている臓器も移植された為である。
「11月の中頃には退院できそうです。」
その言葉に皆喜びを見せる。
報告書には、戦闘が可能になるのは、恐らくは11月末から12月上旬と記載されていたが、それは医師の口からは語られなかった。


11月1日(日曜日)、アメリカ、シカゴ、東京帝国グループアメリカ支社ビル司令室、
大統領暗殺に関する情報が続々と集まって来ている。
公式発表では自殺となっているが、暗殺されたと言う証拠は揃った。
揉み消しを行った者、それに関連した者の名前も次々に挙がっている。
閣僚だけでなく、民主党・共和党両党の幹部にも噛んでいる者が大勢いた。
更には、対立候補のマイケル・ブラウンにも情報は渡っていた。
情報だけならば更に多くの者が知っているであろう。
「纏まり次第、会見の召集をかけて」
「「「「はい」」」」
今、アメリカはセカンドインパクト期以来の大混乱に巻き込まれている。
急がなくては成らない。
急がなくては・・・


第3新東京市、ネルフ本部、総司令執務室、
「委員会はメンバーが変わると見て良い」
「表面上我々は委員会と完全に決裂し反旗を翻したと言う姿勢を公式にとる。」
「・・・はい」
「リリンとの会談はそれを踏まえた上で、今後ネルフに振りかかる災難を極力小さくする様にしてくれ」
「分かりました。」
リツコは一礼して退室し日向を連れてリリン本部へ向かった。


リリン本部会議室、
リツコと日向が入ってきた。
二人は軽く礼をしてから席についた。
「さて、先の、第拾壱使徒イロウルの話に入る前に会長専用機撃墜と碇シンジリリン長官・サードチルドレン狙撃に関してですが、」
「それらの件は、全て人類補完委員会の独断による行動であり、我々ネルフは関与どころかその情報すら知らされていませんでした。」
沈黙が流れる。
日向は緊張からか汗をかきハンカチで拭っている。
「前に仰られた通り、愚かな上位組織を持った我々は不幸ですわね。」
再び沈黙が流れる。
「・・・で、その愚かな上位組織との関係を是正する気はおありで?」
蘭子の声が終わると再び沈黙が・・・
日向は来なけりゃ良かった〜と心の中で絶叫しているに違いない。
「現在、司令部は委員会と対立状態にあります。この事は既に御存知でしょう」
「ええ、その様ですね。」
「別組織に漏らすのもどうかとは思いますが、今ネルフ司令部は人類補完委員会・・・ひいては、国際連合へ反旗を翻す準備をしています。」
二人だけでなく日向も驚く。
しかし、下手に何か言うわけにも行かず、日向は沈黙を守った。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
・・・・・
・・・・・
長い沈黙が続く、日向は先ほどからしきりに汗を拭っている。
ふっと蘭子は表情を緩めた。
「それは良かったですね。ネルフ司令部の今後のあり様やその理念、方向性次第では、会長にネルフの支援を御願いします。」
「御理解頂ければ幸いです」
「では、ネルフが公式に反旗を翻した後の使徒戦における共同戦線の展開などに関しても近いうちに詰めておきたいですね」
「ええ、」
・・・・・
・・・・・
「では、イロウルの件に関してですが、」
その後この会談で、イロウルのネルフ本部侵入の経路やその課程の断定の為の調査、再発の防止やマギのセキュリティに関して色々と決定した。


リリン付属病院、特別病室、
未だシンジはカプセルに入ったままで目を覚まさない。
レイ、レイラ、レミ、アスカの4人がガラス越しにカプセルを見つめている。
頭の部分はガラスに成っている様で顔が見える。
表情は特には無いが、強いて言うならば安らぎであろうか?
様々な問題から切り離され、何者にも邪魔されない休息を与えられているのだ。
「今は休ませてあげたいわね、やっぱり」
「・・そうね、」
「その為には私達が頑張らないと、」
「特訓よ」
レミの言葉に3人は頷き、アスカはネルフ本部へ、3人はシュミレーションシステムへ向かった。


シュミレーション司令室、
初号機にレイを、零号機改(実物はまだ、改造中)にレミとレイラを載せてシュミレーションで訓練を行っている。
ジュンコが少し悩んでいる。
「・・・う〜〜ん」
「どうしました?」
ハルカが声をかけた。
「・・・サルベージの方・・・もう直ぐ出来るのよね、」
「・・・・そうなんですか、」
「ダミーコアがもう直ぐ出来るのよ」
「汎用ではなく?」
「ええ、初号機のコアのコピー、と言ってもオリジナルには劣るし・・・」
「戦力が下がると言う事ですか?」
「いえ・・・ちょっとね・・・・個人的な事よ・・・」
ハルカは理解できずに少し首を傾げた。


ネルフ本部、シュミレーションシステム、
こちらでもマヤの指揮の元で訓練が行われていた。
「セカンドチルドレン・弐号機シュミレーションプラグに入りました。」
「皆、アスカが参戦するわ」
モニター上に弐号機が現れた。
3体のエヴァで包囲している。
「・・・・始めて、」
一斉に戦闘が始まった。
流石に3体同時は不可能なので、先ずは3体の連携を崩し、一気に距離を取る。
3体の中で最もシンクロ率が高くそして、熱くなりやすいトウジが主操縦者をしている参号機が猛烈な勢いで追いかけてくる。
そして、他の2体と十分距離が開いた所で、反転攻勢に出る。
ソニックグレイブで腹部を貫き、一旦引き抜き振り被って振り下ろす。
参号機が真っ二つになって崩れる。
その後追いついてきた物を各個撃破する。
・・・・勝負にならなかった。
「・・・では、タイプを変えます。」
単独の使徒に4体で当る形式に変えた。


訓練終了後、5人は会議室に呼び出された。
確かに生き延びる為と言うことも含め、エヴァには乗るし使徒とも戦う、しかし司令部への反感はかなり大きくなっている。
リツコが会議室に入ってきた。
皆の視線が集中する。
「今日は、非常に重大な事を貴方達に伝える事に成ったわ」
「・・重大?」
「ええ、今後のネルフ、そして、貴方達にとっても極めて重大な事よ」
皆真剣な表情になる。
「サードチルドレンでもある碇シンジリリン長官の暗殺未遂、そして、東京帝国グループ会長専用機撃墜事件はしっているわね」
皆頷く、
「今後、我々ネルフはあのような委員会の指示は聞かないわ、」
皆驚きと戸惑いから来るような声を漏らす。
「最強の戦力でもあるサードチルドレンを暗殺しようとするなんて、本末転倒としか言いようが無いわ。事実、彼は未だ意識を取り戻しておらず、又取り戻したとしても戦闘に耐えうるまで回復するにはかなりの時間を要するわ。その間、人類は使徒に対抗する戦力を大きく下げる事に成った。」
「その様な事をするような委員会にはとても従えない、彼等の言いなりになるわけには行かない・・・それが、司令部の出した結論よ」
誰も言葉を発さずにリツコの顔を皆じっと見る。
「近いうちに実行に移されるわ、そうなれば、ネルフは国際連合に反旗を翻した事になる。・・・但し、そうなればネルフは、正規の予算が得られない事になるわ」
その意味が分かったアスカは表情を顰める。
「・・・残っている少ない予算で、最後まで戦い抜かなければ行けないの、エヴァが大破しても修理できないわ」
リツコの説明で理解し、他の者にも緊張が走った。
「それに・・・特務権限も使えなくなるわ、これは貴方達には直接関係無いと思うけれど、凄まじく負担が増える部署があるわ、」
「まあ何にせよ、これでやっと我々も正しい事が出来るわ・・・・でも、これだけは覚えておきなさい。現実世界で正論を貫くと言う事がどれだけ大変な事なのか・・現実は正論では動いていないと言う事を」
部屋を重い雰囲気が包んだ。
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
「スポンサーである国際連合を敵に回したネルフが、これからどうなるか分からないわ・・・こんなネルフには居たくないと言うなら、リリンに行っても良いし、他の支部に行っても良いわ、」
ここでネルフを離れれば卑怯者のレッテルを貼られるだろう。
そして、又、皆の正義感が義務感へと成る。
今のネルフならば正しい事ができる・・・自分達は正しい事をしなければ成らない・・・
色々とを知っているアスカにとっては疑問符がつく事だが・・・、まあアスカも弐号機とは離れたくは無いし、未だネルフに居る方が良いので特には口を出さない。


人類補完委員会、
流石にと言う事で緊急召集された。
病床の泰蔵と混乱の渦中の米国、それと露国代表の姿は見えないが、
「碇、これはどう言う事だ?」
「碇君、我等を裏切ったと言うのかね」
「いえ、とんでもありません。表面的なことに過ぎません。」
「・・・これ以上5大国や委員会に従っていると、職員の司令部への不満不信感が爆発してしまうのですよ・・・特に、チルドレンのそれは限界に達していました。」
「それは君の統率力が低いからだろう」
「御冗談を・・・事前に我々にも知らせてもらえたのならば、何らかの手を打てたのでしょうが・・・ね」
「もはや、他に方法なしと判断し、結果が同じであれば、少しでも対応が早いほうが良いと考え、更に、委員会の方もただ事ではない様で、紛糾すれば無駄に時間を食うだけでしたので、独断にて行いました。」
・・・・・
・・・・・
「・・・まあ、起こってしまった事は、今更どうしようもない・・・これからどうするつもりかね?」
「・・・・補完計画の方は、これまで通りでしょう。E計画は・・・リリンを主に置き、我々がその協力と言う立場になりますが・・・権限はともかく、予算が大きな問題になります。」
「どうするつもりかね?」
「ダミー会社を通して頂きたいです」
・・・・
・・・・
「・・・分かった・・だが、その額は小さいぞ、」
「承知しております。」


11月5日(木曜日)アメリカシカゴ、東京帝国グループアメリカ支社、会見場、
会長機撃墜、大統領暗殺、事実の揉み消し・・これらは現政府、そして民主党・共和党ぐるみの事であった事が公表され、その他様々な問題も同時に流された為、各地で様々な混乱が起き、主要都市では暴動や種々の犯罪が広がっていた。
そしてそれらの問題の中核となっていた者達は身の危険を感じ、次々に国外へと逃亡していた。
それによって各機関の機能は次々に低下し混乱を収拾することはとても不可能となっていた。
会見場に可憐が入ってきた。
「・・・皆さん、確かに現合衆国政府は世界を・・・そして国民を裏切りました。しかし、それが暴動を起こして良い理由、犯罪を犯して良い理由には決してなりません。」
「シカゴ標準時で本日正午より、米州東京軍が治安の維持にあたります。」
会見場に緊張が走った。
「殺人、強盗、放火の類は一切これを許さず、また深夜の外出も禁止されます。」
「米州東京軍による治安維持活動は新政権の樹立までです。」
「本来の手続きとは大きく異なりますが、11月8日に投票を行い即日開票、11月中には、新政権を発足させることができると思います。」
「しかし、もし、過半数の票が獲得できなかった場合、治安維持は続けざるを得ませんが、米国経済党、又東京帝国グループ関係者からは候補は出しません。民主党、共和党から新たな大統領候補を選出し、選挙によって選ばれた新大統領に国家の再建は託されます。」
「民衆に与えられた、選挙権と言う国家を変革させる大きな力、それを今こそ最大限発揮すべきです。」


耕一とルシアの2人は特別室のモニターで可憐の演説を視聴していた。
「・・・これで、良いですね」
「ええ」
「さて、ゆっくりとして行きたい所ですが・・・今度は我々がやらなくてはいけない事をする為に、日本に戻りましょう」
「そうですね。」
二人は立ち上がり部屋を出た。


11月6日(金曜日)東京帝国グループの特別機が、東京中央空港に着陸する為に高度を下げ始めている時に、緊急連絡が入ってきた。
「第2支部が消滅・・・SS機関の実験か・・・」
「史実通りですか・・」
「ええ・・・特に対応があるわけではありませんが、アメリカ支社とリリンに対応は任せますか」
「そうですね」


リリン本部、司令執務室、
モニターには消滅した第2支部が映っていた。
「・・・第2支部は九号機と共に消滅ですか、」
「・・・その様ね。」
「八号機の輸送・・・どうなります?」
「アメリカ政府は、東京帝国グループが押さえたも同然、ネルフは委員会、そして国際連合に反旗を翻した・・・リリンが買い取るべきですかね・・・」
「いくらくらいしますかね?」
「普通にいけば、4・・・いえ、3兆で買えると思いますが・・・ネルフの状態が状態ですからもう少し値切れそうですね」
「用意できますか?」
「そのくらいなら出来ますよ」


ネルフ本部某所、
「第2支部が消滅・・ですか」
「ええ、完全に消滅したわ。」
日向の漏らした声にリツコが答えた。
「衛星の映像を」
モニターに衛星からの映像が映し出された。
「5、4、3、2、1、」
突如第2支部が光に飲み込まれた。
数秒後、光が消え去った後には、嘗て第2支部であった場所を完全に飲みこむほどの大きなクレータが存在していた。
「原因は?」
マヤはファイルを手に取った。
「タイムスケジュールからすると、SS機関搭載実験中の事故の様ですが、パーツの強度から破壊工作に至るまで・・組み合わせは10億通り余り、原因の追及はほぼ不可能です。」
「・・・実験の危険性は、考慮されたんですか?」
「恐らくはされていないでしょう。後が無いから・・・アメリカ政府を抑えられた中で、せめてその存在をアピールしようとしたんでしょうけど・・・結果はこの通りね。」


総司令執務室、
「・・・今回の事、老人達にとって止めになりかねんな」
「ああ・・未だ拙い・・・」
「初号機の覚醒も今だ確認されていない。それに・・・レイの問題もあるしな、」
「・・・我々の計画も風前の灯火か、」


11月8日(日曜日)、アメリカで、緊急の大統領選挙が行われた。
政府機能のほぼ全て、経済機能の多くは停止し、米軍の一部米州東京軍が治安維持に当る中行われた選挙である。
民主党・共和党共に様々な致命的な問題を抱え、対立候補のマイケル・ブラウン自身様々な疑惑の真っ只中でしかも行方をくらませている状況で、実質信任選挙となった。
東京リサーチグループは可憐の予想得票率は80%台に達すると推算している。


11月9日(月曜日)、東京、東京帝国グループ総本社ビル会長室、
モニターに開票の過程が映し出されている。
完勝と言って良いだろう。
開票も半ばに可憐は大統領に当選した。
「可憐さん当選しましたね。」
ミユキはどこか嬉しそうである。
「そうだな、で、クィントスは?」
「身の危険を感じたらしく、現地の東京帝国グループの支社に駆け込んできました。」
「そうか、まあ当然といえば当然のことだが・・・、」
「どうかされましたか?」
「ん・・・何かあまりにも上手く行き過ぎている気がする。」
「思い過ごしでは?」
「・・・そうだと良いんだがな・・・」


第3新東京市、ネルフ職員寮、マナの部屋、
マナはテレビの報道を見ていた。
テレビはどの番組もアメリカの新大統領誕生の話で持ちきりである。
表沙汰にはなっていないが、ネルフは正式に国際連合に対して反旗を翻した。
「・・・結局、何が正しいのかな・・・」
どちらが正しいということはない・・・方向性は統一されてしまった。
「・・・悩んでも仕方ないか、」
自分には選択肢はない、今が正しいと信じるしかない。
「よし、考えるのやめ」
どこか影は残っているものの、本来の明るさを少し取り戻したようでもある。


11月10日(火曜日)、アメリカ、ワシントン、ホワイトハウス、
非常事態と言う事で、早くも可憐が大統領に就任し、直ぐさま様々な指令を発した。
軍と東京帝国グループが抱えていた備蓄食料を、貧民街等に住む飢えた住民達への食料の配布や警察の機能を回復させる事等を初めとして様々な事を指示した。
更に、経済対策として東京帝国グループとしても、第1段として先ず100万人の新規雇用を募集を開始し、他にも数々の手を打った。
「大統領」
「・・・・・え?あ、何?」
可憐は大統領と呼ばれても暫くは気付かなかった。
「いえ、これを」
秘書官は可憐に報告書の束を渡し、可憐はそれに目を通した。


東京、東京帝国グループ総本社ビル会長室、
加持がやって来ていた。
「成功したかね?」
「ええ・・しかし、宜しかったので?」
「ああ、問題ない。」
「・・そうですか、」
「彼女の力は大きいからな・・・で、報酬だが、今回は口座に振り込んでおいた。」
耕一は一枚のカードを差し出し、加持は苦笑しながらそれを受け取った。

あとがき
アメリカが東京帝国グループの勢力となり、一方ネルフが委員会・ゼーレと距離をおき、第2支部が消滅しました。
このことが、パワーバランスに影響する事は必至ですね。
しかし、ネルフ内部を結束させる事には成功したようです。
これからこのことがどう終局に影響してくるのでしょうね。
それでは又〜