リリン

◆第9話

7月20日(月曜日)、ネルフ本部、技術棟、シュミレーションプラグ、
アスカとレイラがシュミレーションプラグに入りシュミレーションの訓練と実験をしていた。
アスカ主のレイラ副で、シンクロ率も100%前後で安定している。
レイラはサポートに徹し、広域的な警戒を行っている。
これによって、熱くなって来ると、視野が狭くなり防御が甘くなり、単調な攻撃しか出来なくなると言うアスカの欠点を見事に補っていた。
弐号機のシンクロ率は4分の1程度しか上がっていないのだが、実際の戦力としては、倍近くになっていると見ても良い。
二人の息が合って来るに連れて、成績も最高記録を次々に塗り替えていった。


司令室、
「これで、第参使徒や第四使徒クラスならば、弐号機だけで当たれるわね」
「ええ、」
リツコの分析を聞き、ミサトは次の使徒こそ自らの指揮で、自らの駒で使徒を倒す為の作戦を練った。
だが、それは、無意味と言うものである。
ミサトは、アダムを除けば、サキエル、シャムシェル、ラミエルの3体の使徒しか知らず、あのラミエル相手に、エヴァで如何こうできる筈もなく、実際、サキエルとシャムシェルに勝てる作戦しか練れない。
そのして、このタイプの巨大生物型、いわゆる典型型使徒で、特殊な能力を備えていないもので残っているのは、ゼルエルだけである。
リツコが少しでも多くのデータを取る為に、レベルを更に上げるように指示した時、警報が鳴った。
「使徒?」
『太平洋艦隊より入電、現在、使徒と思われる生命体と交戦中、至急を応援を要請する、現在地は・・・・』
「アスカ、レイラさん行くわよ!」
『ええ!』
『分かりました』


総司令執務室、
『こんな所で使徒襲来とは、聞いてませんよ』
「船などいくら沈んでも痛くは無い、君だけでも脱出したまえ」
『では、そうさせて頂きます。』


太平洋、太平洋艦隊、
艦隊は七号機の輸送艦を守るように展開されていた。
旗艦、オーバーザレインボー、ブリッジ
「ネルフからの応援到着まで45分掛かります!」
「30分も持たんぞ!!」
艦隊の中を縦横無尽にガギエルは泳ぎまわり、次々に艦を破壊していく。
NN兵器を含めた兵器で総攻撃をかけているが効果は薄い。
「何故だ!!」
「当たっていないんです!!速過ぎます!!」
「リリンから通信です。15分で応援に駆けつけられるがどうかと?」
「構わん!応援を頼め!」
「了解!」
本来ならば、ネルフを通さねば成らないが今は非常事態、そんな事は言っていられない。


弐号機がウイングキャリアーに搭載され太平洋艦隊を目指していた。
その横を、初号機が搭載された新型ウィングキャリアーが抜かして行った。
「あんですってぇ!!」
ミサトが叫び声をあげた。
『太平洋艦隊からの要請です』
「私達が向かってんでしょうが!!」
間に合わないんだから仕方が無い。


ミサトがコックピットで切れている一方、弐号機のエントリープラグの二人は落ち着いていた。
「あらあら、リリンの方が先に行っちゃったわね」
「・・そうですね」
既にモニターに映るリリンの新型ウイングキャリアーは点となっている。


ネルフ本部、総司令執務室、
「・・・妨害しろ」
『了解』


警戒巡視船、
16ミリバルカン砲が新型ウィングキャリアーに向けられた。
そして、バルカン砲が火を吹いた。


その、新型ウィングキャリアーに搭載されている初号機のエントリープラグでは、シンジとレイはモニターに映る巡視船を見ていた。
空気抵抗を減らす為に展開されている微弱なATフィールドが全て弾いた。
エヴァを乗せると最高速度が上がると言う奇妙なスペックを持っているのだが、まあ、この際それは良い。
シンジは大きな溜め息をついた。
「・・父さんは何を考えてるんだ?」
レイは黙って目を伏せ答えなかった。
「・・カウンターお願いします」
『はい』
直ぐに対艦ミサイルが発射された。
ミサイルは巡視船に向かって真っ直ぐに飛んでいき、直撃し爆発炎上した。
「沈んだかな?」
「いいえ、あの程度なら沈みはしないわ」
元々ウイングキャリアーは攻撃機ではなく輸送機、取り敢えずの破壊力のミサイルを搭載しておけば十分である。


太平洋艦隊、オーバーザレインボー、
既に、10を超える艦が撃沈している。
「囲め!囲んでNN魚雷を斉射だ!!」
閃光と衝撃、そして凄まじい水の茸雲が上がった、しかし、それですら動きを暫く止めるだけであった。
「バカな!!」
「応援到着まで5分です!!」
もはや、人知人力を遥かに超えた存在への恐怖がその場にいる者全てを取り巻いていた。
そんな中、1機の垂直離発着機が日本本土へ向けて飛び立った。


ネルフのウィングキャリアーのコックピットでは、ミサトがパイロットに食って掛かっていた。
「もっと速く飛びなさいよ!!」
「むちゃいわんといてください!弐号機積んで音速が超えられるわけ無いでしょうが!!」
正論ではあるが、そんなもの、この場では何の意味もなさない。
「根性で何とかしなさい!!」
「無理です!!」


一方、リリンの新型ウィングキャリアーは、太平洋艦隊上空に到達していた。
眼下に広がる太平洋ではいくつもの艦が破壊され爆発し炎上し、真っ黒な煙を上げていた。
そんな中、無数の魚雷が発射されているようだが、効果を上げているようには見えない。
『投下します』
「御苦労様」
『いえ』
初号機は投下された。
「綾波」
「分かっているわ」
レイがATフィールドの銛を作り出し、シンジが動きを取っている。
目指すはガギエル。
一直線にガギエルに向かって降下していく。
シンジの展開するATフィールドによって空気抵抗は殆ど無視できるまでになっている。
そして、初号機が銛をガギエルに突き刺し、ガギエルの巨体は完全に貫かれ大穴があいた。
ATフィールドの銛が海底を抉る前にレイはATフィールドを解除し銛を消滅させた。
初号機は直ぐに海面に上がり、空母の飛行甲板に攀じ登った。
「応援に来ました」
歓声が聞こえる。
『我々は何をすれば良い!?』
「ATフィールドを中和した後に一斉攻撃を、初号機は気にしなくて結構です」
『分かった!』
再び、浮上してきたガギエルに飛び乗りATフィールドを中和した。
「今です!」
シンジの合図とほぼ同時に、周囲の戦艦巡洋艦駆逐艦などが一斉に総攻撃をかけた。
ガギエルもATフィールドが無ければ只の巨大な魚である。
その構成組織を次々に破壊されやがて肉片に変わり果てた。
初号機は再生を開始しているコアをATフィールドで圧壊させて、水柱から飛び出し、オーバーザーレインボーの飛行甲板に着地した。
兵達は物凄い歓声を上げた。
丁度今、ネルフのウィングキャリアーが到着した。
予定よりもかなり早い、根性で、ある程度は何とかなったようだ。
エントリープラグを排出し、二人は初号機を降りた。
兵達は、自分達を救った者が目の前に表れ盛大な歓声を上げると共に、それが、少年少女であった事に驚愕していた。
ネルフのウイングキャリアーは別の空母に着陸したようだ。


オーバーザレインボー、ブリッジ、
「碇シンジ1将です。」
提督を初め、そのブリッジにいた者全てが驚いた。
知らない者にとっては、この少年が、最高位の階級の所有者だとは到底思えない。
「キーン、マックスウェル少将です。艦隊の全ての者を代表して、我々を救って頂いた事に感謝致します。」
「いえ、お礼を言われるような事ではありませんよ」
その後暫く話を続け、そして、ネルフ側の人間と話をする為に会議室に向かった。


オーバーザレインボー、会議室、
シンジ、レイ、ミサト、アスカ、レイラが席に付いている。
尚、レイラは、そのまま2佐として、ネルフに入っており、2重に所属している。
「使徒殲滅の優先権は我々ネルフにあります。それをリリンが無視されては困ります」
開口一番ミサトがそう言い、リリンの行動を責めるつもりのようだ。
「・・・我々は使徒殲滅に来たのではなく、太平洋艦隊の救援に来たのです。」
先ほどのブリッジとはまるで逆の事を言っていたりもする。
「結果は同じです」
「では、尋ねます。B型装備の弐号機でどうやってガギエルと戦うおつもりで?」
初号機もB型装備だったが、弐号機のそれとは意味が違う。
「う・・それは・・・」
何も考えてなかった。エヴァさえ持っていけば何とか成ると思っていたのかもしれない。
「空母の飛行甲板を足場に」
ミサトはとっさに思いついた作戦が非常に良いもので心の中で自我自賛したのだが、シンジ、レイ、アスカ、レイラは一斉に溜め息をついた。
「な、なによ!!!アスカもレイラさんまで!」
シンジはモニターを切り替えた。
「で、どの空母を足場に使うつもりだったので?」
「えっそんなの、手ごろな」
「そうですか、我々がこなかったら、どの空母が残っていたんですか?」
空母の半数が撃沈している。
「・・・・」
「何を考えていたんですか?足場無しで、弐号機を水中型の使徒と戦わすおつもりで?」
「優先権以前の問題ですね、戦力と戦う方法くらいは揃えてから優先権をうたってください。」
4人が立ち去った後の会議室には、隅で蹲りのの字を書いていじけているミサトの姿があった。
味方である筈の二人にも非難された事が利いたらしい。
この件で国際連合軍はリリン側に数歩近寄った。


夕方、東京、東京帝国グループ総本社ビル会長室、
耕一は、碇財閥の調査の報告書に目を通していた。
予想通り、無茶な出費によってあちこちで無理が生じてきている。
「・・・半年持つかどうかだな・・」
耕一は報告書を机に置いた。
「頭を切るか、それとも道連れになるか・・碇財閥の幹部の勇気と行動力次第か・・」
次の報告書はレイラに関するものであった。
「・・・・」
「・・・・」
耕一は手を組み、額をつけた。
「・・・解決方法はそんなには無いな・・・問題はシンジか・・・一度ゆっくりと話して見なければいかんな・・・」
ドアが開き、ルシアが入って来た。
「耕一さん、レイラのことでちょっと」
「分かりました。」
二人はソファーに座った。
「レイラの事ですが、」
「一度シンジとゆっくりと話してみようと思います」
「・・私も一緒に」
「分かりました。都合の良い日を探してみます。ルシアさんは一度レイラと話し合ってみてください」
「分かりました。ところで」
ルシアは真剣な表情から普段の微妙な笑顔に戻った。
「何ですか?」
「買って欲しいものがあるんですけど」
耕一は何を言い出すのか考えた、これは、自分に買って欲しいのか、それとも、違うのか、分からなかった。
「何ですか?」
「碇食品です。」
「はい?」
「だから、碇食品が潰れて、美味しい食パンが食べられなくなる前に買いとって欲しいんです。」
耕一はたっぷり1分間固まったそうな。


夜、アスカとレイラのマンション、
レイラは2佐と言う事で、流石に、ずっと寮においておく訳にも行かず、アスカと同室でだが、高級マンションに引っ越した。
今、レイラが料理を作っている。
はっきり言って上手である。だが、シンジの方が数段上である為シンジが良く作っていただけである。
アスカが食器を並べている。
もし、同居人がシンジやレイならば、ミクや嘗てのアスカのように全て押し付けるのだろうが、レイラの場合流石にそうは行かない。
「出来ました」
レイはシチューの入った鍋を運んで来た。
アスカも運ぶのを手伝った。
二人にしてはやけに多いが・・・
因みに、量的には約4人分。
しかし、殆ど平らげた。
「ぷひ〜、食った食った」
「アスカさんって本当に良く食べますね」
「そんだけエネルギーを使ってるからよ」


人類補完委員会、
「さて、碇君」
「非は、我々にはありませんよ、」
「確かに、今回の事で、軍事費をネルフに回す事が出来る」
「だが、リリンへの出資に切り替えた国がある」
「差し引き、ややマイナスと言ったところだよ」
「一つ策がありますが」
「聞かせてもらおう」
モニターにJAが映し出された。
「この玩具を潰します」
「成るほど」


7月21日(火曜日)、シンジのマンション、
「・・・夏休みなんだよね・・・」
「そうね・・・」
「・・・何か実感が・・・」
「・・・アタシも・・・」
二人はまともに学校に行かずに、ごたごたの中で気付いてみたら、もう夏休みと言う事で、なんか調子がずれていた。
レイはネットで遊んでいる。
どうも、数字やグラフが一杯あって、各国の主用通貨や株式の主要銘柄が並んでいるが・・・
「くすくす、」
「綾波、何が面白いの?」
「何と無く、ここの数字が増えると嬉しいの」
レイが指差した場所には、下手な後復興国の年間予算に相当する金額が表示されていた。
シンジは青ざめた。
レイはゲーム感覚でやっているようだが、洒落になってない。


ネルフ本部、赤木研究室、
ミサトがコーヒーを飲みに来た。
「ミサト、あれ、実行に移す事になったわ」
「・・あの玩具ね、うざったいったりゃあらしない、リリンだけでも鬱陶しいってのに」
「そうね、この玩具の貯金箱を壊して中身を頂くわよ」
「いいわね、ブリキのロボット型かしら」
「爆弾付きのね・・・それと、明日七号機のシンクロ実験をやるから、レイラ2佐を呼んでおいてね」
「分かったわ」


総司令執務室、
「本当に波乱に満ちた船旅でしたよ。まさか使徒に海の上で出くわすとわね。」
加持はトランクを開けた。トランクの中にはケースに入った胎児状の物が入っていた。
「やはりこれのせいですか?既にここまで復元されています。硬化ベークライトで固めてありますが・・・間違い無く生きています。」
「人類補完計画の要ですね。」
「最初の人間アダムだよ。」


7月22日(水曜日)、早朝、東京、東京帝国グループ総本社ビル会長室、
加持が小さなケースを取り出した。
「頼まれたものです」
アダムだった。
耕一はアダムに手を翳した。
アダムは僅かに振動した。
「本物のようだ、御苦労だったな」
「いえ、」
耕一はファイルを取り出した。
「これがセカンドインパクトの真相だ。まあ、最も本当の真相は、葛城博士以外は分からんだろうがな」
加持はファイルを受け取った。
「それと、金だ。」
5000ドル札の札束を加持に渡した。
「君ならば足を残さずにこれを日本円に換えるくらいのルートは持っているだろう」
「ええ、では、ありがたく」
加持は札束を封筒に入れて懐に仕舞い、一礼して退室した。
耕一はアダムを睨み付けた。
「本来ならばこの場でプラズマ処理してしまいたいところだが、憎むべきものであったとしても、ジョーカーは簡単には切れんな」
耕一はアダムの入ったケースを専用の箱に入れた。


第3新東京市、ネルフ本部技術棟、司令室、
レイラがシュミレーションプラグに入り、七号機とのシンクロを行っていた。
「双方向回線開きます。」
数値が表示される。
コアは、汎用コアを使用しているため、高いシンクロ率は望めない。
流石に、耕一やルシアを殺すわけには・・・そんな事したら問題どころでは済まない・・・国際連合と東京帝国グループの全面対立は目に見えている。
そうなったら、使徒戦どころではない、東京帝国グループ側と国際連合側の国家間での戦争は必死である。
単純に考えれば、国際連合の方が有利だが、東京帝国グループ総本社ビルがある日本が東京帝国グループ側で、島国であり、戦略自衛隊に東京軍、リリンまでが揃っている。
東京帝国グループが経済を支配している国際連合側の全ての国で前代未聞の規模の大暴動が発生し、世界は第4次世界大戦に突入する。
「シンクロ率は・・42.1%です。」
「凄いわね・・・こう言うのを天才とでも呼ぶのかしら・・」
「どうして?アスカなんか」
「意味が違うわ、汎用コアで40%だなんて・・・専用のコアならば80%を軽く超えるわね・・・」
リツコは専用のコアが無性に欲しく成ってきた。
(関係者で誰か死にそうな人いないかしら?)
耕一、ルシア、蘭・・・・・・・・・・・・・皆、元気であった。
(ちっ、面白くないわ、9thも、未だに目を覚まさないし、)


夜、展望室、
二人はガラス越しにリリン本部を眺めていた。
「・・・リリン・・・」
「・・・ええ・・・」
二人のリリンに対する感情は違う。
特にレイラにとっては複雑だろう。


7月26日(日曜日)旧名古屋、第2封鎖地区、
広大な敷地に多くのヘリコプターが止まっていた。
日本重化学工業の人型ロボット、JAの完成祝賀パーティーである。
広いパーティー会場には、ネルフからもリリンからもおこぼれを頂けなかった企業や政治家が沢山いる。
中央の大きなテーブル二つ。
ネルフとリリンのテーブルである。
ネルフ側の出席者は、ミサトとリツコ、リリン側の出席者は、シンジとレイとナオコと大空。
「え〜このたびは、JAの完成祝賀会にご出席頂誠にありがとう御座います。」
ネルフのテーブルもリリンのテーブルも中央の方にビールがちょこんと乗っているだけだった。
シンジは、別のテーブルから料理の皿や飲み物を持ってきた。
「はい、綾波」
「ありがとう」
レイはそれらを受け取り笑みを浮かべた。
「全く、これは問題ですね」
リツコはシンジとレイをじっと見ている。
時田が自慢げに説明をしている。
「質問を宜しいですか?」
リツコが手を挙げた。
「これは、これは、御高名な赤木リツコ博士、どうぞ。」
「動力機関を内蔵とありますが?」
「ええ、JAの大きな特徴です。核分裂炉を搭載する事で最高180日間の連続戦闘が可能です。」
得意そうに言っている。
「しかし、格闘を前提とする接近戦において動力機関を内蔵するということは危険過ぎます。」
「5分しか動けない決戦兵器よりはマシだと思いますがねぇ。」
「くっ、外部操作では判断に遅れが生じますが」
「精神汚染を発生させる物よりははるかに人道的と考えますがねぇ」
「それを押さえるのが人の心とテクノロジーです。」
「まさか、御冗談を、あの怪物を人の心でどうにかなると?そんな事だから、国際連合はまた余分な予算を使わなければならない、3億人近い餓死者が出ようとしているのですよ。」
「なんと言ってもうちの主力兵器以外は使徒は倒せません。」
「ATフィールドですか?それも時間の問題ですよ。ネルフ、ネルフ、という時代はもう終わったんですよ。第一、先のヤシマ作戦でしたっけ、あれで、貴方達が証明したじゃないですか、非決戦兵器の寄せ集めで使徒に勝てると」
会場中から笑いがこぼれた。
リツコは下を向き拳を振るわせた。
「一つ聞いて良いですか?」
シンジが手を挙げた。
「・・・・どなたです?」
「リリン長官、碇シンジ、1将です。」
会場中がざわめいた。
レイはノートパソコンを操作して何か笑みを浮かべている。
(私、楽しいのね、私、嬉しいのね)
日重の株を全部うっぱらった。
遂に1000億円を突破した。
「な、何か?」
「あの、リアクターの耐圧及び耐熱はどのくらいですか?」
「え、え〜と」
「まさか分からないんじゃないでしょうね、第伍使徒の加粒子砲の破壊力は、超特殊装甲の盾を貫通するんですよ、射程距離は、10キロ以上はありそうですし、JAは、どうやって攻撃を掛けるつもりなんですか?十分な耐久力がなければ、JAは、歩く原爆ですよ、使徒が現れたら、真っ先にJAをシェルターに避難させなくては成りませんね・・・・1945年8月6日の広島と8月9日の長崎、2000年9月20日の東京、世界で唯一の被爆国である日本が、歩く核爆弾を作って良いんでしょうかね?この調子ですと、2015年、旧名古屋が増えそうですね・・・・」
「い、いや、そ、それは・・・」
「更に言えば、前回、ATフィールドを撃ち抜くのに使ったエネルギーは日本中から集めました。つまり、中和せずに撃ちぬくには、そのクラスのエネルギーが必要なわけです。JAには、リアクターは一つしかついていませんが、日本に一体何個発電所があるのか、1個や2個って事は無いでしょう」
「そ、それは、時間の問題だ、我々もいつかは解明する!」
「では、完成祝賀会、は嘘だったわけですね」
「う・・・」
時田は言葉を詰まらせた。
「まだ、未完成、そのままでは歩く原爆、そんな愚かな玩具の為の今回のパーティー、いったいいくらの金が動いたんでしょうね・・・それこそ多くの命を救える筈の額でしょうね・・・貴方達の考えていることはだいたい分かる。ネルフとリリンへの仕返し、使徒という、人智を越えた敵が襲来しているのに、人は、愚かな争いを繰り返す。人類は神の使いによって滅びた方が良いのかも知れませんね・・・・・・・・帰ります」
シンジは出口の方に身体を向けた。
レイは皿を机に置き、ジュースを飲んでから、シンジを追った。
「・・・・・・・・・・・・ええ、では、これより、起動試験を御覧頂きます」


そして、2015年7月26日、旧名古屋で核爆発を起こしそうになったJAの計画は白紙になった。
その資金の6割がネルフに、4割がリリンに流れた。
勿論、ゼーレと委員会の介入があったからで、もし、それが無ければ、9割以上がリリンに流れていただろう。

あとがき
資金難ですね。ネルフはこれからは毎回金策に走り回らなくては成らなくなりそうです。
ネルフの立場が揺らぎ、リリンの方が着々と方々の信頼を獲得していく。
これにネルフはどうやって対抗するのでしょうか?
今回、レイラ問題に大きな動きはありませんでした。
その一方でシンジ×レイにも大きな動きはありませんでした。
果たして、次にどのような事が起きるのか
次の使徒はイスラフェルですね。
では、また