リリン

第6話

◆邂逅と悲しみ

ネルフ職員寮、アスカの部屋、
(起きろこら!!!)
「・・うう・・」
(起きろっていってんのよ!!!!)
アスカのベッドの上で赤い光が怒鳴り散らしていた。
「・・・あと5分・・・」
アスカは頭まで掛け布団を被り込んだ。
(アタシはバカシンジじゃない!!!)
「うっさいわね!!!」
アスカは飛び起きた。
「いったい・・・・・」
アスカは赤い光を見て恐怖を覚えた。
「いや〜〜〜!!人魂!!!」
(人魂は青白いもんでしょ!!!)
「いや〜〜!喋ってる!!!」
(取り敢えず黙る!)
「何よあんた!このアタシに命令するつもり」
(そうよ)
「良い根性じゃない、魂だか妖怪だかわかんないけど、この惣流アスカツェッペリン様を甘く見ない事ね!悪霊退散!!」
アスカのストレートを光は交わした。
(アタシは悪霊じゃない!!!)
アスカは何故か部屋においてあった金属バットを手に取った。
(こら〜〜〜〜!!!!)
「ふっ、生け捕りにして、リツコに調べてもらおっと」
(止めろ〜〜〜〜!!!!!)
アスカはバットを振りかぶった。
光は窓から逃げ出した。
「ふっ、勝った」
アスカはバッドを置き再びベッドに潜りこみ寝息を立て始めた。


7月7日(火曜日)、早朝、シンジのマンション、シンジの部屋、
レイは目を覚ますとシンジを揺すった。
「んん、ああ、綾波、おはよう」
(なんだ、結局、来ちゃったのか)
「碇君、昨日・・彼女が来た」
「彼女?レイラ?」
レイは首を振った。
「綾波レイと呼ばれていた者」
とたんシンジの表情が変わった。
「彼女は私と共にあるの・・」
レイはシンジの頭を胸に抱いた。
「あう」
「・・碇君・・・今、彼女は私とともに有る・・」
回帰レイは、シンジとの再会の喜びを胸の中で膨らまし、それは、レイの喜びとなった。


ネルフ職員寮、アスカの部屋、
アスカがトーストを焼いていた。
赤い光がアスカの目の前に現れた。
「・・・・又、来たのね」
アスカは残酷な笑みを浮かべた。
(ちょっと、人の話は聞きなさいよ!!)
「あんたが人だったら聞いたのにね」
アスカはバットを手に取った。
(止めろ!!!!)
「死ねええ!!!」
光は又逃げ出した。
「逃げ足は早いのね」


上空、
(・・・・どうすりゃ良いのよ・・・)
(シンジのとこ行こ)
光はミサトのマンションの方に向かおうとしたが、止めた。
(もうすぐ学校ね)
光は通学路で待ち伏せすることにした。
暫くして、シンジ、レイ、レイラが歩いてきた。
(む、ファーストはともかくも誰よあの女は)
レイラは俯いて暗いオーラを放っている。
それは、周囲の光を吸収して周囲の空間そのものを暗くしているようにも見えるほどのものであった。
しかし、いまや、レイしか目に入っていないのかシンジは大して気にしている雰囲気は無い。
(・・・シンジって・・・罪な奴ね・・)
汗がかけるのなら汗をかいただろう。
3人は光の目の前まで来た。
「・・私、人魂見るの初めて・・」
「彼女に似てるわね」
「ん?綾波・・・ひょっとして」
何と無く見当がついたシンジは光にふれた。
(シンジィ!)
「うわ!アスカ!?」
光はシンジにまとわりついた。
「シンジ君!」
「あ、大丈夫?どうしたの?」
(アタシに追っ払われたのよ!)
意味不明。
「人目のないところに行きましょ」
シンジは周りを見た。
みんなが注目している。
シンジは赤くなってその場を逃げ出した。


第3新東京市立第壱中学校屋上、
光は事情を説明した。
「ふ〜ん、この世界のアスカに追い払われたのか」
(うう〜)
「大変・・なんですね」
レイラは、同情している。
「でも、会えたね」
(・・え、ええ・・)
「弐号機パイロット、アスカが来たわ」
アスカ達ネルフのチルドレンが専用車で送られてきた。
「アスカ、どうする?」
(どうするって言われても・・・)
「ま、僕たちの所にいても良いし、」
(暫くは、そうするわ)
「弐号機パイロット、後で体を用意するわ。行きましょう」
(ん、そうね)
レイに続いて光が校舎に入っていった。
「シンジ君・・」
「ん?ああ、これからどうなるんだろうな・・・なんか、使徒との戦いから離れてきてる気が・・・」
光は、レイの服の下に隠れた。


2−A、
トウジが走りこんで来た。
「碇ぃ!綾波ぃ!」
シンジは前回の事を思い出しレイの前に立ち身構えた。
トウジは二人の前で土下座した。
「妹の事ほんまに!!」
どうやら説明があったようで、シンジはほっと息を吐いた。
殴りかかってきたらカウンターを決めるつもりだったが、余り気持ちの良いものではない。
その後、トウジとヒカリの二人から謝罪と感謝の言葉を頂いた。


リリン本部、長官室、
シンジとレイは光に説明した。
光は全てを説明されると素直に真実を受け入れた。
(ふ〜ん、そう言うことだったの、で、体を用意するって)
「私の妹」
(・・いいの?)
「その方があの子達も喜ぶと思う」
「じゃ、僕は、ネルフ本部に行って来るよ」


ネルフ本部、総司令執務室、
シンジは蘭子を連れてやって来た。
「我々リリンは、綾波レイの全てを移譲されたはずですね」
「それがどうした?」
「では、水槽に浮かぶ素体も渡していただきましょうか」
碇と冬月が同時に立ち上がった。
「我々に素体の所有権はあるはずです。装置に関しては買い取りましょう、価値は推定で3000億円と言った所ですね。それでどうでしょうか?」
「蘭子さん、あんな施設、綾波の素体が無ければ只のゴミなんだよ」
「あら?1000億で十分でしょうか?」
「くくく、何を驚いているんですか?こちらには、東京システムと、マギの生みの親がいるんですよ、身から出た錆ですね」
シンジは愚かな父を笑った。
「ぐぐぐ」
「では、ダミーシステムは、1000億円で、リリンがネルフから買い取ります。宜しいですね」
碇には頷くしかなかった。
「ちょっと待ってくれないか?」
冬月が口を挟んだ。
「確かにこのままではダミーシステムは意味がないが、再利用は可能だ、それに、素体維持のために、君達には必要なものだろう」
「・・・では、予定通り3000億円で」
「うむ」
流石は実務をこなす冬月副司令である。
「流石は、冬月先生ですね」
嫌味なのかどうか分からない言葉を残してシンジは蘭子と共に総司令執務室から出ていった。
「碇、マギ以外に機密情報を管理するシステムを作った方が良さそうだな」
「その為の金か」
「そうだな」


夜、シンジのマンション、
(むき〜〜〜!!!シンジ!お腹空いた!!!)
光が喚いていた。
「そんなこと言っても」
光は用意された食事の上で浮遊している。
(シンジ!何とかしなさい!!)
「碇君は悪くない」
「は、はは、は」
もはやレイラは表情を曇らせながら笑うしかなかった。


深夜、シンジの部屋、ベッドの中
「碇君」
レイはシンジに抱き付き、直ぐに寝息を立て始めた。
凄く幸せそうな寝顔である。
シンジは汗を流した。
(ほう、ほう、いい根性してるじゃないの)
光はシンジの頭の上にいる。
「あ、あのさ、ね」
(人を飢えさせておいて、ご自分は暖かいベッドで恋人と抱き合っておられるのですか、ふ〜ん、そう)
その夜、光のネチネチとした嫌味攻撃にシンジは寝られなかった。


7月8日(水曜日)、早朝、ネルフ本部、
シンジ率いる側近部隊がいきなり乗り込んで来た。
シンジは眼の下に隈を作っている。
どこか顔色も悪い。
総司令執務室に入った。
「ダミーシステムを受け取りに来ました!作業はこっちでやりますから!では!!」
嵐のように執務室を去り深層に向かった。
「・・何かあったのか?」
「ふっ、問題無い、既にキープ済みだ」
何体か素体を確保しておいたようだ。


ダミープラント、
先ず、素体を運び出し、リリン本部に搬送し、続いてプラントの解体に掛かった。
「急げ!」
「了解!3時間で作業は終了させます!」
シンジはリリン本部に向かった。


リリン本部、
レイの素体がベッドに寝かされている。
「入って」
光は素体の中に入っていった。
素体が光って色素が変化した。
「・・・なんで?」
「知らない」
赤みがかった髪に青い瞳になった。
「ん?シンジ!飯!!」
すぐに大量の料理が運ばれてきた。
素体はたっぷり食べた。
「うい〜、余は満足じゃ」
本当に満足そうだ。
「で、戸籍のことだけど、綾波の双子の妹で綾波レミとして登録しようと思ったんだけど」
「ん?別に良いわよ」


7月9日(木曜日)第3新東京市立第壱中学校2−A、
「皆さん、転校生を紹介します」
レミが入ってきた。
「綾波レミです。そこに座っている、綾波レイの双子の妹です。」
男子の心の叫びが聞こえる。
(レイに妹なんかいたの!)
(綾波さんの妹)
(綾波とは色が反対やな)
(売れるぞこれは−−!!)
(うわ、本当にそっくり)
「じゃあ・・・綾波レミさんは、お姉さんの席の後ろに」
「はい」
レミはレイの席に歩いていった。
「宜しくね、お姉ちゃん」
レイは頷いた。
レミは軽く笑ってから席に着いた。


ネルフ本部、総司令執務室、
「ダミーシステムの移譲と同時に現れたレイの妹か・・・」
「・・・何をしたというのだ?」
リツコが部屋に入ってきた。
「機密データのエスティマへの転送完了しました。マギのデータは現在削除中です」
「うむ」
エスティマは、リツコが作ったマギの補助システムだが、完全に独立させ単独システムとして動かすことになった。
「それと、綾波レミの遺伝子は、99.89%、綾波レイと一致しました。」
「また、この数字か・・・」
冬月はこめかみを押さえた。
「はい」
「偶然の一致と言うには」
「余りにも出来過ぎです」
「赤木博士、君の見解を言い賜え」
「はい、恐らくはですが、綾波レミは、予め入手した素体の情報を元に作ったクローン体で、クローン体の生命維持に支障が発生したため、その受け皿としてダミーシステムが必要になった物と思われます。」
「どう言う事だ?」
「恐らくは、完全なクローンではなかったために色々と支障が出来たのでしょう」
「そこで我々のクローンが必要になった訳か」
「恐らくは、」
「しかし、わずか1日で直るような物か?」
「それは何とも言えません。」
「では、レミの魂は?」
「分かりません。しかし、魂のコピーが出来ない以上、元は人間の魂である可能性が高いかと」
「うむ、調査を続けてくれ」
「はい」
リツコは退室した。
「俺には、どうぞ好きなように怪しんで下さいと言っているように思えるぞ」
「・・・我々に敗北は許されない」
「碇・・・綾波レミが、第拾七使徒タブリス・・・と言うことは無かろうな」
「それはあり得ない、タブリスの卵はゼーレが押さえたと聞く、対立しているリリンが手に入れることは不可能だ」
「そうか」


第3新東京市立第壱中学校2−A、
レイと同じ美少女、だが、レイとは違い親しみやすそうな雰囲気、レミは多くの人間に取り囲まれている。
あからさまにアスカはレミを怪しんでいる。
その為、ネルフのチルドレンはレミに近寄れずにいた。
そして、クラスの隅で周囲を暗くするほどレイラは沈んでいた。
ヒカリはレイラに近付こうとしたのだが余りの雰囲気に出来なかった。
アスカはレイラに近付いた。
「レイラ、どうしたの?」
「・・・・・?・・・・アスカさん?」
レイラはゆっくりと顔を上げた。
「そうよ、どうしたの」
「・・・・・後で・・・・時間・・・取ってくれますか・・・」
「・・・い、いいわよ」
余りの暗さにアスカは顔をひきつらせながらその場を逃げ出した。


屋上、
シンジとレイが手摺りに体を預けていた。
「碇君」
「何?」
「私も彼女も碇君にいろんな事を教えてもらった」
シンジは頷いた。
「私も彼女も碇君が好きなのだと思う、これが好き、という感情なんだと思う」
「綾波」
シンジはレイを抱き締めた。
「僕も、綾波のことが好きだよ」
レイは軽く頷き、体をシンジに預けた。
暫く二人は幸せな時間を共有していたのだが、シンジは視線を感じて振り返った。
レミが仁王立ちしていた。
「あ、あの、これは、その」
「ふっ・・・ま、良いわ、それより」
「へ?」
レミの背後が暗くなっている。
レミの後ろにはレイラが蹲っていた。
「あ・・・レイラ」
「あんた・・・本当に罪作りな奴ね」
その後、ただ謝るしかなかったシンジはレミに蹴りを食らった。
「碇君にひどい事しないで」
「うっさいわね」
「レミ・・・」
2人の視線が交錯した。
レミの姿が消えた。
「へ?」
シンジが声を上げた。
「うおおおおりゃああああ!!」
上空からレミが落下してきた。
「ATフィールド」
レイがATフィールドを展開した。
「ぐええええ!!!!!」
レミはATフィールドにぶつかり自滅した。
「・・・・大丈夫?」
「あ、あんたがアタシを心配してくれるとはね」
「レミは私の妹だから」
レイはレミの頭を胸に引き寄せた。
「なんか微笑ましいな」
シンジは気付かなかったがレイラはふらふらと校舎に戻っていった。


放課後、屋上、
アスカがレイラの相談に乗っていた。
「・・・シンジ君の世界のレイさん・・・・戻ってきたの・・・」
「へ・じゃあ、あのレミってのが」
レイラは首を振った。
「違うの?」
「今、レイさんと、一つになってる」
「ふ〜ん」
「今まで、シンジ君は所詮は虚像を見てるだけだって考えてたのに・・・実像になってしまったの・・・」
「・・・・」
「シンジ君・・・シンジ君・・・」
「あのさ、あのレミってのは?」
「・・・・レイさんの妹さんの体に・・シンジ君の世界のアスカさんの魂が入ってる・・・」
「アタシの?」
「そうらしい・・・・・えぐっ・・・ひぐ・・どうして・・・どうして・・・シンジ君!シンジ君がレイさんが一番好きだって知ってるけど!レイさんより私の方がシンジ君のこと好きなのよ〜〜〜!!!!」
レイラは泣き叫んだ。
「・・・あのさ、レイラ・・・今日、家来る?」
「・・・・・・・ぐす・・・アスカの、家?」
「そ」


こうして、レイラはアスカの部屋に転がり込んだ。


シンジのマンション、
『じゃあ、レイラはアタシの部屋で止めるから』
「あ、うん、じゃあ宜しく」
『じゃあね』
シンジは電話を切った。
・・・
「レイラのこと・・・どうしたら良いんだろうか・・・」
シンジは耕一に報告書という形で送った。


夜、ネルフ職員寮、アスカの部屋、
アスカはレイラの気分を紛らわせる為に、ワインを飲ませた。
「うぐっ、ひぐっ、どうしてよ、どうして・・アスカさんとシンジ君は、ふぁふ、僅か半年の付き合いしかないのに、どうしてよ、えぐっ、私なんか・・・10年も、一緒に住んでるのに、ひっく・」
アスカは思いきり顔を引き攣らせていた。
「・・・まさか泣き上戸だとは・・・」
「えぐ、なんで?私の10年はそんなに軽いの?えぐっ、ひぐっ・・・ねぇ、アスカさん答えてぇよ、えぐ、えぐぅ、ねぇ」
レイラは泣きながらアスカに詰め寄っている。
「ま、まあ、落ち着きなさいよ、ねえ」
「答えてよ・・・えぐ、そんなに私って価値が無いの?ねぇ、ひぐっ、ひっく、ねぇ・・」
その後レイラが酔いつぶれるまでアスカは困り続けた。
確かに同じアスカだが自分ではない以上、答え様が無い


深夜、東京帝国グループ総本社ビル会長室、
耕一が戻ってきた。
「お帰りなさいませ」
ミユキが頭を下げた。
「アメリカは落とせなかった、かわりにカナダとメキシコを味方に引き込んだ」
「流石ですね」
世界地図上でカナダとメキシコが赤から青に変わった。
「勢力比は、フィフティー・フィフティーと言うところか・・・だが、大国の殆どが向こうというのはな・・・」
総会では五分の勝負、だが、理事会では勝てない。
「会長、シンジ様から報告書が」
「うむ」
耕一は報告書に目を通した。
「レイラか・・・・困ったな・・・・」
「はい」
「・・・・今暫く様子を見よう、これ以上悪化するようならすぐに私が動く」
「伝えます」
「うむ・・」
耕一はレイラの事を考えた。

あとがき
・・・・・済みません。レイラが更に可哀想な展開になっています。
スランプです。筆?が進みません。
困ってます。
そう言えば、これが通算70話目なんですね。(どれを1話と取るかにもよるが)
確かにいつの間にやら凄い数ですね。
感想メールが来る作品って、大体決まってるんですよね。
まあ、貰えるだけあり難いんですが、メインたる筈の、文明の章が非常に少ない。
これ凄く虚しかったりします。まあ、ね、分かり難いですよ。
本編に近い部分が多くて面白みも少ないですよ、でもね・・・・・
連絡事項としては、15000Hitはもうやりません。
ユウキの受難4(アスカ襲来編)は、20000Hitです。
あと、人気投票、作品のトップを取るのは、リリンか背徳逆行編か、非常に微妙ですね。
若干、背徳逆行編の方が有利ではありますが、このUPで、リリンがどこまで票を伸ばせるかに掛かっていますね。
早速、神威さんからタイトルの応募があり、一発で決めてしまいました。
神威さん又有り難う御座います。