7月5日(日曜日)、ネルフ本部、総司令執務室、 「碇、委員会から大至急の呼び出しが掛かったぞ」 「分かった」 人類補完委員会、 何故か席が一つ増えている。 (誰だ?) 6人の姿が浮かび上がった。 「な」 6人目は、碇家総帥碇泰蔵、ユイの実父で、超激烈な親子喧嘩をした親である。 「ゲンドウ君」 「・・・はい」 「碇家は、光家と隔絶した。そして、ネルフを全面的に支援することにした」 「有り難う御座います」 「碇、泰蔵殿を委員会に迎えた理由は分かるな」 「はい」 (強力な味方が出来た。) 碇家が支配している碇財閥は反東京帝国グループ系最大財閥である。 ユイの復活を望んでいる碇にとっては関わり合いたくない人物だったが、今は非常に利用価値がある。 「ゲンドウ君、あのユイの息子、シンジが支配するリリン、ましてや、そのシンジが乗る初号機なぞに負けてはならない」 「はい」 そして、碇財閥が抱える豊富な人材と、20兆円の予算がネルフの本部と支部にばらまかれた。 東京、東京帝国グループ総本社ビル会長室、 「くそ〜!あのくそ爺!委員会に手をかしおってからに!」 「耕一さん」 ルシアは嗜めた。 「あ、済みません・・・でも、ちょっと」 「確かに、碇財閥が動いたとすると厄介ですね」 「あの爺は、ユイ君を潰すために1兆円近くの金と8000人をこえるエージェントを使ったからな・・・今思えばユイ君の事故、爺のせいじゃないのか」 「むやみに疑っちゃいけませんよ」 「しかし、ルシアさん、あの爺はユイ君のことになると見境が無くなるんですよ・・・今回のことで碇財閥を傾けてでも動きますよ」 「それは困りましたね」 「ええ」 「碇食品の食パンは美味しいのに」 耕一は盛大にずっこけた。 (しかし・・・これからどうなるんだ?) シンジのマンション、泰蔵のことを聞いて、シンジは汗をかいていた。 「碇君、どうしたの?」 「ネルフに碇財閥がついた・・・」 ネルフ本部付属空港、 それぞれ四号機と伍号機を載せた輸送機が着陸した。 ネルフ本部、技術棟、 四号機と伍号機が運び込まれた。 「予定より3日も早いわね」 「何故、委員会は急いだのかしら?」 「さあ、まあありがたいことでしょ」 「で、シンクロ率はどう?」 「そうね、同時シンクロのことも考えると、ヒカリは取っておきたいわね、とすると、自動的にケンスケ君とマナか」 「戦力アップにつながるかしら?」 「起動してみないと何とも言えないわね」 こうして、6thがヒカリで参号機副操縦者、7thがケンスケで四号機操縦者、8thがマナで伍号機操縦者となった。 早速コアが用意されシンクロ実験が始まった。 アスカはシンクロ率を示しているパネルに目をやった。 ケンスケは21%、マナは26%ほどである。 「予想よりは良いわね、この分なら近い内に使い物になりそうよ」 「良いわね・・・エヴァぁを4体も独占か・・・どうかしら?世界征服でも出来るかしら?」 「リリンがいなければね」 「で、エヴァぁの量産計画は進んでいるの?」 「何でも上に動きがあったらしいわ、突然3兆円の予算と来月から300人の新人が来るわ」 「何があったのよ・・・」 「まだ詳しいことは聞いてないわ・・・ケンスケ君、嬉しいのは分かるけどもう少し集中して」 『了解』 ケンスケのシンクロ率が23%くらいに上がった。 「こんなものか・・・」 (シンジか・・・レイも・・・・アタシはいったいどうしたら) 「失礼します」 シンジ、レイ、レイラが入ってきた。 「おや、碇長官」 「リツコ博士、少し遅れはしましたが、チルドレン同士の友好を深めるために、パーティーを開こうと思いまして、それにネルフ側のチルドレンと、リツコ博士と伊吹さん、葛城さんに出席していただきたいのですが」 「しかし・・・」 「一応成人にはお酒を用意しますが」 「行きます!」 ただ酒が飲めれば別に敵対勢力の所にも行くらしい。 「「ミサト・・・」」 リツコやアスカが冷ややかな視線でミサトを見ている。 「・・・で、いつですか?」 リツコが尋ねた。 「来週の日曜日、私達のマンションで」 「リリン側の出席者は?」 「蘭子さんと飛龍博士です」 「分かりました。申請してみます。許可が下りればご連絡いたします。」 「では、今日の所は」 シンジ達は部屋を出ていった。 7月6日(月曜日)、ネルフ本部、第1発令所、 第四使徒シャムシェルがメインモニターに映し出されていた。 「目標は、第3新東京市に向けて一直線で向かってきます」 「参号機は?」 「まだ修復が完了してないわ」 「弐号機は?」 「多少装甲に問題はあるけど出せるわ」 「では、四号機並びに伍号機を援護に、弐号機を主力として、強羅絶対防衛戦に配置」 「「了解」」 「行ける?」 『いつでもどうぞ』 『うおおお、初陣だああ!!!』 『いいですよ』 「ケンスケ君、暴走しなきゃ良いけど」 「シンクロ率、弐号機78%、四号機36%ただ暴走気味です。伍号機29%です」 「良いわ、発進!!」 強羅絶対防衛戦、 3体のエヴァが弐号機を先頭に、使徒を待っていた。 「さあ、来なさい」 『うおおおお!!感激だあ!!!』 「ミサト、ケンスケを何とかしなさい、五月蠅くてやってられない」 『四号機からの回線、一方通行にするわ』 ケンスケの声が消えた。 使徒が接近してきて頭を上げた。 四号機と伍号機がパレットライフルを斉射した。 「アスカ、行くわよ」 弐号機は使徒に向かって跳躍した。 何かが光った。 「きゃああああ!!!!!」 弐号機の腹部を使徒の触手が貫いていた。 そのまま使徒は弐号機を、四号機伍号機に投げつけ、3体纏めて沈黙させた。 アスカは意識不明、高いシンクロ率が仇になった。 ネルフ本部、第1発令所、 ミサトは背後からNN兵器並の破壊力がありそうな視線を感じている。 (振り向いては駄目) 「リリンから作戦権の譲渡要請が来ています」 「葛城2尉、リリンに作戦権を譲渡しろ」 (降格か!!!!!) 第3新東京市、 初号機が射出された。 (碇君と一つになる感じ、とてもとても気持ちがいい) レイだけでなくシンジの方も気持ちよさそうであり、レイはその事に気付き、嬉しくなって笑みを浮かべた。 「行こうか、アスカの分も返さないとな」 初号機は、使徒に接近した。 (綾波) (うん) レイはATフィールドを展開した。 ATフィールドがほぼ一方的にシャムシェルのATフィールドを消失させた。 「はあああ!!」 初号機は、ATランスを作り出し、使徒に投げつけ、使徒を山に突き刺した。 (碇君) (行くよ) 初号機はプログソードを取り、使徒のコアを攻撃し様としたが、警告が表示された。 「何!?」 シンジは攻撃を止め一旦距離を取った。 「・・子供・・」 シャムシェルの近くに小さな女の子が二人蹲っている。 「・・シャムシェル戦・・呪われてるのか?」 レイの中に映像が流れ込んだ。 『シンジ君良い?』 ミサトの声である。 「・・あ、はい」 『敵のATフィールドを中和しつつパレットの一斉射、練習通り大丈夫ね?』 今度はリツコ。 「はい」 『エヴァンゲリオン初号機発進!!』 射出され、兵装ビルから地上に出た。 眼前のシャムシェルは空中に浮いている。 使徒は体を起こした。 初号機は使徒に向けてパレットガンを撃った。使徒は見る見る弾煙に隠れて見えなくなったがまだ撃ち続けた。 『バカ!敵が』 ミサトが叫ぶのと同時に、煙の中から2本の触手が伸びて来て吹っ飛ばされた。使徒が触手を振り回しながら近付いてくる。。 (また・・・これは何?) 「うっ、あ、ああ」 パレットガンは真っ二つになっている。 使徒の次の攻撃はなんとかかわしたが、直撃したビルが切り刻まれ吹っ飛んだ。更に2回続けてかわした。 『アンビリカルケーブル断線!』 アンビリカルケーブルを切られた。 『シンジ君早く倒さないとヤバイわ。』 初号機の足が触手に掴まれ振り上げられて投げ飛ばされ丘の中腹に激突した。 「いたた、ん?」 初号機の丁度左手の指と指の間にびびりまくったトウジとケンスケが居た。 「ウッソー!」 『シンジ君!早く起きて!』 使徒が触手を振り下ろした。 『初号機活動限界まで後3分30秒』 「う、ぐ、ぐ・・・」 (・・呪われている・・こう言う事・・・) 『シンジ君其処の二人を一時エヴァに収容その後、一時退却、そして再出撃よ。』 『越権行為よ!葛城1尉』 『今の責任者は私です!』 『シンジ君!』 ミサトの指示通りホールドモードにしてエントリープラグを排出し、二人が乗り込んだ事を確認して通常モードに戻した。 何かリツコの叫び声も聞こえたような気もするが・・・ 初号機は使徒の腹部を蹴り上げ、立ち上がった。 『今よ、退却して!回収ルー』 初号機はプログナイフを装備した。 『!、何を考えてるの!!!』 「逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ」 「わああああああああ!!!!」 初号機は使徒に向かって突撃した。 使徒の触手が初号機の腹部を貫いたが、初号機はそのまま、プログナイフを使徒のコアに突き刺した。 「があああああああ!!わああああああああああ!!」 「おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」 使徒のコアが割れ、使徒の動きが止まり、続いて初号機も活動限界に達した。 (・・・碇君・・・貴方は使徒との戦い、これから起こる筈の戦いを経験しているのね・・) 初号機、 「綾波、二人をガードして」 「・・・了解・・・」 レイは無表情で答え、女の子の周りにATフィールドを展開した。 「はあああ!!!」 初号機はプログソードでシャムシェルに切りかかった。 シャムシェルは、その触手でガードしようとしたが、プログソードは触手を切断し、コアに直撃した。 高速振動する刃がコアを破壊していく、 数瞬後、コアは砕け散った。 戦闘終了後、リリンは、シャムシェルを直ちに解体し始めた。 コアは全て念入りに完全処分、他の部分はサンプルだけ回収し、残りは焼却などで処分を始めている。 ネルフ本部、技術棟、 「使徒の情報は、リリンが独占か・・・・」 ミサトがぼやいた。 「それがそうじゃないのよ」 リツコが返した。 「どういう意味?」 「これを見て」 リツコは、液体窒素で冷却されたボックスを開けた。 中には、使徒の各パーツのサンプルが試験管に入れられていた。 「これだけあれば、研究には十分、我々にも、分けてもらえたわね」 「リリンは太っ腹ね」 「リリンは、使徒の復活の可能性を0にするとの名目で、コアを完全に処分したわ」 「それが?」 「使徒の全てが詰まったコアはもっとも必要なサンプルな筈なのによ」 「ネルフに渡さないだけでしょ」 「それなら良いの、リリンもコアを手に入れていないのよ」 「どう言うこと?」 「分からない、まるで、コアが存在すれば何か拙いことが起こるような・・・」 「使徒の復活?」 「違うわ、そんな事じゃない・・・そんなことはあり得ないのよ・・・・」 SS機関を手に入れれば、或いは初号機の真の力を引き出せるかもしれない、だが、何故処分したのか、想像すら出来なかった。 リリン本部、会議室、 2人の保護された女の子が椅子に座っている。 二人とも済まなさそうに俯いている。 レイラが、入って来た。 「えっと、私は、皇レイラ、リリンの2佐なんだけど、貴女達は?」 「・・洞木ノゾミ、第3新東京市立第壱小学校5年1組学級委員です・・」 「・・鈴原ナツです・・」 「洞木?鈴原?」 聞き覚えがある苗字にレイラは小首を傾げて少し考えた。 ぽんっと掌を叩いた。 「あっ、成るほど、お兄さんとお姉さんの応援がしたかったんだね」 「・・ナツはそうですけど私は、連れ戻しに・・」 ナツは俯いた。 「私その気持ちわかるわ、私だってシンジ君やレイさんの応援発令所でしてたもん。でもね、戦場に出てきちゃ、邪魔になることがあるし危険なの、これからはこんな事はしない様にね」 「え?・・それだけですか?」 「ええ、送っていくわ」 レイラは笑顔で優しく言った。 リリン本部、展望室、 レイはジオフロントの中央にあるネルフ本部を見詰めた。 (・・・碇君はこれからの事を全て知っている・・・) (・・・タイムトラベラー・・・) (・・・私がどんな存在なのかも知っている・・・) (・・・地底湖での会話はその証拠・・・) (・・・彼は私が求めているものを知っている・・・) (・・・結局、碇君も、私を利用しようとしているだけ・・・・) レイは拳をぎゅっと握った。 そして、レイの瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。 ネルフ本部、総司令執務室、 シンジと蘭子が来ていた。 「一般市民の避難及び保護は、貴方達ネルフの責任でしたね」 シンジはそう切り出した。 「しかも、今回、問題を起こした二人はネルフ関係者の子供と来ている。」 碇は表情を変えないが、冬月は顔を顰めた。 「関係者の家族も御せない組織に、一般市民を御する事は不可能です」 「この事に関して御意見を頂きたいですね、碇司令」 蘭子は碇を名指しで指名した。 戦闘の分析から、二人の周りにはATフィールドが展開されていた事が判明している。 もし、初号機か、支援兵器、市街、二人、そのいずれかにダメージがあったのならば、リリンの作戦を批判も出来ただろうが、全くの無傷、ネルフの汚点のみが浮き上がっていた。 碇は返答を返そうにも返し様が無かった。 「・・・分かりました。以後、一般人の避難及び保護は我々リリンが担当致します。宜しいですね」 冬月の表情からは焦りが見える。 この避難保護の間に、各諜報関係者などを、捕まえ、取り調べていたのだ。 今後それが出来なくなるばかりか、下手をすれば、ネルフの諜報員が掴まり、場合によってはリリンに情報が流れる。 と言った、愚かな心配をしているのであろう。 「・・・問題無い・・・」 「分かりました。後で正式な書類を送りますので、承認は3日以内にお願いします。」 二人は立ち去った。 夜、シンジのマンション、レイの部屋、 今日は一人で寝ると言ったレイをシンジは不思議がっていたが、それを自立とでも取ったのか、快く了承した。 レイは一人で自分の布団で眠ろうとした。 だが、いつまでたっても、眠りにつく事が出来なかった。 「・・・・なぜ?」 「・・・・私は碇君を求めているの?」 レイは確かめる為に、シンジの部屋に向かった。 シンジは、安らかな寝息を立てて眠っている。 その寝顔を見ているとどこか穏やかな気持ちになる。 部屋の中に、青白い光が現れた。 「あなた誰?」 レイはそれが人だとでも感じ取ったようだ。 (・・・綾波レイ・・・そう呼ばれていた者・・・) 「それは私」 (・・・そう・・・今は・・・貴女が・・・綾波レイ・・・) 「貴女は一人目?」 (・・・いえ・・・強いて言うならば・・・3人目・・・) 「まだ2人目よ」 (・・・そう・・・そして・・・・碇君が・・・いる限り・・・2人目のまま・・・・) 「では貴女は何?」 (・・・時を越えた・・・貴女に・・・私の全てを・・・伝えるために・・・) 「どうするの?」 (・・・私に残された力・・・・私の記憶を・・・貴女にあげる・・・) 青白い光はレイの胸の中に入っていった。 膨大な情報と感情がレイの中に流れ込んでくる。 ・・・・ ・・・・ ・・・・ 「・・・碇君・・・貴方は、私を利用しようとしているのではなく、私そのものを必要としているのね・・・」 呟いたレイの表情から幸せを感じている事が手に取るように分かる。 「・・・有り難う・・・疑ってごめんなさい・・・」 レイは呟いた後、シンジのベッドに潜りこんだ。 シンジの暖かさが伝わってきてとても気持ち良い。 (・・・私達は、碇君を必要としているのね・・・) (・・・碇君・・・) レイは瞼を閉じ眠りに入った。
あとがき レイラが・・・可哀想・・・ 回帰レイとが登場しました。 トウジとヒカリの妹を救出しましたし、これから果たしてどうなるのでしょうか? ネルフ側も何やら増強した様子。次はラミエルです。