リリン

◆第3話

6月30日(火曜日)、東京、東京帝国グループ総本社ビル最高総司令室、
マップに、突然点が表示された。
『未確認潜航物体探知』
「どうした?」
「突然現れました」
「リリンと日本政府、国連に通達、念の為に、ネルフにも通達しろ」
「了解」
「・・恐らくは使徒だな」


東京帝国グループ総本社ビル会長室、
耕一は謎の潜行物体発見の報を聞いた。
「15年ぶりですね・・・」
「そうですね」
ルシアはソファーで自分の煎れた紅茶を啜っている。
「第参使徒サキエル、自衛隊の出番か・・・あまり痛手は食らってほしくないのだが・・・」


長野県、第2新東京市、新千代田区、首相官邸、
竹下内閣総理大臣が閣僚を引き連れ廊下を歩いていた。
秘書官の一人が走ってやって来た。
「首相!正体不明の潜航物体が日本南海で!」
一行は司令室に向かった。
マップに、表示されている。
「正体は?」
「依然不明です」
「むむむ、15年前の再来か、リリンとネルフは知っているんだろうな」
「はい」
たっぷり個人資産を搾り取られた竹下は、リリンが役に立たなかったら何を言ってやろうかと考えている。


第2新東京市、中央区、国際連合本部ビル、
事務次官が陣頭指揮を取っていた。
「目標は使徒の可能性がある。今後、これ以上ネルフに大きな顔をされない為にも、必ずや我々で阻止せねばならない」
名目上は、国際連合の一機関に過ぎないネルフだが、実質国際連合最高決定機関である人類補完委員会直属の特務機関である為、国連上部の意思を蔑ろにしている点がある。
「はい!」
「3自衛隊全てを第3種警戒態勢に」
「は!」
「太平洋艦隊は?」
「現在、ハワイ沖海域です」
「そうか」


第3新東京市、ネルフ本部、第1発令所
「パターン、ブルー!」
使徒と識別された。
「各関係機関に通告」
「はい」
青葉が各回線を開いた。
「予想進路です」
日向が割り出した予想進路をメインモニターに映し出した。


リリン本部、発令所、
「予定通りですね。」
蘭子が呟いた。
「作戦指揮権はどうなっていますか?」
「現在はUNです。まあ直ぐに、ネルフに移譲されると思いますが」
「ネルフのエヴァは?」
「大丈夫です。2機とも動かせます。」
零号機の整備はゆっくり行っていた。同時に改造もうけるので、完成は7月末になる。
「初号機は?」
「長官は学校ですが」
「準備を進めなさい」
「はい」


第3新東京市立第壱中学校、
アスカ、トウジ、ヒカリ、ケンスケ、マナの携帯電話が同時に鳴った。
「何!非常召集!?」
「サキエルだよ」
シンジが回答を言う。
「サキエルって何よ!」
「ああ、第参使徒、」
ネルフの専用車が昇降口に横付けされた。
「行くわよ!!」
5人は駆け出して・・・行かなかった。
「あんた、何で行かないの?」
「どうして行かなきゃ行けないの?」
「はあぁ!!??」
「作戦指揮権は、ネルフにある。僕たちの出撃は、ネルフが協力を要請してきた場合または、ネルフが敗北または作戦続行が不能の状態に陥り、作戦指揮権がリリンに譲渡された場合だけど」
「そ、そうね」
アスカは駆け出していった。
「あ、先生、授業続けて下さい」
「あ・・・うむ・・・」


ネルフ本部、第1発令所、
「使徒は!!?」
アスカが叫びながら走り込んできた。
他の者は途中で置いていかれた。
「今、この位置よ」
作戦マップに点が表示されている。
「マギの予測では、第3新東京市到達は、明日、正午、よって、これより、チルドレン及び候補生は、非常待機体制に入ってもらいます」


7月1日(水曜日)、昼前、
国際連合第2方面軍、各自衛隊の将軍がやって来た。
「ふん、これが、ネルフか、金をかけているだけのことはある」
「まあ、役に立てばだがな」
「北海道から九州までの3自衛隊が集結しているんだ。これだけの軍隊が動くような事は、太平洋戦争以来だ」
「そう、太平洋戦争以来の総出撃だ。」
「実際数はともかくも戦力だけなら当時の大日本帝国軍を遥かに凌駕する戦力だ」
「ついた早々厭味ですかな」
「まあ、君達の出番は無い、そこで大人しく見ていてくれ」
「司令塔に席を用意しました」
「うむ。」
3人は司令塔に上った。
「各部隊との回線開きました」
サブモニターに自衛隊の各部隊の情報が浮かび上がった。
3D作戦マップに部隊と使徒が映し出された。
「目標は海底を移動中です。上陸まで74分です。」
「目標が海面に姿を表した瞬間から、総攻撃開始」
「各部隊に通告完了」
「海上自衛隊第1艦隊及び第2艦隊作戦ポイントに移動開始。」
「陸上自衛隊各師団配置完了」
「航空自衛隊各航空部隊もいつでも出撃可能です」
「それで良い」
碇はパイプ椅子に座り、その横に冬月が立っている。
「愚かな奴らだ」
「無知なだけだ。と言っても、私が彼ならばもう少しましな事を言うがな」
そうして時間が流れた。
「目標海面に出ます」
メインモニターに人型の使徒が現れた。
「作戦開始」
「戦車部隊一斉射撃」
「航空編隊対置ミサイル発射開始」
「各護衛艦ミサイル射撃開始」
凄まじい集中攻撃が続いている。
「目標微速で海岸に進行中」
「信じられん」
「15年ぶりだな」
「ああ、間違いなく使徒だ」
「間も無く上陸します」
そして使徒が上陸し戦車部隊が踏み潰され爆発していく。
「少々の味方の被害は構わん!撃てぇ!!」
戦車部隊は味方の攻撃も被弾している。
「可哀想にな」
冬月が呟いた。
使徒は戦車部隊を振り切り国道を第3新東京市に向けて進行していた。
ミサイルが次々に直撃した。
使徒は手から光を槍を出して、VTOL機を貫いた。
「ほう、漸く攻撃をしたな」
「敵としてみたと言うよりは、障害物としてみるようになっただけだ」
「直撃のはずだぞ!!」
「バカな!!」
将軍の一人がペンをへし折った。
「出し惜しみは無しだ!!すべてあげろ!」
「くそっ!何故だ!」
「やはりATフィールドかね」
「ああ、ATフィールドの前にはいかなる攻撃も無意味だ」
冬月の言葉に碇が返した。
「NN地雷使用準備」
軍隊が使徒から離れた。
そして光に包まれた。
「はははは!!どうだね!我々の切り札!NN兵器の破壊力は!」
「現在電波障害のため目標確認できません」
「あの爆発だ、蹴りはついている」
「爆心地に移動物体確認!!」
「光学回復します」
画面には使徒が動いている様子が映っていた。
「損傷率は、約2%、殆ど無駄でしたね」
「ばかな・・・・町一つ犠牲にしたんだぞ・・・」
将軍達は脱力した。
電話が入った。
「はい」
「碇君、本部からの通告だ。これより、作戦の全権は君たちネルフに委譲された。しかし、君達ならば勝てるのかね?」
碇は立ち上がって司令塔の将軍達を見た。
「ご心配なく、その為のネルフです」
・・・
「目標、50分で第3新東京市に到達します」
「葛城1尉、」
「はい、アスカは弐号機に搭乗、トウジ君と洞木さんは参号機に、弐号機は通常シンクロ、参号機は同時シンクロで起動」
「「「了解」」」
「各支援兵器臨戦態勢へ」
「了解」
「目標、強羅絶対防衛戦で止めるわよ、作戦ポイントも強羅絶対防衛戦」
「了解」
「強羅絶対防衛戦まで29分です」


リリン本部待機室、
シンジとレイはソファーに横になって寝ていた。
レイラは紅茶の煎れ方の練習中。


強羅絶対防衛戦、弐号機
数々の支援兵器の中、弐号機と参号機がパレットガンを構えて使徒を待っていた。
『目標、間もなく視界に入ります。』
山の間から使徒が現れた。
長距離砲が一斉に火を噴いた。
全てATフィールドに弾かれている。
『良いわね、中和距離まで接近したら斉射よ』
『リリンから支援攻撃の許可を求めていますが』
『支援攻撃?現状においてネルフは援護を必要とする状況にはない、よって断って』
『はい』
「来たわね」
使徒はもうすぐ中和距離に入る。
「ミスんないでよ」
『わあっとるわ!』
『撃てぇ!!』
弐号機参号機その他の支援兵器は一斉に攻撃を仕掛けた。
一瞬にして使徒は爆煙に隠れた。
「くるっ!」
弐号機は飛び退いた。
2本の光が煙の中から飛び出した。
1本は空を切り、ビルが蒸発したが、もう片方は、参号機の腹部を貫通した。
「ヒカリ!くっ」
弐号機はバクテンで第2射を交わした。
『参号機生命維持に支障発生!エントリープラグ射出!!』
『回収班急行』
参号機のエントリープラグが射出された。
弐号機は、ビルの陰に隠れて第3射を凌いだ。
「ヒカリの分、しっかり返させてもら・・・あれ」
使徒はいなかった。
『使徒は第3新東京市に向かったわ、追って!!』
「くっ」
『リリンが出撃許可を求めています!』
『出撃許可!?ふざけんじゃないわよ!』
「くそ」
弐号機と使徒との間隔はだいぶ開いている。
「あの使徒こんなに速かったっけ?」
差は縮まっているが間に合うかどうかは微妙である。
『再度出撃許可を求めています』
『アスカ!』
「第3新東京市の防衛機能を全開にして足止めして!間に合わない!!」
『防衛機能全開、足止めして!!』
『了解』
無数のミサイルや砲弾が使徒に浴びせかけられた。
『使徒の移動速度変わりません!ATフィールドに全て遮断されています』
『再びリリンが出撃許可を求めています』
『くっ』
「くそおおおお!!!」
弐号機は思い切り飛んだ、そして、パレットガンを使徒に投げつけた。
パレットガンは音速を遙かに超え衝撃波で周囲を破壊しながら使徒に着弾した。
ATフィールドは破れなかったが、使徒は吹っ飛びビル群を薙ぎ倒した。
弐号機は使徒が再び動き出す前に接近した。
『日本政府が第3新東京市防衛のため特令A−44を発令し、リリンに出撃要請をしました!!』
『何ですって!!』
『初号機射出』
使徒は手から光の槍を出して、弐号機の腹部を貫いた。
「きゃあああああ!!!!!」
リリンの発射した質量ミサイルが使徒にぶつかり使徒が吹っ飛ばされた。
破れたATフィールドの残骸が一瞬見えた。
「ぐ、くそ!!」
弐号機は起きあがった。
「行くわよ!」


初号機、
「綾波、手伝ってね」
レイは頷いた。
(碇君を感じる・・・私の中に入ってくる・・・気持ちいい・・・)
初号機は地上に出た。
初号機はプログソードを手に取った。
「行くよ」
初号機は使徒の両腕を切り落とした。
使徒は目から2本のビームを放った。
「ATフィールド展開」
レイがATフィールドを展開した。
ビームはATフィールドに弾かれ明後日の方向に飛んでいった。
初号機は使徒の顔のような部分を切断した。
これで使徒は攻撃方法は体当たりと自爆くらいしか残っていない。
「はい、惣流さん」
初号機は使徒を弐号機の方に投げ飛ばした。
『うおおおおおお!!!』
弐号機のATフィールドを纏った鉄拳が使徒のコアとその付近を完全に貫通した。


作戦終了後、ネルフ本部、
トウジとヒカリはネルフ中央病院に収容され、アスカも検査のため中央病院に向かった。


会議室、
第参使徒戦の映像を見ていた。
「さて、敵の能力が未知数であったことから作戦上のミスは大目に見るとして、問題は又してもリリンの行動よ」
「どこが?」
ミサトが尋ねた。
「ここ、初号機は、使徒の両腕を切り落としたわ、そして、リリンは戦利品として、この腕を本部に持ち帰ったわ。対してネルフの戦利品はコアなしの胴体、どっちの方が価値があるか、使徒の攻撃方法を見れば明らかね」
「何?又、リリンの思惑通りになったって訳?」
「そうね、それと、初号機の能力、まず、腕を切った処ね、この段階で、ATフィールドは中和されている。当然初号機のATフィールドも中和されているはずだけれども、次のビームをATフィールドで弾いている。これは、どう言う事か?シンクロ率から考えれば、中和されないほどの強力なATフィールドを展開していたとも考えられる、でも、私は、2個のATフィールドを展開していた可能性を支持するわ。2人が別々にATフィールドを展開していたの」
「それがどうしたの?」
「恐らくは、防御のATフィールドを展開したのがレイ、レイは、自分を殺して主操縦者にあわせたわけではない、私が考えていた同時シンクロとは別物よ、2人が別々のことを考えれば、アスカとトウジ君のようになる筈なのに」
「どう言う事?」
「それはこれから分析するの・・・」


7月2日(木曜日)、国際連合、人類補完委員会、
「碇君、ネルフとエヴァもう少し上手く使えんのかね」
「君らが初陣で壊した弐号機と参号機の修理代に兵装ビルの補修・・・国が一つ傾くよ」
「玩具に金を注ぎ込むのもいいが肝心な事を忘れちゃ困る」
「君の仕事はそれだけではないだろう」
「左様、人類補完計画、我々にとってこの計画こそがこの絶望的状況下における唯一の希望なのだ」
「承知しております」
「明らかになってしまった使徒とエヴァの存在、どうするつもりかね」
「その件に関してはお任せを、既に対処済みです」
「いずれにせよ、使徒再来による計画の遅延は認められない」
「はい」
「では、後は委員会の仕事だ」
4人の委員が消えた。
「碇、期待しておるぞ」
キールの姿が消えた。
「分かっておりますとも、全てはゼーレのシナリオ通りに」
碇はにやりと口元を歪ませた。


ネルフ中央病院、
シンジ、レイ、レイラの3人はお見舞いに来ていた。
アスカの病室に入った。
「は?何で来たの?」
「お見舞いだけど・・・迷惑だったかな?」
「迷惑じゃないけど・・・検査入院よ」
「・・・・」
シンジは黙ってしまった。
「シンジ君ドジ〜」
「うう〜」
やっぱり僕って馬鹿シンジなのかなとか考えている。
「あんた、どうしてアタシに花を持たせたの?」
「ん?それは、ネルフとリリンの立場上の問題で、後々拗れるとやっかいだからって言うのもあるけど、洞木さんを傷つけたサキエル、惣流さんが倒すのが一番良いと思ったから」
「・・・あんた、アタシのこと、アスカって呼びなさい、アタシはシンジって呼ぶから」
「うん、分かったよアスカ」
ものすごく自然に出た。
「・・・シンジ、あんた・・・慣れてない?」
「ん?そんなことないと思うけど」
「そうだ、洞木さんと鈴原君のお見舞い終わったら、湖でボートに乗らない?」
「ボート?」
「そ」


そして、お見舞いが終わったあと4人は、地底湖でボートに乗った。
2人乗りで、シンジ・レイペアとアスカ・レイラペアに分かれた。
アスカ・レイラペア。
「あの2人・・・仲良いわね」
「ホント、10年の付き合いの私より仲良くて妬いてしまいます」
「10年?」
「シンジ君がお父さんに引き取られてからの付き合いですから・・・」
「あいつのこと色々と教えて」
「ええ、良いですよ」
レイラは微笑んだ。


シンジ・レイペア、
「綾波・・・ジオフロントの人工の自然だって、立派なもんでしょ」
「・・・ええ・・・」
レイはゆっくりと肯定した。
「で、人工の自然は天然の自然と比べて劣るのかな?」
「・・・・分からない・・・」
「僕は劣らないと思う・・・どっちも素敵だし、何よりも生きている。人工であっても天然であっても何も変わらないよ」
それは勿論、ジオフロントの自然を表したのではなく、レイの事を表したのである。
「・・・そう?・・・」
「そうだよ」
「まあ、あのフリゲートは邪魔だけどね」
ネルフのフリゲートが湖の端の方に浮いていた。


深夜、シンジのマンション、レイの部屋、
(眠れない・・・・何故?)
レイはベッドを抜け出して部屋を出て、シンジの部屋に入った。
シンジは安らかな寝息をたてて寝ている。
「碇君・・・」
レイはシンジのベッドに潜り込んでシンジに抱き付いた。
「碇君、あったかい」
(もっと感じたい)
レイは服を脱いで裸になって抱き付いた。
(・・これで寝られる・・・)
(・・・・碇君・・・・・)
レイはシンジの暖かさを全身で感じながら安らかな眠りについた。

あとがき
一応、連載スタートします。
感想は、メールでも掲示板でも構いません。待ってます。
質問は、メールでお願いします。答えられる範囲で答えます。
人気投票の方もお願いします。
次回は、アスカが真実に触れます。
そして、模擬戦。リツコは松代のマギ2をバックアップに使うというイカサマを仕掛けて勝負を挑んだが、相手が悪かった。
ゼーレは水面下で耕一とシンジ暗殺に向け動き出します。
純粋に自らの心を表現するレイ、それを受け入れるシンジ、だが、それは、レイラを苦しめる事になります。