リリン

◆第1話

2005年にシンジはサードインパクトから回帰した。
シンジは、碇家の本家である光家の最高位に立ち、世界経済の頂点に君臨し、そして、碇家と絶縁状態であった母碇ユイの実質的保護者であった皇耕一の元を訪れ全てを打ち明けた。
耕一は様々な検査や調査からシンジの証言が真実であると判断し、シンジを保護下に置いた。


2010年、東京、
耕一が総会長として君臨する東京帝国グループによって凄まじい早さで再建が進められている。
そして、着工中の東京帝国グループ総本社ビル、その最上階、
シンジと耕一が東京を見下ろしていた。
耕一は未だに20代のようにも見える。その妻ルシアも同様である。
流石に気になったシンジが尋ねてみると、宇宙人ですからとルシアにはぐらかされた。
「シンジ、ゲヒルンが解体され、特務機関ネルフが結成された」
シンジは漸く来たかと言った顔をした。
「・・赤木、ナオコ博士は?」
「自殺だ。表向きはな、」
「助かりましたか?」
「ああ、赤木博士と共にサンプルも手に入れた。」
「では、」
「ああ、特務機関リリンを結成する。国連への交渉も既に済んでいる」
「ありがとう御座います・・・しかし、リリンとは・・・」
「皮肉だよ」
「しかし、気付かれては拙いんじゃないですか?」
「気付いても何にも出来んよ・・・処で、レイラはどうだ?」
耕一とその妻のルシアとの間に産まれた皇レイラ、9歳、シンジと同い年?である。
「いい子ですよ」
「いや・・・そう言う意味で言ったのでは・・・」
「分かっています、でも」
「ああ、綾波レイ君か」
「はい」
「まだ掴めていない」
「そうですか」
シンジの表情にはかげりが見えた。


2015年、6月11日(木曜日)、第3新東京市、ジオフロント、
中央に、ピラミッド状の国際連合の特務機関ネルフの本部施設、端に、特に変哲はない超高層ビル群、東京帝国グループの特務機関リリンの本部施設がある。


リリン本部発令所、
慣れているシンジと図面を見て気に入った耕一の意見からネルフ本部の発令所を真似ている。
こちらの方が新しい分色々と改良はされているが、
そして、マギの替わりに入っているのは、東京帝国グループが総力を挙げて開発したスーパーコンピューター、東京システム、マギの応用版で、人格移植OSである。
開発には赤木ナオコが携わっていて、裏の名前はMAGI−0。
司令塔に耕一の腹心たる主席秘書官光蘭子が座っている。
美しい金の長髪を持つ美女で、年は、20代に見える。耕一の代理を務めるだけの能力を持ち、軍事面での実績はないが相当の物であるとの噂。
蘭子は、特務機関リリン総司令官2将に今日就任した。
そして、その横に東京帝国グループ所属の東京軍最高司令官の榊原が立っている。
榊原の軍事面での能力はずば抜けており、東洋の悪魔の異名を持っている。
榊原は副司令官将補に着任した。
他、技術部部長、飛龍ジュンコ2佐、正体赤木ナオコ、整形し、別人になっている。
作戦部部長、大空ハルカ3佐、元東京軍第1方面軍団軍団長である。
発令所内を見渡すと、戦略自衛隊の幹部の方々もいる。
加賀タケル防衛省事務次官まで来ている。
ずいぶん日本政府や戦略自衛隊と仲がいいようだ。
そして、シンジが発令所内に入ってきた。
みんなが頭を下げた。
「いや、そんな事しなくても良いですよ」
シンジは笑みを浮かべながら言った。
碇シンジ特務機関リリン長官1将だそうだ。
シンジはメインフロアの中央に立った。
「皆さん、人類の敵となる使徒の襲来が近付いてきました。我々リリンの責務を再確認しましょう。それは、人類の平和を守ることです。その為になら、我々は喜んで悪人や卑怯者の扱いを受けましょう。人類の未来のために」
「碇長官、」
司令塔から蘭子の声が降ってきた。
「シンジで結構だっていつも言ってるじゃないですか」
「・・・・いえ、ネルフとの会談の件なので」
「あ、そうですか、何時ですか?」
「急なことなのですが明日です」
「う〜ん、じゃあ、通学は、明後日からですね」


一方、ネルフ本部、技術棟、
チルドレン及びチルドレン候補生がリツコの説明を受けていた。
1st、綾波レイ3尉、零号機
2ed、惣流アスカツェッペリン3尉、弐号機
3rdはリリスにより発見された碇シンジ
4th、鈴原トウジ3尉、参号機
5thもリリスにより発見された皇レイラ
以下、上位候補生、
相田ケンスケ、洞木ヒカリ、霧島マナ、
「良い?明日、リリンとの会談があるわ、その後でチルドレン同士の対面があるの」
「へん、エヴァも持ってないのにチルドレンだけいても何の役にも立たないでしょうが」
「そうね、でも、貴女達に負けは許されないのよ、もし、チルドレンがエヴァに乗れなくなるような負傷をした場合、ネルフは、リリンの選抜したチルドレンをエヴァに乗せなくてはならなくなるのよ、」
「俺達候補生がいるじゃないですか」
ケンスケが反論した。勿論自分が乗りたいからだが、
「そうよ、それがネルフの言い分、でも国連の言い分は違うでしょうね、リリンの親会社の東京帝国グループからかなりの予算をもらっているからね」
「ま、でも負けなきゃ良いんでしょ、アタシに任せとけば万事大丈夫よ」
アスカが胸を張って言った。
「そうよ」


6月12日(金曜日)、ネルフ本部大会議室、
ネルフとリリンの出席メンバーがそれぞれ向かい合っている。
「ん?なぜ、シンジがその席にいる?」
碇は正面に座っているシンジに疑問を持った。
「特務機関ネルフ総司令碇ゲンドウ1将、私は、サードチルドレンですが、特務機関リリン長官も務めていて、階級も貴方と同じ1将ですよ」
碇はいつも通りポーカーフェイス。
「そうか・・・」
蘭子が立ち上がった。
「ネルフでは、稼働中のエヴァの他に凍結中のエヴァ初号機が存在し、チルドレンは不足しています。一方、リリンでは、2名のチルドレンがいますが、エヴァは保有していません。そこで、エヴァ初号機のリリンへの売却を求めます」
ネルフ側出席者達は動揺を隠せないようである。
「いかほどかな?」
冬月が尋ねた。
「20兆円です」
「「「「何!!」」」」
複数名が叫んだ。
(まさか・・・初号機の秘密を知っているのか?)
(そんな筈はない、赤木博士ですらしりえないはずだ)
(正気かしら?いくら初号機が特別と言っても、そこまでの予算を出すほどの価値はないはず)
(20兆か〜、エビチュどれくらい買えるかな〜)
「尚、既にこの件は国際連合最高決定機関の委任を受けています。全ての判断は碇司令、貴方に任されています。」
「その額の説明を求める」
動揺を全く出さずに碇は尋ねた。
「簡単な話です。我々リリンは対使徒戦に於いて、従の立場にあります。使徒戦で被害が出るのは、主の立場にあるネルフです。相当のプールがなければ第3新東京市の兵装の修復も難しくなります。それは、リリンにとっても非常に拙い物です。人類の平和を守るための予算を惜しみ、結果人類が滅亡しては本末転倒です。そこで、我々リリンよりも効果的に予算を使える立場のネルフにプールを分けると言っているのです。勿論、正しく使っていただけるとは思いますが、念のために、会計監査も受け入れてくれることを望みます。」
「ふむ・・・・」
碇は考えた。
事実、ネルフの財政が火の車であることは有名であった。理由は、E計画以外の大きな計画に金を使っているからなのだが、それはネルフ側では、3名しか知らないことである。
「良かろう、エヴァ初号機は、リリンに譲渡しよう」
碇には、たとえ会計監査に入られても、20兆円は無理としても他の部分の予算の使い道等はダミーで誤魔化しきる自信があったし、結局の処、初号機を覚醒させるにはシンジが乗らないことには始まらないと言う事も考えていた。
いまいち裏の目的が読めないが、どうせ無いも出来ないだろうと言う事でばっさりその考えを切り捨てた。
「有り難う御座います」
「次はこちらから言わせてもらえるかな」
冬月が発言を求めた。
「どうぞ」
蘭子は座った。
「まず、対使徒戦における優先権は我々ネルフにある、これはいいかね」
「勿論です」
蘭子は即答した。
「宜しい、では、君達リリンは初号機を保有することになった。この時点で、君達リリンにはチルドレンが1人空いている状態だな。しかし、我々ネルフにもチルドレンに準ずる訓練を受けている上位候補生が3人いる。今後、エヴァの新造、配置、もしくはチルドレンの負傷等によりチルドレンが不足した場合、作戦指揮や、現場の士気を考え、リリン側のチルドレンを使うのではなく、ネルフ側の候補生をチルドレンに昇格し使用する。これはいいかね?」
蘭子はシンジを見た。
シンジは軽く頷いた。
「宜しいでしょう。但し、そのままでは、リリンも、チルドレンを余らしたままになります。これは、明らかに勿体ないことです。いずれ、又エヴァの売却を要求すると思いますが、これに関しては?」
「そうだな、時と場合によると言ったところだな」
冬月は最も無難な答えをした。勿論、そんな事に成る筈は無いとの自信があったからだが、
「そうですね、そうでしょうね」
「理解してくれて嬉しい」


そして、チルドレンの対面である。
初号機が20兆円でリリンに売却されたことは既に伝わっている。
「サードチルドレンの碇シンジです」
シンジが握手を求めた。
「セカンドチルドレンの惣流アスカツェッペリン3尉よ」
アスカは握手はせずにシンジを睨み付けている。
「あ、あれ?なんか怒らせちゃったかな?」
「多分、ライバルの登場に戸惑っているのよ」
レイラがシンジに言った。
「どうしてエヴァを動かしてない奴がライバルなのよ!」
「あれ?違うんですか?」
「どうでも良いけどあんたは?」
「あ、フィフスチルドレンの皇レイラです」
「ふ〜ん」
アスカはレイラを見た。
「あの、惣流さん・・・他の人も紹介してほしいんだけど」
「ふん、じゃあ紹介するわよ、その青い髪のいっつも無表情のがファーストチルドレンの綾波レイ、黒ジャージのバカがフォースチルドレンの鈴原トウジ」
「なんやてぇ!」
「どこが違うのよ!そのまんまでしょ!」
「このくそアマァ!!」
「2人とも止めろよ」
「鈴原!アスカも」
ケンスケとヒカリが止めに入った。
「私は、霧島マナ、宜しくね」
4人がそうこうしている内にマナが自己紹介をした。
「宜しく」
「宜しくね」
「こら!マナ!何一人で先走ってるのよ!・・・あれ?」
既にシンジはレイの前に移動していた。
「綾波、これから宜しくね」
シンジは最高級の笑みを浮かべた。
その笑みの破壊力はレイの氷結した心をも溶かし、少し赤くなって俯いた。
「・・・宜しく・・・・」
信じられない事態にシンジ、レイ、レイラを除く5名が凍った。


6月13日(土曜日)、第3新東京市立第壱中学校2−A、
「皆さん、今日は転校生を紹介します」
「2人とも入ってきなさい」
シンジとレイラが入ってきた。
「碇シンジです。東京からやってきました。」
「皇レイラです。シンジ君と同じく東京からやってきました。」
このクラスは、チルドレンと候補生ばかりである。
候補生は、2段階に分けられ、準チルドレンの扱いを受けている上位候補生と未選抜の候補生達である。
どうやら全員候補生であることは知っており、ほぼ全員チルドレンに憧れているようだ。ただ、年中ジャージを着ている(アスカ達もプラグスーツとジャージ以外を見た事は無い・・・どっちも黒)トウジがその印象を良くはしていないことは確かである。
シンジとレイラがリリンのチルドレンであることは既に伝わっていた。初号機を20兆円で買い取ったことも。
「碇君の席は・・・綾波さんの横に座って下さい、皇さんは、その後ろに」
「「はい」」
2人は席に着いた。
「宜しくね」
シンジの最高級の笑みに、レイは又少し赤くなった。
シンジの笑みに男女を問わず魅せられた。
前を向いたシンジは黒板の右側に書かれていた曜日が土曜日であることに気付いた。
「あ・・・」
「シンジ君、どうしたの?」
レイラが後ろから尋ねてきた。
「お弁当・・・どうしよう」
「シンジ君のドジ〜」
クラスから笑いがこぼれた。
みんないったいどんなとんでもない奴かと思っていたが、ずいぶん人間味がある事が分かり、シンジの魅力に引きつけられ始めていた。


放課後、
「綾波、ちょっと良いかな?」
「何?」
「屋上で話したいことがあるんだけど」
「・・・・・構わないわ」
そして、屋上に2人は移動した。


屋上、
物陰に隠れて、アスカとケンスケとマナが2人を見ていた。
トウジがいると気付かれると言う理由で、トウジはアスカによって暫く動けない状態にされ、保健室にいる。
「あのさ、明日、零号機の起動実験だよね」
「・・・ええ」
「気をつけて」
「何故?」
「何となく嫌な気がするんだ」
「嫌な気?」
「うん」
会話はそれだけだった。
レイは校舎に戻っていった。
「あれだけ?」
「つまらないな〜」
「あいつ、何で起動実験のこと知ってたの?」
アスカが疑問を口にした。
「機密事項がだだ漏れだな・・・」
「でも、シンジ君はなんであんな事を言ったのかな?」
「・・・・わかんないわ」


6月14日(日曜日)、ネルフ本部起動実験室、
「これより、起動実験を始める」
碇の言葉で、起動実験が始まった。
暫くして、榊原が入ってきた。
「これは、榊原副司令、何か?」
リツコが尋ねた。
「いえ、家の長官がどうも心配性でして、」
「心配性?」
「何かあっては行けないからと、おっしゃいましてね、」
「はあ・・・」
「起動実験で危険性は高くないことくらい知っておられるはずなのですがね、行動理由が分からないところは会長に似ましたね」
「そうなんですか・・・」
「先輩、もうすぐ絶対境界線を」
突然パルスが反転した。
「何事ですか!」
「いけない!」
零号機が拘束具を引きちぎった。
「実験中止!!」
すぐにアンビリカルケーブルが外された。
「完全停止まで32秒!」
零号機は、拳を振り上げ司令室に鉄拳をたたき込んだ。特殊装甲のガラスに無数のひびが入った。
「くっ」
「長官の悪い予感は当たりましたな、」
「オートイジェクション作動!!!」
「いかん!!!」
エントリープラグが射出された。
零号機が暴れ狂う実験室に複数名の救護隊員が乗り込んだ。
「あれは!」
「家の救護班ですな、」
零号機に硬化ベークライトがかけられた。
エントリープラグは、ロケットの燃料が切れ落下を始めた。
救護隊は特殊ネットを広げた。


シンジは実験室に走り込んだ。
エントリープラグは、特殊ネットに受け止められた。
シンジは非常用ハッチを開けた。
「綾波!」
レイは頭を押さえながら起き上がった。
「何故、貴方がここにいるの?」
「悪い予感がするって言ったじゃないか、だから綾波を助けるために来たんだよ」
「何故?私が死んでも替わりはいるのに?」
「そんなこと言っちゃ駄目だよ、そんなこと言っちゃ」
シンジの顔が悲しそうな表情になっている。
「何故そんな顔をするの?」
「綾波は人間なんだよ、ネルフの人形じゃない」
(いえ、私は人形、人ではない物)
「碇長官、宜しいですか」
リツコの声である。
「あ、はい」
「あら?涙?」
シンジは涙を流していたようである。
「あ、これは、ちょっと昔のことを思い出しまして、恥ずかしいので秘密にして置いて下さい」
シンジは涙を拭いた。
「ええ」
リツコはエントリープラグの中を覗いた。


人類補完委員会、
「碇君、」
「分かっております」
「碇、貴様は何も分かっていない」
「先ほど、リリンからエヴァの売却要請があった。」
「売却要請?」
「左様、零号機並びに、ファーストチルドレン綾波レイの売却だよ」
「何ですと!!」
「それと引き替えに、リリンのチルドレン選抜の凍結、代金も10兆円と十分過ぎるほどだ」
「我々としては喜ばしいことなのだよ、試作機に過ぎない零号機とその専属パイロット位で量産型エヴァ2機分の予算を確保できる」
実を言うと、耕一と蘭子の二人組みに予算の不透明性、理事会の無視、ターミナルドグマの件、碇が、セカンドインパクトの前日に逃げ帰り、第1次セカンドインパクト調査団の団長だった事等を初めとして徹底的に責められ、何とか黙らす為の苦肉の策だった。
「し、しかし、零号機の損傷は軽微で、すぐに戦線に復帰が可能です。使徒襲来が近付いている今、初号機に続き、これ以上戦力を失うわけには」
「戦力?起動しない兵器が戦力か?笑わせるな」
「起動しないようなポンコツはリリンにくれてやる」
「これは決定事項なのだよ碇君」
碇は歯を噛み締めた。


ネルフ本部、作戦部、
レイにリリン移籍が説明された。
「リリンに移籍ですか」
「ええ」
「それは命令ですか?」
「・・・そうね」
「分かりました」
「レイ、あんたそれで良いわけ」
「命令だから」
「・・・ま、あんたならそう答えるでしょうね」
(私は、もう必要とされていないの・・・・用ずみなのね・・・・・)
誰にも分からなかったがレイは沈んでいた。


夜、ネルフ本部、ゲート、
ミサト、リツコ、レイ、アスカが立っている。
4人の前に、高級車が護衛の車を引き連れて止まった。
高級車から蘭子とシンジが降りてきた。
「綾波レイさん、宜しいですか?」
「・・はい」
「ではここにサインを」
蘭子は書類とボールペンを取り出した。
レイはボールペンを取り美しい字体でサインした。
「では、葛城1尉と赤木博士も」
2人は、サインをした。
「ファーストチルドレン綾波レイは特務機関リリン所属となりました。付きましては、綾波レイに対する無用の干渉その他はご遠慮願います」
「ええ」
ミサトが返答した。
シンジはIDカードを取り出した。
「綾波のためにも時々遊びに来て」
シンジはIDカードをアスカに手渡した。
アスカは目をパチクリさせている。
「リリン本部のIDカードだよ」
アスカは恐る恐る受け取った。
「どういう意図ですか?」
リツコが尋ねた。
「綾波の精神状態の維持とチルドレン同士の交流のためです。何か問題でもありましたか?」
「いえ、ただ、真意を測り損ねた物で」
「そうですか、他意はありませんが」
「リリンは3人のチルドレンを保有しています。対してネルフは2人。これ以上引き抜かれては困るのですが」
「それは、ネルフが使徒戦に於いてよっぽどの失態をしでかさない限り、ありませんから安心して下さい」
「ミサトもアスカも責任重大ね、よっぽどの失態をしでかしたら今度は、弐号機か参号機どっちかリリンに取られるわね」
シンジは苦笑した。
「そんな言い方しないで下さいよ、リリンの目的は使徒の殲滅でありそれは、ネルフと何ら変わりないのですから、」
「それはそうですが」
「出来れば、ネルフとリリンの共同作戦で4機のエヴァを動かしたいのですがね」
ミサトが顔を顰めた。
「現状からは難しいでしょうね」
「ええ、ですが、現時点では、ネルフ側に最終決定権があるので、御理解を頂ければいいのですが」
リツコとシンジはミサトをチラッと見ながら言った。
「シンジ様、そろそろお時間です」
「蘭子さん、シンジで良いって言ったら、様付けですか?君で良いのに」
「どうぞ、レイさん、シンジ君」
2人は車に乗った。
「あ、惣流さん、いつでも遊びに来てね」
車は走り去った。
「意図は何かしら?」
ミサトが呟いた。
「恐らくは、ネルフのよっぽどの失態を逃さず察知することが目的ね」
アスカはIDカードを見ていた。
「リリンか・・・」


リリン本部、長官室、
蘭子は冊子をレイに渡した。
「これには、リリンの事が書いてあります。ここに記載されていることは、レベルABCの3段階の内、レベルAの事だけです。後で読んで下されば結構です」
「ここでの貴女の立場は、エヴァンゲリオン零号機正規パイロット及び初号機副及び予備パイロットで、階級は2佐です。」
「貴女に命令することが出来るのは、シンジ君と私と、榊原副司令だけで、その他の者は、命令ではなく、指示または進言であり勿論拒否することが出来ます。又、3人の命令に対しても、戦闘時の除きその理由を求める権利や、反論する権利があります。そして、ここからは注意点ですが、貴女のセキュリティレベルはCですが、一部の情報は貴女には閲覧できないように指定されています。閲覧したい場合は、私かシンジ君の許可が必要です。そして、ネルフ施設への立ち入りは禁止しませんが、必ず警護の者を同行すること。単独でのネルフ施設への立ち入りを禁じます。最後に、貴女がエヴァンゲリオン零号機の起動に再度失敗、若しくは、起動しても戦力に足りないと判断された場合ですが、」
レイは俯いた。
「その場合でも、貴女の所属及び階級は維持され、初号機の副及び予備パイロットとして待機してもらいます。」
「・・はい・・」
「蘭子さん、実務の説明はそのくらいにして、綾波も疲れてるだろうから、そろそろ」
「そうですね、」


シンジとレイとレイラを乗せた高級車は、高級マンションの駐車場に止まった。
そして、最上階1フロアを占める部屋が3人の部屋である。
リビング、大きなソファーがあるがそれを邪魔に感じないほど部屋が広い。
「綾波、綾波のこと色々調べて、綾波は一般常識の欠如が甚だしいことが分かったら、その点はレイラに教えてもらってね」
「はい」
「綾波、ここでは、僕も綾波もレイラも同列なんだよ」
「・・・・何て言えばいいの?」
「頷くか、うんって言うかだよね」
レイラは頷いた。
「うん」
レイは言葉の方を取った。
「明日は学校だから、もう寝た方が良いね、」
レイは部屋に案内された。
大きなベッドが置いてある。その他、本棚、クローゼット、机、パソコン、色々と揃っている。
「ここが、綾波の部屋だよ」
レイは頷いた。
「じゃあ、僕はこれで」
シンジは部屋を出ていった。
「じゃ、お風呂に入りましょ、色々と教えて上げるから」
「うん」


シンジの部屋、
シンジはパソコンで各部署からの報告書を見ていた。
「ネルフにはまだ動きはなしか・・・・あの父さんが綾波を取られて黙っているはずがない、近い内に何か仕掛けてくるはずだ」
そして、ネルフから各ネルフ支援国に要求された予算一覧表を見た。
「む」
シンジは顔を顰めた。
おおよそ殆どの国が国家予算の2割近くを要求されている。
セカンドインパクトから復興を遂げた国は僅かであるため、その額は一部の国を除き小さいが、その国の現状から考えれば、無茶苦茶な額である。
「通常予算は変わらなかったか・・・だが、30兆円もあれば、緩衝剤にはなるだろう」
因みに主要先進国の出資金は、日本2兆6300億円、アメリカ2兆1000億円、ドイツ2兆3000億円、イギリス9600億円、フランス1兆2000億円等となっている。


6月15日(月曜日)、朝、第3新東京市立第壱中学校2−A、
「惣流さんおはよう」
シンジはアスカに声をかけた。
「お、おはよう」
アスカは戸惑いながらも返した。
「おはよう御座います」
レイラが丁寧な挨拶をした。
「おはよう」
アスカは軽く返した。
「おはよう」
レイがアスカに挨拶した。
「え・・・・」
アスカだけならず、クラス中が凍った。
「碇君が言ってた、朝、友人に会ったらおはようって言う物だって、友人、同位の物で近しい者、アスカは友人」
「そ、そう、おはよう、レイ」
アスカは何とか返した。
3人は席に座った。


昼休み、
シンジは鞄の中から、弁当箱を3個取り出して、レイとレイラに渡した。
「有り難う」
レイラはシンジに礼を言った。
レイはレイラとシンジをじっと見ていた。
「有り難う、こう言うときには、感謝の言葉を言うのね」
「そうだよ」
シンジはレイの頭を撫でた。
レイは顔を赤らめた。
教室中で心の叫びが渦となっていた。


放課後になると共に、アスカ、トウジ、ケンスケ、ヒカリ、マナは、ネルフの専用車でネルフ本部に向かった。
「実験、忙しいんだろうね」
「私達は良いの?」
「別に良いよ、それよりも、人として楽しい生活を送ることの方が大事だから」
シンジはレイにとっては信じられないような事を言っている。
「でも・・・」
「シンジ君を信用してよ、」
「アスカはシンクロ率71%に達しているわ、対して、初号機は起動すらしていない」
「大丈夫だよ、」
「何故?」
「土曜日に起動実験だから、綾波も協力してね」
「???」
レイは首を傾げた。
「2人乗りなのよ」
「2人?」
「複座式エントリープラグ、僕と綾波で動かすんだよ、」
「私が、碇君と・・・」
レイは少し顔を赤くした。


ネルフ本部、実験棟、
シュミレーションプラグでの実験が行われていた。
リツコ指揮の元、碧南ルイ3尉をメインオペレーターに
「アスカ、記録更新、72.16%よ」
『70の壁の次は80の壁よ』
『大変やなぁ〜』
「トウジ君、相変わらず安定しないわね、30から40の間で彷徨っているわよ」
『そうはゆうても、なかなかうまあいかんのですわ』
『所詮、天才と凡人の違いね』


シュミレーションテスト、
シンクロ率20%を前提にした仮想状態でエヴァ量産機を動かしていた。
戦闘に必要とされる最低限度のシンクロ率で、初起動はこの付近になると予想してのシュミレーションである。
ミサトを責任者にして、実際はマヤが取り仕切っている。
3体のエヴァが参号機を相手にしている。参号機はシンクロ率40%の設定である。
「では、模擬戦開始」
マナが先行し、後の2人がそれに続いた。
3人に大きな戦力の差や特性はない強いて言うならば、ケンスケは分析能力が高く、マナは直感による即座の行動が得意と言ったところである。ヒカリはごく平凡である。
参号機はトウジの設定なので、格闘能力が非常に高いが、銃器は全く駄目である。
マナが参号機に投げ飛ばされた。
『いった〜い!』
感覚の伝わり方は、上限を設定し、シンクロ率20%を基準にしている。
ケンスケとヒカリがパレットガンを斉射した。
参号機はダメージをくらいながらも、突撃してきて、2人にラリアットを食らわした。
『ふげ!』
『きゃあ!』
マナが参号機を羽交い締めにした。
しかし、半分以下の力で押さえ込めるわけがない、マナは逆に押し倒され、マウントポジションを取られた。
『いやあああああ!!!!』
参号機はマナを殴っている。
『いたいぃ!!』
『霧島さん!!』
ヒカリが参号機の頸部を、ケンスケが、背中をプログナイフで突き刺した。
『くらえええ!!!』
怒ったマナはプログナイフを参号機の股間に突き刺した。
一応、設定上トウジがどういう反応を取るかという設定で、マギのシュミレーション能力は高かった。
参号機は股間を押さえて転がり回っている。
「「「「「・・・・・」」」」」
マヤを始め職員は絶句している。
「・・・・えぐ・・・」
ミサトが呟いた。
後でこの話を知ったトウジは股間を押さえてマナの前から逃げたという。


総司令執務室、
2人の司令官が話をしていた。
「碇、リリンの動き、少し早すぎるし大きすぎるぞ、何か真実を掴んでいるのではないのか?」
「内通者がいると考えるべきか」
「だが、碇、ネルフで真実、いや、それに近い物を知っているのは3人しかいないのだぞ」
「老人達の中かもしれん」
「それはいくら何でも・・・」
「問題はレイだ」
「確かに、レイが我々の手元にいなければ我々のシナリオを進めることは不可能だ」
「シンジがいる限り難しい、だが、シンジがいなければユイは目覚めない」
「碇・・・お前、まさか覚醒後に実の息子を殺すつもりか」
「他に方法がありますかな?冬月先生」
冬月は背筋に冷たい物を感じた。
「既に人の心など悪魔に売り渡しました、今更その程度のこと」
「・・・碇・・・・」


第2新東京市新千代田区首相官邸、
耕一と竹下首相が面会していた。
「これは、会長、いったい何のご用で?」
「いえいえ、これを」
耕一は冊子を渡した。
冊子の中身を見た竹下の表情が変わった。
中には、過去の竹下の行った犯罪行為、違法行為、民意に背く行為、裏工作、非人道的行為などの殆どが記載されていた。
竹下は青を通り越して白くなっている。
「竹下さん、人類の未来のために、リリンに寄付する気はありませんか」
「わわかった!補正予算で十分な予算を組む!!」
「竹下さん、今私は、日本国の内閣総理大臣ではなく、一個人としての貴方と話をしているのですよ」
「な、何が」
「つまり、貴方の資産、約8600億円ですか、よくまあ貯め込みましたねぇ、景気良く6000億円ほど寄付してくれませんかね」
「わ、分かりました」
「では、ご協力感謝いたします。尚、バックアップその他共々、全て処分しますので、寄付の方お忘れなく」
耕一は部屋を出た。


耕一は白いスポーツカーに乗りながら車載電話をかけた。
『会長どうでした?』
「ああ、成功だ、8兆円近く集まった、これでしばらくは良いだろう」
『でも、出来たら』
「分かっている、貧困国への援助及び、ゼーレ支配からの脱却、その為にはまだまだ金が必要だ」
『済みません』
「ああ、かまわん、醜く肥え太った醜悪な豚どもの金蔵に貯められるよりも飢えと貧困にあえぐ者達に与えられる一個のパンと一杯の水に変わった方が良い、それに、悪人虐めは楽しい」
『相変わらずですね』
『でも、史実では、会長は歴史の表舞台に出てこなかったんですけど、いったいどこで何をしていたんでしょうか?』
「考えられることは、死んでいるか、それに近い状態にあったんだろうな」
『なるほど』
「だが、そんなことは気にするな、この歴史にとっては、今この流れこそが史実なのだ」
『ええ』
「油断はするなよ、ひょんな事から、人は簡単に死んでしまう」
『分かっています』
「ああ、特に注意しろよ、ネルフからはともかく、ゼーレから見れば目の上のたんこぶそのものだからな」
『親衛隊をサキエル襲来と同時に動かします』
「うむ、それが正解だろうな」
『保安部も色々と動いてますからまず間違いはないとは思いますが』
「注意は怠るなよ」
『はい』

あとがき
第1話当日アップ。
しかし、金額でか過ぎ・・・
今まで、いくつかのもう一つの組織を見てきましたが、少なくとも金で買うと言うのは無かったと思います。(あったらごめんなさい)
続きが読みたい人は、何らかの方法で、続き読みたいで〜すと言う事を、私に知らせてください。読みたい人がいるんだなと思えば第2話を掲載し、これは期待にこたえねばと思ったら、連載化します。