復讐…

◆第零話

 シンジの中に膨大な量の情報が雪崩れ込んでくる。
 それはシンジの周りに居た人の様々な想いであったのだが…流れ込んできたものはそのどれも醜くドロドロとした物ばかりであった。
 妻の復活の為には、例えなんであっても犠牲にし、そして実際に全てを犠牲にした父。
 父の復讐にとらわれ、使徒への復讐に燃え、全てを駒・道具として扱い、その為に偽りの愛情を与えてきたミサト。
 コンプレックスからか、母と関係を持っていた男と関係を持ち、そして結果的にその関係に溺れ、それを維持するために悪魔の計画に加わったリツコ。
 事故で狂い、そして自殺した母に誉めてもらいたい再び自分を見てもらいたい、その叶えられる事の無い望みの為に、障害となるものを全て排し、攻撃するアスカ。
 真実の為には何も省みず、結局は自分勝手の塊の加持……
 更に補完計画の真実、使徒と人類の起源に始まる様々な物も雪崩れ込んで来たが、シンジはこれ以上そんなものは見たくないとその全てを拒絶した。


 どれだけ時間が経ったのか、シンジは砂浜で目を覚ました。
 紅い空が目に飛び込んでくる。
 ゆっくりと身を起こし立ち上がる…体に力がみなぎっている。
 今までに流れ込んできた情報から判断すると、おそらく第拾八使徒リリンとして覚醒したからだとシンジは結論づけた。
「…この世界は、全ての時間と繋がっている。ならばどの時代にもいける筈」
「始まりの時に戻ろう、」
「そして、僕を、くだらない理由でこんな目に会わせた奴等に目に物を見せてやるんだ…そうだ、それが良い、」
 ふと気付くと、近くにアスカが地面に横たわっているのが目に入った。
「…アスカか、」
 シンジがアスカの脇に立つとアスカは目を開きシンジに一瞥をくれたが、その視線はどこまでも見下しているようでもある。
 シンジは右手にATフィールドを発生させ、槍の形状にした。
「死ね」
 シンジは槍を振り上げ、アスカの目が一瞬驚きで大きく開かれる。
 次の瞬間、ATフィールドの槍はそのまま振り下ろされアスカの胸を貫き、血が噴出して白い砂浜を赤く染めていく。直ぐにアスカの目から光が消えていった。
「………くくく、あはは、くくく、あはは、はっはっはは!!」
 あのアスカだってこんなに簡単に死んでしまう。結局なんて事もないと言うことが分かると、なにやらおもしろおかしくなってきて思わず笑いが零れた。
「あれだけ僕を散々に貶し蔑んで来たアスカだって、結局はこんなに簡単に死んじゃうんだよ!」
「もう、こんな死の世界に用は無いや、」
 シンジはエネルギーを放出し、時間を越えた。