次の日、サードインパクトの日、二人はレイを探しに出かけた。 (・・こいつ、私よりも大きく・・) 長身のアスカよりも未だ高い。 いつの間にこんなに大きくなったのか、並んで歩くなんて事は無かったから気付かなかった。 「・・・どこから探すの?」 「・・そうね、取り敢えず、学校から探しますか・・」 第3新東京市立第壱中学校は既に廃校に成った。 第3新東京市立第壱中学校2−A、嘗て、皆ここに集った。 「・・・誰もいないね・・・」 「ええ・・・あれからずいぶん経つからね・・」 シンジは嘗ての自分の席に座り、嘗てのレイの席を見詰めた。 「・・・そう言えば、トウジとケンスケは?」 ケンスケの方は、防衛大学付属高校に進学している。だが、自分の夢と言うよりは、家計の事情の方が大きいようである。一方、トウジは・・・妹も合わせての莫大な治療費に耐えられず、一家心中・・・ヒカリは公立進学校に進学したが、トウジの一件以来ショックで成績が低迷している。 「相田は、防衛大学付属高校に行ったわ、鈴原は知らないわ」 「ははは、ケンスケらしいや」 二人は学校を出て、公園に向かった。 「あっちの遊歩道歩こうか」 「そうだね」 ・・・・ 「なんか、アスカと一緒に並んで歩くの久しぶりだね」 「そうね」 シンジは自分の左の地面を見詰めた。 本来ならば、其処にレイが歩いている筈であった。 「・・ホント、レイどこに行っちゃったのかしら?」 「このアタシにこんなに手間をかけさせるたぁ、許せないわね」 嫌な雰囲気を軽くしようと昔の口調で喋ったのに対して、シンジは軽く苦笑を浮かべた。 夜、レイのマンション、 アスカは寝静まったシンジをじっと見詰めた。 今、シンジはどう言う状況なのか、サードインパクトからの事をどれだけ覚えているのか・・どれだけ理解しているのか・・・そして、どれだけそれを認めているのか・・・ 恐らくは、今、自分の記憶を組み替え、書き換えしているのだろう・・・ 再びこの世界で生きる為に再構成を目指していると言えば聞こえは良いが、実際には現実から逃げ様としているだけであろう。 翌朝、朝食を取りながら、レイを探す方針を話し合っていた。 「今日は、芦ノ湖の方にまで足を伸ばしてみようよ」 「そうね」 そしてその日も、決して見つかる筈の無い人探しを続けた。 その次の日も、そして、その次の日も・・・ ある日、アスカはシンジをショッピングに誘った。 今、シンジが自分とレイをどのくらいの比率で考えているのかを計る為に、 「・・う〜ん、アスカには綾波探しを手伝ってもらってるしな〜・・そうだね、今日はアスカに付き合うよ」 まるで、レイ探しが不毛な物であるかのような言い方だった。 勿論意識してのものではなかろう。だが、無意識では理解しているのだろう。 「うん、ありがとね♪」 アスカは素直に喜んで見せた。 超が付く程の美男美女の組み合わせは異様に目立つ。 「ねねね、シンジこれ見てよ、これ」 アスカはショーウィンドウに飾られていたアクセサリーを指差した。 「あっ、これ?」 ・・・ 「ねぇ〜これ似合う?」 アスカは服を前に当ててシンジに見せた。 「うん、似合ってるよ」 シンジがいちいち反応してくれるのが嬉しい。 レイの事が心に残り続けているが、それでも嬉しい。 どうして、あの時、もっと素直になれなかったのか・・・変なプライドに拘って・・・ 3人の中で一番最初に壊れていった自分。 もっと、素直になっていれば、3人の絆を保ったまま・・・・ひょっとしたら、サードインパクトも防げたのではないか?今、こうしてはしゃぐ自分にどこか飽きれるような視線を注ぎながらも軽く笑みを浮かべて其処に立っているのではないか・・・・・ そう考えると無性に悔しく腹立たしく、そして哀しくなり、涙が溢れそうに成った為、シンジに一言言ってトイレに駆け込んだ。 1月ほど経ったある日、シンジは突然言い出した。 「・・綾波って、本当にいたのかな?」 「え?」 「・・・だって、これだけ探しても見つからないし・・・」 「・・・・」 「・・・ひょっとして、綾波って、天使だったのかな・・・」 シンジのその呟きはアスカに一枚の羽を思い出させた。 「・・・ひょっとしたら・・・そうだったのかもね・・・」 アスカは戸棚の一つの前に立ち、胸の前で、拳を震わせた。 もし、この戸棚の中に入っているレイの羽を見せれば、シンジはレイは天使だったと思い込み、それで解決を見るだろう。だが、本当にそれで良いのか・・・レイは今も尚、悲しみ続けている。その事実を隠していいのか・・・偽りで覆い隠してしまっても良いのか・・・ 長らく迷った挙句アスカは戸棚を開き、中から、一枚の蒼白く輝く羽を取り出した。 「・・・アスカ、それは?」 「・・・レイが私にくれた、レイの羽よ・・」 「・・・やっぱり・・・綾波は天使だったんだね・・・」 シンジは軽く哀しげな笑顔を浮かべた。 そして、時は流れ、2028年、シンジは、小説家をしている。 まあ、そんなに売れるているわけでもないが、アスカの仕事の給料と言う名目で入ってくる金でまあいい生活は出来ている。 月を見上げる度にシンジが浮かべる哀しげな顔を見るたび、アスカは心を鷲掴みに去れるかのような錯覚を覚え、レイの悲しみが癒える事を願う。 そして、小学校に入ったばかりの娘、ミクには、このような不幸が起こらないように、とも・・ 今、アスカは赤いスポーツカーを駆り、目的の場所に向かっていた。 特種封鎖地区箱根、その中にある秘密の場所。 目的地に近くまで来たので、車を降りた。 林の少し開けたところにぽつんと開けた場所、その中央にレイの墓石がある。 墓石の下には、レイのコアが埋められている。 ここに来るとレイの感情が流れ込んでくる。 アスカはその感情を全て受け止めながら、墓前に花を添えた。
あとがき うむむ・・・lASに成っているのだろうか? ・・・むしろ・・・ ・・・・・では、又別の作品で、