ネルフ本部のケージでは01の修復が着々と進められていた。 ユイがマヤと共に様子を見に来た。 「…もうすぐ修復は完了しそうね」 「はい、明日には完了しますので、明後日に機体連動試験を予定しています」 「そう、御苦労様」 「ありがとうございます」 総司令執務室に蘭子がやってきた。 「…何の用でしょうか?」 「お知らせしたいことが…」 先日中国の軍事兵器研究所が襲撃され、大型輸送機の試作器が強奪されたと言うことに関しての事を教えられた。 「……ゼーレがですか?」 「おそらくは…」 「そうすると…エヴァを運ぶつもりじゃないかと言うことが疑われるわね」 「はい、輸送機のステルス性も決して低くはないですし、軍事機密のため詳細は公表されていませんが、諜報局が入手した情報では、現在ネルフ本部が使っているウィングキャリアーよりは上のようでしたから」 ユイは大きな溜息をついた。 「現在東京軍はその警戒レベルを1つあげていますが、場合によってはさらなる引き上げも必要かもしれないと言う意見も出ています」 「…現在のゼーレの力で必要数を揃えられるとも思えないし、ましてや東京とネルフ本部をうち破るなどと言うことはとてもむり……そうなると何か仕掛けてきますね」 「そう見てまず間違いないと思います。会長は警戒はするがもう少し様子を見たいと仰っておられましたが」 「私もそれが今は良いと思います。勿論いざというときに直ぐに対応できるように準備をしておくことは必要ですが」 「そうですね」 そのころ、ミクは学校で安齋達と話をしていた。 「ふ〜ん、そんなことがあったんだ」 「ああ、強奪された大型輸送機はかなりステルス性が高いという話もあるし、やっかいなことになるかもしれないな…とは言ってもそんな者をちょっとやそっとの組織が隠しておけるはずもないし、後ろに国かそれに匹敵するような大きな組織がついているんだろうな」 「う〜ん、ロシアあたりかしら?」 「単なるテログループじゃさすがに難しいね」 「そうね…」 4人とも先の大西洋艦隊襲撃の件と結びつてはいたがミクの事を考え、又ミク自身も余り考えたくはなかったと言うこともあり、敢えて話には出していなかった。 チャイムが鳴って授業の開始が告げられたとほぼ同時にミクの携帯が鳴った。 ネルフ本部の発令所のメインモニターには大きな目玉と無数の触手のような物が生えた物体が映っていた。 …今度のは又気持ち悪いな…と誰かのつぶやきが漏れた。 ユイが発令所に入ってくる。 「どうなっていますか?」 『はい、目標は現在、日本海を南東・ここ東京を目指して時速450kmで進んでいます』 「周囲に展開されている軍は?」 『…近くを海上自衛隊の護衛艦隊が航行中です』 「攻撃させてください」 『了解!』 「侵攻ルート上にある各基地に出撃要請をだして」 『『了解』』 「初号機と02をチルドレンが到着しだし出撃させて」 『分かりました』 「…01は?」 『まだ、戦闘は不可能です』 「分かりました」 日本海の沿岸にエヴァ2機含むネルフ軍と戦自や自衛隊、東京軍の部隊が集結していた。 発令車に日向が乗って現地の指揮を行っている。 「どうだ?」 「配置は完了しました。目標は後30分ほどで射程に入ります」 「そうか、」 「映像もう一度確認しますか?」 「ああ、頼む」 モニターに使徒と海上自衛隊の艦隊と航空自衛隊の航空機が映る。 艦隊と航空機からそれぞれミサイルや砲弾が使徒に向けて放たれるが、ATフィールドによってそれらを全て弾く、そして触手の内のいくつかをのばしてそれを振り下ろすことで航空機を次々に切り裂く、 「やはり触手がやっかいだな…近距離では手数が非常に多くなるからな。当初の予定通り遠距離攻撃でしとめる」 「分かりました」 そのころ、日本東海に光の玉が現れ、その光の玉は一直線に日本に向かい始めていた。 ネルフ本部の発令所はその情報が入るなり一気にあわただしくなった。 『パターン確認中、暫くお待ちください』 マヤ達がパターンの分析をしている。 「…使徒の同時進行…」 『出ました!パターンブルーです!!』 「直ぐに各軍に出撃命令をだして!」 『『『了解!!』』』 「…どうするか…」 初号機と02をどのタイミングで又どちらを戻すのか… 「…初号機を直ぐに戻して、02は使徒を殲滅後戻すように」 『了解しました』 使徒の同時侵攻への対応に向けてネルフが一斉に動き出した。 海岸に東京軍と戦自の中心とする部隊が展開されているがそこにエヴァの姿はない。 使徒は陸にまっすぐ向かっている。 そして東京軍の艦隊や各軍の航空機編隊が使徒に向けて攻撃を開始するが、やはりATフィールドによって全て弾かれ、使徒はそのままこちらに向かってくる。 陸上からも果敢に攻撃が仕掛けられるがやはりATフィールドによって弾かれる結果となり、一方の使徒は攻撃することはなくそのまま猛攻を浴びつつ沿岸に近づいてくる。 「…初号機は?」 『後25分かかります』 「…どこまで侵攻されるか…」 『まもなく上陸します』 使徒が上陸し、なおも攻撃が続けられるが有効と思われる攻撃はない。 突然使徒の周りが暗くなったかと思うと、次の瞬間使徒の周りにいた部隊は一瞬にして消え去った。 「なんですって!?」 『…時空間をゆがめて、その歪みに引きずり込んでいるようです…』 「…なんて攻撃…接近はさけて、初号機の到着を待たせて…同時に無人兵器を接近させて攻撃、攻撃の射程距離を調べて」 『了解!』 7回ほど調査が繰り返され、おおよその距離が判明した。 『おおよそ150メートルです。但し、安全を見るとしたら200メートルから250メートルは距離を開ける必要があります』 「中和距離よりは短いとは言え、かなり厄介ね…接近戦は不可能、火力を集中させるしかないわね」 『目標の侵攻ルート上で火力を集中できそうなのは、何カ所かありますが、初号機の到着を考えると、2カ所しかありません。しかも、両方とも既に都市圏です』 「…仕方ないわね、住民の避難は?」 『既に完了しています』 「そう」 初号機を搭載したウィングキャリアーが、漸く戻ってきた。 ミクはケンスケから使徒に関する説明を受けた。 「…厄介だね」 『ああ、だが、仕方ないと言えるな…だが最大限のサポートする』 「うん、期待してるね」 軽く目を閉じ、ゆっくりと開き使徒がいる方向に視線を向ける。望遠映像では、使徒の姿が既に映っている。 じっと見ているが、何か違和感を覚える。 「…?」 『ミクちゃんどうしたの?』 「…影、」 ミクは発光しているはずの光の玉の使徒に影があることに気づき、又ミクの言葉でユイもそのことに気づいた。 『分析させます!』 『作戦は延期!もう一つのポイントで作戦を行う!』 そして、1分ほどで、スーパーマギの判断が出た。 『使徒の本隊はあの影の方よ、』 「影が本体…」 『ATフィールドを中和し、それと同時に全火力を影に集中させる事で倒す』 ミクはゆっくりと頷いた。 モニターのマップ上に使徒と、その攻撃範囲、安全範囲が表示される。 使徒は町の中に入ったが…警戒しているのか、あの攻撃を繰り返しながら突き進んでいる。そのせいで、町がおよそ320メートルの幅にわたって消滅していく、 『少し予想よりも範囲が広いようです。修正します』 マップ上の攻撃範囲が少し広がった。 「…町が消えてく…」 ミクは半ばぼうっとじっとその光景を見つめていた。 『降下準備!』 その声でミクは現実に戻った。 (…ミクがやらなきゃ、) ウィングキャリアーから切り離され町中に着地する、その衝撃で周囲のビルなどのガラスが一斉に砕け散る。 目標との距離はおよそ1キロ、中和距離にはいるまでと、攻撃までのカウントダウンが開始される。 ミクはじっとその数字が減るのを待った。 目の前の町が消滅していく…、そしてそれが徐々に近付いてくる。 こういう状況で待ち受けているのはかなり怖い… 『ミクちゃん、大丈夫、みんなを信じて』 表情などから気づいたのかユイが声を掛けてきた。 「…うん」 ユイを、そしてみんなを信じる。その事で恐怖は多少和らいだ。 『まもなく中和距離に入ります』 中和距離にはいると同時にATフィールドを中和する。 次の瞬間、周囲一体からすさまじい数の攻撃が使徒の影に向かってかけられ、すさまじい爆発を引き起こし、初号機はその衝撃ではじき飛ばされた。 ネルフ本部、発令所、 「どうなったの?」 『回線復旧します』 回線が復旧するとモニターには町のど真ん中に大きなクレーターが出来ているのが映った。 『使徒は確認されません。殲滅できたようです』 『初号機を確認、パイロットは無事です』 ほっとした安堵の息や、喜びの声が発令所中から漏れる。 「…ふぅ…日本海の方はどうなったの?」 『回線を繋ぎます』 メインモニターに映し出された映像に殆どの者が絶句することになった。 映っている町が廃墟のようになっていた。 「な…」 そして、その廃墟の中で02や多くの軍隊が使徒と戦闘をしていた。 『現在戦闘中です。被害は、かなり甚大ですが、使徒にも多くのダメージを与えることが出来ました』 02がプログランスを使徒に突き刺し、使徒の動きが止まった。 『…殲滅したようです』 「…まずは御苦労様、」 『いえ…これだけの被害を出してしまったのは明らかに失敗です…』 「その事に関しては気にしなくて良いわ、今回は使徒の同時襲来と言う想定されなかった事態なのだから」 『…分かりました』 すまなさげな表情のまま答える。 「被害を纏めておいてくれるかしら?」 『はい』 ユイは執務室に戻り、被害の速報が出てくるのを待っていた。 「…今回、私のミスね…同時侵攻を全く考慮せずに2機とも出撃させてしまったことこれで、初号機の輸送に伴う時間のロスにより被害が大きく拡大した…更に言えば日本海側も初めからエヴァ1機で当たるとしたら又違う作戦とそれに基づく配置がとれたかもしれないわね」 「…そうすると、最低1機は本部に常に稼働できる状況で残しておかなければならない…常に全てのエヴァが稼働可能である保証はないとすれば、最低4機、出来れば5機のエヴァが必要ね…」 エヴァはある。だが、操縦者であるチルドレンが全く足りない…更に言えば今、見つかったところでエヴァ自体があわせられていたところがあるシンジやレイ、あるいは長い間訓練を受けてきたアスカやミサ、リコ…そして適格者同士の子であり、ある意味最高の素質を備えているミクとは訳が違う……そうそう戦力となり得るような者がいるわけがない。 このままでは導き出される結論は一つしかない… 「…間に合ってくれればいいけれど…そうでなければ…」 その時、来訪者がユイの思考を中断させた。 「私です」 「どうぞ、入ってちょうだい」 マヤが報告書を携えて入ってきた。 「先の戦闘の被害の速報です」 ユイは報告書を受け取り内容を見た。 被害額は都市や消滅した兵器・人的損害を累計すると10兆円を超える。幸いとも言えるが避難が完了していたため、民間人に死者は現在のところでていないが、行方不明者と重体・重傷者が若干名いると言うことである。 「…今後の事を考える以上、戦力の数を増やす必要があるわね」 「はい、」 「…ダミーシステムに関して、現在どういう状況にあるのか、調べてもらえるかしら?」 少し複雑な表情を浮かべていたが戻し、分かりましたと返した。 マヤが執務室を出ていった後、ユイは中央研究所に電話を掛けた。 『はい、』 「頼んでおいた加工の件なんですけど」 『ああ、最初の奴はあと3日もあればできあがります』 「それは良かったわ、出来次第届けてもらえるかしら?」 『ええ、分かりました』 その後他の部署にも連絡を取るが…未だ、完成と言うところには至っていなかった。 ユイは電話を置いた後ゆっくりと深い溜息をついた。 ミクは病院のベッドの上で目を覚ました。 「…ここは?」 「目が覚めたようね」 ミクが声の方に視線を移すとユイがベッドの脇の椅子に座っていた。 「ユイさん」 「ミクちゃん御苦労様」 ユイに労われミクは嬉しげな笑みを浮かべた。 「ところで、今日はもう帰れるんだけど、お夕飯何か食べたいものある?」 「ん〜っと、グラタンかな?」 「分かったわ、とびっきり美味しいのを作るから期待しててね」 「うん♪」 弾むような声で返した。
あとがき だんだん本編との差が大きくなって来ていますね。 今回も又大きな被害を受けるなど、逆行未来編の方が拙い状況のようですが、果たしてこれからどうなるのでしょうね。 それでは、又