背徳 逆行未来編

◆第4話

ネルフ本部、ケージ、司令室、
ユイ直接の指揮の元、再び過剰シンクロモードの実験が行われ様としていた。
ミクは既に搭乗を済ませ開始を待っている。
「ユイ博士、準備が出来ました。」
マヤが報告し、ユイは軽く目を閉じ、そして開いた。
「・・ミクちゃん、準備は良いかしら?」
『うん』
「では、これより、第2次過剰シンクロ実験を行います。皆、そして、ミクちゃん、頑張ってね」
シンクロモードが切り替わり急激にシンクロ率が上昇していく。
「シンクロ率112、115、117、まだ上昇中です」
マヤはユイに尊敬のまなざしを送った。
「今回はこれまでとします。現状維持に切り替え」
「了解」
グラフの伸びが止まった。
「・・・シンクロ率123%で安定しました」
「痛覚フィードバックは81%まで、減少しています」
「ハーモニクスは38%上昇しています」
「エネルギー消費は127%UPです」
「ミクちゃん、適当に身体を動かしてみて」
『はい』
初号機が身体を動かし膨大なデータがスーパーマギに送られていく。
実験は1時間ほどで終わり大成功だった。


総司令執務室でユイは現在の防衛兵器の配備に関する報告書を読んでいた。
「・・・これでは拙いわね・・・」
そして、ダミータイプのエヴァの本部輸送状況に目を通す。
太平洋艦隊、大西洋艦隊、インド洋艦隊の3大艦隊が総出で日本に向けて輸送をしている。
それぞれ、4、3、3で、合計10機を運んでいる。
太平洋艦隊が少々遅れているが、3日後には、到着する予定である。
ダミーシステム、忌むべきシステムである。
だが、人が生き残る為には必要である。
「・・・・ふぅ・・・」
そして、新兵器の開発状況報告書に目を通した。
これは順調で有る。
この兵器が上がってくれば、使徒戦は大きく楽になるだろう。


翌日、東京中学Aコース、選抜クラス、
安齋、佐々木、安藤の3人と仲良く成った。
先日、レイの心に触れた事でであろうか、ミクの精神状態はかなり回復しているようだ。
「で、ミクがね」
ミクは、機密事項に触れない程度にエヴァの情報を色々と話していた。
「ふ〜ん」
やはり、知的興味心をそそるのか、3人は熱心にミクの話に聞き入っている。
「で、リコとミクが」
ミクの携帯電話が鳴り、ミクの表情が真剣に成る。
3人はそれで直ぐに把握した。


ネルフ本部、発令所、メインモニターには使徒と交戦中の太平洋艦隊が映っていた。
ガギエルの時太平洋艦隊にいたものは再びその恐怖を味わっているだろう。
「第弐拾壱使徒の情報は把握できた?」
『依然詳細は不明です!』
『司令、初号機と01を輸送しますが宜しいですか?』
「02も行かせて」
『しかし、それでは、本部の防御が!』
「・・使徒戦は後が無い戦い、常に総力戦で無ければいけないわ・・・01と02は直ぐに出撃。初号機はマリーン装備をつけ、ミクちゃんが到着次第、発進させて」」
『了解』
『はい!』
『現在ある情報から判断すると目標は、全長200メートル強と思われます。』
「・・・大きいわね・・」


ネルフ本部付属空港の滑走路には既にウィングキャリアーがマリーン装備をつけた初号機を搭載して待っていた。
01と02は既に飛び立っている。
ミクの乗る高速ヘリが見えて来た。
そして、ヘリが着陸して直ぐにミクはヘリを飛び降り急いで走ってウイングキャリアーに乗り込んだ。
ミクが乗った事を確認してウィングキャリアーは加速を始め、直ぐに空へと飛び立った。


太平洋艦隊、旗艦、飛天、
最新鋭の戦艦である。
対使徒用に様々な兵器を搭載している。
「くそっ!NN魚雷も効果なしか!」
「拙いです!!輸送艦を狙っています!!」
「防げ!!」
ダミータイプのエヴァもエントリータイプには敵わないまでも、それなりの戦力を持っている。だが、それも、ダミープラグ無しでは只の巨大な人形に過ぎない。
輸送艦を取り巻くように展開し、守ろうとしている。
「拙いです!!」
一直線に突き進んでいる。
魚雷や砲撃では何の効果も無い、
更に、フリゲートくらいではその身を持ってしても止める事は出来ず、簡単に粉砕されてしまう。
「くそっ!!」
次々に海の藻屑に去れる。
「輸送艦ガロン破壊されました!!」
任務失敗、輸送も満足に出来なかった。
「ネルフの応援は未だか!!?」
「未だ確認できません!!」
使徒は、次の目標を探している。


ウィングキャリアー、
ミサはエントリープラグの中でじっと到着を待っていた。
『後5分です。』
既に多くの艦が沈んでいる筈である。
『良いか、マリーン装備の初号機が来るまでの、時間稼ぎを目的とし、余裕が有るならば、任意に攻撃する』


後方を飛行しているウィングキャリアーの初号機の中では、ミクがマリーン装備のマニュアルを読んでいた。
内容はかなり難しいのだが、取り敢えず表面的な事と操作法は理解できた。
「・・・、練習無しってのはちょっと大変かな?」
『ごめんね』
モニターのマヤが謝った。
「いえ、そんなに気にしなくても良いですから」
『ミクちゃん、気をつけてね』
「うん」


東京、ネルフ本部、発令所、
『エヴァD、駄目です!!』
「・・・・」
ユイはモニターをじっと見詰めた。
ダミーシステムは世界中で研究が進められている。
それぞれが独立して・・・・
日本本部には、その技術は無い、或いは低いと考えられえている。
今回、東京帝国グループの圧力もあり、ダミータイプのエヴァを日本に送る事に成ったが、誰がダミープラグまでつけて日本に技術提供までしてやるか、今後要求しても同じ、無駄だと言った事か、ダミープラグは送っていない。
そのせいで、既に1機・・・そして、今2機目が破壊されようとしている。
4機全て破壊されても不思議ではない。
(・・・何時の世も、皆自分の利益の事しか考えていないのね・・・)
それは、多くの政治家や軍人に向けての言葉だが、シンジや碇にも当て嵌まる事でもあり、そして、違うとは言え、ユイ自身もそんなに離れているわけではない。


ウィングキャリアー、
望遠映像で艦隊を捉えた。
猛攻撃を続けているが、次々に沈められている。
『ミサ、良い?』
「ええ、」
『直上に投下、落下エネルギーを合わせ直接攻撃、その後は、適当な空母に上がって足場を確保する。』
ミサは頷いた。
『カウント開始、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、』
ロックが外され、投下された。
2機のエヴァが一直線に使徒に向かって降下して行く。
プログランスを構える。
急速に海面が近付く、一気にプログランスを使徒に突き刺す。
海中に沈む、直ぐに離脱し、空母を目指す。
01は空母によじ登り、プログランスを構えた。
02もやや遅れながら同じ空母によじ登った。
そして、ソニックグレイブを構えた。
暫くして、モニターに映る使徒の反応が急速接近して来た。
「きたわねん」
ミサは舌なめずりをして01を加速させる。
同じくリコも02を加速させた。
使徒が一気に飛び掛かって来た。
漸く姿を表した使徒は、巨大な鯨のような姿であった。
色は、深い青である。
「でやあああ!!」
01は、体捌きで体当たりを交わし、プログランスを短く持って、横っ腹を切り裂いた。
02は、反対側を、
使徒はそのまま空母を飛び越し海中に戻った。
物凄い並と衝撃で空母が大きく揺れる。
戦闘機が次々に海中へと落ちて行く・・・
両機は体勢を立て直し、次の攻撃に備えた。
あの巨体である。あの程度では、その能力を少し削る程度であろう。
SS機関を持つ使徒にとっては、時間さえあれば容易く修復できる範囲である。
「・・・」
モニターの反応はある程度の距離を維持しているようだ。
修復をしているのか?攻撃の機会を見計らっているのか?
「・・・」
内部電源の残量は刻一刻と減っていく。
「・・・役目から考えるとありがたいのかしら?」
『どうかしら?』
突然急速に近付いて来た。
「え?」
跳ねない、
『拙いわ!』
凄まじい衝撃が走った。
空母に体当たりしたのだ。
次々に爆発が起こる。
『「きゃっ!!」』
両機は空母の爆発に飲み込まれた。


ウィングキャリアー、
ミクは、到着を待っていた。
モニターに映った日向の面持ちは暗い。
「・・・どうかしたの?」
『01と02がやられたんだ・・・未だ詳細は不明なんだが・・』
「え?」
遥か遠方に望遠で太平洋艦隊は捉えている。
ミクは緊張した面持ちで太平洋艦隊を見詰めた。


東京、ネルフ本部、発令所、
「ミサちゃんとリコちゃんは未だ掴めないの!?」
『申し訳ありません。範囲外です』
「・・・・」
『初号機のATフィールド中和と同時に全火力による総攻撃を行う様に』


ウィングキャリアー、
『投下準備完了』
「・・・行くよ」
ストッパーが外され、初号機が投下された。
初号機は海中へと入った。
軽く体を動かしてみる。
地上とは比べられないが、それなりに軽快に動く、
モニターに、使徒の反応が映った。
水中用特殊アクティブソードを振り回してみる。
(これなら行ける)
使徒に向けて一気に加速させた。
使徒は接近してくる初号機に気付き、対応として体当たりを選んだ。
初号機に向けて急速接近してくる。
対して、アクティブソードを構え、接触と同時に一気に突き刺した。
しかし、圧倒的質量差にそのまま弾き飛ばされそうに成る。
突然水中衝撃波が複数発生した。
使徒が苦しんでいる。
「何?」
使徒に魚雷が次々に突き刺さっている。
ATフィールドさえなければ、ダメージは与えられる。
今までに破壊され撃沈された船に乗っていた仲間達の敵討ち、総攻撃が続いている。
使徒はATフィールドを中和している者、初号機を振り落とそうとした。
「くううぅぅ・・・・」
振り落とされては行けない、水面に向かっている。
一気に空中へと飛び出し凄まじい勢いで振られる。
「ぐぅううう・・・」
次々に砲撃が使徒のボディに突き刺さる。
「くうぅ・・・」
必死にしがみ付く、
水面に勢い良く叩き付けれ、衝撃が走った。
「ぐふ・・・」
使徒に次々と魚雷が突き刺さる。
無数の爆雷が投下された。
「きゃっ!!」
初号機にまでダメージがあった。
「く」
さっきの勢いで、振り飛ばされてしまった。
アクティブソードはその際に落としてしまった。
海水は使徒の血で赤く染まっている。
しかし、これは致命傷ではない。
「・・・どこ・・・」
視界が悪過ぎ見えない。
そして、センサーの反応もいまいち悪い。
プログナイフを抜き構える。
センサーに強い反応があった。
「え!?後ろ!!」
瞬間初号機は凄まじい体当たりを食らい吹っ飛ばされた。
「きゃああ!!」
全身に激痛が走る。
「くっ、」
それでも何とか体勢を立て直し、再び突進して来た使徒にプログナイフを突き刺し、しがみ付いた。
「くううう」
艦隊の攻撃を待つのである。
使徒は急速に浮上している。
「なにを?」
その時、気付いた。
今進路上に戦艦がある。
「え!?」
戦艦に急速に迫っている。
そして、そのまま戦艦の艦底にど派手に叩き付けられた。
「ぐふっ・・・」
ミクは余りの衝撃で軽く血を吐き、そのまま意識を失った。


初号機のコアで、アスカは目覚めた。
今、初号機は海中を沈んでいる。
「・・・またしても・・・ミクを傷付けたわね・・・絶対に許さない。」
初号機は桁外れに強靭なATフィールドを広げた。
初号機を中心にして海水が押し広げられ、海底が露になってくる。
使徒は海底に落下し、まさに陸に上がった魚のように、ぴちぴちと跳ね苦しんでいる。
いっしょに回避し切れなかった輸送艦を含むいくつかの艦船が海底に叩きつけられて爆発を起こした。
初号機は手にATフィールドを集中し、ATフィールドの剣を作り出し、一気に使徒に向けて走った。
「しねぇええええええ!!!!!!」
使徒を切り刻む、
直ぐに、使徒は只の肉片へと変わり果てた。
その中に赤く光るコアを見つけた。
「これで終わりよ!」
初号機はATフィールドの剣をコアに突き刺し、コアを破壊した。
「・・ふぅ・・・これで、大丈夫ね」
アスカはゆっくりと瞼を閉じ、再び眠りについた。


「・・ん・・」
ミクは、エントリープラグの中で目を覚ました。
『大丈夫か?』
モニターに発令所が映った。
「あ・・うん、何とか、」
『ミクちゃん申し訳無いんだけど、ミサちゃんと、リコちゃんが海底で助けを待っているの、引き上げてきてくれないかしら?』
「うん、分かったよ」
ミクは、センサーで両期の位置を探し出して、初号機は深く潜り、海底の両機を救出した。


翌日、東京、東京帝国グループ総本社ビル会長室、
耕一とユイが、先の戦いの衛星からの映像を見ていた。
「・・・凄過ぎるな・・」
「・・はい、」
「SS機関のなせるわざか・・・やはり、人類には大き過ぎる」
「そうですね。」
「・・・しかし、これを毎回使用するわけには行きません」
「当然だ。味方の被害が甚大過ぎる。極力使用しない・・・初号機は追い詰められないような戦術を取ってくれ、新型のエヴァならエントリータイプもあまっている」
「はい」
「では、私は委員会に行く」
耕一は席を立ち、会長室を出て行った。
耕一が出て行った後、暫くユイは何かを考えていたが、やがて大きな溜息をついてから、ソファーを立ち部屋を出た。


その日行われた国際連合最高委員会に出席した耕一が、5大国やその他のその支援国の代表を叩きのめし、ネルフの一部権限強化を認めさせ、更に先の予算の大幅な増加に関する反対を押さえ込んだ。

あとがき
さて、未来逆行編の方も第4話を更新しました。
ミクの精神状態は回復(単に、シンジの事を思考の外に外しただけかもしれませんが、)
して来ましたが、ある意味相変わらずですが、アスカの暴走は凄まじい事になっています。
そして、ユイの心労が大きくなってきていますね。
さて、これから、どうなって行くのでしょうか、