背徳 逆行未来編

◆第3話

東京、ネルフ本部、上級職員寮、リコの部屋、
ミサがリコの部屋にコーヒーを飲みに来ていた。
「う〜ん、相変わらず良いコーヒーね」
「まあね・・・それよりも貴女、受験勉強は良いの?」
リコはシャーペンを置きミサに尋ねた。
「ん〜、ま、何とかなるっしょ」
リコは呆れかえったような表情でミサを見た。
「・・・そうね、ミクに勉強教えてもらう?」
「はあ?あの子1こ下よ」
リコは軽く息を吐いた。
「これ、あの子が待機室に忘れていった問題集」
俗に一流と呼ばれる大学の赤本だった。
「・・・・はい?」
「頭の中は少なくとも貴女より3つは上ね」
因みにリコは高校3年生の勉強をしている。
「・・・」
ミサは一瞬私ってチルドレンで一番馬鹿?と思い浮かんだ。
「全く、さっさと」
警報が鳴った。
「来たわね」
「ええ」


その少し前、ネルフ本部、ケージ、司令室、
ユイ直接の指揮の元、過剰シンクロモードの実験が行われ様としていた。
ミクは既に搭乗を済ませ開始を待っている。
「ユイ博士、準備が出来ました。」
マヤが報告し、ユイは軽く目を閉じ、そして開いた。
「・・ミクちゃん、準備は良いかしら?」
『うん』
「では、これより、過剰シンクロ実験を行います。皆、そして、ミクちゃん、頑張ってね」
シンクロモードが切り替わり急激にシンクロ率が上昇していく。
警報が鳴った。
「何!?」
オペレーターたちは半分顔面蒼白になって事態を把握する為に大忙しである。
「巨大な飛行物体がここに向かって接近中!!」
「実験中止!、直ちに迎撃体制に入りなさい、ミクちゃんは通常モードで待機」
ネルフが再び慌ただしく動き始めた。


ネルフ本部の発令所のメインモニターに怪鳥が写った。
『目標は現在、南から東京を目指しています。』
『到着まで、30』
『パターン、ブルー!』
『南側の全防衛システムを上げろ!』
『『了解』』
ユイはじっとモニターを見詰めている。
射程距離に入り一斉に攻撃が仕掛けられた。
しかし、全てATフィールドに阻まれ無効である。
『攻撃中止、陽電子砲を』
暫くして、陽電子砲が発射され使徒のAT不イールドを貫き大爆発を起こした。
『やったか?』
ユイは顔を顰めた。
「強いわね」
煙の中からほぼ無傷で使徒が姿を表した。
『・・エヴァを衛島に空輸します。宜しいですね』
日向が尋ねた。
「ええ、」
『エヴァ初号機と01を空輸しろ』
『了解』


ウイングキャリアー、初号機、
通信回線が開かれ、ミサが映った。
『調子はどう?』
「え?・・・問題ありませんよ」
『ん〜だめね〜』
ミクは何か良く分からないって顔をした。
『敬語なんか使っちゃだめよん、同じエヴァぁのパイロットでしょ』
ミクは軽く笑みを浮かべた。
「・・ミサって呼んで良い?」
『勿論、ミクって呼ぶわよん』
「・・うん・・」


東京湾に浮かべられた広大な使徒迎撃専用メガフロート、衛島、其処に、2機のウイングキャリアーは、着陸した。
直ぐに、エヴァが下ろされ、アンビリカルケーブルが接続された。
『01は、長距離砲で射撃、初号機は待機し、いつでも動けるように』
『了解』
「はい」
遥か遠方に使徒が見えた。
大きさは、全翼が120〜140メートルと言ったところか、只の鳥と言うよりは、どこか翼竜にも似ており、怪獣映画に出て来ても違和感はなさそうである。
01が、レールガンを構え狙いをつけた。
そこら中から無数の砲兵器が表れ、照準を使徒につけた。
圧倒的火力によりATフィールドの干渉能力を超えて撃破する。その為に用意されたものである。
更には、海上には数十の軍艦が浮かんでおり攻撃に参加する。
『目標、射程距離まで120秒』
操縦桿を握るミクの手に力が入った。
前回のように、どこか現実離れした目標や作戦ではなく、現実味があるためか、自分が戦場にいるという恐怖は大きく増しているのかもしれない。
『ミクちゃん』
ユイから通信が入った。
「・・はい?」
『今晩の夕飯は何が良い?』
「え・・」
『何でも好きなものを用意するわよ』
「・・・・」
ミクは、ユイが、自分の恐怖を紛らわす為に話し掛けている事が分かり、そして、その恐怖が少し薄らいだ事で、ユイに感謝した。
「・・ハンバーグ・・」
『分かったわ』
『あと60秒です』
ミクは、使徒をじっと見詰めた。
そして、使徒が射程距離に入ると同時に凄まじい数の攻撃が仕掛けられ、衝撃が衛島全体を揺るがした。
使徒は直ぐに光に包まれ見えなくなった。
しかし、センサーは使徒のエネルギーを検出し続けていた。
第1段の攻撃が止んだ時、使徒に与えたダメージは、表面を傷付けただけで、致命傷には程遠かった。
『ミクちゃん、接近して全力でATフィールドを張るんだ』
日向の指示にミクは頷き、初号機を走らせた。
そして、宙へと跳び上がり、ATフィールドを全開にした。
その瞬間、第2段の攻撃が仕掛けられた。
『ミクちゃん避けて!!』
「え?」
ユイの叫びの直後、前方の煙の中で何かか光り腹部に激痛が走った。
「きゃあああ!!!!」
爆煙の中から使徒がゆっくりと姿を表し、口からエネルギーを放ち、支援兵器を一瞬にして蒸発させた。
初号機は地面に叩き付けられた。
「・・お母さん・・・」
ミクは呟いた後に意識を失った。


ネルフ本部、発令所、
『初号機沈黙!!』
『633から899までの支援兵器反応ありません!!』
『第4から第7までのサイトも壊滅!!』
『パイロットの生死不明!!』
『一切モニターできません!!』
「ミクちゃん・」
ユイの言葉と身体は震えていた。
『何故だ!!何が起こったんだ!!』
日向が叫ぶ中、使徒は次々にエネルギーを放ち支援兵器を蒸発させていく。
『単純に出力が足りなかったんです。中和しきれませんでした』
マヤが冷静にその答えを導いた。
『しかし、シミュレートでは!!』
『パイロットの心理不安、それが答えです』
『01被弾!!破損率26%!!』
『くっ、一旦下げろ!!東京で迎え撃て!!02を配置!!』
『『『了解!』』』
『・・SS機関始動・・初号機再起動?』
一人のオペレーターの声にユイはハッと顔を上げた。


衛島、初号機、コア、
アスカは、使徒を睨みつけた。
「よくもミクを傷付けてくれたわね」
余りの凄まじい殺気に初号機の方を振り向いた。
「腹部修復」
初号機の腹部の大穴が一瞬で修復された。
「殺してやる」
初号機は2枚のATフィールドの羽を広げ、宙へと舞い上がった。
使徒は初号機に向けてエネルギーを発射したが、初号機はATフィールドの盾でそれを弾いた。
「私達が戦った使徒はこんなもんじゃなかったわよ!!」
初号機はATフィールドの剣を作り出し、使徒に向けて斬りかかった。
使徒は必死で交わそうとした結果、片翼を切断されるだけで済んだ。
使徒が凄まじい絶叫を上げながら地面へ向けて落下した。
「ミクを傷つけた罪は重いわ、」
剣先にATフィールドを凝縮していく。
使徒は恐怖に怯え初号機を見上げた。
「地獄に落ちろ!!」
初号機は剣を振り下ろし剣先から凄まじいATフィールドの衝撃波が放たれた。
衝撃波は使徒を魂まで粉砕するだけでは飽き足らず、衛島の中央部を貫き、東京湾を抉り地震を起こした。
初号機はゆっくりと地面に舞い降り、羽を消した。
「ミクは、私が守るわ」
アスカはゆっくりと瞼を閉じ眠りについた。


東京、ネルフ本部中央病院、
ミクが収容され検査室に運び込まれた。
ユイもやって来た。
「ミクは?」
「此方です」
医師はユイを検査室に案内した。
・・・・
・・・・
ユイの元にミクのデータが次々に届けられている。
医師は、全ての判断をユイに任せている。
何か有った時に責任を取りたくないと言う事もあるが、所詮国内有数の実力しかない医師と、僅か数年で21世紀の医学の基礎を築いたユイとでは格が違う。
ユイは一通りデータに目を通してほっと息をついた。
全く問題無し。


夜、病室、
ミクが目を覚まして、暫くして、看護婦がユイの特製ハンバーグをメインにした夕食を運んで来た。
「・・あ・・・」
超多忙にも関わらず、ミクの為にわざわざハンバーグを作ってくれた。
ミクは嬉しさの余りに目から涙が零れた。


東京帝国グループ総本社ビル会長室、
「・・戦い、見せてもらった。」
「ええ・・・・」
「今回の被害、衛島の全機能の78%が損壊を受け、21%の支援兵器が壊滅・・・被害額は20兆円を突破するだろう」
ユイは俯いた。
「これからどうする?」
ユイは顔を上げ、ユイの対応策を伝えた。
それは、エヴァ重視から、エヴァ軽視へと移行し、様々な非決戦兵器によって使徒を倒せる戦力をつけることであった。
ユイが研究していた物も、30年の月日が、実現可能なものへと昇華させられている。
今ならば、エヴァ以上の兵器まで出切る筈である。
だが、問題は予算、いったい何百兆掛かるか分からない。
耕一は暫く考えているようだ。
「分かった、予算は200兆に押さえろ、議会は私が黙らせる」
「・・はい・・・」
いったいそれだけの予算をどこから持ってくるのか・・・その為にどれだけの者が犠牲に成るのか・・・
ユイは恐ろしくて考える事を止めた。


ユイはネルフ本部に戻り、その日の内に、マヤ指揮の元作られていた様々な兵器の中から特に必要な物や有効な物を選び、莫大な資金を掛けて、工期を大幅に急がせた。
各生産ラインは、大幅に人員も増やされ、フルピッチで24時間動き続ける事に成った。


翌日、ネルフ本部、技術棟、
退院したミクは、シンクロ実験の為に本部を訪れた。
「あら?おはよう」
「おはよ」
リコとミサであった。
「・・おはよう」
ミクは軽く笑みを浮かべて返した。
リコは赤本と鞄から取り出してミクに渡した。
「これ、忘れていたわよ」
「あ・・有り難う」
「ところで、」
「はい?」
「ミサに勉強教えてあげてくれない?」
ミサは顔を顰めミクは苦笑した。


ユイは、碇特別研究室で様々な兵器の開発研究を行っていた。
「ユイ博士」
マヤが報告書を持ってやって来た。
「ここに座って」
ユイは近くの椅子を進めマヤは其処に腰掛けた。
「どう?」
「順調ですね、週末には、1つ完成します。」
「そう、あの子達に負担を掛けない為にも私達は頑張らなくちゃ行けないのよ」
「はい、分かっています」


数日後、東京中学Aコース、
ミクは選抜クラス入りを果たしていた。
「おめでとう」
「選抜クラスへようこそ」
歓迎される中ミクは軽く頭を下げて選抜クラスに入った。
そして、開始された授業はそれまでの授業よりも遥かに詰め込まれた密度の濃い物であった。
確かに、並みの天才ではこの授業はついて行けないかもしれない。


昼休み、ラウンジ、
ミクは、安齋、佐々木、安藤に誘われ、一緒に食事を取っていた。
「惣流さんは、どこに住んでいるの?」
「・・確か、C―12ブロックだったかな?」
「へ〜、便利なところね」
「うん・・」
その後、暫く、話をしていた。


日曜日、ユイは、ミク、ミサ、リコの3人を連れてピクニックに行く事にした。
3人とも連れ出すともなれば、直ぐに戻れる場所で無ければいけない為そんなに遠くには行けなかったので、箱根に行く事にした。
特種封鎖地区、箱根、今は、人の手から離れ、信じ難いような再生力で自然が再生している地である。
護衛や万が一の為にと言う事で数百人の保安部員や数十機のヘリや垂直離発着機も行動を共にしているのだが、少なくとも4人からは見えないように気をつけている。
「うや〜、おいひい」
「ちょちょっとミサ貴女いったいに何を飲んでるのよ!」
「あにって?ビ〜ルよん♪」
「ミサ、未成年なのに飲んじゃ駄目だよ」
「ぬあ〜にいってんのよ、ほら、リコもミクも飲みなさいよ♪」
ミサは二人に缶ビールを渡した。
後部座席で続くやり取りを聞きながら運転席のユイはくすっと笑った。


大きな湖の周りに広大な自然が広がる箱根、森や草原の中に、所々に廃墟となったビルが見え、ここが嘗て都市だったことを思わせる。
車を降りた一行を迎えたのは爽やかな風だった。
常夏の日本とは思えないような爽やかな風、ここはある意味楽園なのかもしれない。
「風が気持ち良い・・」
ミクは深呼吸をして新鮮な空気を胸一杯に吸い込んだ。
「げろげろ〜〜」
しかし、ミサが吐いてしまい、折角の雰囲気を打ち壊しにした。
「・・無様ね・・」


ユイはビニールのシートを見晴らしの良い草地に敷いた。
「お昼はここで食べるから、12時までには戻って来なさいね」
「うん」
「分かりました」
「あうう〜」
三者三様の反応を示し、ミクとリコは自由に散策に出かけ、ユイは酔いつぶれたミサの介抱に努めた。


ミクは森の奥に入っていった。
何か惹かれるような感じ、そして、道を進むに連れ、辺りの空気が清浄な物に変わっていく、
「・・・神域か聖域と言ったところね・・・この先に何があるんだろ?」
ミクは興味心に従い更に森の奥へと進んだ。
細い道はきらきらと輝く小川に沿って上流へと向かっていた。
「・・綺麗・・」
ミクは小川の辺にしゃがみ、手で水をすくった。
そして、口をつけて水を飲みこんだ。
「ふは・・美味しい」
人の手が入らない自然の水はこんなにも美味しい物なのかと、ミクは驚いた。
少しその場で休憩してから、更に上へと登ってみた。
そして行きついた先には泉が存在した。
周囲は木々に覆われ、泉は美しい水を湛え、そして、泉の中心には小島が存在した。
そして、小島には、純白に輝く石が有った。
石は、整った形をしており、人工物であると思われる。
ミクは周囲を見まわし、小島に渡る方法を考えた。
一回り見てみたが、渡る方法はなさそうである。
ミクは少し離れてから加速をつけて一気に飛び渡った。
10メートル近くは離れていたのだが、ミクは綺麗に着地を決めた。
突然、ミクの中に感情が流れ込んで来た。
暖かい物に包まれているような感じになった。
「・・何?」
ミクは中央の白い石に近付いた。
どうやら墓石のようである。
ここからこの感情が流れ出している。
「あっ・・・」
碑銘が、綾波レイである事に気付いた。
「そっか・・・レイさん、お父さんと又会えたんだ・・・」
ミクは祝福したい気持ちとは裏腹に、どこか、哀しさも感じていた。
ミクはこの暖かい物に包まれるような気持ちを味合う事にした。


3人は、ミクの帰りを待っていた。
既に昼になっているが未だにミクは戻ってこない。
「何かあったのかしら?」
暫くしてミクは戻って来た。
「えへへ、ごめんね、昼寝してて」
「ま〜そんなこったろ〜と思ったわよ、ま、それより早くお弁当食べましょ」
ユイだけはミクに何か有ったことが分かったが、それが何だったのかまでは分からなかった。
只、ミクにシンジの死以来消えていた明るさが戻った事が嬉しかった。


東京、ネルフ本部発令所、
「間違い無いんですね?」
『はい、8thチルドレン班が全員行方不明になりました。』
「・・・連絡は?」
『全く不能です。』
「8thは?」
『博士の元に戻った事を確認しました。現在他の班が総力を上げて警護しています』


青葉は通信回線を伊吹研究室に繋げさせた。
「博士、8thチルドレン班が全員行方不明に・・」
『ミクちゃんは?』
「博士の元に戻っていますが、」
『・・・警戒を続けて、何か変化があったら直ぐに退避させられる準備を』
「はい」
青葉は、部下に指示を伝えるように言った。


夜、ミクは、自分の部屋でレイの事について考えていた。
「・・レイさん本当に幸せなんだな・・・」
ミクは、ガラス越しに、ビルの合間から姿を表している月を見上げた。
どこか、その月がレイのイメージに合ったのかもしれない。

あとがき
さて、これからどうなるのでしょうね。
シンジをトップとしエヴァを中心にして戦う本編と、ユイをトップとし、超近代兵器を駆使して戦うであろう逆行未来編。どっちの方が良いのでしょうか?
続きが読みたい人は、感想&続き書けメールを下さい。
次は、暗黒編か・・・・未だ暫く待ってください、未だ、殆ど書けていません。
暗黒編は、連日投票するよりも、感想&続き書けメールを送っていただいたほうが良いのですがね・・・
それと、配色募集してます。
本編とセットで対比できるような色お願いします。
では、又