ネルフ本部、大ホール、 シンジの葬儀が取り行われていた。 死因は、心臓停止による突然死と成っている。 「お父さ〜〜ん!!」 ミクが涙を流して泣いている。 ユイは、改めて自分の罪の重さを知った。 シンジを救う為、そう言って、シンジの娘であり、自分の孫に当たるミクからその両親を奪うに至った。 (・・ごめんなさい・・) ユイは涙を流した。 それは、周りのある程度の事情を知る者から見れば、漸く再会した息子に再会して直ぐに先立たれ涙を零す母親に映ったであろう。 耕一がユイに近付いて来た。 「話がある」 ユイはゆっくりと頷いた。 葬儀が終わった後、総司令執務室で二人は会った。 「・・お話とは?」 「・・・シンジを過去に送ったな・・・」 ユイは跳び上がらんばかりに驚いた。 「な、なぜ・・その事を?」 「聞いてしまえば後戻りは出来なくなるぞ」 ユイは暫く迷った。 「・・教えてください。」 それは、何故、耕一がフォースインパクトに手を貸そうとしているかということもさす。 「付いて来い」 二人は中央エレベーターに向かった。 ユイは上に出るのかと思ったが、そうではなく、耕一はスリットにIDカードを通しただけだった。 エレベーターは下へと動き出した。 かなり長い時間が経過した。 既にネルフ本部は全て通過しているはずだ。 漸く止まった。 「ここは、最重要機密区画だ」 エレベーターの扉が開いた。 ユイはガラスの側まで駆け寄り、階下を見下ろした。 ガラスの向こうには凄まじく広い部屋が広がっており、無数の装置が設置され、 何か巨大な結界を形成しているのか、空中に浮かぶ光が特殊な形を示している。 結界の数は10や20では利きそうに無い。 「・・・これは?」 「・・サードインパクトのキャンセル。リリスの力を取りこんだとは言え、所詮はリリンである綾波レイに出来るとでも思ったのか?」 「・・・では、まさか!」 「そうだ、此方の世界側の維持装置だ」 耕一はボタンを押した。 床が下がり、結界の階に下りた。 「こっちだ」 凄まじい精神波が発生している。 このエネルギー、ATフィールドなどよりも数次元上のレベルである。 ユイは耕一に従い、中央へと歩みを進めた。 中央に近づくに連れ、全ての穢れが浄化されるような、そんな心地良い雰囲気に包まれた。 (・・何?) そして、この巨大な結界の中央には巨大なクリスタルがありその中には、黒い長髪をした女性が入っていた。 ユイはその女性に見覚えがあった。 「・・・ルシア、会長婦人・・・」 「そうだ」 「・・・私がフォースインパクトを支援している理由は分かったな」 「・・・・はい・・・・しかし・・・なぜ、婦人が?」 「・・・私達の見かけが、年齢よりも若過ぎると言う事の理由は、私達は、宇宙人の姉弟だからだといったことを覚えているか?」 「・・・まさか、本当だったのですか?」 「ああ、私達は、正確には混血だ。嘗て、神やオメガと共にこの宇宙の覇権を争った3大勢力の一つの最後の末裔だ」 「・・・・」 「セカンドインパクトの際は二人がかりで何とか押さえ込んだが、サードインパクトでは、こうするしかなかった。私は、キャンセルの完成を約束した。」 「・・・この事をシンジは?」 「僅かだけなら知っているが役には立つまい」 「・・・・・」 「必ず協力してもらう。必ずフォースインパクトを成功させよ」 「・・・・会長自身の力は?」 「精神の強さは受け継いだが、肉体は所詮リリンと大して変わらん。せいぜいオリンピックで金を総なめにする程度だ。」 「・・・・分かりました・・・・」 耕一はユイを残し立ち去った。 夜、ユイのマンション、 ユイは帰宅と同時にベッドに倒れこんだ。 翌日、朝、ダイニング、 ユイの作った料理が食卓の上に並べられている。 二人は無言で淡々と食べつづけていた。 大体食べ終わった頃にユイが口を開いた。 「・・ミクちゃん・・・」 「ミクなら大丈夫、ミクは強い子だもん」 ミクは強がりを言った。 「・・・そう・・私は、ネルフの総司令を勤めなくては成らないから、とても忙しくなるわ、でも絶対に二人の時間は作るから」 「大丈夫、ミクは子供じゃないから」 精一杯の背伸び、しかし、母、アスカの嘗ての背伸びとは全く違う。 ユイは涙を零しそうに成ったがぐっと堪えた。 総司令執務室、 ユイは早速総司令代理に収まり、事務手続きを済ませた後、思考に入った。 フォースインパクトが発生すれば、直接数億、そして、間接的に十数億の人間が死亡する。 だが、発生させなければ如何なるか、ルシアの寿命がどれだけかは分からないが、少なくとも普通の人間よりは遥かに長い。耕一が公開しない理由はここである。 もし公開してしまえば、人一人、しかも、純血の人間ではない者を人柱にすれば人類は長きに渡って繁栄を続ける。その間に解決策も出て来るであろう。世界はそう動く、 だが、耕一にとって、そんな事は許される筈が無い。 それは、碇の行動理由と同じである。 そして、シンジも、 しかし、耕一が行動せねばならなくなったのは、碇やゼーレが起こしたサードインパクトである。 その片側の原因であり、本来ならば最大の対抗勢力となるはずの組織を協力させてしまったのも自分に原因がある。 ユイには、ルシアを人柱に使う事など出来なかった。 自分が代われるならばそれが良い、元は自分の責任なのだ、だが、それは出来ない。 では、ルシアを救う為に20億を超える人間を犠牲にするのか、やはりそれも出来ない相談である。 「・・・・」 「・・・私は・・・どうしたら良いの・・・」 ユイは頭を抱え込んだ。 人類史上最大の天才にも手遅れとなっている事項は犠牲を出さずに終わらせる事は出来ない。 東京中学Aコース、 ミクは試験を受けていた。 流石に、シンジの事が堪えている為、如何も調子が乗らない。 早速、用紙が回収され、採点機に掛けられた。 「・・・はぁ〜〜」 ミクは大きな溜め息をついた。 ミクはラウンジで昼食を取る事にした。 流石は、世界最高峰の中学、がやがやしながら食事を取る者はいない。 ミクは、サンドイッチセットを頼んだ。 暫くしてサンドイッチセットが運ばれて来た。 ミクはサンドイッチを口に入れた。 午後、成績が発表された。 ミクは6位だった。 「惣流さん」 ミクが振り向いた先にはトップ3が立っていた。 「お父さんの事、大変だろうけど」 ミクは驚いた。 シンジに死亡はニュースで流れたがアスカとの関係、ましてや自分のことなど、流れていないはずなのだが、 「俺の父親は、ネルフの中級幹部だから」 佐々木が理由を説明した。 「・・そうなの・・・」 少し、話をした後、4人は分かれた。 3日後、東京帝国グループ総本社ビル会長室、 ユイは耕一の元を訪れた。 「決断してくれたな」 「・・・はい・・」 ユイはレポートの束を机に置いた。 オリジナルの補完計画である。 「・・・やはり、残していたのか・・・」 「・・・残すべきではなかったのかもしれません・・・」 「もはや過ぎた事だ、これから償ってもらう」 ユイは少し俯いた。 「補完計画に関しては私が計画を進める。君は生け贄の方を頼む」 「・・・分かりました・・・」 「で、他に用件は?」 「・・・」 「・・・」 「・・・依代の事で・・・」 「分かった、聞こう」 ネルフ本部、技術棟、 ミクが搭乗実験を行っていた。 「・・エヴァに乗ってると何だか心地良いのよね・・まるで、お母さんに抱かれているみたいで・・」 『ミクちゃん、準備は良いかしら?』 マヤが尋ねた。 「・・はい・・」 『では、これより、機体連動試験を開始します。』 テストは1時間ほどで終了し、初号機の設定がミクにあわされた。
あとがき 背徳逆行未来編第2話をお届けします。 タイムコードは、一応本編第2話にあわせています。 では、続きを読みたい人はメールを送ってください。