背徳 逆行編

◆エピローグ

第2新東京市で開かれた日本を中心とした国際会議で、全ての罪はゼーレにのみ着せ、各国の責任は軽微なものに留めると言う事が正式に決定され、ネルフの処分の如何は、ある意味戦勝国である日本に全て任された。


問題となったのが、碇ゲンドウ総司令の処分、彼の計画は未遂に終わっている。確かに、ゼーレの計画に協力している、だが、結局はこれを潰すつもりであり、色々とその為に動いていた。そして、動機はともかく特務機関ネルフを指揮し、使徒を殲滅する事で、人類を救ったと言う大きな功績は事実である。
セカンドインパクトの恐怖をその身を持って体験している者達は勿論、死刑を唱えた。
だが、組織の長を裁くと成ると如何なる罪であったとしても、その組織の内情や機密事項を公開せざるを得ない。ならばいっそのこと・・・と言う実に政治的な理由に基づく意見も強かった。
最終判断としては、後者が選択された。
現在、追い求めた妻、碇ユイの記憶及び感情の喪失によるショックから半分廃人に成り掛けており、放置しても問題無いと判断されたからでもある。


ネルフ支部は全て完全解体し、ネルフ本部は、日本政府管轄下で、その優れた技術の民間化を進めるための組織に再編され、その長官として、功績が高く、又、現在の最高の科学者である伊吹マヤを置く事が決まった。


エヴァは破棄、チルドレンはその資格を抹消し、使徒戦に於ける大きな功績に対する十分な報酬を与え、更に、マスコミなどの対象の感情を考慮しない報道に曝されない様に、チルドレン保護法が制定される事が決まった。


このようにして、次々にその処分が決定したところで、ゼーレとネルフに関する都合の良い情報が公表され、世界中でゼーレ狩りが行われ、連日幹部クラスの逮捕が続いた。


そして、ゼーレのトップ10人の裁判が始まった。
死刑が確定している裁判ではあるが、完全公開によって行われた。




最終決戦から1年余りの月日が流れた。


今、ミサトは、アメリカを旅していた。
誰の配慮かは分からないが、ミサトの口座には未だに定期的に金が振り込まれている。
まあ、ありがたく使わせてもらっているが、
年月が過ぎ、使徒とネルフが消え、情報が公開されても尚、何かは分からないが大きなしこりが残っている。
風の噂では、加持はスパイ活動がばれて殺されたらしい。
・・・答えを見つけ出すには後どれくらいの時間が必要なのであろうか、


京都にあるユイの家で碇はユイの抜け殻の看病を未だに続けていた。
決して覚めぬ悪夢が覚める日を待ち続け・・・
近所では、良い旦那さんだと言う評判であるが、実際には、壊れているのは、碇の方であり、もはや元には戻らないであろう・・・例え、ユイが碇の前に再び姿をあらわしたとしても・・・


鈴原家は長野に移っていた。
トウジは、下半身不随に陥っていたが、必死のリハビリによって、漸く1人で歩けるように成ってきた。
妹のナツは、何故か、完治した状態で戻って来た。
そして、報酬と見舞い金と退職金と言う形で3億円もの金が支払われていた。
トウジのリハビリに付き合った献身的なヒカリの姓が鈴原に成るのは、時間の問題であろう。


ネルフ本部の元副司令執務室、現長官室にはネルフ長官、伊吹マヤの姿があった。
彼女にはあの総司令執務室はあわなかった。その為こちらを使っている。
マヤは、新技術の開発や、その民間化と共に、セカンドインパクトに始まった様々な被害者の為に様々な支援や援助を行っている。
それが、裏の計画に関わった者としての責務であり贖罪であるとも考えている。


昼頃、第3新東京市の碇家にユイの声が響いていた。
「お昼御飯出来たわよ〜!」
ユイは姉役として、母親として、二人を見守り続けている。
レイ、ネルフ、エヴァや補完計画に関する情報は、誤った情報を流し、完全に真実を分からなくさせた。
これまで、嘘をつくときは同時に必ず真実を残さなければいけないと考えてきた。
だが、それが大きな過ちを生んだ。
今回は真実を残さなかった。自分が死ねば、真実は永遠に消え去るだろう。
碇シンジと碇レイがダイニングにやって来た。
特例で認められた二人の結婚。今や本当の夫婦になっている。
まだ、高校生ではあるが、
今、漸く掴んだ幸せの真っ只中で、それをしっかりと味わっている。
・・・・
・・・・
楽しそうに食事を取る二人を見ながら、二人が独立し真実を闇に消す為に自分がこの世から消える日もそう遠くは無いかもしれないとユイは考えていた。


あとがき
背徳逆行編完結です。
如何だったでしょうか?
次は、本編と未来逆行編ですね。
それでは、