背徳 逆行編

◆第4話

オーバーザレインボー、飛行甲板、
二人はヘリを降りた。
「ヘロ〜ミサト・・って・・ミサトは?」
アスカはミサトがいないと言う事に驚いているようだ。
「ん?葛城2尉は遅刻したので置いて来た」
「・・置いて来たって・・・ん?ミサトは1尉じゃなかったの?」
「ああ、降格した」
アスカはちょっと額を押さえ溜め息をついた。
「で、アンタが、サードチルドレンね」
「そうだよ、宜しく、惣流さん」
シンジは笑みを浮かべた。
「アスカでけっこうよ、そっちがファーストね」
冴えないとは言わなかった。まあ、今は冴えているだろう。
「ええ」
「ブリッジに案内してもらえるかな?」
「・・良いわよ、こっちよ」
アスカはその赤みがかった金髪を風に靡かせ、歩き始めた。


第3新東京市、ミサトのマンション、
保安部員がマスターキーでドアを開けた。
その瞬間、ごみの雪崩によって保安部員は押し流された。
「ぐお・・な、なんと言う、トラップを・・・」
地面に叩き落とされた保安部員は血とごみの中でそう呟き、目を閉じた。


オーバーザレインボー、ブリッジ、
シンジはIDカードを見せた。
「おやおや、中学生のカップルのデートではなかったんだな」
「ある意味そうかも」
シンジは小さく呟きレイは頬を赤く染め、提督は青筋を浮かべた。
「では、早速ですが、弐号機とセカンドチルドレンの引き渡しを」
「まだだ」
「・・・いつ?」
「新横須賀に陸揚げしてからだ」
「・・・まあ、良いでしょう、しかし、有事の際の指揮権は我々にあることをお忘れなく」
「その時、の為の我々だ」
「いったいいつから我々は宅配屋に転向したのかな」
「はっ、某組織が結成された後と記憶していますが、」
「・・・綾波」
レイは鞄からビデオテープを取り出した。
「提督、機密事項ですが、これをご覧になってからもう一度お答え下さい」
「・・いったい何が写っていると言うのかね、」
15分後、
「今すぐ引き渡そう」
いったい何が映っていたのか提督の顔は蒼白だった。
「有り難う御座います」
提督は書類にサインをした。
「提督、何をご覧になったので?」
艦長が提督に尋ねた。
「・・悪夢だ・・」
3人はブリッジを離れた。
「サード、アンタ何を見せたわけ?」
「ん?第3使徒戦、アスカも見ただろ」
「ま、まあね・・・」


食堂、
「不味い」
シンジはそう表し、無理やり調理場を借りて料理を作った。
30分後、テーブルの上には高級精進料理が並んでいた。
「・・す、凄いわね・・」
「そうかな?」
「碇君の料理はとっても美味しい」
レイは笑みを浮かべて言った。
その笑みは食堂にいた兵士達を虜にした。
「さっ、食べようか」
食事中、シンジはアスカが穏やかな視線で二人を眺めていた瞬間があった事が気に掛かった。
(・・なんだろ?)


食後、アスカに連れられて、弐号機の輸送艦に連れて来られた。
「どうよ、これこそ、世界で一番最初に作られた実戦向きのエヴァンゲリオン、制式機、エヴァンゲリオン弐号機よ!」
アスカは弐号機に乗って演説している。
その時、水中衝撃波が走った。
(ガギエルか)
(ええ、艦隊に到達したわ)
3人は格納庫を飛び出した。
イージス艦が破壊され爆発したところだった。
「ふん、アンタ等は旗艦に戻ってこのアタシの腕前を見てなさい」
「・・分かったよ、使徒は任せたよ」
二人はヘリでオーバーザレインボーに戻った。


ブリッジ、
「エヴァ弐号機起動!」
シンジとレイがブリッジに入った。
「使徒ですね」
「我々はどうすれば良い!?」
「空母以外は退避してください、空母は足場にします」
「アンビリカルケーブルを!」
艦長は直ぐに指示を出した。
「・・・しまった!!」
加持がハリヤーに乗り込んでいる。
シンジは通信機を取った。
「加持1尉、敵前逃亡は死刑だ!それが分かっているならば逃げたまえ、逃げられるものならばな」
「何をしている?」
「対空砲ハリアーにロック、離陸と同時に発射」
加持は脱出を諦め、艦内に避難した。
弐号機が宙に舞い、フリーゲートを足場に、オーバーザレインボーに向かってくる。
「総員ショック体勢!!」
弐号機が着艦した。
衝撃が伝わり、軽く船が沈んだ。
使徒はここに一直線に向かっている。
弐号機は、プログナイフを抜き、構えた。
使徒がジャンプし弐号機に襲い掛かった。
「「で、でかい!!」」
弐号機は体捌きで交わし、使徒の腹を裂き、飛行甲板に叩きつけた。
使徒は、飛行甲板一杯に乗り上げた。
『砲撃を!!』
「分かった!」
提督が一斉砲撃を命じ、周囲の艦が使徒に砲撃を掛けた。
ATフィールドを弐号機によって中和され、砲撃をもろに食らい苦痛からか、凄まじい絶叫をあげた。
1分も経たない内に使徒は動かなくなった。


作戦終了後、
「お疲れ様、流石だね」
「まね、」
アスカは笑顔でシンジの渡したタオルを受け取った。
「加持1尉を連行して来ました。」
加持が両脇を屈強な兵士に固められ連行されてきた。
「加持1尉、逃亡は重罪ですよ、言い訳くらいは考えているんでしょうね」
「加持さん、酷い!」


翌日、ネルフ本部、総司令執務室、
オーバーザレインボーの副艦長がジェラルミンケースを机の上に置いた。
「一瞬、ヒヤッとしましたが、事無きを得ました。」
「サンプルが無事ならば問題無い」
「しかし、碇、あの男の着任と同時の営倉入りは少し拙いのではないのか?」
「問題無い、ミスを犯したあの男の自業自得だ。」
「それと、シンジ君はこれの事が分かっていたのかな?」
「分かっていたのならあの男を拷問に掛けてでも聞き出すだろう」
「と言う事は、これには気付かなかった。そう解釈して良いな」
「そうだ」


3時間後、ミサトが召還された。
「葛城2尉、任務放棄は重罪だぞ」
「し、しかし、あれは、サードチルドレンの悪戯電話が・・・」
「君は作戦部長だぞ、子供のような言い訳が通用するとでも思ったのかね」
ミサトは叫びたくなるのをぐっと堪えた。
「まあ良い、今回は特にその罪を問わない、だが・・・・」
碇は其処で言葉を止めた。
ミサトの額に汗が浮かんだ。
「はっ、全力を尽くします」
「下がり給え」


技術部休憩室、
シンジとマヤが話をしていた。
「へ〜、マヤさんて、良い趣味ですね」
「そうかな?」
「ええ、可愛くて良いんじゃないですか」
「へへへ、」
マヤは照れて後頭部をぽりぽりと書いた。
「あっ、そうだ、マヤさん、これ、見てもらえますか?母さんのレポートなんですが」
「どれどれ、」
マヤはレポートを見た。
「ふんふん、流石は碇ユイ博士ね、」
かなり難解な物なのだがマヤは理解したらしい。
「息子として鼻が高いですよ」
「そうそう、この前のレポート参考にこんなの思いついたんだけど」
マヤはエヴァの新兵器の設計図を出した。
「プログシリーズってどうしても構造上、強度が足りなくて短いものしか作れないんだけど、こうすれば、長いのも作れるかなって」
「凄いですよ、これ、貰っても良いですか?」
「ええ」


総司令執務室、
シンジは執務室に入った。
「何の用だ?」
「少し、面白い事があってね、」
「又、交渉にでも来たのかね?」
「いやいや、他人の物で交渉はしませんよ、これは技術部の伊吹2尉の作ったプログソードの設計図です。こんなのが作れるなんて、マヤさんは天才ですね、リツコさんなんかよりも遥かに、」
シンジは設計図を机に置いた。
「・・・これをどうしろと?」
「さあ、時に、素晴らしい事をしても、上司の僻みで、上層部に伝わらない事があるしね、そんな事無く、マヤさんが日の目を見るためにね、それに、これはエヴァの戦力が上がるから、私にとっても好都合なのでね、今日はそれじゃ」
シンジは退室した。


2時間後、マヤは総司令執務室に呼び出された。
「は、はい、ななんでしょうか」
「伊吹2尉、これを君の指揮で作り給え」
冬月がマヤに設計図を渡した。
「あっ!これは」
「分かったかね」
「は、はい!」


赤木研究室、
「せんぱ〜〜い!!」
マヤがリツコに飛びついた。
「きゃ!」
「こ、これこれ見てください!!」
マヤが見せた書類には、マヤが設計したプログソードの作成の指示が書かれていた。
「この私なんかが司令に直接認められたんです〜〜!!」
喜び尊敬するリツコにも喜んでもらおうとマヤはリツコに言ったのだが、リツコの表情は暗くなった。


翌日、第3新東京市立第壱中学校、
「なんかずいぶん久しぶりな気がするな〜」
「・・あの後、夏休みに入ってしまったからね」
二人は教室に入った。
二人は自分の席に座った。
暫くしてチャイムが鳴り、老教師が入って来た。
「今日は皆さんに、転校生を紹介します。」
アスカが入って来た。
男子の歓声が上がり、男子の羨望の溜め息が漏れた。
「惣流アスカラングレーです。宜しく」
・・・・
・・・・
・・・・
授業中、
「え〜、20世紀最後の年に・・・・」
ループに入り出したので、生徒はチャットで話をしている。
アスカは、表示に気付いた。
《惣流さんが、あのロボットのパイロットってホント?》
シンジはモニターに映る表示に溜め息をついた。
(人の話聞いてないのか?)
(聞いていないのではなく、気に留めていないのね)
《YES》
「「「「「「「「えええええ〜〜〜〜〜〜〜!!!」」」」」」」
何かアスカの方も驚いている。
その後、アスカは質問攻めにされた。
休み時間、
「転校生、ちょっと顔かせや」
「・・・わ、分かったわよ」
トウジはアスカを連れて教室を出て行った。
女子男子問わず二人を追った。
「・・・馬鹿だな・・・」
「・・ええ・・」


体育館前、
トウジはいきなりアスカに殴り掛かった。
アスカはかわした。
「な、何すんのよ!!」
「ワシはおのれを殴らなあかんのや!」
トウジは再び殴り掛かった。
アスカは容易く受け止め伝家の宝刀踵落としを叩き込んだ。
ばっちりアスカのスカートの中身を録画してしまったケンスケ。
「・・・そこ・・」
ケンスケは全身が震え上がるほどの恐怖を感じた。
トウジとケンスケを含め13名の男子が保健室に運び込まれた。


そんなある日、イスラフェルが襲来した。


総司令執務室、
「葛城君、弐号機が単独で使徒に通用し得るかどうか調べてくれないかね?」
「・・・それは、サードの」
「弐号機が単独で使徒に通用する事が分かれば、彼の要求もある程度突っぱねる事が出来る。」
「・・分かりました。」


海岸、初号機
『弐号機が先ず先行、初号機と零号機はバックアップよ』
シンジは顔を顰めた。
『『了解』』
『シンジ君、良いわね』
「・・・しかたないですね・・・」
ミサトは一瞬顔を顰めたが、直ぐに元に戻した。


発令車、
「シンジ君、意図に気付いたわね、」
「・・・・」
「彼自身それを確かめたいのかもしれないわね、今後の交渉の為にも」
使徒が海面に姿を表した。
弐号機がマヤ作成のプログソードを手に使徒に切りかかった。
一瞬で使徒は真っ二つになった。
ミサトとリツコは拳を握り締めた。が、次の瞬間、使徒が2体に分裂した。
「あんですってぇ!!!」


視聴覚室、
「善戦するも、異常な再生能力を持つ目標に対して有効な手立ては無く、NN爆雷による殲滅を試み、目標の構成物質の75%を消失に成功。」
「現在は強力無比なATフィールドを展開し、自己修復中」
「一方、エヴァも、3機とも修理を必要とする状態です。」
「又、地図を書き直さねば成らんな」
冬月が愚痴を言った。
「パイロット3名、君達の仕事は何だね」
「エヴァの操縦」
アスカが答えた。
「・・・碇君を護る・・・」
レイはちょっと頬を赤らめながら呟いた。
「・・・サードインパクトの回避」
「違う、使徒に勝つ事だ、もうこんな醜態は曝すな」
「おい」
去ろうとする冬月をシンジが呼び止め、冬月は振り向いた。
「使徒に勝つ事とサードインパクトの回避がどう違う?」
冬月は一瞬しまったと思った。
リツコも汗を浮かべた。
「それは、方法と結果よ、」
リツコが良く分からない回答を答えた。
「・・・そうか、聞きたい」
「なんだね?」
「今回の、布陣、あからさまに、弐号機単独で使徒に通用するか否かを確かめる布陣だ。いったい誰がこんな愚かな事を決めた?」
冬月とリツコはアイコンタクトをとり、この場にいないミサトに全ての責任を吹っかける事にした。
「葛城2尉だろう、彼女に全て任せたのだからな」
「そうか・・副司令辺りの指図かとも思ったが・・・まあ良い、私の作戦立案権を又しても無視した彼女の処分は?」
「降格処分だな」
「分かった」
葛城3尉決定。


作戦部長執務室、
「・・・・降格?」
「ええ、葛城3尉、どうする?次は首よ」
「・・・」
「良い案が一つあるんだけど、要る?」
リツコはフロッピーを取り出した。
「要る要る要るに決まってんじゃない!!」
「でも、加持君からよ」
「・・・・」


作戦会議室、
「と言う事で、ユニゾンで」
扉が蹴破られた。
「葛城3尉、私が作戦部のナンバーワンであることを忘れているのか」
又、忘れていた。
「い、いえ、あの、その」
「まあ良い、作戦は?」
「あ・・・はい」
何故か、副部長が無茶苦茶不機嫌な顔をしているが捨て置いた。
・・・・
・・・・
「ユニゾンか・・・組み合わせは誰が良いかな?」
シンジは少し考えた。
やっぱりシンジ・レイ組みを想像しちょっと顔を赤くした。
「・・・そうだな、やはり、私達か」
「でしょうね」
「良いだろう、アスカの説得は任せた」
「い」
ミサトはこんなのアスカが納得するはずが無い事を思い出した。
「私は準備の為、帰宅する。」
シンジは会議室を出た。


シンジの家、
二人は仲良く夕食を取っていた。
はっきり言って二人にユニゾンの訓練なぞ不要である。
だがまあ、仕方ないので、食後の運動にくらいに考えている。


ネルフ本部宿舎、
「あのさ・・・・アスカ、次の作戦なんだけどさ〜」
ミサトはアスカにファイルを渡した。
アスカはファイルに目を通した。
「・・・・ミサト・・・こんなのアタシが納得できるとでも思ったわけ?」
「え?いや、あの、その・・・もじもじ」


翌日、シンジの家、
ダンシングマシーンが用意され、二人が踊っていた。
アスカも見に来ている。
二人の動きは完璧に揃っている。
心が繋がっているのだから当然である。
又、アスカが穏やかな目をしている事に気付いたシンジが動きを止めてしまった。
「・・どうしたの?」
レイも同時に止まったので、エラーにはならなかった。
「ん?いや何でも無いよ」
(アスカの様子が変なんだ)
(そう)
その後は仏頂面だった。
「これは行けそうね、作戦早めれるわね」
「・・・そうですね」


翌日、弐号機がATフィールドを中和し、無防備で崩れかけている使徒を同時に初号機零号機が殲滅した。
アスカはぶつぶつミサトに文句を言い、ミサトは笑って誤魔化しているが意味が無い。


総司令執務室、
「結局、弐号機だけでの殲滅は不可能か・・・」
「参号機が完成した。週末には届く」
「4人目はどうする?」
「候補生を使う。」
「そうか、そうだな、その為に一箇所に集めて保護されているのだからな」

あとがき
祝!連載化!
皆さんからの要望が強い背徳逆行編を連載化します。
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