背徳

◆第3話

東京、ネルフ本部、上級職員寮、リコの部屋、
ミサがリコの部屋にコーヒーを飲みに来ていた。
「う〜ん、相変わらず良いコーヒーね」
「まあね・・・それよりも貴女、受験勉強は良いの?」
リコはシャーペンを置きミサに尋ねた。
「ん〜、ま、何とかなるっしょ」
リコは呆れかえったような表情でミサを見た。
「・・・そうね、ミクに勉強教えてもらう?」
「はあ?あの子1こ下よ」
リコは軽く息を吐いた。
「これ、あの子が待機室に忘れていった問題集」
俗に一流と呼ばれる大学の赤本だった。
「・・・・はい?」
「頭の中は少なくとも貴女より3つは上ね」
因みにリコは高校3年生の勉強をしている。
「・・・」
ミサは一瞬、私ってチルドレンで一番馬鹿?と思い浮かんだ。
現役ではそうである。だが、安心したまえ、4thチルドレン、鈴原トウジが未だ下にいる。
「全く、さっさと」
警報が鳴った。
「来たわね」
「ええ」


日本南海、
中空から突如巨大な怪鳥が現れた。
近くを航行していた警戒巡視船によって確認されすぐさまネルフや関係各機関に連絡された。
現在、日本は100海里ラインに警戒巡視船を航行させて、光学の警戒ラインを引いていた。
隙間は全く無し、10メートル以上の物体ならば100%ラインに引っかかる。
怪鳥は、東京に向けて真っ直ぐに飛んでいった。


ネルフ本部の発令所のメインモニターに怪鳥が写った。
『目標は現在、南から東京を目指しています。』
『到着まで、30』
『パターン、ブルー!』
『南側の全防衛システムを上げろ!』
『『了解』』
シンジはじっとモニターを見詰めている。
射程距離に入り一斉に攻撃が仕掛けられた。
しかし、全てATフィールドに阻まれ無効である。
『攻撃中止、陽電子砲を』
暫くして、陽電子砲が発射され使徒のATフィールドを貫き大爆発を起こした。
『やったか?』
「強いわね」
ユイは顔を顰め、シンジは無言で頷いた。
煙の中からほぼ無傷で使徒が姿を表した。
『・・エヴァを衛島に空輸します。宜しいですね』
日向が尋ねた。
「ああ、」
『エヴァ初号機と01を空輸しろ』
『了解』


ウイングキャリアー、初号機、
通信回線が開かれ、ミサが映った。
『調子はどう?』
「え?問題ありませんよ」
『ん〜だめね〜』
ミクは何か良く分からないって顔をした。
『敬語なんか使っちゃだめよん、同じエヴァぁのパイロットでしょ』
ミクは軽く笑みを浮かべた。
「ミサって呼んで良い?」
『勿論、ミクって呼ぶわよん』
「うん」


東京湾に浮かべられた広大な使徒迎撃専用メガフロート、衛島、其処に、2機のウイングキャリアーは、着陸した。
直ぐに、エヴァが下ろされ、アンビリカルケーブルが接続された。
『01は、長距離砲で射撃、初号機は待機し、いつでも動けるように』
『了解』
「はい」
遥か遠方に使徒が見えた。
大きさは、全翼が120〜140メートルと言ったところか、只の鳥と言うよりは、どこか翼竜にも似ており、怪獣映画に出て来ても違和感はなさそうである。
01が、レールガンを構え狙いをつけた。
そこら中から無数の砲兵器が表れ、照準を使徒につけた。
圧倒的火力によりATフィールドの干渉能力を超えて撃破する。その為に用意されたものである。
更には、海上には数十の軍艦が浮かんでおり攻撃に参加する。
『目標、射程距離まで120秒』
操縦桿を握るミクの手に力が入った。
前回のように、どこか現実離れした目標や作戦ではなく、現実味があるためか、自分が戦場にいるという恐怖は大きく増しているのかもしれない。
『ミクちゃん』
ユイから通信が入った。
「はい?」
『今晩の夕飯は何が良い?』
「え・・」
『何でも好きなものを用意するわよ』
「・・くす」
ミクは、ユイが、自分の恐怖を紛らわす為に話し掛けている事が分かり、そして、その恐怖が薄らいだ事で、ユイに感謝した。
「ハンバーグが良いな」
『分かったわ』
『あと60秒です』
ミクは、使徒を睨みつけた。
そして、使徒が射程距離に入ると同時に凄まじい数の攻撃が仕掛けられ、衝撃が衛島全体を揺るがした。
使徒は直ぐに光に包まれ見えなくなった。
しかし、センサーは使徒のエネルギーを検出し続けていた。
第1段の攻撃が止んだ時、使徒に与えたダメージは、表面を傷付けただけで、致命傷には程遠かった。
『ミク、接近して全力でATフィールドを張るんだ』
シンジの指示にミクは頷き、初号機を走らせた。
加速した初号機はそのまま使徒に向かって飛び、ATフィールドを中和した。
その瞬間、第2段の攻撃が仕掛けられた。
ATフィールドを失った使徒は、直ぐに表面を貫かれ、数瞬の間にぼろくずへと変わった。


夜、ユイのマンション、
食卓の上にはユイの特製ハンバーグをメインにした料理が並んでいる。
「頂きます♪」
「はい、召し上がれ」
ミクはハンバーグを頬張った。
本当に美味しい。


東京帝国グループ総本社ビル会長室、
「・・戦い、見せてもらった。」
「ええ、十分ですかね」
「ダミータイプの本部輸送も決まった。まあ、多少の心配は残るが、問題は無いだろう」
「その件についてはありがとうございます。」
「いや、礼を言われるほどのことではない」
「そうですか」


翌日、ネルフ本部、技術棟、
ミクは、シンクロ実験の為に本部を訪れた。
「あら?おはよう」
「おはよ」
リコとミサであった。
「おはよう」
ミクは笑みを浮かべて返した。
リコは赤本と鞄から取り出してミクに渡した。
「これ、忘れていたわよ」
「あ、有り難う」
「ところで、」
「はい?」
「ミサに勉強教えてあげてくれない?」
ミサは顔を顰めミクは苦笑した。


ユイは、碇特別研究室で次元に関する研究を行っていた。
レイが閉じ込められているサードインパクトの時間を開放する方法を探す為に、
エヴァに関する研究開発や、副司令としての事務もそれなりで済ませ、余った時間の大半をこの研究に注いでた。
まだ、研究は始まったばかり、だが、シンジがフォースインパクトを発動させるまでに完成させなければならない。
ユイはレポートの束を机の上に放った。
「・・・自力での研究は不可能、どこかで誰か、この研究をしていないかしら?」
このような馬鹿げたとも言え、しかも莫大な予算を必要とする研究、こんなものに金を掛ける大学や企業はあるまい。使徒の襲来に備えたい策をしてきた国にもこんな事をする余裕は無いだろう。金持ちの道楽としか思えないような研究、他にも必要に迫られている者がいれば話は別ではあるが、
「・・・・いるわけ無いか・・・」
ユイは呟いた後、大きな溜め息をつき、資料を捲った。どこかで何かを見落としていないか、他に方法は無いか、



数日後、東京中学Aコース、
ミクは選抜クラス入りを果たしていた。
「おめでとう」
「選抜クラスへようこそ」
歓迎される中ミクは軽く頭を下げて選抜クラスに入った。
そして、開始された授業はそれまでの授業よりも遥かに詰め込まれた密度の濃い物であった。
確かに、並みの天才ではこの授業はついて行けないかもしれない。


昼休み、ラウンジ、
ミクは、安齋、佐々木、安藤に誘われ、一緒に食事を取っていた。
「惣流さんは、どこに住んでいるの?」
「確か、C―12ブロックだったかな?」
「へ〜、便利なところね」
「うん、ミクはこの人と一緒に住んでるんだけど」
ミクはユイといっしょに写っている写真を取り出して3人に見せた。
「うわ、綺麗な人」
「ん?」
「どこかで見た気が・・・」
・・・・
「ええ〜〜!!」
「なに〜〜!!」
「嘘でしょ!!」
安藤と佐々木は、そこに写っている女性が、人類史上最高の天才であり、2004年に失踪した碇ユイである事に驚いているのだが、安齋はもう一歩進んでユイが若過ぎる事に驚いている。
二人は、親子と言うには歳が近すぎ、姉妹と言うには少し離れているように見える。
3人の驚く顔が見れてミクは愉快だった。
「・・ユイ博士は、老化を克服する薬か何かを開発したのね」
「・・た、確かに、わ、若すぎる」
「そ、そうね」
その後、3人の思考は迷走していた。
そんな3人の表情や仕種を見ているのが楽しく、ミクは気付かれないように声を出さずに笑った。


日曜日、ユイは、ミク、ミサ、リコの3人を連れてピクニックに行く事にした。
3人とも連れ出すともなれば、直ぐに戻れる場所で無ければいけない為そんなに遠くには行けなかったので、箱根に行く事にした。
特種封鎖地区、箱根、今は、人の手から離れ、信じ難いような再生力で自然が再生している地である。
護衛や万が一の為にと言う事で数百人の保安部員や数十機のヘリや垂直離発着機も行動を共にしているのだが、少なくとも4人からは見えないように気をつけている。
「うや〜、おいひい」
「ちょちょっとミサ貴女いったいに何を飲んでるのよ!」
「あにって?ビ〜ルよん♪」
「ミサ、未成年なのに飲んじゃ駄目だよ」
「ぬあ〜にいってんのよ、ほら、リコもミクも飲みなさいよ♪」
ミサは二人に缶ビールを渡した。
後部座席で続くやり取りを聞きながら運転席のユイはくすっと笑った。


大きな湖の周りょ広大な自然が広がる箱根、森や草原の中に、所々に廃墟となったビルが見え、ここが嘗て都市だったことを思わせる。
車を降りた一行を迎えたのは爽やかな風だった。
常夏の日本とは思えないような爽やかな風、ここはある意味楽園なのかもしれない。
「う〜ん、風が気持ち良い〜〜」
ミクは思いっきり深呼吸をして新鮮な空気を胸一杯に吸い込んだ。
「げろげろ〜〜」
しかし、ミサが吐いてしまい、折角の雰囲気を打ち壊しにした。
「・・無様ね・・」


ユイはビニールのシートを見晴らしの良い草地に敷いた。
「お昼はここで食べるから、12時までには戻って来なさいね」
「は〜い」
「分かりました」
「あうう〜」
三者三様の反応を示し、ミクとリコは自由に散策に出かけ、ユイは酔いつぶれたミサの介抱に努めた。


ミクは森の奥に入っていった。
何か惹かれるような感じ、そして、道を進むに連れ、辺りの空気が清浄な物に変わっていく、
「・・・神域か聖域と言ったところね・・・この先に何があるんだろ?」
ミクは興味心に従い更に森の奥へと進んだ。
細い道はきらきらと輝く小川に沿って上流へと向かっていた。
「・・綺麗・・」
ミクは小川の辺にしゃがみ、手で水をすくった。
そして、口をつけて水を飲みこんだ。
「ふは・・美味しい」
人の手が入らない自然の水はこんなにも美味しい物なのかと、ミクは驚いた。
少しその場で休憩してから、更に上へと登ってみた。
そして行きついた先には泉が存在した。
周囲は木々に覆われ、泉は美しい水を湛え、そして、泉の中心には小島が存在した。
そして、小島には、純白に輝く石が有った。
石は、整った形をしており、人工物であると思われる。
ミクは周囲を見まわし、小島に渡る方法を考えた。
一回り見てみたが、渡る方法はなさそうである。
ミクは少し離れてから加速をつけて一気に飛び渡った。
10メートル近くは離れていたのだが、ミクは綺麗に着地を決めた。
ミクの中に凄まじく強烈な感情が流れ込んで来た。
「う・・」
孤独、絶望、様々な感情が流れ込んで来た。それも一つ一つの感情の大きさも桁が違う。
ミクはとても耐えられなくて全力で逃げ出した。
・・・
・・・
ミクは泉の辺で、泣き続けた。
自分の感情ではない、だが、とても耐えられなかった。
そして、こんな表情のまま、皆の元に戻る事は出来なかった。


3人は、ミクの帰りを待っていた。
既に昼になっているが未だにミクは戻ってこない。
「何かあったのかしら?」
暫くしてミクは戻って来た。
「えへへ、ごめんね、昼寝してて」
「ま〜そんなこったろ〜と思ったわよ、ま、それより早くお弁当食べましょ」
ユイだけはミクに何か有ったことが分かったが、それが何だったのかまでは分からなかった。


東京、ネルフ本部発令所、
「間違い無いんですね?」
『はい、8thチルドレン班が全員行方不明になりました。』
「・・・連絡は?」
『全く不能です。』
「8thは?」
『博士の元に戻った事を確認しました。現在他の班が総力を上げて警護しています』


青葉は通信回線を司令執務室に繋げさせた。
「司令、8thチルドレン班が全員行方不明に・・」
『ミクは?』
「博士の元に戻っていますが、」
『ならば問題無い。以後も現状を維持せよ』
「し、しかし・・」
『私は現状を維持せよと命じたのだぞ』
「・・・は、はい」
青葉は、釈然としないが、命令なので、仕方なく部下に指示を伝えるように言った。


夜、ミクは自分の部屋で、あの凄まじい哀しみについて考えていた。
「・・・あんなに哀しんでいるのはいったい誰?」
ミクは、ガラス越しに、ビルの合間から姿を表している月を見上げた。
どこか、その月がそのイメージに合ったのかもしれない。

あとがき
漸く書けました・・・・
これを書くのに時間掛かったな・・・
スランプなんだけど、まあ、頑張って書いています。
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次は、逆行未来編ですね。