背徳

◆第2話

東京、東京中学Aコース、
授業が行われていた。
「で、三角関数の積分の一般解法は・・・・」
本当にここ中学か?
ミクは、授業なんか聞いていなかった。既に、高等課程まで全て修了している。ただ、義務教育に付き合っているだけである。
現時点での21世紀の3大天才(碇ユイ、赤木ナオコ、伊吹マヤ)の筆頭である碇ユイの血を引き、7大天才(+赤木リツコ、碇シンジ、皇耕一、惣流キョウコ)の一人、碇シンジの娘であり、惣流キョウコの血も引く天才である。
ミクは、エヴァとネルフのことを考えていた。
(ネルフ・・・使徒に対抗する組織・・・人類の希望)
(エヴァ・・・使徒に対抗しうる唯一の兵器・・・昔、お父さんも、お母さんもエヴァに乗って戦った・・・・鈴原の小父さん、・・・エヴァに乗って左足を失った・・・・もう一人・・・・何て言ったけ・・・・・そうそう、綾波レイ・・・多分、お父さんが一番好きだった人・・・・お母さんは2番・・・だから・・・私は惣流ミク・・・碇ミクじゃない・・・・・碇ユイさん・・・・私のお祖母さん・・・見かけは20くらい・・・・綾波レイさんとは違う・・・・・)
ミクは、ノートパソコンを外部回線に切り替えた。
授業の内容を表示しているウインドウが半分くらいの大きさになった。
ミクはネルフにアクセスした。
ミクはIDナンバーを入力した。
《惣流ミク セキュリティレベル3》
ミクはレイに関するデータを調べようとした。
《綾波レイに関するデータを閲覧するためにはセキュリティーレベル10またはAが必要です》
(殆どトップシークレット・・・)
ミクは、零号機に関するデータを引っぱり出した。
《零号機に関するデータを閲覧するためにはセキュリティーレベル5以上が必要ですが、チルドレンには特別に閲覧権が与えられています》
(零号機・・・2004年完成・・・・2014年、ファーストチルドレン綾波レイを専属操縦者に指定)
レイの写真が載っていた。
(・・・ユイさんに似てる・・・でも・・・違う・・・この人がお父さんが1番好きだった人・・・)
(2015年、初の起動実験失敗、零号機小破、操縦者重体・・・再起動実験成功、第伍使徒戦出撃、零号機大破、操縦者軽傷・・・・改造を受け最就役、第九使徒戦において出撃、勝利・・・第拾使徒戦において出撃、勝利・・・機体相互互換実験に失敗、零号機小破・・・2016年、第拾弐使徒戦において出撃、撤退、再出撃、勝利・・・・第拾参使徒戦において出撃、零号機中破、操縦者軽傷・・・・第拾四使徒戦において出撃、大破・・・・第拾伍使徒戦において出撃、撤退、再出撃、勝利・・・・第拾六使徒戦において出撃、零号機自爆、零号機消滅、操縦者死亡・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
ミクは第拾六使徒戦を選んだ。
(2016年3月23日正午過ぎ襲来・・・第拾六使徒アルミサエル・・・このワッカみたいな奴ね・・・・零号機と弐号機が出撃・・・・使徒の形態が変化・・・今度は寄生虫みたいね・・・零号機を急襲・・・・零号機と生体融合を始める・・・う・・酷い・・・弐号機起動せず、撤退・・・初号機凍結を解除、出撃、零号機の救援に向かう・・・使徒、初号機を攻撃・・・・うげ・・・零号機、ATフィールドで使徒押さえ込み、自爆・・・・これにより、零号機と使徒及び操縦者は消滅。被害として第3新東京市中央部が消滅、芦ノ湖とつながる・・・・・・・・・・)
(・・・・レイさん・・・命と引き替えに・・・お父さんを・・・守ったんだ・・・・・)
ミクは弐号機を選んだ。
(弐号機・・・2005年完成・・・惣流キョウコツェッペリンによる搭乗実験失敗、被験者精神崩壊・・・・2010年、セカンドチルドレン惣流アスカラングレーを専属操縦者に指定・・・・お母さん・・・・2013年、起動実験成功・・・・・2015年、日本輸送、第3支部所属から本部所属となる・・・・伊東沖にて第六使徒と遭遇、緊急出撃、勝利・・・・第七使徒戦において出撃、弐号機中破、再出撃、勝利・・・・第八使徒戦において出撃、勝利・・・・第九使徒戦において出撃、弐号機小破・・・・第拾使徒戦において出撃、勝利・・・・2016年、第拾弐使徒戦において出撃、撤退、再出撃、勝利・・・・第拾参使徒戦において出撃、弐号機中破、操縦者軽傷・・・・第拾四使徒戦において出撃、弐号機大破、操縦者軽傷・・・第拾伍使徒戦において出撃、操縦者精神的損傷・・・・第拾六使徒戦において出撃、起動せず、撤退・・・・第拾七使徒戦において使徒に乗っ取られる、初号機の攻撃により中破・・・・戦略自衛隊急襲時に再起動、量産型エヴァ戦において完全大破、操縦者重体・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
(・・・お母さん・・・・)
ミクは初号機を選んだ。
(初号機・・・完成時期不明・・・おいおい・・・2015年、第参使徒戦においてサードチルドレン碇シンジにより緊急出撃、初号機中破・・・・サードチルドレン碇シンジを専属操縦者に指定・・・お父さん・・・第四使徒戦において出撃、初号機中破・・・・第伍使徒戦において出撃、初号機中破、再出撃、初号機小破・・・・第七使徒戦において出撃、初号機中破、再出撃、勝利・・・・第八使徒戦において出撃、勝利・・・・第九使徒戦において出撃、勝利・・・・第拾使徒戦において出撃、初号機中破・・・・機体相互互換実験成功・・・・2016年、第拾弐使徒戦において出撃、勝利・・・・第拾参使徒戦において出撃、勝利・・・・第拾四使徒戦において緊急出撃、勝利・・・・初号機凍結・・・・・第拾六使徒戦において凍結解除、緊急出撃、勝利・・・・・第拾七使徒戦において緊急出撃、勝利・・・・量産型エヴァ戦において緊急出撃、詳細不明・・・・・・・2032年、エインスチルドレン惣流ミクを専属操縦者に指定・・・・・・第拾九使徒戦において緊急出撃、勝利・・・・・・・・)
(お父さんと・・・私か・・・・)


ネルフ本部、副司令執務室、
ユイは現在世界でシンジの後ろ盾になれそうなメンバーを絞り出した。
1、ゼーレの残党、資産家が多く、束ねることが出来ればかなりの力になる。
2、日本政府、世界最大の影響力を誇る国である。
3、東京帝国グループ、世界最大企業である。
4、皇耕一、東京帝国グループ総会長だが個人でバックアップできるだけの力を持っている。
(・・・・・スーパーマギに協力してもらいましょう)
ユイは部屋を出てマヤの執務室に向かった。


東京郊外、第1防衛線、
夥しい数の兵器が用意されている。
日向がケンスケを連れて現地司令部に入った。
「本部長、どうぞ」
2人は視聴覚室に通された。
そして、視聴覚室で現状の報告が行われた。
「配備率は89.6%、稼働率は49.6%です。来月にはほぼ完全に動作します」
「碇総司令が要求された事は、敗北しない事だ」
勝つ事ではない。東京への侵入を防ぐ事なのである。
「お任せを」


数日後、ネルフ本部、総司令執務室、
ユイがシンジの元を訪れた。
「シンジ・・・」
「母さん・・・何のよう?」
シンジは少し不機嫌なようである。
「レイの復活にはインパクトを起こすしかないの?」
「・・・ああ、綾波は、インパクトの時間に閉じ込められている。」
「・・・・・そう・・・・・」
ユイは自分をレイの身代わりにして欲しいと再び言おうとしたが、
「母さん、僕は父さん以下には堕ちたくは無い」
目を大きく開いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」
「誤る必要は無いよ・・・同じ事をしているんだから・・・」
ユイは俯き声を出さずに泣いた。


数日後、ネルフ本部技術棟、
ケンスケの指揮の元、チルドレンの格闘訓練が行われていた。
「やあっ!」
ミクの凄まじいハイキックが指導官のガードを突き破り吹き飛ばした。
皆驚いた。
「あの・・大丈夫ですか?」
「ぐぐぐ」
腕が途中から妙な方向に曲がっている。
完全に折れている。
・・・
ケンスケはミクの運動能力を調べてみた。
握力220キロ、背筋力830キロ、垂直飛び2メートル10センチ・・・・・
全員が青ざめた。
「・・・マジ?」
「ミサ、目の前の現実を受け入れなさい」
何やら、前世と同じような関係である。
「あの・・・やっぱり凄いんですかこれ?」
「・・・オリンピックで金を総なめだろうな」
「ああ」
その後調べてみたが、ミクは天性の格闘センスもずば抜けており、ネルフでも互角に戦えるものはいなかった。
その為、ミクの格闘訓練は必要無しと言うより不可能と言う事になった。


その頃、シンジは、ドイツに向かう特別機の中だった。
シンジは窓の外を眺めた。
禍禍しい赤に染まった南極海。
30年経った今でも尚、微生物しか存在しておらず、氷点下でも凍ろうとしない。
「・・・16年前・・・」



2016年、同じように、シンジは、ドイツに向かっていた。
但し、ステルス輸送機で、特殊部隊と共に、
既に、世界第1位の大企業にのし上がった東京帝国グループの支援を受け、ゼーレ狩りを行っていた。
シンジは、窓越しに南極海を見た。
その禍禍しい赤は、ゼーレの老人達の心の象徴であるかのように見えた。
「・・綾波・・もう直ぐ、3人目の仇が討てるよ・・・」
今回、居場所がわかったのは、あのキールローレンツ。
最大の目標である。


2032年、ネルフ第3支部付属空港、
シンジはドイツに降り立った。
「・・行くか・・」
シンジは第3支部に向かい足を進めた。



2016年、ドイツ、旧ゲヒルン研究施設上空、
シンジは特殊部隊と共に飛び降りた。
パラシュートを開き、降下する。
シンジの目標はキール只一人。
特殊部隊は、邪魔者の排除と、ゼーレ関係者の殲滅、そして、証拠の隠滅が任務である。
警備の者を上空から撃ち抜き、着地と同時に一気に中へと突入した。
シンジが使っているのはライフルではなく、拳銃である。
但し、ATフィールドコーティングして撃ち出す。
貫通力だけを取ってみれば、戦車砲並みである。
次々に現れる警備兵や職員を撃ち殺していく。


2032年、ネルフ第3支部司令室、
「お待ちしておりました」
第3支部司令はシンジに頭を下げた。


2016年、旧ゲヒルン研究施設最深部、
シンジが単騎乗り込んだその部屋はまるで大聖堂のような作りだった。
一番奥の様々な機械に繋がれている老人キールローレンツが口を開いた。
「・・私が誰なのか分かっての事だろうな」
「当然だ、キールローレンツ」
シンジは凄まじい殺気を放ちキールを睨みつけた。
それは、世界の闇の帝王キールがびびる程のものであった。
「あ、が、が」
「綾波の仇を取らせてもらう」
「ふざけるな!どこの馬の骨ともしれん一介の人間とこの私を同じにするな!」
「当然だ、貴様ごときが、綾波と比べられるはずが無いだろう、貴様などに生きている価値など無い」
「なにを・・・貴様は!!」
キールは漸く自分の目の前にいる少年が誰なのかが分かった。
「サードチルドレン」
「・・漸く分かったか」
「綾波・・ファーストチルドレンか!一介の!」
シンジは拳銃をしまい手にATフィールドの剣を作り出した。
「なっ!」
キールはシンジのATフィールドに驚いている。
シンジはキールに一歩一歩近付いていった。
「なっ、何が望みだ!?」
「貴様の命だ」
キールはがくがくと身体を振るわせた。
復讐、最も単純な動機、だが純粋である為、いかなる方法を持ってしてもそれを中断させる事は出来ない。
シンジはキールの眼前に立った。
そして、キールの身体に繋がるコードを切断した。
「うあああああ!!!」
キールの体を維持していた機械が誤作動を次々に起こし凄まじい苦痛にのた打ち回っている。
「もっと苦しめ」
シンジは悪魔のような笑みを浮かべ、致命傷に成らないようにキールの身体を切り刻み始めた。
「ぎゃああああああ!!!」
「ぐああああああ!!!」
「ぎいいいいい!!!」
どれだけの時間がたったのか、やがて、殆ど動かなく成って来た。
一応動作しつづける生命維持装置によって、キールは普通ならばとうに死んでいる負傷と出血量だがまだかろうじて生きている。
「そろそろか」
シンジはキールの髪を掴み機械やコードごと引っ張り上げ目の高さまで持って来た。
キールは何かを呟いているようだがもやはそれは意味をなさない。
「綾波、今、3人目の命を消すよ」
シンジはATフィールドの剣でキールの首を跳ねた。
その瞬間、例え様も無いような快感を感じていた。


2032年、第3支部最高会議室、
シンジは軽く首を振った。
「おや、どうかなされましたか?」
「ん・・いや、続けてくれ」
「はい」
再び報告が始まった。


東京、ネルフ本部、碇特別研究室、
ユイは新型エヴァの改造計画案を練っていた。
が、どうしても、集中できない。
「はい、コーヒーです」
マヤがユイにコーヒーを差し出した。
「あ、有り難う」
ユイはコーヒーを受け取った。
リツコの伝統を引き継ぎ、かなりコーヒーには拘っている。
「・・・美味しいわね・・」
「ええ」
マヤは微笑んだ。
「やはり難しいですか?」
「いえ・・・集中できないの・・」
マヤはその理由を知っている為、目を伏せた。
「・・・・」
その後、お互いに一言も喋らずに2時間以上仕事を続けた、


翌日、ケージ、
ミクは初号機に搭乗して実験を受けていた。
「・・エヴァに乗ってると何だか心地良いのよね・・まるで、お母さんに抱かれているみたいで・・」
『ミクちゃん、準備は良いかしら?』
ユイが尋ねた。
「はい、良いです」
『では、これより、過剰シンクロ実験を行います。皆、そして、ミクちゃん、頑張ってね』
シンクロモードが切り替わり急激に一体感が増していく。


司令室、
「シンクロ率112、115、117、まだ上昇中です」
マヤはユイに尊敬のまなざしを送った。
「今回はこれまでとします。現状維持に切り替え」
「了解」
グラフの伸びが止まった。
「・・・シンクロ率132%で安定しました」
「痛覚フィードバックは78%まで、減少しています」
「ハーモニクスは43%上昇しています」
「エネルギー消費は132%UP、ほぼアンビリカルケーブルの供給限界です」
「ミクちゃん、適当に身体を動かしてみて」
『はい』
初号機が身体を動かし膨大なデータがスーパーマギに送られていく。
実験は1時間ほどで終わり大成功だった。
そして、スーパーマギが分析し、新型エヴァの改造計画に修正が加えられた。


ユイのマンション、
ユイの作った御馳走が並んでいる。
「う〜ん、美味しい」
「ふふふ、今日はミクちゃんが頑張ってくれたからね」
「えへへ」
ミクは照れて頭を掻いた。
電話が鳴った。
ユイが電話を取った。
「はい、碇ですが」
『ああ、母さん』
「シンジ、どうかしたの?」
『ミクに代わってくれるかな?』
「分かったわ」
「ミクちゃん、シンジからよ」
「お父さんから」
ミクは電話機を受け取った。
「もしもし、お父さん」
『ああ、ミク、日曜日の朝に第3新東京市に戻る。日曜日は、休みを取る事にした。予定空けられるか?』
「分かった☆楽しみにしているよ」
ユイは穏やかな表情でやり取りを見ていたが、どこかシンジはミクを駒として利用しやすいようにする為の手の一つにも思えた。
嘗て、自分が求めたものを与えれば良い、簡単な事である。


日曜日、ユイのマンション、
シンジがミクを迎えに来た。
「はい、お弁当」
ユイは二人分の弁当を渡した。
「有り難う」
「じゃあ、行くぞ」
「うん」


その日、遊園地で遊び、夕方に、東京郊外の丘にやって来た。
展望公園になっており、東京の超高層ビル群が見える。
「うわ〜☆、あの辺かな〜」
ミクは、ユイのマンションがある辺りを指差した。
「そうだな・・・」
「この町、そして、国、世界を守る為に使徒を倒さなければいけない」
「・・サードインパクトの回避だよね」
「ああ」
シンジは、表情に出す事は押さえた。
日は山に沈み、次々に街に明かりが灯っていく。
「・・・ミク、私達は、ミク達子供に頼らなければ生き延びる事が出来ない・・・情けない事だ」
「・・・」
「・・・済まない・・・」
シンジは涙を零し頭を下げた。
「ううん、大丈夫、私はお父さんの役に立ちたいし、何より、私の大事な人達を守りたいもん」
「・・・ありがとう・・」
「先に戻ってるね」
ミクは車に戻って行った。
シンジは顔を上げて目薬をしまった。
「・・・僕も、同じだな・・・」
それは悲しい呟きだった。

あとがき
背徳本編をUPしました。
如何でしょうか?
続きが見たい人はメールを送ってください。
これからどうなるか決めていませんので、予告は出来ません。
流れのままです。