4月21日(木曜日)、ネルフ本部、総司令執務室、 「・・リツコ君、済まない、」 碇は深深とリツコに頭を下げた。 「・・・・」 分かっていた。ユイの復活・・それが成されてしまえば、リツコは必要無くなる。 愛人としても、計画・・ユイを復活させる為の計画の協力者としても、E計画の責任者としても・・・ 「・・失礼します。」 碇は未だ何かいいたげであったが、話を打ち切りリツコはさっさと退室する事にした。 「う、うむ・・・」 リツコは執務室に戻って来た。 「みゃ〜」 机の上で寝ていたタブリスが目を覚ました。 「私捨てられちゃったの、」 「みゅ?」 リツコはタブリスを抱き上げた。 「ふふ、分かっていたんだけどね・・・結局は・・・」 椅子に座り、タブリスを膝に乗せて撫でる。 「・・・だから、シンジ君とレイを結びつければ、皆が望む方法で結びつければ、あの人もレイへの干渉を諦めざるを得なくなる、そして、同時に計画も失敗する・・・そんな事考えていたけど、なんか、私勘違いしてたみたいだし・・・それに・・・ユイさんが復活したら・・・それまで、元も子もない・・・」 「・・・私バカね、」 果たして分かっているのか分かっていないのか・・・タブリスは大きな欠伸をした。 ・・・・・ ・・・・・ 暫くして、マヤが入ってきた。 「先輩ちょっと聞きたい事があるんですけど、」 ・・・・・ ・・・・・ マヤが心配そうにリツコの顔を覗き込んでいる。 「あら?マヤ・・」 「・・・先輩、元気無いようですけど・・・大丈夫ですか?」 「ん?何でも無いのよ、気にしないで、」 「・・・ちょっと良いですか?」 「ええ、」 タブリスを机の上に戻して、マヤの方に体を向ける。 「ここなんですが、」 マヤが差し出した用紙には複雑な数式が踊っている。 「ああ、ここはね、」 ボールペンを取ってその用紙に書き込んで行く。 「あっ、成るほど、分かりました。有難う御座います」 マヤは笑みを浮かべながら頭を下げる。 リツコはじぃ〜っとマヤの顔を見詰めた。 「あの・・先輩、何かついてます?」 「いえ・・・マヤ、今夜空いているかしら?」 「あ・・・」 マヤはリツコのその言葉の意味に気付き、頬を赤くしてもじもじし始めた。 「・・どう?」 「あ・・はい、空いています・・」 「そう・・・今夜、私の家に来てくれるかしら?」 「・・はい・・行きます・・」 恥ずかしいのか、消え入りそうな声で返した。 5月7日(土曜日)、ネルフ本部技術棟赤木研究室、 リツコは溜息をついた。 「・・・」 あれから、マヤを求めた・・・しかし、それは所詮逃避に過ぎない・・・ そして、碇は何かいいたげで何度か機会があるたびにプライベートな事を話かけようとしてくるのだが、プライベートな会話は全てこちらから切っている。 何を言いたいのかは知らないが、聞きたくは無い。 机に上においてあったリツコ、ミサト、加持の3人が写っている写真が入っている写真立てを手に取り見詰めた。 ・・・・・ ・・・・・ 「ふう・・・・思い出に浸ろうとするなんて、やっぱり私、疲れてるのかしら?」 色々とあったから確かに疲れているのかもしれない、 A.S.5年、第2新東京市に位置する第2東京大学の構内で、リツコはミサトを待っていた。 電子工学の第1人者である赤木ナオコの名は研究者のみにとどまらず一般人にとっても有名であった。 その娘のリツコも第2東京大学で生体電子理工学を専攻しており僅かな人数のメンバーの天才の中でさえも遥かに飛び抜けた実力を持っており、しかも数々の他分野にも手を出して、そちらでも上位の能力を発揮すると言う、桁外れの能力を誇っていた。 勿論学生の間でも有名であり、美人と言う事も手伝って、学生中いや、一部の教職員も含めた者の羨望を集めていた。 一方、葛城ミサトは、戦略学部戦術学科に進学していて、専門に関してはトップクラスの出来だが、如何せん出席やその他共通基礎科目の成績が悪い。美人であるし、言い寄ってくる男は多いのだが、周りの学生はセカンドインパクトの原因が隕石などと言う戯れ言を信じるような馬鹿者ではなく、様々な流説がうごめくセカンドインパクトの中心にいた葛城調査隊の生き残りであることや、胸に残る大きな傷跡を知ると自然にミサトから距離を置くようになってしまっていた。 そして、加持リョウジは情報学部情報工学科に進学している。まだ妹マユミの喪失から立ち直ったばかりであったし、やはり本来の性格等もあるのだろうが、色々と無頓着になっていたようだ。 そんな事も有ったのだが、加持は、初めてミサトの過去を気にせずに今を受け入れてくれる人間であったのだ。 いつも通りとも言えるが、ミサトは既に遅刻をしている。 しかし・・・今日は特に遅い。 「全く、ミサトったら・・・・私ってどうしてミサトなんかと友達みたいな関係でいるのかしら?」 リツコは今吸っていた煙草を地面に落として靴でふみ消し、新しい煙草に火をつけた。 既に足元にはいくつも吸殻が落ちている。 リツコをミサトのように対等な関係で見る者は学生の中には殆どいない、それに、母ナオコのことは関係なくリツコを評価する者も又希少である。 ミサトと知り合えたのは偶然であり、それは幸運だったのかもしれない。 「・・やっぱり、コンプレックスね・・・・・」 頭では、コンプレックスを理解できても感情をコントロールする事は出来ない。 「・・・母さんか・・・・地下で穴蔵生活・・・・・マギ・・・東方より来たりし3賢者・・・・か・・・・」 嘗て、ゲヒルン本部で見た光景を思い出し、確かにやりがいの有る仕事ではあろうが、ちょっと自分はごめん被りたいものだと思った。 「・・・・・・ミサト、本当に遅いわね、」 既に長針が2周回ろうとしている。 (ふふ・・・・ミサトらしいけど・・・・・あまり待たされるのは好きじゃないわね) 「あら?」 水滴が落ちてきた。 「雨か・・・・・」 (・・・・雨は心を洗ってくれるわ・・・・・) 直に雨足は激しくなってきた。 (・・みんなは雨の日は憂鬱っていうけれどね・・・・ホント、ロジックじゃないわね・・) 軽く自嘲する。 雨は静かな音を立てながら降り注いでいる。 直ぐに服も髪も濡れてしまう。 「・・・」 軽く空を見上げ、天然のシャワーを浴びつづける。 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ やがて、雨脚も弱まり、雲の切れ目から日が差して来た。 「・・・止んだわね・・・」 完全に濡れてしまい、下着までびっしょりである。 それから暫くして、ミサトが加持を連れてやってきた。 A.S.16年5月11日(水曜日)、ネルフ本部、赤木研究室、 リツコはが再び軽く溜息をついた時、ユイの声が聞こえた。 『私だけど入っても良いかしら?』 「どうぞ、」 圧縮空気が抜ける音がしてドアが開き微笑を浮かべたユイが入ってくる。 「リツコちゃん、いいニュースよ」 「・・いい・・ニュースですか?」 「オリジナルのコアを作らずにダミーコアを作る技術が完成したわ」 「本当ですか!」 様々な片付けなければいけない事はあるだろうに、早い、流石である。 「ええ、これで、親和性さえよければ誰でも乗れるようになるわね」 「・・・・・凄過ぎますね・・・」 「大した事無いわよ、前に殆ど出来あがっていて、実際の運用データが足らなかっただから・・・・」 「・・・そうですか、」 ユイは時計に目をやると少し早いがそろそろ昼食にしても良い頃合であった。 「ん〜ところで・・・今から一緒に食事でもどうかしら?」 「・・・・御一緒させていただきます」 リツコは少し考えてから答えた。 「じゃあ、行きましょうか、」 「・・はい、」 二人は研究室を出て職員食堂に向かった。 ネルフ本部の職員食堂・・・この施設は古く、ユイがいた頃には既に出来あがっていた。 徐々に完成に近付く本部施設の顔でも有るジオフロントの様子を見ながら食事をする事で、職員達のやる気を促すと共に、完成後には職員に憩いの場を1つ提供する目的であり、その意図はほぼ完全に達成されたと言える。 発案者は勿論ユイで、冬月が未だ加わっていなかった原段階の設計で主張し、他の施設の完成を急ぎたい為に渋る碇やナオコを説き伏せた。 まあ、その時反対した関係からナオコはここを使おうとはせず、弁当暮らしに成ってしまったと言う話もあるのだが・・・ ユイ復活に伴い碇と冬月が配慮した為や、金欠の国際連合所属から、地球連邦統監府所属となったこと、しかも予算の殆どが東京帝国グループから出るようになった事でこの食堂にも十二分な経費が落ちるようになったことなどから、最近この食堂のメニューは数も増え、味も随分と良くなってきている。 リツコはカレーを、ユイはサンドイッチセットを食べている。 自分の身や地位の心配が無くなった事や、ユイは夫の愛人であった自分を特に嫌悪していないらしいと言う事が分かったからか、やはり大きな戸惑いはあるもののそれなりに打ち解けてきた様で色々と取り止めも無い話をしている。 食事も大体終わりが近付きユイは最後のサンドイッチを口に放り込んだ。 「ん・・・この卵、殻入りね」 「くすっ」 舌をちょこんと出して、舌の上の殻を指で取る・・それが妙に可愛い仕種だったので思わずリツコは笑ってしまった。 ミサトのマンションでは昼食済ませ、シンジにレイとアスカの2人が勉強を教えていた。 「えっと・・・これ教えてくれるかな?」 「どれどれ〜・・ん、地球連邦の領域ね」 「良い?」 「まあ、良いわよ、」 アスカは資料集にシャーペンで解説を書き込んでいく。 「基本から行くと・・・この世界は、6つの大次元(平行宇宙)から成り立っているのよ、昔は他にも中小の次元があったらしいけど、既に大次元に取り込まれてしまっているらしいわ」 「ふむふむ」 「で、その大次元は、東西南北の各大次元と神界と暗黒大魔界・・これらは伝承上からつけられた名前で、北の大次元のこの辺りに、地球があるのよ」 イメージ図の一点をシャーペンでさす。 「それで、これらの大次元の間を繋ぐのがワームホール、北と東、東と神界、東と南、南と西、南と暗黒大魔界がそれぞれ繋がっているわ」 それぞれのイメージ図の間に線を引っ張っていく。 「それで、地球連邦の領域は、3段階に分けられていて、直轄域、所属国等の地域が、北の大次元の半分くらいだったっけ?」 「・・約半分ね。」 「この地域では、地球連邦の連邦としての面が前面に出て権限も非常に大きくて、国家の権限も制約を受けているけど、他の地域に比べて地球連邦の選挙での一人や一国辺りの票数とか総会での発言力が強いのよ」 「ふ〜ん」 「それで、所属加盟国って言うのは・・・かなりややこしいんだけど、所属国と後で言う加盟国との間みたいなものね。」 「魔導国とかローレンシア帝国とかを始めとするかなりの大国がここに入っていて、北の大次元の残りと東の大次元の大半、それと南の大次元の一部がこれに属するわ」 「で、残った最後が加盟国、これらの地域では地球連邦の国際組織としての面が強く出ていて、国家の権限も余り制限されないのよ、そのかわり、地球連邦の選挙での一人や一国辺りの票数とか総会での発言力が弱いのよ」 「・・なるほど、」 「このややこしい体制は、地球連邦が広がって行った時にあった色々な事に関連してるんだけど、まあその辺りは連邦史で勉強して」 「うん・・ありがとう」 シンジは一言礼を言ってから教科書に戻った。 5月12日(木曜日)、ネルフ本部、副司令執務室、 ユイは耕一と電話で話をしていた。 「アベルの理論は完成しましたので、研究に移れます」 『そうか、』 「汎用コアの物とあわせデータは、来週第3支部と第6支部に送るつもりです。」 『御苦労だったな』 「いえ、大した事ではありませんよ」 『・・ところで、人間関係は上手く行っているのかな?』 ユイは表情を少し暗くした。 「やはり、忙しくてシンジやレイと一緒に過ごせないと言うのはありますけど・・・あの人とリツコちゃんの関係が改善していないのが心配ですね・・」 『確かに、それは問題だな・・・』 「どうにもならないようでしたら、やはり、話しておかなくてはいけない事が有るので、私から話そうとも思います。」 『ああ、あの事か、』 「・・ええ、」 『そうだな・・』 「ん、ミサトちゃんが来た様なので、又後で」 『ああ、』 ユイは電話を切った。 『葛城3佐です』 「畏まる必要は無いわよ。どうぞ、」 リモコンなどで開ければ済むのだが、わざわざドアの所まで歩いていって開ける。 「あ、はい」 「ちょっと待ってね」 ユイは紅茶とケーキを準備してミサトに差し出した。 「はい、どうぞ」 「有難う御座います。」 早速、口に運び始める。 「さて、前は殆ど話が出来なかったけど、その時話したかった事を話そうと思うんだけど良いかしら?」 「ええ」 「さてと・・・ところで、ミサトちゃんは、使徒に付いてどう思っているのかしら?」 顔を顰める。 「・・・単なる、人類の敵、任務としての目標・・それだけじゃない・・・個人的な怨み・・・セカンドインパクトによって命を落とした両親の仇・・と言った所かしら?」 ユイの言葉にミサトはゆっくりと俯く。 「ミサトちゃんはシンちゃんと同じで、自分に全く構ってくれなかった父親を一方では憎み・・・又一方では求めていた・・そして、貴女は自分の父親に対する気持ちを整理する前に、セカンドインパクトにより、永遠にその気持ちを整理する機会を失い、更には母親の命も奪う事になったセカンドインパクト・・・そして、その原因となった第壱使徒アダムを恨み、全ての使徒を恨むようになった・・・」 まさにその通りである。 ミサトはぎこちなく頷き、それを見てユイは一つ息をついた。 「一つ、はっきりさせておきましょう。」 「・・・第弐使徒以下の使徒と、第壱使徒アダムは、別の種族なのよ」 その衝撃的な発言にミサトは勢い良く顔を上げた。 「別!?」 「ええ、それぞれが単独の存在、」 「単独?」 「第壱使徒アダム、第弐使徒リリス、第参使徒サキエル、第四使徒シャムシェル、第伍使徒ラミエル、第六使徒ガギエル、第七使徒イスラフェル、第八使徒サンダルフォン、第九使徒マトリエル、第拾使徒サハクィエル、第拾壱使徒イロウル、第拾弐使徒レリエル、第拾参使徒バルディエル、第拾四使徒ゼルエル、第拾伍使徒アラエル、第拾六使徒アルミサエル、第拾七使徒タブリス、全て別の存在、独立した種族よ、」 「・・・じゃあ・・・じゃあ何故、使徒と戦っていたんですか?」 「それは、勿論サードインパクトを防ぐためよ」 ミサトは即答したユイの目をじっと見詰め真偽を見抜こうとしたが、当然ミサトごときにユイの真意がわかるはずも無い。 しかし、暫くしてユイは少し表情を暗くした。 「正確には、セカンドインパクトなんだけれどね・・」 「どう・・・言うことですか?」 では、あのセカンドインパクトは・・・或いは、ファーストインパクトとは何だったと言うのか? 再び紅茶を口に流し、喉を潤してから話を始める。 「セカンドインパクトの時、南極ではアダムに関する調査が行われていて、その中で色々な実験や研究が行われていたの。」 確かに多くの研究者を見た・・単なる南極の調査にしては多過ぎる。 「その中に、アダムのコピーがあったわ。」 「エヴァですか?」 「いえ、私のエヴァの基礎理論はまだ未完成だったの・・でもあの時葛城博士は焦っていたわ。残された時間が少なかったのは事実だけれど・・・何故そこまで焦っていたのかは私には分からないわ・・・偽情報を掴まされたか、私達は知らない何か極めて重要な情報を掴んだか・・・それは分からないけれど」 「結局博士は私の理論の完成している部分を流用して、アダムのコピーを作っていたの。そして、そんな中でアダムは目覚めた。」 ミサトは光の巨人を思い出した。 「アダムは、自らの子にあたる使徒達と融合する事でインパクトを発生させる事ができるわ。しかし、この時の融合はアダムのコピーだったと考えて先ず間違いは無いと言えるわね。コピーは不完全、更に魂もないただの器・・結果はインパクトの不発、単純なエネルギーの解放に終わったわ」 「単純?」 疑問に思った単語がそのまま口から出た。 「ええ、第参使徒以下の使徒にはそれぞれ、欠けている部分があるの、それを補い完全なる生命体、いわゆる一つの神を生み出す儀式・・・それがインパクト。その副作用として、発動した種族以外の生命体は全て生け贄として消えるわ」 「消える?」 「シンジがLCLになったことがあったわよね」 「・・・はい・・」 嫌な事を思い出し顔を顰めつつ答えた。 「人類を含めた全てがLCL化するのよ」 「え?」 「分かるかしら?」 少し想像してみる・・皆がすべてとけて行く様子・・・身震いをしてしまう。 「使徒にはインパクトを起こす事が出来るから、起こされたらたまらない、だから、自分を守るために使徒と戦ったのよ」 「フィフスは?」 では、何故フィフスを残すのか疑問に思い尋ねた。 「大丈夫よ、他の使徒はともかく彼は理性を持っている。だから判断したのよ、自分は人として暮らす事が出来そうだ。人として暮らすのと神になるのどちらが良いか・・・結果、人として暮らす事を選んだわけね。」 「し、しかし・・・」 信用できるのか? 「これは、地球連邦統監である会長が人類を代表して判断した事なのよ」 ミサトごときがいくら何を言っても無駄であり、只、言われるままに信じろと言う事である。 沈黙が流れてしまった。 ・・・・ ・・・・ 「・・・因みに、ネルフは地下のアダムを使って何をするつもりなんですか?」 「アダム?あの、白い巨人?ロンギヌスの槍を突き立てられた?」 ミサトは頷いた。 「知ってるとおり、餌よ。」 「餌」 「使徒が無差別に攻撃を仕掛けないようにする為。エヴァを作るためと言うのも有るけど、エヴァってね完全なコピーじゃないのよ」 「どう言うことですか?」 やはりミサトは、疑問を殆ど考えもせずに直ぐ口にしてしまうようだ。良く考えれば、完全なコピーでない事は直ぐ分かるであろうに、 「完全なコピーを作ってエヴァにインパクトを起こされたら意味が無いでしょ、だから、手を加えてインパクトが起きないようにしているの、使徒・エヴァ間、エヴァ・アダム間両方でね」 詳しくは良く分からないが、大まかな事は分かった。 しかし、これらの事は明らかにミサトに与えられているレベル4を超える事である。 「・・・何故こんな事を私に?」 「ミサトちゃんには、自分のトラウマに真っ向から立ち向かって克服して欲しかった・・・でもそれには、色々と知っておく必要が有ると思ったからよ」 「別に、個人的な復讐の為に使徒と戦った・・いえ、戦わせたと言う事に囚われる必要は無いわ、事実結果として今があるわけだし、そもそも、人類を護ると言う壮大な目的の為にネルフに入った者なんかまず居ないわ・・皆、愛する者の為であったり、友人知人の為であったり、自分自身の為であったり・・・動機は皆様々だけどね、その事は恥ずべき事ではないわ」 「・・・」 ユイは自分の事を思ってくれている・・・それが、非常に嬉しかった。 「がんばってトラウマを乗り越えなさい、私も応援するわ」 「はい」 笑顔で答えるミサトに対し、ユイはミサトの為とは言え心にしこりを感じていた。 夜、総司令執務室、 「今日、ミサトちゃんにある程度の事まで話しました。」 「そうか、」 「これで良い方向に行ってくれれば良いんですがね」 「・・そうだな」 「で、貴方の方はどうでした?」 碇は眉間に皺を寄せる。 「・・・しかた有りませんね・・・機会を見て私の方から話します」 「・・済まんな、」 「いえ・・・」 ユイはプライベートルームに戻ってきた。 「ただいま」 「・・おかえりなさい、」
あとがき 今回は、リツコとミサトの話が中心でしたね。 リツコは逃避し、又一方でミサトはユイの助けを得て、自らのトラウマに立ち向かう準備をしましたね。勿論、これからの道は非常に長いものになるでしょうが、今回はその第一歩といったところでしょうか、 次回予告 ネルフの一般公開が近付く中、ユイはもう一人のために色々と苦心する。 そして、ふと夫から思いがけない情報を聞き、早速行動に移す。 彼女は自らの母への想いを話し、又母の想いを知る事となる。 夜、真実を確かめるため、母の想いの象徴たる場を訪れ、それを確信への昇華させる事となる。 母の想いを知った彼女は果たしていかなる道を歩むのであろうか? 次回 第拾壱話 母、娘、そしてそれぞれの想い