文明の章

第九話

◆3人だけの修学旅行、東京で

5月4日(水曜日(国民の日))朝、札幌第7ホテル、レストラン、
今、3人は軽い者で朝食を取っている。
「ああ〜、昨日は本当に食べ過ぎたわ」
「僕も、」
「・・そうね」
レイの冷静な反応は、自分に負い目や非がある時はまるで責めているように聞こえる。
「そんな事言わないでよ〜」
「・・・何?」
「ははは」
シンジは苦笑した。
「まあ、程ほどにしておこうね」
「そうね、」
朝食を済ませ、出発の支度をして、3人は今日の目的地、第2新東京市に向けて新千歳から飛んだ。


第2新東京市と、第2新東京国際空港が見えて来た。
日本第2位の都市人口と第3位の都市圏人口を誇る日本国の首都、第2新東京市。
セカンドインパクトからの日本の復興の象徴であり、国際政治上も国際連合本部なども存在し、更に経済面から見ても地球連邦の非東京帝国グループ系大企業の15%の本社がここに集結している。
その様な事から、東京、天聖界、アテネ(魔導国首都のアテネであり地球のギリシャアテネではない)に続き地球連邦の最重要都市の一つに数えられている。
第2新東京市に電力を供給しているのは、主に核融合発電所と水力発電所、地熱発電所。昼間は電力が不足気味で圏外からも電力を供給している。今、地下核融合発電所が3基建設中である。
第2新東京市最大の欠点は交通である。道路交通は問題無いが、鉄道交通は、太平洋側は良いが、日本海側に出にくい。そして内陸部なので当然海上交通は無し。空は、長野空港とこれから着陸し様としている第2新東京国際空港があるが、其々滑走路が1本ずつしかなく周りにはビル群が犇いている為拡張は不可能、宇宙線は無く東京中央空港や中部国際空港、一部第3新東京国際空港や新名古屋空港に回ってもらっている。
暫くして、第2新東京国際空港に着陸した。
3人は、飛行機を降りて、ターミナルビルに入った。
ターミナルビルは人だらけで物凄い混雑している。
「これが、日本の首都の空の玄関口ねぇ・・」
アスカは呆れ気味である。
「まあ・・仕方ないよ、」
第2新東京市は元々は暫定首都、今でこそだが、作られた時、ここまでになるとは想定していない・・・いや、していたかもしれないが、当時はその様な事まで対策をする余裕は無かったのであろう。
「今日は・・・7:00からパーティーだから、6:30にはホテルに行きたいわね。」
今夜、耕一達の代理としてインペリアルホテルで開かれる政府主催のパーティーに出席するのである。
「後7時間と少しか・・・早速買い物よ!」
又買い物?と、2人は苦笑するしかなかった。


第2新東京空港駅から電車に乗り、第2新東京市中心部へと向かった。
そしてターミナル駅で地下鉄に乗り換えて、新新宿駅で下車した。
新新宿駅の直ぐ近くに百貨店街が存在し、そこには日本の百貨店業界の多くの百貨店が存在している。
「流石に凄いわね、」
大きな道路の両側にずらっと大型百貨店が並んでいる。
ここならば市販されている物ならほぼ何でも揃うだろう。
「早速行くわよ」
3人は人の流れに乗って百貨店の中に入って行った。


今、第2東京百貨店の店内を見て回っている。
既にそれぞれ片手に紙袋を持っている。
その後、昼までずっと、アスカの買い物に付き合わされる事に成った。
新名古屋で、別行動をしたと言う事も関連しているのであろうが、
そして一通り店内を見て回り、遅くなったが昼食を取る為に外食店が並ぶフロアにやって来た。
「さて、何が良いかしら?」
「そうだね・・」
シンジは、ずらっと並んでいる店に目をやった。
「昨日の事もあるし、夜のパーティーのことも考えて、昼は軽食で済ます?」
「うん、そうね、」
「・・構わないわ、」
「それじゃ、」
シンジの発案で、なかなか雰囲気の良い喫茶店に入る事になった。
シンジとレイはホットケーキセット、アスカはショートケーキセットを頼んだ。
暫くして注文の品が運ばれて来た。
「ん、このショートケーキ美味しいわね」
「このホットケーキも・・結構良い店だね」
レイは頷いた。


百貨店に場所を移しその後も別のアスカの買い物を続け、漸く満足に至ったのか、シンジとレイの物を買うと言う事に成った。
既に3人とも両手に複数の紙袋を下げている。
「さってと・・・この品揃えなら、良い物が見つかる筈よ」
確かに、とても広いフロア一杯に様々な品物が並んでいる。
第3新東京市や新横須賀の百貨店とは規模その物が違う。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
アスカは可愛らしい白い靴を手に取った。
「この靴なんか良いんじゃない?」
レイは、アスカから白い靴を受け取り、掌に載せてじぃ〜っと見詰めた。
「なかなか、良いね」
「・・そう・・なら、買う」
シンジの一言で、決まった様だ。
「よし、じゃあ、決まりね。」
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
その後何点か購入し、続いてシンジの物を見て回っている。
「ん〜、これ良いわね、これも、」
「はい、これ、試着してきて」
アスカは、シンジに数着ほど自分が選んだ服を渡した。
「あ、うん・・・」
その後、アスカが選んだ服をシンジが着ると言う、シンジの着せ替えが行われた。
最終的には、4着ほど買う事に成った。


P.M.6:52、少し予定よりは遅かったが、インペリアルホテルに到着した。
先ずはフロントで荷物を宅急便で送り、パーティー会場に行きアスカは招待状を見せる。
「ようこそお越しくださいました。此方に御名前を」
3人はサインをして、パーティーホールに入った。
パーティーホールには各国の大使、領事やその家族が犇いている。
「お、あれは、ドイツの大使、」
結構有名な者も多い。
暫くして恰幅の良い中年男性、酒井外務大臣が3人の存在に気付いた。
「おや、どうしてここに子供がいるんだ?」
酒井が3人の方にやって来た。
「君達は?」
「・・・地球連邦第3代統監皇耕一、及びルシアテラアテネ皇妃、皇蘭皇妃の代理として来ました。」
「私がターニアアルト皇妃の代理ですぅ!」
レイが説明した直後、突然横から燒リコトミ第4秘書官が現われた。
「きゃっ!」
「うわっ!」
アスカとシンジは吃驚して、思わず驚きの声を上げてしまった。
レイも結構吃驚していたようで、全く気配すら感じさせなかった様である。
「・・・これは、失礼をしたね。今夜は存分にパーテーを楽しんでいってくれると嬉しいね。」
「じゃあ、御言葉に甘えさせてもらうわ」
「アスカ、厚生大臣に失礼だよ。」
「・・・シンジ君、貴方も失礼・・・酒井前厚生大臣は今は外務大臣・・・・」
シンジはレイに指摘されて自分もかなりを失礼をしたと気付き頭を下げた。
「済みません」
「いやいや、気にする必要は無いよ。」
内心は、どうだか・・・
「・・・ところで、ふと思ったんだが、君達は・・・」
「あっ、はい、チルドレンです。」
「そうか、やはりか、」
このクラスの人間ともなれば、当然、ネルフの事は色々と知っている。
それに、未だ、一般には公開されていない物の、4月からかなりの量の情報が各政府や関連機関に流れている。
「少し話がしたいが良いかね?」
「機密は話せません。」
レイが即答した。
「はは、そんな物ではないよ、君達の事を色々と知りたいのだよ、個人的に興味があるんだが・・・駄目かね?」
「まあ、少しなら、」
その後、アスカは、色々と使徒戦に付いて話した。
と言っても、機密に触れないようには気をつけている。
今、アスカの周りには、大勢の者が集まって、アスカの話・・ある意味自慢話を熱心に聞き入っている。
「ふぅ・・・」
シンジは、椅子に座って軽く溜息をついた。
「・・・」
レイが左横に座った。
「アスカなんだか、嬉しそうだね」
「・・そうね」
エヴァに関する事で自慢話なんて早々出来る物ではない、自慢できて嬉しいのだろう。
「レイ」
シンジがレイに声をかけようとしたその時、
「きゃあああああ!!!!!」
会場にコトミの悲鳴が響き渡る。
その悲鳴の方を見ると、コトミがワイン等が積んであったテーブルをこかしてしまったと言う事が分かった。
様々な物が宙を舞っている。
そして、床に落ちたワインボトルやクリスタルカットグラス等が派手な音を立てて木端微塵に割れる。
「うわ」
高級な絨毯にガラスの破片が飛び散り、水とワインが染みとなって広がって行く。
「びえええ〜〜〜〜ん!!ターニア様に申し訳が立たないですぅ〜〜!!」
「いえ、そんな事はありません!」
大声で泣き始めたコトミを慰めるのに酒井達は必死になっている。
(あ、あれが世界を動かす人間の1人か・・・・・・・)
アスカは顔を引き攣らせた。
似たような表情をしている者多数。
その後、アスカの方は、かなり盛んに会話をしていたが、レイは勿論、シンジもこの場にいるような人達とそうそう上手く会話が出きる筈もなく孤立した感じになってしまったが、開き直って二人で料理を食べる事にした。
コトミがやって来た。
「大丈夫でしたか?」
見かけはともかく、実際には目上の人物なので敬語で話す。
コトミの目は充血しており本気で大泣きしていたと言う事がわかる。
「私は大丈夫ですけど・・・」
「大丈夫ですよ、会長達ならこんな事気にしないですよ。それよりも、一緒に何か食べませんか?」
流石にこのままにしておくのは心苦しいのか、シンジは慰めの言葉を掛ける。
「そうですね・・」
「・・はい、」
レイがテーブルから取ってきた料理を皿に載せて差し出した。
コトミは皿の上に乗っている料理をしばしじっと見詰め、そして笑顔で受け取った。
どうやら、好物だったらしい。
その後、3人で色々と話をしていた。


夜、パーティーも終わり、シンジは今夜泊まるロイヤルスイートルームの窓から第2新東京市の夜景を眺めていた。
第3新東京市に来る前・・・1年前は第2新東京市の郊外に住んでいた。
こんな都心ではない、だが、同都市内・・・近い・・・
この町には良い想い出は無い・・・
むしろ、嫌な想い出ばかりであった。
今は、いろんな意味であの時はまるで別の世界に住んでいるとも言える。
しかし、二つの世界、生活は決して断絶しているわけで無い、大きな変化があっただけで、連続しているのだ。
あの時の事は、今にとってどのような意味を持つのであろうか?
・・・良く分からない・・・
・・・・・・
・・・・・・
シンジが悩んでいる頃、プールのような湯船にアスカは浸かっていた。
「いや〜、良い湯だわ・・」
上機嫌で鼻歌を歌い始めて暫くしてレイがバスルームに入って来た。
レイはアスカと反対側から湯に入った。
アスカは風呂を泳いでレイに近寄った。
「・・何?」
「ん?・・・別になんとなくよ」
「・・そう」
アスカはレイの右側、普段シンジがいる位置に、腰を下ろした。
「・・・」
レイはどこか不快そうである。
それを見て軽くアスカは溜息をついた。
(レイの右側は、シンジの指定席か・・・そして、シンジの左も・・・)
アスカが少し表情暗くする中、レイはアスカから少し離れた。
(・・私と碇君との特別な絆・・)
「・・先、上がるわね」
レイは軽く頷き、アスカは風呂から上がった。


アスカがバスルームから出て来ると、シンジがソファーに座って紅茶を飲んでいた。
「ん?紅茶、アタシにも頂戴」
「はい」
もう用意してあったのか、直ぐに紅茶を出した。
「ありがと、」
一言礼を言ってから紅茶を飲む。
「今日は随分とアスカ楽しそうだったね」
「ん〜・・そね、まあエヴァやネルフのことなんて早々他人に言えるもんでもないしね、かと言ってもネルフの人間相手に話してもつまんないじゃない」
「まあ、そうだね」
軽く苦笑する。
「そいやさ、シンジって第3新東京市に来る前、ここに住んでたんじゃないの?」
「あ・・うん」
表情が暗くなるのがはっきりと分かる。
(あ・・・そっか、シンジ、ここで嫌な事ばっかりだったのね、)
自分自身第3新東京市に来るまでいたドイツに良い想い出を持っていないと言う事でシンジも同じだと言う事が分かる。
「・・そんなに離れてないよ、第2新東京市の郊外に10年間住んでたんだ。」
「・・あんまり良い事は無かった、」
「・・うん、苛められたし・・・友達なんて一人もいなかったし・・・」
「そんな事あんまり気にしちゃ駄目よ、気にしすぎたら病気になっちゃうわよ、」
ふっとアスカの顔に視線を向ける。
「肝心なのは、今、そして、これからでしょ、」
「・・そうだね」
軽く表情を柔らかくして答える。
「分かったんなら良いわ、明日も早いし、さっさと寝ましょ」
「うん」
二人はソファーを立ち寝室に向かった。
それから暫くしてレイがバスルームから出てきた。
少し視線を辺りに配り、そして既に二人は寝室に行ったのであろう事が分かる。
「・・私も、」
レイは寝室に向かった。


寝室には3つの高級なベッドが並べられていて、いつもの順番のベッドの上で二人は横に成っていた。
「あ、遅かったわね」
「・・そう?」
「もう寝るけど、レイは?」
「私も寝るわ」
「そう、」
レイも自分のベッドに潜り込む。
「じゃあ、お休み、」
「お休み」
「・・お休み、」
暫くして3人とも眠りに落ちて行った。


5月5日(木曜日(子供の日))、第2新東京市、インペリアルホテル、
「・・ん?」
シンジはベッドの上で目を覚ました。
「ん〜・・時間はと・・・え!?8時半!?」
かなりゆっくりと寝ていたようだ。
アスカとレイの二人は未だ眠ったままである。
(ツアー旅行じゃなくてホントに良かった)
ツアーだったら置いて行かれたかもしれない。


二人を起こして着替えを済まし、3人はレストランで遅い朝食を取っている。
「今日は東京だね、」
「ええ、」
「今日も買い物?」
流石に少し嫌そうと言うか、そう言う表情で尋ねる。
「ん?ショッピングは程ほどにしとくわよ、あんまり買っても使えなきゃ勿体無いしね」
「・・では、どこへ行くつもりなの?」
「ふふふ、秘密♪黙ってこのアスカ様について来なさい。」
二人は黙るしかなかった。


その後、出発の支度をしてタクシーで第2新東京駅に移動し、
そこから新幹線に乗り東京を目指した。


東京、東京ターミナルステーション新幹線ターミナル、
第1、第2東海道、第1、第2中央道、東北新幹線が集結する日本最大の新幹線ターミナルである。
しかも、新ターミナルを建設中であり、未だ広がる事になっている。
3人は、東京ターミナルステーションに降り立った。
『69番ホームに東北新幹線やまびこL255号入ります。』
『7番ホームより第1東海道新幹線こだまK666号発車します。』
「いや〜、流石にここはでかいわね、大阪の倍以上あるんじゃない?」
「・・そうかもしれないね」
かなり大勢の人が行き来しているが、非常に広いため、余り混雑していると言う感じは無い。
とは言え、時間帯によっては、このターミナルも相当混雑するのであろう。
「さてと、こっちよ」
二人はアスカに付いて新幹線ターミナルを出て下の階層へと向かった。
「どこに行くの?」
「あれよ、」
アスカが指差した電光表示板には東京環状モノレールの案内があった。
「東京環状モノレール?」
「東京の市街を見るのが主な目的のモノレールよ」
「ふ〜ん、そんなのあるんだ。良く知ってたね」
シンジは少し感心している様である。
「ええ、あんまり有名じゃないんだけどね」
エスカレーターに乗って3人は東京環状モノレールの乗り場にやって来た。
「えっと・・学生は300円か、」
アスカは券売機で切符を3枚買って、二人にそれぞれ1枚ずつ渡した。
3人は改札を通り、ホームに停車していたモノレールに乗った。
50人乗りほどの車内には他に客はいない。
「誰もいないね」
「ここ、高さの関係から新幹線ターミナルの近くで一般路線から離れてるじゃない・・・そう言う事もあるみたいだけど、」
「そうかもしれないね」
「・・赤字路線ね、」
レイの現実的な一言に二人は苦笑した時、誰かがモノレールに乗り込んで来た。
「ん?」
そして、その人物は物凄く意外な人物であった。
「「「あっ・・・」」」
長い茶色の髪を後ろで括ってポニーテールにしている碧色の瞳の女性、レイラテラアテネであった。
「久しぶりね」
「「あ、はい」」
3人はレイラに頭を下げた。
レイラが乗り込んで直ぐに発車時刻となり、結局4人だけで発車した。
「昨日、お父さんやお母さん達の代わりにパーティに出てもらってありがとうね」
「い、いえ・・」
「おかげで2人も気分良く旅行に行けたわ」
「へ〜会長たちも旅行かぁ〜」
「ええ、それで今日はお礼に私が少しだけど東京を案内してあげるわね」
「あ、はい、有難う御座います。」
・・・・
・・・・
かなり高い位置を走っている事もありモノレールの車窓からは、ビル並みが良く見える。
大きなビルが整然と立ち並ぶその様は凄いものがある。
そして、下に目を向けると、多くの高架が網の目のように張り巡らされ無数の車や列車が行き来している。
「あっ、あの屋上に大きなパラボナアンテナが一杯ついているビルが、東京第1放送局ビルよ」
「へ〜、あれが、」
日本、そして世界、ひいては地球連邦の放送の中心の一つである。
・・・・・
・・・・・
その後も、レイラは彼方此方のビルや建物などを説明してくれた。
しかし、途中である事に気付き、じぃ〜とレイラを見詰め始めた。
「・・どうかしたの?」
「ところで・・・こんな事してて良いの?」
アスカは素朴な疑問をぶつけてみた。
一国・・・いや、地球連邦最大の国家、東の大次元の大半を領域とする魔導国の第2代独裁官が・・・そして、同時に、地球連邦最大企業にして国際機関としての性質を併せ持つ東京帝国グループの副会長婦人・・・その様な人物が、こんな事してて良いのであろうか?
まあ、そんな人物にタメ語で話すアスカもアスカかもしれないが、
「ん?良いのよ、どうせ普段は私がする事なんて殆ど無いんだから、」
「秘書官が皆やってくれるって事ですか?」
シンジが尋ねる。
「ん〜、魔導国の独裁官ってね、権力は大きいんだけど、その権力を使わないって言う事になっているの・・存在が重要でも、実際に政治を行う必要は無いのよ、大体、お母さんと私二人同時にいて独裁官なんて本来成立するものじゃないしね」
「確かに、そうね」
レイラとアスカは軽く笑った。
暫くして、とてつもなく巨大なビルが見えて来た。
屋上をジャンボ機が離発着している。
「あれが東京ビル、屋上にあるのが、東京中央空港よ」
「お、おおきいわね・・・」
桁外れの大きさであると言うのが、周囲のビルとの大きさの対比で良く分かる。
「ビルの中には、競馬場とか野球場、コンサート場、ゴルフ場にスキー場に始まって、もういろんな施設があるのよ」
駅が見えて来た。
「東京ビル前駅ね、東京ターミナルステーションと同じく主要な鉄道の駅はあのビルの地下にあるんだけど・・・」
そして、駅に停車した。
乗り降りは無くそのまま発車した。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
又、色々と説明される。
そして、いろんな本に載っていて見覚えのあるビル。
地球連邦本部ビルが見えて来た。
「あれが地球連邦本部ビルね、でも、実際には殆どの機能は東京帝国グループ総本社ビルに同じ物が用意されてて、殆ど使われてないのよ、お父さんも、地球連邦統監室は数回しか使った事無いって、言っているくらいだし」
「それに、地球連邦政府の主要機関や機能は天聖界にあるしね」
「・・・税金の無駄ね」
アスカはキッパリの言ってのけた。
「そうね、地球連邦本部ビルの扱いに関しては時々問題になっているわね、」
その後、一周して東京ターミナルステーションに戻り、レイラの案内に従って、昼食を食べに行く事にした。


そしてレイラに案内された店は良い雰囲気のイタリアレストランだった。
「へ〜、良い感じね」
「でしょ、」
レイラは何か得意そうである。
そして、店内に入り、色々と注文した。
値段を見る限り少し高いが、まあ、東京市内だから当然であり、寧ろ、それを考えれば安い方だろう。
運ばれてきた料理はどれもとても美味しい。
確かに、超一流レストランに比べれば劣るかもしれない、だが、この雰囲気と価格を考えれば素晴らしい物である。
「未だ雑誌にも紹介されてないから、穴場なのよ」
耕一やルシアもそうだが、レイラもまた、超越した雲上の人物と言った感じはしない。
レイラに至っては、一般人と大して変わらないのではないだろうか?
シンジはそんな事を考えていた。


その後も何箇所かを案内され、色々と楽しめたが、それも終わりがやって来た。
今、東京ターミナルステーションの新幹線ターミナルにいる。
既に3人が乗る新幹線は目の前に停車し、発車の時を待っている。
「じゃあ、又、気が向いたら何時でも尋ねてくれて良いから」
「はい」
「じゃあ、又」
レイは軽く頭を下げた。
「ええ」
3人は新幹線に乗り込んだ。
自分達の座席につき窓越しにレイラに手を振った。
レイラも笑みを浮かべ手を振って返してくれた。
やがて定刻になり、新幹線は走り出した。


新横須賀駅正面でミサトが車を止めて待っていた。
「そろそろ出て来るはずなんだけどなぁ〜」
ミサトの肩を誰かが叩いた。
振り向くと、その人物は警官だった。
「ここは、駐車禁止、」
「・・・・あ」
「罰金2万円」
「わ、私はネルフの葛城3佐よ」
ミサトはIDカードを提示した。
「罰金2万円」
「う・・」
「あらあら、」
飲み物を買いに行っていたユイが缶コーヒーを持って戻って来た。
「あ、ユイ博士、」
「どうしたんですか?」
「駐車違反ですよ」
「あらあら、ちょっと待ってくださいね」
ユイは携帯をかけた。
「はい、私です・・・・・・・・・ミサトちゃんが・・・・ええ、葛城博士の御嬢さんです・・・ええ、そうです・・・はい、」
「ええ、御願いしますね」
・・・・・
・・・・・
・・・・・
「何をしている?」
「あ、ちょっと待ってくださいね」
・・・・・
「あ、はい、御願いします。」
「どうぞ」
ユイは軽く笑みを浮かべ、携帯を警官に渡した。
「はい?」
「なん・・・え?しょ、署長!?」
「・・し、しかし、」
「で、ですが・・」
「は、はい・・わかりました」
警官は顔に縦線を入れている。
「・・こ、今回だけは、多めに見ますので・・」
ミサトの駐車違反は、揉み消された。
「・・あんな事しちゃって、良いんですか?」
助かったのだが、ミサトはちょっと不安に成っているようだ。
「じゃあ、罰金素直に払う?」
「う・・・」
「だったら、黙っている」
「・・・はい」
暫くして三人が駅から出て来た。
「おっ帰り〜!」
「お帰り」
「只今」
「たっだいま〜」
「・・ただいま」
ミサトが運転席、ユイが助手席、3人が後部座席に座った。
ミサトは車を走らせた。
「さて、色々と旅先での事話してくれるかしら?」
シンジ達は第3新東京市につくまで旅先での出来事を色々と話した。


そして、帰りついたメンバーの先ず最初の仕事は、ミサトが散らかしたものを片付け、掃除をする事であった。
部屋の中にはあちらこちらにゴミが散乱し、酒の空き瓶や空き缶が彼方此方に・・・
アスカはぶつくさ文句をたらたら垂らしながら、シンジとユイは仕方ないなぁと言うような表情で、レイは特にこれと言って何も無く淡々と掃除をしている。
そして、当のミサトは・・・アスカの愚痴を聞きながら苦笑いを浮かべて、ゴミ袋の口を持って、アスカがゴミをいれやすいようにしているだけであった。


夜、ミサトのマンション、ミサトの部屋、
「むふふ、旅先で何があったのかしらん」
3人の話を聞いて興味が出てきたミサトは本部の保安部に電話を掛けた。
「葛城3佐だけど、」
『はい、』
比叡が出た。
「旅行中のチルドレンの事について聞きたいんだけど、」
『どのようなことでしょうか?』
「先ずは、名古屋の夜から順番に」
『お教えできません』
「むっ、あんでよ!私は、あの子達の保護者よ!」
『プライベートの保護は存在します。現在チルドレンは司令部直属となっていますので、司令部の許可が必要です』
・・・・・
・・・・・
暫く言い合ったが頑として比叡は受け付けなかった。
『分かりましたか』
「・・・はぁ・・・」
大きな溜息をついた。
「分かったわよ・・・」
『それでは、』
ミサトは電話を置いた。
「ちっ」
取り敢えずビールでも飲んで寝る事にした。

あとがき
4話にわたった3人だけの旅行も終わりを告げ、日常が繰り広げられる第3新東京市に戻ってきました。
今回の旅行でそれぞれが感じた事がこれからの人生にどう言う影響を与えるんでしょうね。

文明の章のアンケート(2回目)を採ろうと思っております。
協力してくれた方には、文明の章第参部外伝第弐話を差し上げます。
前回予想以上の協力が得られたため、頑張ってみた結果今回は第壱話の8割弱程の増量になっています。
内容的には、ネルフのメンバーや耕一たちのゴールデンウィークの話になっています。
よろしければご協力ください。

次回予告
リツコ、ミサト・・・彼女達の過去から現在に至るまでの道、それは過去の人、過去の出来事を引き摺ってきた道であった。
しかし、それは一方は終局を向かえ、又他方はその意味を失った。
リツコはその事から目を背け、ミサトは自分では到底知りえなかった事実を知らされ、その意味を再考する。
彼女達はいかなる人生を歩む事になるのか
次回 第拾話 新たな道