どうも、色々とあって取調べが長引きそうである。 アスカはそろそろさすがに帰りたくなってきた。 切り上げたいのでIDカードを出して自分がネルフの3佐だということを言おうとしたのだが、どうやらホテルに忘れてきてしまったようだ。 「む〜〜・・」 (しゃ〜ない、2課を呼ぶか、) 「携帯かけて良いですか?」 「廊下でどうぞ」 アスカは廊下に出て携帯をかけた。 しかし、なかなか繋がらない。 「うも〜2課の奴等何サボってんのよ」 そして、繋がった。 「あ、アタシだけど、」 『何かね、アスカ君』 アスカは、暫く硬直してしまった。 電話の相手は、冬月である。 「え、ふ、冬月副司令?」 『そうだが、それがどうかしたのかね』 「い、いえ・・・」 (そうね、冬月副司令から言ってもらおっと) 「あ、それが・・・実は、集団暴行未遂の被害者として警察に来たのは良いんですけど、どうも長引きそうで・・・それで、帰ろうと思ったんですけど、IDカードをホテルに忘れてきたみたいで・・」 『ふむ、それで、2課を呼ぼうとした訳かね、』 「あ、はい」 『アスカ君、ところで先日、資料を調べるために2課の者を使ったそうだな』 口調は少し怒っているようでもある。 「・・・はい、」 『そのような事に保安部を使わないでほしい、保安部は君の生命を守るためにいるのであって、決して君の召使いではない』 その後暫くお小言が続いた。 『今夜はそのまま警察署に泊まるといい』 「ええ〜!!」 『反省したまえ、』 電話は切られてしまった。 ・・・・・ ・・・・・ 4月30日(土曜日)、東の空に太陽が昇り始めた頃、漸くアスカはホテルに戻ってきた。 「たくっ、折角このホテルで優雅な一夜を過ごそうと思っていたのに・・・・」 「・なんで、この、アタシが・・・」 「・・・・まさか二人で寝てないでしょうねぇ、」 ぶつぶつ愚痴を言いながらベッドルームに入ったアスカは、シンジとレイが同じベッドで寝ている光景を見てしまい、しばし沈黙した。 ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ アスカは色々と調べた。 「ふぅ、シンジがお子様で助かったわ。・・・・全く、」 何を調べたのかは分からないが、どうやら大丈夫だったと分かった様でほっと安堵の溜息をついた。 改めて外を見ると既に明るく成ってい来てる。 (・・今から寝ても駄目ね・・・仕方ない、か・・) アスカはベッドルームを出て、ソファーに座り、取り敢えずコーヒーでも飲む事にした。 ・・・・・・ ・・・・・・ 最高級のコーヒーの良い香りが漂う。 「ふぅ・・・良いコーヒーだわ」 上等のソファーに腰掛け、朝焼けに照らし出される新名古屋の街を見下ろし、最高級のコーヒーを飲む。 ・・・・・・ ・・・・・・ アスカは愚痴る相手が起きてくるまで、昨夜の事を忘れ至福の一時を過ごした。 ・・・・・・ ・・・・・・ やがて、2人が起きて来た。 「おはよう♪」 レイは平然としていたが、シンジはアスカの表情を見た瞬間固まってしまった。 取り敢えず、何かを思いっきりシンジに愚痴りたかった、その相手が漸く起きてきたと言った顔であった。 「・・おはよう」 「お、おはよ・・・」 勿論シンジの表情を引き攣っている。 ・・・・・・ ・・・・・・ 朝食はルームサービスで頼んだ。 今、アスカの愚痴と食器を動かす音だけが響いている。 「アタシが・・・あん時・・・・ぶつぶつぶつ・・・ぶつぶつぶつぶつぶつ・・・・・」 一通り昨夜の事を愚痴り終ったのだが、未だ満足していない様で、関係の無い古い事やその他様々な事、更には政治問題や国際問題に関する不満まで愚痴り始めた。 (たはは・・・最後まで付き合うしかないな・・) シンジは苦笑しながらアスカの愚痴を最後まで聞く事にした。 朝食が済むと3人は荷物を纏めて出発の準備をした。 支度が済み、エレベーターでロビーに下りてチェックアウトを済ませ、タクシーで新名古屋駅に向かい、新名古屋駅から新幹線に乗り京都を目指した。 一行は京都駅に到着したが、アスカは未だ依然としてずっと愚痴ばっかり言っていた。 「どうして私が警察署で夜を明かすことになるのよ・・・ぶつぶつぶつぶつ」 シンジは苦笑いをしながら聞ききつづけている。 タクシーで鹿苑寺にやって来た。 金閣が湖面にうつっている。 「ふ〜ん、なかなかじゃない。」 たっぷり愚痴りまくった結果、アスカの機嫌は回復した様だ。 「そうだね、」 レイは余り興味がない様だ。 アスカはパンフレットを読んだ。 「ふむふむ、正しくは、鹿苑寺と言い、臨済宗相國寺派の禅寺です。か、」 「・・そうね、」 色々と興味が引かれる様である。 辺りの観光客の大半は外国人で、日本人は少ない。 「・・まあ、当然か、」 3人は暫く見学した後、他の場所へと向かった。 今、清水寺を見学している。 「へ〜ここが有名な清水寺か」 ぺたぺた柱などを触っている。 やがて有名な清水の舞台にやって来た。 「ここが自殺の名所ね」 「そうだっけ?」 勿論小声で尋ねた・・・勿論レイは首を振った。 アスカは舞台の下を覗く・・・確かに、落ちたら死ねそうな高さである。 「清水の舞台から飛び降りて」 「あっ!!」 「あ・・・」 本当にアスカは舞台から飛び降りた。 余りの事にレイまで目が点に成っている。 シンジとレイは手すりに駆け寄り、慌てて下を見てみたが、アスカはいない。 「???」 「?」 「バァ!!」 「ぎゃああ!!!」 アスカが手すりの下から顔を出した。 「吃驚した?」 シンジは腰が抜けている。 いっしょに吃驚させられたレイはジトッとアスカを睨んでいた。 結構恐い。 「あはは、ごみんごみん」 今、近くの茶店で休憩している。 「ゴメンゴメン」 アスカは軽い笑顔を浮かべながら二人に謝った。 「・・・本当に吃驚したんだから、」 「怒ってる?」 「当たり前だろ、」 レイも不満を表情に出して頷いた。 「はい、お団子、御持たせしました。」 店員が団子を持ってきた。 「団子奢るからさ」 「はぁ、しょ〜がないなぁ」 シンジは溜息交じりに答えた。 二人は団子の串を取って食べ始めた。 「・・美味しい・・」 「ほんとだ、美味しいや」 「これで良いでしょ」 結局、これで済んだようだ・・・随分と軽いのかもしれない。 慈照寺、 今、銀閣の前にいる。 「ふ〜ん、ここが銀閣寺ねぇ、で、銀閣はどれ?」 「・・目の前の、観音殿よ」 「へ?」 目の前には、白と茶色の古ぼけた建物があるだけである。 「・・銀色じゃないじゃない、」 アスカの頭の中には、間違い無く銀箔が張られた建造物があったのであろう。 金閣には金箔が張られていただけに余計に、 「・・そうよ、」 「・・・・」 アスカは足元に転がっていた石ころを蹴飛ばした。 数個の寺社仏閣を回った後、未だ時間があったので御所にやって来た。 「アスカ・・ここは拙いよ〜」 アスカはシンジの静止を聴かずに正面にまでやって来たが、中に入ろうとした所で、警備員に止められた。 「ここから先は一般人は許可証が必要です」 「何よそんなものなかっても自由に国民の象徴に会わせてくれても良いじゃない」 因みにアスカはアメリカ人である。 「駄目なものは駄目なんです。」 「なによ、だからアタシが言いたいのは!」 「だから、それは無理です」 ・・・・・・ ・・・・・・ 「ふん、このIDカードを見なさい」 暫く押し問答をしたが頑として受け付けないので、アスカはIDカードを取り出して見せた。 「なになに、地球連邦統監府直属、特務機関ネルフ、惣流アスカラングレー、3佐・・・・・・・・お嬢さん、公文書偽造は犯罪だよ」 全く信用せず子供扱いする警備員にアスカは青筋を浮かべた。 「大体ネルフってそんな組織聴いたことも無いよ、更に、3佐って・・・嘘を付くならもう少し可愛げのある嘘にしとかないと、逮捕されちゃうぞ」 警備員は幼いいたずらっ子を叱るかのように言った。 当然アスカは更に頭に来る。 そして、何とかぎゃふんと言わせる方法は無いかと考える。 (先ず、こいつ等は知らないだけ・・・ならば、それを知らしめるだけで良いか、でも、どうやって?) (では、どうすれば良いのか・・・2課・・それはだめ・・・・と、すると知り合いのえらい人を連れてくる。うん、それが良いわね!) 「レイ!」 「・・何?」 「誰か秘書官呼びなさい!」 レイは頷き、携帯を掛けた。 『はい、レイさん、何のようですか?』 蘭子が電話に出た。 「今、京都御所の前にいます。至急秘書官を一人よこして下さい」 『京都御所・・・近くにコトミがいるから行ってもらうわ』 ・・・・・ ・・・・・ 「高木コトミ第4秘書官が来るそうよ」 暫く3人が待っている間に警備員が増えてきた。 複数のヘリコプターの音が聞こえてくる。 大型ヘリが11機のヘリを伴っている。 「来たわね」 ヘリが降りてきた。 一番外側のヘリから親衛隊員達が降りてきて周囲に立った。 そして、内側のヘリから秘書官達が降りてきた。 中央の大型ヘリからコトミが数名の秘書官を伴って降りてきた。 緑の髪と青い目の大きな眼鏡を掛けた女の子・・・それがコトミの第1印象である。 「レイさん、何のようですか?」 「・・アスカが今上天皇に会いたいそう・・」 「分かりました。」 何時の間にか警備員の数が更に大幅に増えている。 「高木コトミ第4秘書官ですぅ。」 コトミはIDカードを差し出した。 「我々は、中級秘書官です。」 それぞれIDカードを提示した。 警備員が呼んで来たのか、中から宮内庁の役人が出てきた。 役人は、コトミを知っていたので、すぐに天皇に会うことが可能になったかとおもいきや、 「ざんねんながら、お会いする事はできません。」 「どうしてですぅ?」 「どうしてよ!あたし達がちゃんとした存在だって事分かったでしょ!」 「・・・残念ながら、両陛下は、現在、イメッガを御訪問中でして・・・ここにはおられませんので・・」 アスカはその言葉に固まってしまった。 ・・・・ ・・・・ ・・・・ 奇妙な沈黙が辺りに流れている。 京都第1プリンセスホテルに到着し、55階のVIPルームに通された。 部屋に入り荷物を下ろすとアスカは思いっきり伸びをした。 「今日はゆっくりと休むわよ〜!」 昨夜は・・・だったから尚更であろう、 「先ずは夕飯ね。」 「そうだね」 「ルームサービスで頼むか、」 アスカは早速電話を取り、フロントに掛けた。 ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ 「「「御食事をお持ち致しました。」」」 部屋の中央にずらっと豪華な料理群が並んだ。 とても3人では食べきる事はできない量である。 「さて、食べるわよ」 早速、3人は料理を食べる事にした。 「うん、おいしい」 シンジは寿司を摘んでいる。 「ん?シンジは何を食べてるの?」 「お寿司だけど」 「ん、美味しいそうね、アタシにも頂戴」 アスカは大皿ではなくシンジが手に持っていた小皿からタコの寿司を取った。 「もぐもぐもぐ」 大皿にはタコの寿司は複数残っている。苦笑するしかない。 「ふ〜ん、なかなか行けるのね。処でさっきの何の魚?」 「タコだけど」 「タ、タ、タコォ〜〜!!何てもん食わせんのよあんたは!!?」 「へ?」 「げー、気持ちわる〜」 美味しいと言ったのに突然気持ち悪がっているアスカが理解できずシンジは少し首を傾げた。 レイは横でスパゲティーを静かに食べていた。 夜、寝室で3つのベッドに、それぞれ、右からアスカ、シンジ、レイの順で寝る事に成った。 「ん〜、ふっかふか☆」 アスカは最高級のベッドの上で大の字になった。 スカートが捲れて、黄色いショーツが露になっている。 「うわ・・・」 刺激的なポーズにシンジはほんのり頬を赤くして目線を逸らした。 「・・・ん?」 アスカは自分がどう言う状態なのか、そしてそれがシンジに見られていると言う事に気付いた。 「きゃ〜〜!!エッチ馬鹿変態!!」 アスカは飛びあがってシンジに打撃を食らわせた。 「うが!」 レイは吹っ飛ばされたシンジを受け止め、アスカを睨み付けた。 「・・・どうしてシンジ君に暴行を加えたの?」 「あ・・・」 アスカはついつい体が反応してしまった事を後悔した。 こんな事では・・・・ シンジは、まあ、いつもの事だみたいな表情をしている。 「あ・・・」 「・・・・ご、ごめんなさい・・・つい・・」 アスカは頭を下げた。 思わぬ反応にシンジは戸惑いの表情を浮かべ、レイの方も少し戸惑っているようだ。 (・・・はぁ・・・・) 2人の反応が、辛い・・・ 「・・・寝るわ、」 アスカは少し気を落としたまま寝る事にした。 シンジはベッドに横になった後、暫くアスカのことを考えていたが、その内に眠りに落ちていった。 5月1日(日曜日)、朝食を済ませた後、3人は、ホテルを出て、京都駅に向かい、そこで新幹線に乗り新大阪を目指した。 新大阪は水没した大阪の上に大きな人工島を作り、そこに建設されている。 既に主要交通システムはほぼ完成し、本格的な超大規模開発が続けられている。 新大阪は旧政令指定都市、大阪、神戸、堺の3都市を融合したものにし、都市人口は、第2新東京市を超える物を目指すらしい。日本初の国際都市にする計画も持ち上がっているが、今の所日本政府と東京帝国グループは難色を示している。 現在日本は東京を中心とし、第2新東京市、名古屋圏と、関東中部地方に中心地が集中し過ぎている。これを分散させる意味と関西圏の中心都市として大阪が復活することが望まれている。 新大阪ターミナルステーション、新幹線ターミナルに到着し、ホームに降りた。 このターミナルには第1東海道新幹線、第2東海道新幹線(東京、新横須賀、第3新東京、清水、静岡、天竜、豊橋、岡崎、豊田、旧名古屋、四日市、奈良、新大阪)【但し現在は第3新東京駅付近は復旧工事中】、山陽新幹線、山陰新幹線(新大阪、鳥取、松江、山口、北九州)、南勢新幹線(新大阪、高松、松山、大分、宮崎、鹿児島)、が相互乗換えが出来る。将来的には、紀伊新幹線(新名古屋、旧名古屋、桑名、四日市、鈴鹿、津、松阪、伊勢、尾鷲、新宮、田辺、和歌山、新大阪)【初期全駅】が繋がる予定である。 「やっとついたわね。」 「そうだね」 3人は、駅を出た。 整然とビルが並んでいる。 完全な都市計画が実施され、機能性だけではなく、都市の美観もかなり重視されている。 緑地の面積も多く、今までの復興の為に、とにかく推し進められてきた開発計画とは異なる。 タクシーを拾い、新大阪港へと向かった。 新大阪港ポートビルに到着した。 ビル自体は完成しているが中はまだまだの様である。 職員がビルを案内してくれた。 「この8F〜17Fには、大規模な室内レジャーランドが出来る予定です。」 ・・・・・ ・・・・・ 「25F〜155Fまでは、オフィスになっています、既に予約で半分ほどは埋ってますがね。」 ・・・・・ ・・・・・ そして、最上階の展望室にやって来た。 新大阪港、そして、大阪湾が一望できる。 大規模な開発が進められていると言うのが良く分かる。 大量の土砂を積んだ大型船が次々に湾内に入って来た。 「あれは?」 シンジは尋ねた。 「あれは、中国からの船ですね。造成で出る国内の土砂だけでは足りないので、中国、朝鮮、台湾などから輸入しているんです。」 「・・輸入か、」 「ここ以外にも旧名古屋を初めとして、今、日本中で埋めたてを行っていますが、それに使用される土砂の80%以上は海外から輸入されています。」 「・・日本てなんでもかんでも輸入するわね・・・まあ、それだけ経済力があるって事なんだけど、」 「そうだね、」 昼過ぎに、雑誌で特集されていたレストランに入った。 大阪湾の新鮮な海産物を使った料理を食べさせてくれるらしい。 少し時間が遅い事で、店内には空席があり、直ぐに座る事ができた。 「御注文は何にされます?」 「ん〜、これとこれとこれとこれと」 アスカはメニューで目に付いた物を次々に指差し注文した。 「分かりました。」 ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ 暫くして店員が次々に料理を運んできて、テーブルの上には新鮮な魚料理がずらっと並んだ。 「早速食べるわよ」 「うん」 アスカとシンジの二人は、早速目の前にあった料理に箸をつけた。 「美味しいや」 「そりゃそうよ、鮮度は抜群、美味しいのは当たり前よ」 シンジとアスカは競うように色々な料理に箸を伸ばしている。 それを、レイは少し不満そうな顔で見詰めている。 「うん、美味しい」 「これも行けるわね」 ・・・・ ・・・・ ・・・・ 暫くして、二人はレイが料理に殆ど手をつけていない事に気づいた。 「「・・・あ・・・」」 別に肉と同じく体質的に食べられないとか、味が嫌いなわけではないのだろうが、好きでも無い物ばかりである。 「すみませ〜ん」 シンジは店員を呼んで、海草をメインにした別の料理を頼んだ。 ・・・・ ・・・・ 海草をメインにした料理が運ばれて来て漸くレイは表情を緩め、その料理に箸を伸ばした。 「・・美味しい、」 3人はお腹が一杯になるまで食べた。 その後、3人は大阪府庁舎にやって来た。 ビルの上部が3つのタワーに分かれていて其々、府政、文化、府民の塔に分かれている。 文化の塔は、博物館とか美術館等が詰まっている。 府民の塔は、府民の憩いの場を目標として作られており、それ様の施設が入っていて、全て無料で開放されている。 3人は府民の塔の最上階にある展望室にやって来た。 新大阪が見渡せる。良い眺めである。 ポートビルと違い、中心部に存在する為に、やはり、その見える街の規模も違う。 ここから見ていると再開発が終わった場所、進行中の場所、未だ手をつけられていない場所、埋めたて中の場所が全て手に取る様に分かる。 「ふ〜ん、なかなかの町ね」 旧名古屋の復興工事を超える、世界最大の復興工事なのである。 まさに人類の再建を象徴している。 眺めているだけでもどこか力が沸いてくるような気までする。 「・・・」 WIDTH="90%" BORDER="0" ALIGN="CENTER">3月27日(日曜日)、昼前、第3新東京市、12エリア、 零号機自爆の際の爆発で、この辺りまで芦ノ湖が広がっていた。 その湖の辺にシンジ、レイ、耕一の3人がやって来ていた。 耕一は、もうギプスを外しており、包帯だけになっている。 レイは、さして大きな外傷は無いが神経をいためており、車椅子を使っていて、丁度、今は耕一が押している。 レイも自分も助かった。 だが・・・・ 第3新東京市の市街地は消え去った。 被害者は明らかにはなっていないが、死亡者も当然多いだろう。 シンジは小石を拾って芦ノ湖に向かって思いっきり投げた。 生き残った多くの者が疎開し、ヒカリやケンスケなどの級友も第3新東京市からいなくなり、シンジが護りたかった日常は崩れ去った。 小石は水面に落ち、波紋が広がって行く。 「・・何を悩んでいるの?」 車椅子に座りながら本を読んでいたレイは本を読むのを止めてシンジに問いかけた。 「いや・・・・別に・・・・」 シンジはもう一つ小石を拾って投げた。 「・・そう、」 レイの座っている車椅子を押していた耕一がシンジに語り始めた。 「シンジ・・人類はかつて、楽園を追われ、全てを失った。」 「しかし、人類は生きていた。そして、生きて行く為に人工の楽園を作った、そして、その楽園は子孫の繁栄と共に数規模共に多くなっていった。」 「人工の楽園は何もここだけではない、今やどこにでも楽園は有る。それに、破壊されたとしても何度でも作り直せる。」 「ここを離れる事になった者は多い・・・しかし、生きていれば必ず巡り会う。ユイ君も、生きていればどこでだって幸せになれると言っていた・・・」 「そして、その時まで、人類の火種を消さない為にも、勝たなくては成らない。」 シンジは耕一の言葉をじっと考えた。 次が最後の戦いなのだ。 次現れる使徒にさえ勝てば良いのだ。 「碇君、車椅子を押してくれる?」 「あ・・・うん」 レイが珍しく自分の頼み事をした事に暫くシンジは戸惑っていたが返事をした。 耕一が車椅子を放しシンジが代わりに押し始めた。 5月1日(日曜日)、大阪、大阪府庁舎、 シンジは、あの時耕一が言っていた言葉を思い出した。 町は何度でも作り直せる。 今、トウジやケンスケ、マナ達とは連絡を取る事はできない。 しかし、生きていれば、必ず会える。 そして、幸福を掴む事もできる。 この景色を見ていると、耕一の言っていた事が真実味を帯びてくる気がする。 「そろそろ、ホテルに行きましょうか?」 アスカの言葉に二人は頷いた。 今日泊まる新大阪第3帝国ホテルに到着し、3人は部屋に通された。 未だ、新大阪の経済機能は大した事が無く、このようなホテルに泊まるような者も少ないと言うこともあり、現在このホテルは実質的にはほぼ貸しきり状態である。 「ここのプール凄いらしいのよ、行かない?」 2人は頷き、3人でプールに行く事に成った。 シンジは更衣室で水着に着替え、二人を待っていた。 50メートルプール、スキューバ−用の深さ10メートルのプール、1周300メートルの流れるプール、子供用のプール、ウォータースライダー等等その他沢山、様々な施設がある。 「ほんと、凄いや」 暫くすると女子更衣室からレイとアスカの二人が出てきた。 レイは白いワンピースタイプ、アスカはレモン色のビキニタイプである。 シンジは二人に見惚れてしまった。 「な〜に、見惚れてんのよ」 「あ、いや、そんな、別に・・・そう言うわけじゃ・・・」 シンジは頬を少し赤くして俯いた。 「ふん、まあ良いわ・・・ところで、」 「ところで?」 「レイとアタシどっちの方が綺麗?」 「え?」 「どっち?」 シンジは、レイとアスカにそれぞれ視線を向けた。 どちらも美しく惹き付けられる魅力を十二分に持っている。 しかし、どちらの方が、と言われると難しい。 勿論、下手な事を言うと関係が悪化するとかそう言う意味ではなく、ある意味、全く違った美しさを持つ二人である。 比較するのが難しい。 シンジは腕を組んで考え込み始めた。 ・・・・・・ ・・・・・・ 「もう良いわ、答えに迷うくらいって事ね、」 「あ、うん」 「行きましょ」 アスカの視線の先には、大きなウォータースライダーがある。 「え・・」 「あれよ」 シンジは汗をかいた。 「あ・・あのさ・・」 「む・・・仕方ないわね、一回だけ滑ってくるから、そこら辺で待ってなさい」 「うん、ありがと」 アスカは二人を置いて、ウォータースライダーのエレベーターに乗った。 「レイ・・・どうする?」 レイは、流れるプールを視線で示し、シンジはプールの傍に並べてあった大きな浮き輪を持って、レイは大きな板を持って流れるプールに入った。 それらに乗って、水の流れに乗る。 「なんか・・こうしているの良いね」 「・・そうね・・」 そのまま水の流れに乗っているとだんだん眠くなってきて、何時しか二人は眠ってしまった。 その頃、アスカは、ウォータースライダーの中で一番大きい物のスタートに立って滑り始めた。 「ヒャッホォ!!!」 数少ない他の宿泊客がやって来た。 小柄な少女だった。 護衛らしきサングラスをかけた黒服の男がついている。 黒服の男は、周囲に隠れているネルフ保安部員を警戒しているようだ。 「御嬢様、本日は体調が良いとは言え余り無茶をなさらぬ様、」 「分かっています、」 少女は大きいシャチを持っている。 丁度、少女がウォータースライダーの下のプールの近くに来た時、アスカの声が急速接近して来た。 「ぃぇぇぇぇえええええええ!!!!」 「御嬢様、」 アスカがプールに飛び込んだ瞬間、凄まじい水飛沫が上がる。 男は少女の盾になってびしょ濡れになった。 「扶桑さん・・」 「・・気になさらないで下さい、」 「ん?掛かった?ゴメンゴメン」 アスカは、プールから上がり全く悪そうには思っていなさそうだが謝った。 「・・・普通に滑り降りてきたらあんな速度は出ないと思うが・・・」 明かに、危険と思われる速さだった。 「ん?普通じゃ面白くないじゃない、上半身を倒すと凄いスピードになるのよ。」 「御嬢様、どうぞ」 少女は別のプールの方へ歩いて行った。 「周りの迷惑を考えないか」 扶桑は高圧的にアスカを威圧しようとした。 「だったらあんたもここは土足厳禁よ」 「・・・・」 扶桑は自分の足元を見る・・・しっかり靴をはいている。 「・・・勝った。」 扶桑は、靴を脱いで、その場を離れた。 ・・・・ ・・・・ アスカは、流れるプールを流れているシンジとレイを見つけ、起こして無理やり引っ張ってきてスキューバーのセットを付けさせた。 「いい、これから潜るのよ、去年潜れなかったんだからたっぷり潜るわよ」 アスカから色々と伝授された後3人はスキューバー用のプールに潜った。 壁には点々と照明があり、底も照らされている。 プールの底には珊瑚があり魚も多数泳いでいる。 LCLとは違うが、液体の中にすっかり浸かっていると、どこかエントリープラグの中のようにも思える。 レイはかなり成れている様でアスカよりもずっと上手に水中を移動している。 レイの回りに魚が集まって来て、レイと一緒に泳き始めた。全く魚は警戒していない・・・寧ろ・・・ 一方のアスカは魚を追いかけるが、魚は逃げてしまっている。そして、更にむきになって追いかける為に恐怖を与えてしまうのか余計に逃げられている。 その光景を見て思わずシンジは笑ってしまった。 そして、再び魚と一緒に泳いでいるレイに視線を移す・・・その光景は神秘的で美しく思える。 シンジはレイに見惚れていた。 ・・・・・ ・・・・・ ふと気付くと辺りが魚に包まれていた。 (え?) 何時の間にかレイがシンジの左横に来ていた。魚はレイについてシンジの周りにやって来たのである。 レイは軽くシンジの手を引っ張った。 一緒に泳ごうと言っているようである。 シンジは軽く頷き、レイに手を引かれ、多くの魚に取り囲まれて共に泳いだ。 絵画の中に取り込まれてしまったかのような幻想的な感じに包まれる。 この雰囲気を作り出しているのは全てレイである。 レイといると確かに心地良い。この心地良さを求めてこの魚達もレイに集まっているのだろうか? 暫くレイと魚達と一緒に泳いでいたら、突然魚が散ってしまった。 (・・はい?) ふと脇を見るとアスカがシンジの右隣にいた。 (きいいいい〜〜〜〜〜〜〜〜!!何でアタシから逃げるのよ〜〜!!!) アスカは地団駄を踏むような仕草をした。 まあ、水中なので実際には踏めないが、 二人は苦笑するしかなかった。 その後暫く、3人の人間が一緒に泳いだ。 夕食は、中華料理の店で取る事にした。 高級精進料理で、昼の事があるので2人もレイにあわせた。 美味しそうな料理が次々に運ばれてくる。 「ん、これ美味しい」 「そうだね、」 レイに視線を移すと、色々な料理に手をつけている。 結構気に入っている様である。 シンジは表情を緩めた。 食事を済ませ、その後其々部屋に戻った。 シンジがシャワーから上がると、何故かシンジの寝室のベッドの上にはアスカが寝ていた。 「あれ?」 「ZZZ・・・・」 服が肌蹴て、少し肌が露になっている。 「アスカ、御休み」 シンジは寝室のドアを閉めて別の部屋で寝る事にした。 アスカは、目を開いた。 「・・・・」 やはり、普段の事や昨夜の事があるのか・・・・ 表情を暗くする。 「・・アタシ、何やってんだろ・・・」 なぜ、色仕掛け何かしようとしたのだろうか・・・ 普段は拒否・・に留まらずに攻撃までしてしまうと言うのに・・・ シンジの事を本当に誘惑したいのなら、何故・・・・シンジを拒絶・・いや、シンジに拒絶されてしまうような事をしてしまうのか・・・ 自分はシンジの事が嫌いなのか?・・・否、シンジの事は好きである筈である。 「・・・アタシって・・・バカね・・・・・・・・」 「・・・・・・・考えるの止めて、今日はもう寝よ・・」 自嘲した後暫く表情を暗くして俯いていたが今夜はもう寝てしまう事にした。
あとがき 今回は、アスカの行動と心の中での戸惑いと後悔、などが目立った話でしたね。 新大阪はこれからの話の中でその完成した姿を見せる事はできるんでしょうか? 次回は、前半で一気に西へと進んで九州福岡に、後半では北の大地北海道に向かいます。 次回予告、 九州に辿り着いた一行は、新博多ポートランドを訪れる、そんな中、アスカは二人が困るほどまでに思い切り様々なアトラクションを楽しむ。 そして、北海道へと飛んだ3人は、札幌で北海道の幸を食べ歩く。 しかし、その3人を見つめる視線、そして3人を尾行する少女がいた。 3人にとって、彼女はいかなる存在なのか、 次回 第八話 3人だけの修学旅行、九州と北海道で