A.S.16年3月6日(日曜日)、ネルフ本部、作戦部部長執務室 ミサトは諜報員から冬月誘拐の報告を受けた。 「さらわれた!?副司令が?」 「はい、本日、本部施設内で行方が分からなくなりました」 「貴方達諜報部は何をやっていたの!?」 ミサトは、非難を込めて言った。 「偽情報に踊らされました」 「・・・諜報部を煙に撒けるのは・・・」 脳裏に加持の姿が過ぎった。 能力と必要性を兼ねているのは加持しか居ないだろう・・・ 「はい、加持リョウジ、彼がこの事件の第1容疑者です」 「それで私のところに来たわけね・・・・分かったわ。」 「彼と私の過去を考えれば当然でしょうね・・・」 「御理解が早くて助かります。」 「丁重にお連れしろ」 ミサトは拳銃とIDカードを出して諜報部員達に従った。 「・・ばか・・」 ミサトの小さな呟きは誰にも聞かれる事は無かった。 第11監禁室、 「どうぞ」 ミサトは諜報部員に従い監禁室に入った。 扉が閉められ、カギが掛かる音が響いた。 ミサトは隅の腰掛に座り、俯いた。 A.S.0年9月13日、南極、 『ATフィールド反転!!』 「駄目です!!施設が持ちません!!」 「エネルギー開放開始!!」 「駄目です!!指数関数的に増幅して行きます!!」 「全システム停止!!これ以上エネルギーを与えるな!!」 「しかし!」 「覚悟の上だ!」 「駄目ですすでにり」 辺りが光に包まれた。 葛城博士は咄嗟に隔壁を閉鎖しその場を逃げた。 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ 博士は全身ズタボロになりながらも娘のミサトを抱いて少し離れた研究施設に向かっていた。 そして研究施設に着くと、研究中の慣性中和機能付きの救命カプセルにミサトを入れた。 研究施設の一部の壁や屋根が吹き飛んだ。 博士の血がミサトの顔に落ちミサトの気が付いたようだ。 「お父さん・・・?」 博士はレバーを引き救命カプセルの蓋を閉じた。 そして直に強烈な爆風が辺り全てを吹き飛ばした。 カプセルも一瞬にして吹き飛ばされた。 氷の大陸の大氷河が砕け散り大気中へ宇宙へと飛び散り、又衝撃波が猛烈な勢いで広がり強烈なエネルギーで地表を深く抉った。 ・・・ ・・・ どれだけ経ったのか、カプセルの中で気が付いたミサトはカプセルの蓋を開けた。 南の方に天空にまで聳える巨大な光の柱が2本、目に入った。 A.S.2年1月31日、南極海、 ミサトは、碇に連れられて、小型ボートで本船を離れた。 ミサトは蹲り、弱々しい呼吸の音が聞こえるだけだった。 「お前は、何を考えている?」 碇の言葉には何も反応を示さなかった。 「この場所は、ちょうど研究所があった場所であり、セカンドインパクトの爆心地だ。」 僅かに身体を振るわせた。 「セカンドインパクトを引き起こし、南極を消滅させたのは、第壱使徒アダムと言う存在だ」 ミサトに構わず先を続けた。 「そして、又同時に、複数体の使徒の存在が確認された。使徒は、世界のどこかで覚醒を待っている」 「20年もしない内に、再び使徒は現れる。」 「この事は世間には伏せられる。」 「だが、お前には、知る権利と義務がある。」 「以上だ」 碇はエンジンをかけ、本船に戻った。 ただ、行きと帰りでは、ミサトの目の輝きだけが異なっていた。 A.S.11年、3月、松代、ネルフ本部付属実験場、 碇がここを訪問し、偶然、ミサトと碇の二人だけになった。 たかが3尉に過ぎない自分と、ネルフの総司令がたった二人になる事は通常ならば絶対にありえない。 ミサトは、碇の配慮だと思い、ミサトは碇に深く頭を下げた。 「あの時はお世話になりました。」 「・・・あの時?なんだそれは?セカンドインパクトにおける葛城調査隊の生存者はいない、それが事実だ」 明らかに分かっていて、無かったように振る舞えと言っている。 「失礼を致しました。私の勘違いだったようです」 「・・・期待している」 最後にそう残し碇は去っていった。 A.S.16年3月6日(日曜日)、ネルフ本部、総司令執務室、 碇はいつものポーズで、座っていた。 A.S.0年、8月、南極、調査基地、隊長室、 六分儀、ユイ、葛城博士が言い争っていた。 「博士!イヴは危険過ぎます!」 「碇君、では、どうしろと言うのだ、君のエヴァの完成を待てというのか!?」 「まだ、その方がマシだと思いますが」 「アダムや使徒は待っちゃくれない」 「しかし!」 「碇君、ミサトへの配慮なら不要だ」 ユイは俯いた。 「博士、イヴの危険性は無視できるものではありませんよ」 「では、どうしろと言うんだ!現在、適格者はミサト一人しか確認されていない、エヴァが完成したとき、適格者がいると断言できるのか?」 六分儀は口を開かなかった。 ユイは俯いた。 個室、 お互いの愛を確かめ合った後、二人はベッドの上で話をしていた。 「・・ゲンドウさん・・・、葛城博士は何を考えているんでしょうか?」 「・・・分からん・・・だが、極端に時間を惜しんでいる・・・」 「・・・・使徒の覚醒は目前まで迫って来ているんでしょうか?」 「・・・どうだろうな・・・・ところで、カプセルは?」 「・・第4棟に置いておきました・・・」 「・・・・そうか・・・・」 来賓室、 「六分儀、お前が戻る時に、分かっているな」 「・・・ええ、データでしょう。バックアップは常に取り続けています。予定通りです」 「そうか」 「・・・・」 9月11日、隊長室、 「先ほど、統監府からの召喚がありました。明日、基地を発とうと思います」 「・・・そうか・・・」 「最後の警告です。実験は中止してください」 「もはや、これしかない、人類には時間が無いのだ。六分儀、お前も分かっているだろうが」 「・・・博士、貴方には失望した。もう会う事も無いでしょう」 六分儀は部屋を出た。 そして、その言葉通り、二人は二度と会う事は無かった。 9月12日、付属空港、 六分儀の大きなトランクの中身は、書類やディスクで一杯だった。 「・・・地獄が始まるな・・・」 飛行機は大空に舞い上がった。 A.S.1年、 ユイのお腹はかなり大きくなっている。 「セカンドインパクトの後の時代・・こんな世の中、地獄をこれからこの子は生きる事になるか・・・」 「あら?嫌ですわ貴方、生きようとすればどこだって天国になるわよ・・・・だって、生きているんですもの・・・・幸せに成るチャンスはどこにだってあるわ・・・」 「・・・そうか、そうだったな・・・」 「名前、決めてくれました?」 「ああ・・男だったら、シンジ、女だったらレイと名付ける。」 「碇、シンジ・・・碇、レイ」 A.S.16年3月6日(日曜日)、東京、東京環状4号線、 耕一が車を飛ばしていた。 車は第2東名高速道路に入った。 「・・・・セカンドインパクトか・・・・・」 「全ては予め・・・・」 B.S.2年、某日、統監専用機、 元上級秘書官が報告をしていた。 「間も無くゼーレが行動を起します」 耕一は、報告を黙って聞いていた。 「泳がせておけ、奴らのできる事などたかが知れている」 「しかし、危険過ぎます」 「奴らが何を起した所で尻尾がつかまるだけだ」 元上級秘書官は表情を歪めた。 「ゼーレの組織力を舐めるべきでは有りません。」 「確かに組織は大きい、だが実行に移せるような人材はゼーレにはいない」 「・・・・・果たしてそうでしょうか?」 「ああ、奴らの事は良く分かっている」 耕一は、ゼーレを完全に嘗めていた。 A.S.0年、9月11日、東京帝国グループ総本社ビル会長室、 耕一は各部署からの報告書を読んでいた。 「葛城調査隊か・・・・」 耕一は書類の一つを取った。 「こいつら何しに行ったんだ?」 耕一はページをめくった。 そこに載っていた名前に驚き、目を大きく開いた。 「六分儀ゲンドウだと・・・・」 「ヤバイ」 「榊原!!」 ・・・ 榊原が会長室に入って来た。 「何でしょうか?」 「こいつを直ちに呼び出せ」 「葛城調査隊の六分儀ゲンドウですね。」 耕一は焦っていた。 (やばいかもしれん) ・・・しかし・・・・ ・・・・・結果的にこれがセカンドインパクトの引き金を引くことになってしまった・・・ 9月13日、A.M.3:13、東京帝国グループ総本社ビル会長室、 耕一は六分儀が到着するのを待っていた。間も無く東京臨海国際空港に到着する予定である。 「・・・・間に合ってくれていたのかな?」 警報が鳴った。 「この警報は、まさか!!」 トップレベルの非常事態を示す警報である。 広域での国家壊滅危機レベル以上。 耕一は東京帝国グループ総本社ビル最高総司令室に向かった。 (手遅れだったか・・・インパクトか・・・・) 中級秘書官達が頭を下げた。 耕一は司令室に入った。 A.S.16年3月6日(日曜日)、ジオフロント上部、 レイがネルフ本部を見下ろしていた。 施設は未だ先の使徒戦の復旧工事が進められていた。 A.S.10年、同所、 「レイ、あれがゲヒルン本部だよ」 幼いレイがゲヒルン本部、現在のネルフ本部を見下ろしていた。 二人の女性が歩いて来た。 赤木博士親子である。 「おはようございます」 「お子さん連れですか?・・・でも確か男の子じゃ・・・そう言えばもう少し、妹さんですか?」 「いえ、シンジでも妹でもなく、知人の子を預かる事になりまして、綾波レイと言います。」 自分の子を他人に預けておいて何をぬけぬけと 「レイちゃんね宜しくね」 リツコは綺麗な笑みをレイに向けた。 (この子どこかで・・・) ナオコはレイの顔をどこかで見たことがあるような気がした。 A.S.10年、8月6日、ゲヒルン本部第1発令所、 「遂にマギシステム完成ね」 「マギメルキオール、マギバルタザール、マギカスパー」 「科学者としての私、母としての私、女としての私、マギはその3つの私が御互いに責めぎあっているのよ」 「3人の母さんか・・・」 (怖いわね) リツコは表情とは別の事を考えていた。 「今日はもう帰るわ」 「そうそう、あの葛城さん、ゲヒルンに入っていたのね」 「ええ、ドイツ支部にいたの、今日帰ってくるのよ。」 「ここ?松代?」 「松代の予定よ」 「葛城さんと言えば、遠距離恋愛だったの?」 「いえ、分かれたそうよ」 ナオコは意外と言った表情を浮かべた。 「お似合いだと思ったんだけど」 「人の感情なんて分からないわよ、ロジックじゃないから」 「貴方のそう言うとこ、幸せを逃しちゃうわよ」 「幸せの定義なんてもっと難しいわよ。」 2人は苦笑を浮かべた。 「それじゃ御休み」 「ええ、」 リツコは発令所を去って行った。 暫くしてナオコは発令所の隅にレイがいる事に気がついた。 「あら?どうしたのレイちゃん?」 「道に迷ったの」 「じゃあ一緒に出ましょうか?」 「いいわ、ばあさん」 「でも一人じゃ出られないでしょ」 「大きな御世話よ、ばあさん」 ナオコは不満を顔に出した。 「人の事をばあさんなんて呼ぶもんじゃないわよ」 「だって貴女ばあさんでしょ」 「全く所長に叱ってもらわなきゃ」 レイの口元が少し緩んだ。 「所長が言っているのよ。貴女の事をばあさんって」 「ばあさんはしつこいとか、ばあさんはもう用済みだとか」 レイの表情に笑いが浮かんだ。 ・・・ ・・・ ・・・ ナオコはレイの首を思いきりしめていた。 「はっ」 ナオコが我に返り、レイが地面に落ちた。 レイは既に息をしていない。 8月7日、ゲヒルン本部第1発令所、 リツコはナオコの死体のあった場所の近くに立っていた。 碇がレイを連れてやって来た。 「ナオコ君の事は残念だった。」 「原因は未だわかっていない。」 ・・・・ 「・・何が嬉しいの?」 リツコがはっと顔を上げた。 その表情は驚きである。 「人類補完委員会は調査組織ゲヒルンを今日付けで解体し、実行組織ネルフを結成した。」 「最大の功労者を失ったことは、残念極まりない」 レイが碇の袖を軽く引っ張った。 「行こうか」 二人はその場を離れた。 A.S.16年3月6日(日曜日)、第3新東京市市街の外れ、 加持は拳銃の弾数を確認した。 「・・これで、もう一つバイトを止める事になるな、」 陰から、目標とする建物に近付いた。 道路の向かい側のビル、普通の5階建ての雑居ビルである。 しかし、その地下には、通常では使わないような施設があり、そして、冬月が今囚われている。 見張りは・・・外からは確認できないか・・・ 「・・・」 道路を走行しているトラックのタイヤを撃ち抜いてパンクさせた。 トラックはコントロールを失って、反対車線を走行して来た車と正面衝突を起こした。 物凄い音に、何事かと見張りが窓の陰から顔を出した。 加持はそれを逃さずに、3人ほどいた見張りを全て撃った。 「よし」 次々に集まってくる野次馬に紛れて加持は雑居ビルに侵入した。 この中に居る要人は冬月だけ、ゼーレ幹部が居るわけでもない、警備はそれなりに薄い筈である。 奥から出て来た者の頭を出会い頭に撃ち抜く。 敵か味方かの区別などしていない、まあ、このビルにいる者は冬月以外敵であると予想できるから、会った者全て敵である。 冬月は囚われているのだから、 そして、警戒しながら階段を降りて行く、 ・・・いくらなんでも警備の数が少な過ぎる・・・ あれが最後で、最も奥の部屋、冬月が囚われている部屋まで辿り着いてしまった。 ・・・罠か・・・或いは・・・・ 扉の取っ手に手を掛け力を込める。 ゆっくりと扉が開いた。 真っ暗な部屋の中央の椅子に冬月が縛られている。 「君か・・・」 冬月は呟いた。 「ええ」 加持は冬月の拘束を解いた。 二人で部屋を出た。 警戒は怠らない。 外に出れば、一先ずは安心だが・・・ 「今回の事は君の命に関わるぞ」 「僕は真実に近付きたいだけです」 結局何事も無く外に出られた。警官が事故の処理を行っている。 「・・・後者か・・・」 「・・どうかしたのかね?」 「・・いえ・・・」 ネルフ本部第4監禁室、 扉が開かれた。 「もう良いの?」 「副司令が御戻りになりました」 ミサトは銃とIDカードを受け取った。 「それと、加持リョウジの抹殺命令が司令から出されました。」 「・・・そう、」 ケージでリツコとマヤが零号機の調整を行っていた。 「予算不足から、ミスリル合金は使えませんでしたね・・・」 「・・・ええ」 「・・耐熱が42%、対衝撃が31%、耐圧力が34%、それぞれ低下していますが・・・大丈夫でしょうか?」 「仕方ないわよ、現実問題これが限界なのだから」 「・・・」 マヤは表情を暗くした。 「弐号機の方は?」 「殆ど変わりません。」 「初号機は?」 「予備のパーツが多かったので、外部第2装甲板までは、ミスリル合金です。」 リツコは溜息をついた。 夕方、????、 加持は人を待っていた。 A.S.0年10月、東関東県、 リョウジは配給の食料を受け取っていた。 1人分の食料である。 「あの・・・マユミの・・妹の分は?」 「残念だが・・・重度の負傷者には食料を分ける事が出来ないんだよ」 「そ、そんな!マユミを見殺しにしろって言うんですか!?」 「済まないが、決まりなんでな、」 リョウジは必死に抗議したが相手にされなかった。 家・・・と言うのは余りにも、拾った者で寄せ合わせただけの雨露を凌ぐだけの小屋である。 風は大して防げない。 「・・おかえり」 中で寝ていた妹の光マユミがリョウジを迎えた。 未だ幼いのに・・・右の膝から下を失い、左足も重度の複雑骨折や破砕骨折で、もはや歩く事は出来ない。 「配給を貰ってきた、」 リョウジの暗い表情からマユミは何があったのか直ぐに悟った。 しかし、何も言う事が出来なかった。 一人分の食料を二人で分ける・・・・ 元々一人分と言っても十分な量ではないのだ・・・・ 数日後、リョウジは近くの親戚の屋敷の門を叩いた。 屋敷の門を硬く閉ざし、家を失ったもの達を中に入れないようにしている。 『おかえりなさい、ここは、貴方のような者が来るべき所ではありません。』 「俺・・僕は、光リョウジです!」 『・・・』 ・・・ ・・・ 『旦那様からの伝言です。』 『光家の者と言えども、何の価値も無い只の薄汚い子供を屋敷に入れるわけにはいかん。帰れ』 リョウジは天を仰ぎ、そして、項垂れた。 他も似たような物であった。 親を失った何の価値も無い只の子供をわざわざ救おうとするような者は居なかった。 そんなリョウジがマユミの為に食料を手に入れるには、盗む、奪うしかなかった。 11月に入った頃マユミは病気に掛かり、高熱で苦しんでいた。 少しでも多くと欲を出した結果、見つかってしまい、半殺しにされた。 半殺しで済んだだけ、未だ有難かったかもしれないが・・・ リョウジは自分のIDカードをじっと見詰めた。 《光 リョウジ》 ほんの2ヶ月も前は、光家と言うだけで一目置かれた。 学力も常に1番、周囲の子供達からは尊敬されていた。 しかし、9月13日、14日で、全ては変わった。 光の苗字が何の役にも立たない・・・ 元々価値の無い物、それに幻想を抱いていたと言う事なのだろうか・・・ リョウジは遠くに見える東京を見詰めた。 「・・・駄目で、元々か・・・」 リョウジは小屋に戻った。 「・・・おかえ・・・・」 マユミはリョウジの全身の痣や血を見て何があったのか直ぐに悟った。 「・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・」 「気にするな!俺がやりたいようにしているだけなんだ!」 「・・私なんか」 「マユミ!!」 マユミは涙目でリョウジを見詰めた。 「・・・一人心当たりを思いついたんだ・・・でも、少し遠いところに居る。その人の元まで行けば、大丈夫だ。」 「明日出発するからな」 「・・・・・」 マユミは、軽く頷いた。 翌朝、リョウジはマユミを負ぶって東京に向かって歩き出した。 一人でならば、丸1日かければ十分に到着できるだろう、だが、幼い子供とは言え、人一人背負いながらでは・・・ 道路標識は、東京まで42キロメートルとなっている。 「・・・・お兄ちゃん・・大丈夫?」 「ああ、大丈夫だ」 栄養不足の状態ではキツイ。 適当に休める場所を見つけ休んだ。 そして、再び歩き出す。 2日後、掘建て小屋が多く並んでいる場所に辿り着いた。 「・・これは?」 その町を抜けると、軍隊が道を封鎖していた。 「・・・」 東京に出入りする者を厳しく制限しているのだ。 そして、今後方に広がっている町は、東京に入れない者が築いた物なのだ。 兵士が二人に近付いて来た。 「現在、許可のある者以外、東京に入ることは出来ない」 リョウジはIDカードを力強く握り締めた。 頼むからこの光家の名が通じて欲しい・・・ ここだけで良いから・・・ リョウジはIDカードを見せた。 「光リョウジと、妹の、光マユミです・・・」 兵士はIDカードを手にとって写真とリョウジの顔を見比べている。 痩せこけてはいるが、本人である事は断定できる。 「・・・少し待っていなさい」 兵士は建物の中に入って行った。 リョウジは祈るような気持ちで結果を待った。 マユミはリョウジの背中で微かに震えている。 1時間ほどして、兵士が戻って来た。 「許可が下りました。どうぞ、」 兵士に誘導され、IDカードを返してもらって、それに従った。 「ん?妹さんは病気かな?」 「あ・・はい」 兵士は表情を厳しくして直ぐに連絡を取った。 「このまま病院に向かうよ、」 車に乗せられ、病院へ向かった。 東京中央病院に到着した。 この東京において広大な敷地を占める病院。 丁度建物から、耕一が出て来た。 兵士は敬礼をする。 「ん?その子達は?」 この東京には余りに似つかわしくない二人、一人は・・・ 「はい・・・説明しなさい」 マユミが診察を受けている間に、リョウジは耕一に一連の事を話した。 「そうか・・・私が君達の面倒を見よう」 「本当ですか!?」 「ああ、本来ならば余りするべきではないのだが、わざわざ私を頼りに来てくれたのだ、期待に答えない訳にはいくまい」 医師が血相を変えて飛び込んで来た。 マユミが今、問題になっている感染症を初めとして複数の病気に重度に侵されていると言うのだ。 リョウジも直ぐに検査を受けた。 結果は陽性。 耕一や兵士の方は流石に陰性であった。移っていなくて良かった。 二人は直ちに隔離された。 数日後、リョウジはベッドの上で笑みを浮かべていた。 確かに高熱や、頭痛、眩暈、嘔吐はある、苦しい。だが、食料を求めて罪を犯さなくて良い、マユミも十分な栄養が貰える。 食事が出来なくても点滴で、補給される。 リョウジは比較的軽度だった為、3ヶ月ほどで退院できた。 だが、マユミの方は一向に病状は良くならなかった。 「どう言う事なんですか?」 医師は額に皺を寄せた。 「・・・現代の医学では、治療法が開発されていない病気なのだよ、君が助かったのは、かなりの幸運だ」 「・・・え?」 「・・・二つの選択肢がある。現在、この病気は、多くの研究所や製薬会社がその治療法を探している途中で、何時見つかるかは分からない。延命にあらゆる手段を尽くし、その治療法の発見を待つか・・・或いは、延命措置を取らず、このまま死なせてあげるか・・・」 重大な問題であった。 リョウジに、マユミの命を左右する決定の権利が預けられているのだ。 「え・・延命を・・・お願いします・・・」 再びマユミの元気な姿が見たい、だから、延命を選択した。 「分かった。全力を尽くす。」 リョウジは、東京中学に入った。 東京帝国グループ系の学園である。 そして、放課後は必ず病院により、マユミの様子をガラス越しに見る。 マイクを使って会話をする。 休日は朝から病院を訪れる。 だが、少しずつ、マユミは弱ってきた。 延々と続く苦しみに、何度も弱音を吐いた。 しかし、リョウジの泣きそうな表情を見ると・・・・ リョウジは、あの選択は間違っていたのではないかと、悩んだ。 そして、2004年のある日、人工進化研究所の碇ユイ博士が、薬を開発したと言うのだ、まだ、実験の段階であり、実験もかねて、マユミに薬の投与が行われた。 数日の内に、病状は回復したが・・・遅かった。 既に極度に衰弱していた。 精神的にはもはや限界を超えていた。 リョウジは、マユミの手を握って何ともその名を呼びかけた。 マユミは最期にありがとうと言う言葉を残して、目を閉じた。 リョウジは、母方の旧姓、加持を名乗り、加持リョウジとして、第2東京大学へと進学した。 そして、そこで知り合い、別れはしたが、恋人となった葛城ミサト、 マユミとミサト、二人の為に・・・セカンドインパクトの真実を裏側に潜むもの、セカンドインパクトの全てを掴もうをして、様々な事をして来た。 ハイヒールが立てる音が近付いて来るのを聞き現実に戻った。 「・・・遅かったじゃないか」 ミサトは銃口を加持の胸に向けた。 加持は目を閉じた。 「・・ばか・・」 ミサトが引き金を引き、加持は倒れた。 ・・・・ ・・・・ ミサトはその場を去った。 ジオフロントゲート、 丁度シンジとレイが出くわした。 「あれ?綾波、これから帰るの?」 レイは頷いた。 「良かったら一緒に帰る?」 レイは軽く頷き二人で歩き出した。
あとがき はてさて、皆さんの回想でした。 見て気付いた事・・・アスカが出ていない・・・・ シンジとレイもまあ・・・だけど、本当に出ていない・・・ ・・・・まあ、良いか、元々そう言う話だし・・・ 次回予告 シンジとカヲルの事で又も戸惑うアスカ、 そんな中、使徒が襲来した。 衛星起動上から動かず、精神攻撃を弐号機に仕掛ける。 心の中を曝け出されるアスカ、 碇は、レイに、禁断の武器、ロンギヌスの槍の使用を命ずる、 だが・・・・ アスカの運命やいかに? 次回 第参拾六話 ラストチャンス