１２月３１日（木曜日（大晦日）） A.M.１０：１５、ミサト宅、居間。 「しまったぁ～！！」 ミサトの叫び声が周囲に響き渡たり、慌てて、シンジとアスカが居間に来た。 「「如何したの！？」」 「これ、」 ミサトはＴＶを指差した。 テレビには渋滞の光景が映っている。７車線全てが車で埋まっている。 『帰省ラッシュは、本日正午をピークとして、東名自動車道下り、７２㎞、第２東名自動車道下り、６８㎞、中央自動車道下り、８５㎞、第２中央自動車道下り、６３㎞・・・・』 「あっ、これじゃあ、伊勢に行けないわね。」 「でも、未だ電車が・・」 「あんたバカァ？」 画面が東京ターミナルステーションに切り替わった。 『第１、第２東海道新幹線下りの平均乗車率は１５０％、指定席の空席は無し・・・・』 「だったら、飛行機で」 「はぁ～～～」 アスカが盛大な溜め息をついた。 画面が東京中央空港の出発ロビーに切り替わった。 『現在、東京中央空港にはキャンセル待ちの人の長蛇の列が出来・・・・・』 「「「はぁ～～～」」」 ３人が揃って溜め息をついた時、電話が鳴った。 ミサトが取った。 「はい、葛城ですが」 『・・・葛城３佐、統監が、年越しパーティーに招待したいって』 「チョッチ待ってね」 『・・了解・・』 「シンジ君～、アスカ～、統監が年越しパーティーに私達を招待してくれるって言うけど、どうする？」 「ん？良いんじゃない？記念すべきお伊勢参りが出来なくなったのは残念だけど」 相変わらず日本文化をどこか勘違いしているアスカであった。 「僕も良いと思います。でも、マナの事が・・」 アスカの目が細くきつくなった。 「あ～、レイ、一人増えちゃうけど良い？」 『・・・問題無いと思う。６時に迎えに行くって・・』 「レイ、ありがとねん」 その後、シンジはマナに電話をかけた。 『はい、霧島です』 「あ、僕」 『シンジ君！、嬉しい♪』 マナはシンジの言葉を遮って喜びを声にした。 「あ、あのさ、伊勢行きの件なんだけど、さ」 『どうかしたの？』 「行けなく成っちゃって」 『そんな・・・』 本当に落胆しているのが声でわかる。 「あ、でもさ、統監が、年越しパーティーに招待してくれるって」 『統監？』 「あ、うん、皇耕一統監」 『・・え？』 「地球連邦の」 『ええ～～～！！』 マナの驚きの声が響き、シンジは慌てて耳を押さえた。 『ご、ごめんなさい、で、でも』 「大丈夫、良い人だよ」 そう言う問題ではない、宮中晩餐会よりも遥かに格が上のパーティーに呼ばれると言う事で有る。 しかし、シンジにも、アスカにも、そして、ミサトにも、当然レイにもそんな自覚は無い。 強いて言うなれば、耕一達にもそんなつもりは無い。 『ほ、本当に良いの？』 「良いと思うよ」 P.M.５：５８、ミサトのマンションの前。 ヘリの大群が道路に降り立った。 ミサト、シンジ、アスカ、マナ、レイが乗り込んだ。 特大型高機動ヘリ、 ２５人乗りの大きなヘリである。 「来てくれたか」 「ご招待、有り難う御座います。」 ミサトは深く頭を下げた。 「そんなに硬くならないで下さい、今日は無礼講と言う事で。」 「そうそう、まあ飲みなよ。」 早くも蘭はルシアの言葉続いてミサトに酒を勧めた。 「は、はあ」 ミサトは蘭から酒を受け取り口をつけた。 「あっ、いい酒」 「だろ、」 その横、 耕一、ルシアと、シンジ、アスカ、レイ、マナはソファーに向かい合って座っている。 ４人は、右からアスカ、マナ、シンジ、レイの順である。 「さてと、先ず、君に自己紹介してもらおうかな。」 「あっ、はい。霧島マナと申します。１４歳で、今月、第３新東京市立第壱中学校に転校して参りました。」 「いや、プライベートでは、普通に話してもらって良い」 「はい」 一転してマナは人懐っこい笑顔を浮かべながら答えた。 「シンジももてるな、両手に花、余り１とは」 シンジは少し赤くなって俯き、マナは嬉しそうな笑みを浮かべ、一方余り１のアスカはマナとシンジを睨んだ。 「統監、こいつとはそんなんじゃありませんよ」 「そうですよ、耕一さん、耕一さんこそ」 「私の事忘れてない～？」 ターニアが耕一の横に座った。 「ん？ちゃんと覚えてるよ」 その後、着くまで色々と話しをしたが、レイは殆ど話の中に入らなかった。 P.M.７：２５、東京、東京第１ホテル、ＶＩＰ専用へリポート、 ヘリが着陸した。 他にもヘリが止まっている。 一行はヘリを降りた。 「おっ、もう来てたか」 救也とレイラが耕一達に気付き、近寄ってきた。 「ああ、俺は、救也、東京帝国グループ副会長だ」 「私は、レイラ テラ アテネよ、宜しくね」 レイラは微笑みながら言った。 「惣流アスカラングレーです。宜しくお願いします。」 「霧島マナです。宜しくお願いします。」 「碇シンジです。宜しくお願いします。」 「・・・綾波レイ・・宜しく・・」 例え誰であっても態度を変えないレイに皆苦笑した。 一行はホテルに入った。 「「「「「「いらっしゃいませ」」」」」」 「ようこそお越し下さいました。御部屋の方は全てスイートルームを御用意させていただきました。」 それぞれカードキーを受け取った。 シンジの部屋、シンジはこの広い部屋に驚いた。 「うわぁ」 部屋が４つもある。 景色も、このホテルがかなり高い事から、視界も良く、東京の夜景が美しい。 チャイムが鳴った。 「は～い」 ドアを開けると、マナとアスカがいた。 「来ちゃった」 アスカがマナを睨んでいる事から一緒に来たと言うわけでは無さそうである。 屋上、 手摺りに腕を置きながら、空を眺めている少女がいた。 まあレイであるが、 耕一はレイに近づいた。 「・・統監・・」 「ん？」 「・・・碇ユイさんと統監の関係は・・・」 耕一の表情が引き攣った。 「あ、ああ、ユイ君が学生の時、全ての資金を私が出していた」 「・・・それだけ？」 レイはじっと耕一の目を見詰めた。 「・・・ああ、分かったよ、答えるよ」 耕一はレイの左に並んだ。 「碇家は光家の隠れ分家だ。そして、ユイ君は、中学生のときに、政略結婚の関係で家を飛び出した。私は、自分の子孫であり、地球連邦史上最高の天才でもあったユイ君の保護者になり、生活費から学費まで全て負担した。」 「私は毎月一般人にしてみれば相当額を送っていた。ユイ君は、必要な分しか金を使わなかったから、かなりの預金が出来ていた。まあ、それは良いとして、ユイ君を第２秘書官にしたかったのだが、彼女の意思を尊重して、進路を進ませた。」 「そして、セカンドインパクト、暫く連絡が取れなかったんだが・・・まあ、いろいろ有って、再会した。その時には、既にシンジを抱いていたな。」 「・・・統監は私にユイさんを見ているの？」 「は？似ているが別人だろ、生命体は全て別々の存在だ。他人を重ねて見ると言う事は、その対象の尊厳の侮辱だ。例え、双子やクローンであったとしてもな」 レイが耕一の顔を見詰めたが、耕一は東京の夜景を見ていてレイのその表情に気付かなかった。 「例え、双子やクローンでも、それは同等の存在、近似の存在であり、同一の存在にはなり得ない。近似式を等式として扱うと複雑な関係式の場合とんでもない問題が生じる。まあ、カオスだが・・・人の自我、尊厳、はたして、近似しても問題が無いほどのものかな？」 「例えば双子、双子の性格の差を分けるのは何か、もっとも大きいのは、生まれた順番だ、僅か数時間生まれた時間が違うだけで、その性格がまさに対照になることも多い。クローン体ならば、どうだろうな・・・番号の違いか？」 「まあ、いずれにせよたったそれだけの差しかない、だがその差異が、やがて大きな差異に変わる。大きな差異にな・・・・」 「歴史もそうだ、歴史の場合、方向を修正しようとする力がある。しかし、それをいったん外れてしまえば、もはや止まらない、似ても似つかない歴史になってしまう。」 「レイとユイ君は大きな差異が初めからある。同一の存在として見る事が許されるはずが無い。レイはユイ君の娘だろ、母親と同一の存在に見られるなんて、苦痛でしかないだろう」 耕一はレイの方を見た。 レイは何か複雑な表情で耕一を見ていた。 どこか、耕一が真実を知っているのか否かを見極め様としているようにも見える。 「ん？どうした？そろそろ、パーティーだ、行こうか」 レイは頷き、二人は建物の中に入った。 P.M.１０：００、パーティー会場、 パーティーはバイキング形式で行われた。 「うわぁ～」 シンジは整然と並べられた３６５品目に驚いた。勿論狙った数である。 シンジは適当に皿に何品目かよそって、席について食べる事にした。 アスカがシンジの横の席に座った。 「ホント、加持さんも来れば良かったのになぁ～」 「仕方ないよ、仕事なんだから。」 「ここ良い？」 マナが来た。 「うん。」 アスカの視線がきつくなった。 マナはアスカの反対側シンジの左隣に座った。 マナの皿は甘そうな物が多い。 「シンジ君、マナって呼んで。私もシンジって呼ぶから。」 「えっえっ」 唐突に言い出したことにシンジは戸惑った。 「ねぇ」 マナは、顔をシンジの顔に近付けて来た。 「マ・・マナ」 シンジは耳まで赤くなっている。 「聞こえない」 「マ、マナ」 「もう一度」 「マナ」 「良く出来ました。シンジ、アーンして。」 「へ？」 「アーン」 マナは口を大きく開いた。 シンジも口を開くと、シンジの口の中にマナはゼリーを入れた。 「あっ、美味しい。」 「良かった。」 マナが微笑んだ瞬間、シンジは右の耳を思いきり引っ張られた。 「いたい」 「私の前でそんなにイチャイチャして良いと思ってんの？」 シンジは何か言い返そうと思ったが、アスカの殺気に近い気迫に押され何も言い返せなかった。 「別にそんな決まりも無いし、どこで、私とシンジとが何をしようが自由じゃないですか。」 「うっさいわねぇ～、この惣流アスカラングレー様が法律なのよ。」 「そんなのおかしいです！」 「スパイの癖に生意気言ってんじゃないわよ！」 「私そんなんじゃ有りません！」 「じゃあ何だって言うのよ！？」 「アスカさんこそシンジの何何ですか！？」 「・・あの・・ふたりとも？」 「アタシはシンジの所有者よ！」 「シンジは物じゃありません！」 「こんなの物で十分よ！！」 この後も口論は続く。 シンジは居辛くなってこっそり逃げ出すことにした。 ミサトと蘭は酒を飲んでいる。 「この酒はまあまあね。」 「そだな」 「じゃあこれはっと」 どうも聞き酒を始めたらしい。 「ウワバミ・・・」 酒に強くは無いターニアが何かぼやいていた。 ルシアは親衛隊の皆さん達と一緒に御食事中。 蘭子とミユキは、来年度の下半期の計画について井戸端会議中。 レイは、菜食を中心とした料理を食べ終え、今は、シンジ達を見ていた。 そのレイを見ながら耕一と榊原は食事をしていた。 「確かに何者でしょうかね？」 「純血の日本人では、あんな髪や目の色にはならんよ。」 「アルピノでも無さそうですしね。」 「なんだろうな。」 「ええ・・」 レイのところ、 「綾波、ここ良いかな？」 レイはこくんと頷いた。 シンジはレイの右隣に座った。 「アスカとマナが喧嘩ばかりするんだよ」 レイは黙ってシンジの話を聞こうとしたが、レイラがやって来た。 「ここ良いですか？」 「ええ、どうぞ」 レイラはシンジの正面に座った。 「あ、これ食べますか？」 レイラはデザートが乗った皿をテーブルの中央に進めた。 「あっ、じゃ、頂きます」 レイもこくんと頷いて苺に手を伸ばした。 （なんだか可愛いわね） レイラはレイのその仕種を可愛いと感じたようだ。 その後、暫く話をし、お互いに好印象を持った。 「私、普段暇だから、何かあったら、連絡してね、いつでも相談に乗るわよ」 最後に電話番号を書いた紙を渡し、レイラは別の場所に移動した。 ・・・ ・・・ 突然、シンジは何か殺気を感じた。 背後にアスカとマナが立っていた。 「シンジ、アタシを無視するた～良い根性じゃない」 「シンジ、酷い」 特にアスカは赤いオーラがゆらゆらとしているようにも見える。 「あ、あ、あはは、」 「・・・今ごろ気付いて・・貴女達が碇君を無視していた証拠ではないの？」 一瞬、３人の間で火花が散ったような気がした。 「あんか、文句あんの？」 「・・碇君は私が護る・・」 再び火花が散ったような気がする。 「はいはい、駄目よ、喧嘩しちゃ」 レイラが３人の間に割り込んで来た。 「４人で仲良く食事をすれば良いでしょ」 暫くして３人は頷いた。 レイがシンジの左、アスカがシンジの正面、マナがアスカの右に座った。 マナが不満そうで、アスカが嬉しそうにその表情を見ている。 その後も何回か衝突を繰り返したが全体的には楽しい夜となり、そのまま新年を迎えた。
あとがき ふう・・・スランプです。 全然進みません。 マナファンの方には申し訳無いですが、軽く流す事にします。 耕一の言葉はレイの心に深く残る事に成ります。 次回予告 ロボット兵器から救出された少年は、マナの知り合いだった。 それが、少年少女達に大きな疑惑を抱かせる。 発覚するマナの秘密。 マナは真実を告白する。 しかし、大人達は、少年少女の意思は無視をして事を進める。 次回 第弐拾四話 疑惑