12月16日(水曜日)、昼、京都、 加持は京都市内を歩いていた。 (16年前、ここで何が始まったんだ?・・・・碇ユイ、碇ゲンドウ、旧姓六分儀ゲンドウ、冬月コウゾウ、3人の接点となったここ京都、ここが全ての始まりの筈だ) 加持は拳銃を抜いて、町工場の一つの中に入っていた。 埃が積もっており何年間も使われた形跡は全く無い。 「ここも、ダミーか・・・」 思わず溜め息が漏れた。 「これで、マルデゥック機関に繋がる108の機関の内107個がダミーだったか・・・」 加持は拳銃をしまった。 「・・・・まさか始まりは京都ではなかったのか・・・・」 奥の裏口が開いた。 加持は拳銃を再び構えた。 「・・・私だ」 女の声が聞こえた。 「アンタか・・」 加持はほっとして拳銃をしまった。 「・・・お前の仕事はネルフの内偵だろうが」 「何事も自分で確かめないと気が済まない性分なものでね」 「余計な事に首を突っ込むと寿命を縮めるぞ」 「構わないさ、それよりも」 「・・・ああ、108個目もダミーだったよ」 「マルドゥック機関は存在しないか・・・」 「サードチルドレン・・・選抜は6月だが、5月には動き始めていた。」 「・・・なるほど、チルドレンを選抜しているのは、ネルフそのものか・・・それにしてはサードチルドレン到着が、使徒襲来当日とはな・・・」 「・・・・・で、お前の方は何かわかったのか?」 「・・・・上層部は、人類を守るつもりは無い」 「やはりか」 「ああ、だが、このままでは土壇場で分裂するな」 「お前は?」 「俺か?俺は真実の味方さ」 「冗談は止めろ」 「・・・分からないと言っておこう・・・ネルフにはまだ謎が多すぎる」 「そうか・・・注意しろよ」 「ああ」 放課後、第3新東京市、第3新東京市立第壱中学校2年A組、 レイが雑巾を絞っていた。 シンジは、その姿に何か妙な感じを受けた。 (お母さんって感じかな?) どこか記憶の奥底にあるユイの姿に見えてしまったのかもしれない。 「め〜〜ん!」 トウジが箒を竹刀代わりにしてシンジの頭を叩いた。 「しっかりやらんかい」 ヒカリがトウジの耳を引っ張った。 「しっかりやるのは鈴原でしょうが!!!」 「か、堪忍して〜な」 「問答無用!!」 トウジはしぶしぶ掃除を再開した。 「・・・トウジって尻に轢かれるタイプだよな」 「そう言うシンジはどうなんだ?アスカ相手に頭上がらないだろ」 「・・・・・・・」 シンジは心当たりがあり過ぎて、大きな溜息を吐いた。 「でも羨ましいよな、アスカに、ミサトさん、あんな美人と一つ屋根の下で」 「・・・はぁ〜」 (ミサトさんの実態を知らないケンスケが羨ましいよ・・・) 経験者は語るである。 夕方、ネルフ本部エレベーター、 シンジとレイがエレベーターに乗っていた。 「ねぇ、僕が父さんと会ったら何を話したら良いと思う?」 「・・・どうして、そんな事聞くの?」 「・・綾波の方が父さんについて知っていそうだから・・」 シンジは少し淋しげな顔をしながら言った。 「父さんってどんな人?」 「・・・分らない・・・只、」 「只?」 「・・・悪い人ではないと思う・・・」 「そう」 レイは嘘はつかない。シンジはそう信じているので、少しほっとした。 「・・・それが聞きたくて、昼から私の方を見ていたの?」 シンジは頷いた。 「あ、掃除の時さ、雑巾絞ってたろ、あれってなんかお母さんて感じだった」 「・・・お母さん?」 「うん、なんか、お母さんの絞り方って感じがする」 「案外、綾波って主婦とか似合ってたりして」 「・・何言うのよ・・」 レイは顔を赤らめていた。 夜、ミサトのマンション、シンジの部屋、 シンジはベッドに寝転んでいた。 7月1日(水曜日)、ネルフ本部、ケージ、 『帰れ!』 11月25日(水曜日)、発令所、 『よくやったなシンジ。』 12月16日(水曜日)夜、ミサトのマンション、シンジの部屋、 シンジは、なかなか寝つけなかった。 12月17日(木曜日)、A.M.10:15、第3新東京市郊外、墓地、 シンジは3年ぶりに母、碇ユイの墓を参りに来ていた。 ・・・3年前、僕は父さんの前から逃げ出した・・・ A.S.12年12月17日、第3新東京市郊外、墓地、 シンジはユイの墓前に花を添え、手を合わしていた。 足音が近付いて来た。 シンジは目を開け振りかえった。 碇が近付いて来ていた。 「あ、あああ」 シンジは脱兎の様にその場を逃げ出した。 12月16日(水曜日)夕方、ネルフ本部エレベーター 「・・・分らない・・・只、」 「只?」 「・・・悪い人ではないと思う・・・」 A.S.15年12月17日(木曜日)、A.M.10:15、第3新東京市郊外、墓地、 シンジは拳を握り締めた。 (思い切って話をしてみよう、綾波の言ってる事は間違い無いと思うし) シンジは人影に気付いた。 ユイの墓の前には既に碇がいた。 (父さん・・・) 「シンジか・・」 シンジはユイの墓に近寄った。 《Yui Ikari B.S.23−A.S.4》 「3年ぶりだな、ここで会うのは」 あれを会うと言えればだが、 「僕はあの時、逃げ出して、その後は来てない、ここに母さんが眠っているなんてピンと来ないんだ」 顔も覚えていなかった。思い出したのではなく写真によって知ったのだ。 「人は、思い出を忘れる事で生きて行ける・・・・・しかし、決して忘れては成らない事も有る。ユイはそのかけがいの無い物を教えてくれた。」 碇はシンジの方を見ずに少し上を向いている。 「私はその確認をする為にここに来ている」 「写真は・・あれ以外に無いの?」 「私は持ってはいない、この墓も只の飾りだ、遺体は無い。」 「あれは?」 「冬月の写真だ。私の物ではない、全ては心の中だ。」 (僕は母さんの事は知らなくても良いって言うのか) シンジは碇の傲慢さに少し腹が立った。 「今はそれで良い」 「今?」 ヘリが迎えに来た。 「時間だ、先に帰る」 碇はヘリの方へ歩き出した。 「父さん」 碇はシンジの方を振り返った。 「・・・」 シンジは暫く言うのを躊躇っていた。 ヘリが着陸した。 碇はシンジが言葉を発するのを待った。 「・・・母さんは本当に死んだの?」 暫く沈黙が流れた。 「・・・今は、まだどちらとも言えん・・」 シンジは首を傾げ、碇は再びヘリの方に歩き出した。 「・・・あの、今日は嬉しかった。父さんと話せて」 「・・・そうか」 そう答え、碇がヘリに乗り込み、ヘリは飛び立った。 シンジはヘリが飛び去るのを見送っていた。 暫くして、小さな足音が近付いてきた。 シンジが足音の方を向くと、レイが小さな花束を持って立っていた。 「綾波・・・」 (何故、綾波が?) 予想外の人物の登場にシンジは少し戸惑った。 「・・・赤木博士が、お墓に参るときは、花を持っていった方が良いって・・・」 「母さんの墓参りに?」 「・・ええ・・」 レイはユイの墓の前にしゃがみ花を供え、手を合わせた。 そして、立ち上がった。 「綾波は・・母さんの墓参りに来たことあるの?」 「・・2年前と去年、この日に碇司令と・・」 「一昨年と去年?」 「・・ええ・・」 (僕が来なくなったから・・・・綾波は僕の代わり?) 「綾波・・・ひょっとして、僕の代わりに父さんに連れられてきたの?」 「・・そうよ・・・・碇司令は私を見るとき、いつも別の人を見ている。私自身を見ようとしない・・」 シンジはレイの視線がユイの墓にじっと向けられている事に気付き、ユイの写真が脳裏に浮かび、そして、ユイの顔とレイの顔が重なった。 「そ、そんな・・・・綾波はそれでも良いの?」 「・・構わないわ・・」 「そんな・・・・」 「・・・今は、私を見てくれる人がいるから・・・」 レイの表情には微笑が浮かんでいた。 シンジは顔を少し綻ばせた。 「・・・そう・・・・良かったね」 「・・・帰る」 レイは少し機嫌を損ねたようで無表情に戻った。 「あ、僕の所寄っていかない?」 「・・・問題ないわ・・」 表情は出ていないがどこと無く嬉しそうだ。 (やっぱ、綾波は難しいよな) 昼過ぎ、東京螺旋状環状線、 耕一が車を飛ばしていた。 横をかなりの速度差で、フェラーリが抜かして行った。 「良い根性だ」 耕一はフェラーリを追い駆けて、第1東名高速道路に乗った。 「なに?」 フェラーリは、東名に入ってから全速力になっている。 「320くらいか、むかつくな」 「驚けぇ!!!」 耕一はリミッターを外し、アクセルを思いきり踏み込んだ。 亜音速走行用に特注で作られ、更に、耕一がプロジェクトチームを編成して改造させたこの車は、音速突破も不可能ではなく、そして、加速も尋常ではない。 数秒で亜音速に達し、小さな衝撃波を撒き散らしながらあっさり抜かした。 フェラーリのドライバーの目が飛び出していた。 「どうじゃ!」 耕一は後ろを振り返りながら言った。 そして、前を見た時、カーブだった。 「げ!」 車はガード帯を突き破り、宙に舞った。 「あ、あ・・・」 車は空中を滑空し、米軍の戦艦に突っ込んだ。 神風だ、特攻だと大騒ぎになり、その後、炎上する車から耕一が出て来て、IDカードを提示して、更に大騒ぎになった。 尚、この件は、東京帝国グループと地球連邦の面目にかけて伏せられた。 夕方、ミサト宅、リビング 「あ〜〜!つまんない」 アスカは、ヒカリの頼みで、ヒカリの姉のコダマの同級生とのデートに出かけていたが、自らの容姿を鼻にかける態度がむかつき、更に、色々あって、アスカは、ジェットコースターに並んでいる間に、トイレに行くと言って、帰って来た。 アスカはむしゃくしゃしていた。 シンジがレイを連れて帰ってきた。 「ただいま、あれ?アスカ帰ってたんだ、早かったね」 「余りにもつまんない男だったから、ジェットコースターに並んでいる間に帰って来たわ」 「・・・それは無いと思う・・」 「何で、ファーストがいっしょなのよ」 アスカがむっとした表情で言った。 「・・・後で話すよ」 シンジの顔は真剣だった為、アスカは取り敢えず引く事にしたが、 「む〜〜〜、その代わり、シンジあんたなんか芸やりなさい」 「げ、芸って・・・・チェロで良い?これから弾こうと思ってたし」 「ん?良いけど、下手だったら殴るわよ」 ・・・ ・・・ シンジがチェロを持ち出して来て、調弦を済ました。 「じゃ、行くよ」 そして、シンジの独奏が始まった。 はっきり言って上手い。 弾く者の心の篭もった、聞く者の心を暖かくする演奏である。 (・・何?・・・暖かい・・・何故?) (・・・やるわね・・・結構、才能あるわね・・) そして終わった。 アスカが拍手をした。 「けっこう行けるじゃない」 「そうかな?」 恥ずかしくなってシンジは後頭部を掻いた。 「優等生もそう思うでしょ?」 「・・分からない・・でも暖かかった・・」 レイは胸に手を当てながら答えた。 「じゃあ、夕食作るから、綾波も食べて行ってよ」 レイは頷いた。 その日の夕食、スパゲティ、 「・・おいしい・・」 レイの言葉にシンジが満面の笑みを浮かべた。 「うっ・・・」 (何なのよ、そんなに嬉しいの?) 褒めないアスカと、あのミサトカレー入りラーメンに代表されるように何を食べても美味しいと言うミサトと一緒に暮らしているのである。 レイにおいしいと言われれば嬉しいだろう。 「シンジ、なかなかやるわね」 「そう?ありがと」 シンジはアスカにも笑みを向けた。 そして、レイが帰り、二人になった。 「ミサトは?」 風呂上がりのアスカがリビングに歩いてきた。 「遅くなるって」 「遅くなるってまさか朝帰りじゃ!」 「そんなことないよ加持さんもいるんだし」 「馬鹿ね!だからじゃないの」 「何が?」 そう言った事には極端に鈍いシンジは意味が全く分からないようである。 「全く本当にお子さまね・・・・ところで、ファーストの事」 「・・・うん」 シンジは部屋に戻り、写真立てを持ってきた。 「・・・今日・・・気付いたんだ・・・」 アスカは写真を見た。 「副司令と・・・」 「・・父さんと母さん・・」 「これが司令か・・・で、・・・・この人が碇ユイ・・・ん?」 アスカはユイの顔に見覚えがあった。 「・・似ているだろ・・」 「・・・・まさか」 碇がレイを大事にする理由が、レイがユイに似ているからだと気付いた。 「・・綾波は言ってたよ、碇司令は私を見るとき、いつも別の人を見ている。私自身を見ようとしない、って・・」 「な、なんて奴よ」 余りの酷さに、その実の息子が目の前にいるにも関わらず、思わず非難が口から飛び出した。 「・・・綾波は贔屓になんかされてない・・・」 アスカは以前にレイに言った言葉に罪悪感を感じた。 「・・そして、3年前、僕は、墓参りの時に、父さんから、逃げ出して、それから行かなかったんだ・・・そして、綾波が僕の代わりに、墓参りに連れられて・・・」 アスカは眉間に皺を寄せた。 「・・・それが分かっているのに、綾波は、父さんは悪い人ではないと思うって・・」 「・・・ファースト・・・とんでもなく良い奴じゃない・・・」 「・・綾波・・会長が用意した家に引っ越したんだけど、それまで、誰も住んでない、マンモス団地に、一人で住んでた・・」 「・・・」 「・・それに・・・中学1年の時まで、本部から出た事が無かったらしいし・・」 リツコの話では、レイがチルドレンに選出されたのは、A.S.4年より前、物心つく前から、ゲヒルン本部にいた可能性がある。 それに、以前見た、レイの個人情報、名前と年齢以外の全てのデータは抹消済み。世界で一人しかいない適格者は、ユイ亡き後は、重要極まりない研究対象である。 (・・・ファーストのあの性格は、無理やり作り出されたものだったのね・・・そんな環境なら当然・・・) アスカは、もし自分の方が先に選出されていたらと思いぞっとした。 「でも・・・僕達が、綾波を憐れに思って、見る目を変えてしまったら、それも、綾波を傷付けると思うんだ・・・」 「・・・そうね・・・」 キョウコの葬儀の時、皆に憐れに思われ、同情されるのがたまらなく嫌だった。だからこそ、反発していた。 「僕は、意識せずに、これまでと変わらないようにするつもりだよ・・・どこまで出来るか不安だけど・・・それと、皆には秘密にしておいた方が良いと思う、余り激しく動いて、父さんが介入してきたら終わりだから・・・」 「・・・そうね、ミサトなんかに話したら確実に暴走するわね。」 「・・・」 「分かったわ、誰にも話さないわ、それと、ファーストとは仲良くするわ」 「うん」 シンジは笑みを浮かべた。 第3新東京市市内、 レイは、結婚式の2次会の後ミサトや加持と分かれたリツコと出くわして、一緒に歩いていた。 「レイ、シンジ君とはどう?」 「・・質問の意味が理解できません・・」 「シンジ君は好き?」 好きと言う感情が分からずにレイは小首を傾げた。 「・・分かりません・・」 「シンジ君に嫌われたくない?」 「はい」 即答した。 「シンジ君と一緒になりたい?」 「・・・・はい」 少し間があったがハッキリと言い切った。 (第2段階はクリアね) リツコは細く笑んだ。 「そう、でも、それには段階を踏む必要があるの」 「・・段階・・ですか?」 「ええ」 「それはそうと、レイ、他人に右側に立たれるの嫌い?」 「?・・・何故その様な質問を」 「今だって、レイの方が右側歩いてるでしょ」 「・・・はい・・」 「監視が付いてることは知ってると思うけど」 レイは軽く頷いた。 「レイは、他人の左側に立とうとしないのよ」 レイは、シンジの左側にいると言う事を直ぐ思いついた。 「・・しかし・・」 「そう、私の知る限り一人だけ例外があるわ」 「・・・碇君ですか?」 「そうよ」 「・・・・それが、好きと言う事ですか?」 「それはちょっと違うんだけど、レイにとってシンジ君が特別な存在というのは間違いないわね」 「・・・特別な存在・・・」 レイは呟き胸に手を重ねた。 「そして、もう一つ」 「・・・」 「シンジ君の行動分析から、シンジ君は他人に自分の左側に立たれたくないと言う傾向があるわ・・・でもこれも、例外が一人・・・・レイ、貴女よ」 「・・・・どう言う事ですか?」 「シンジ君にとっても、レイは特別な存在なのよ」 「・・・・私が特別・・・・・碇君にとって・・・・碇君は特別・・・・私にとって・・・・私が特別・・・・」 レイは呟きを繰り返している。 (上手く行ったわ) 「レイ、質問よ、碇司令と2人で歩いているとき、貴女は碇司令のどちら側を歩いていた?」 レイは記憶にある限り碇と一緒に歩いている時の位置関係を思い出した。 結果、全て右だった。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・右です・・・・・・・・」 「これではっきりしたわね、レイ、貴女にとって、シンジ君は、碇司令以上の存在なのよ」 レイはリツコの顔を見た。 「理解したかしら?」 「・・・はい・・・」 12月18日(金曜日)、ネルフ本部、ターミナルドグマ、 加持はレベル6のゲートの前に立っていた。 加持は、IDカードをスリットに通そうとしたが、手が止まった。 ミサトが加持の後頭部に拳銃を突き付けていた。 「やあ、二日酔いはどうかな?」 「おかげでやっと冷めたわ」 「そりゃ良かった」 「これは貴方の本当の仕事かしら?それともアルバイト?」 「さて、どっちかな?」 「ネルフ特殊監察部所属、加持リョウジであると同時に、日本政府内務省調査部所属加持リョウジでもあるわけね」 「ばればれって訳でも無さそうだな」 「?どう言う事?」 「ついで言うと、東京帝国グループ、諜報3局所属加持リョウジでもあるな」 「・・・・何・・考えてんのよ・・」 余りの事に呆れた。 「司令の命令かい?」 「いいえ、友人としての最後の忠告ね、これ以上バイトを続けると、死ぬわよ」 「・・・司令はまだ俺を利用している。まだ行けるさ・・・・」 「葛城に隠し事をしていたのは謝る。だが、司令やリッちゃんも葛城に隠し事をしている。それがこれさ」 加持はIDカードをスリットに通した。 エラー音がした。 「え?」 「残念、改造カードはこっちよ」 ミサトは加持のカードをポケットから取り出した。 「してやられた訳か、告白しながらも仕事は果たすか・・・葛城の方が上手だな」 「違うわ、加持君に危ない橋を渡って欲しくないのよ」 「そのカード、ここに通してくれないか?」 「この先に何があるって言うの?それに、ここは、レベル6よ」 「見れば分かるさ、それに、ちょうどそのカードのレベルは6なもんでね」 ミサトはスリットにカードを通した。 ゲートが開いた。 7つの目の仮面をつけ、胸に二股の螺旋状の槍を突き刺され巨大に十字架に貼り付けになった白い巨人の上半身があった。 「・・・これが第壱使徒アダムね、で、どうした訳?」 ミサトは恨みの篭った視線で巨人を睨んだ。 「・・・国際連合太平洋艦隊及び弐号機の本当の任務は、アダムの輸送と護衛、だった」 「何ですって?でもどうやってこんなものを」 「その時は、まだ胎児状だった。」 「なぜ、そんな事を知っているの?」 「俺が運んでいたからさ、」 「・・・・それ本物?」 「第六使徒は、アダムを狙ってきた」 「・・・・第参使徒から第伍使徒襲来時には、アダムはここには無かったってことか・・・」 「そうだ、ドイツの第3支部にあった」 「・・・・確かに、ネルフは、甘くは無いわね・・・」
あとがき 碇がレイにユイを重ねた事実が発覚、アスカもそれを知りました。 リツコは何を企んでいるのか、レイとシンジをくっつけ様としているようです。 やたらに、レイとシンジの位置関係の記述が多かったのは、二人の特別な関係を強調するためです。 ミサトがネルフ上層部に不信感を抱きました。 次回予告 第3新東京市で起こった正体不明の爆発事故、そして、その直後に終業式の直前にも関わらず転入してきた少女、彼女の存在が、3人のチルドレンの絆に影響を及ぼす。 果たして、3人の絆は保たれるのか 次回 第弐拾弐話 転校生