文明の章

第拾弐話

◆傲慢

9月27日(日曜日)、今日は連邦統一模擬試験があるため日曜日にも関わらずシンジ達は出校した。
シンジは昨夜遅くまで勉強していたので寝不足で大きな欠伸をした。
「おう、シンジ、眠そうやな。」
トウジがだるそうな声を掛けてきた。
「うん・・・」
「頑張り過ぎて試験中に寝るなよ。」
ケンスケの声と共に老教師が入って来たので皆席についた。
「皆さん、今日は連邦統一模擬試験です。普段の学習の成果が出るように頑張ってください。では先ず受験票を配りますからきちんとマークしてください。」
受験票が配られマークした。
「では標準語を配ります。」
標準語の問題冊子とマークカードが配られた。
「始めてください。」
開始の合図で一斉に問題を解き始めた。
(えっと『かいこう』は邂逅かな?)
(何やこれー全くわからんがな)
(2年から普通やらすかよ)
(えっと5番ね)
(・・・・・・・・・・)
(ぷぷぷ、何これ幼稚ね〜)
開始10分後、
(2かな?3かな?)
(もーえーわ、適当にぬっとこ0点は無いやろ)
(4だな、つぎは・・・と)
(武士は・・・思いやりが欠けてたのね・・・2番ね)
(・・・・・・・・・・・・・・・・・終わり)
(3、5、1、4、2、4、3、3、2)
開始30分後
(4かな??晦冥・・・かいめい?)
トウジ・・・寝てます。
(うーーーーーーーーーーーん)
(この作品は万葉集ね。こっちは新古今和歌集)
レイ ・・・寝てます。
アスカ・・・絵を書いています。
開始50分
「止めてください。」
マークカードと受験票が回収された。
「次は準標準語です。」
準標準語の問題冊子とマークカードが配られた。
「始めてください」
(英語、2ページから)
(英語、2ページからか)
(2ページからか)
(Have・・・toね)
(・・・・・・・・・・・・・・・)
(ドイツ語は62ページからか)
開始30分後
(煙草は体に良いものだから沢山吸おう?・・・絶対違う)
トウジ・・・寝てます。
(駄目だ・・・分からん)
(この長文凄く長い・・・2ページも有る・・・)
レイ ・・・外眺めてます
アスカ・・・数式で遊んでます
開始50分
「止めてください。」
マークカードが回収された。
「次は数学です。」
数学の問題冊子とマークカードが配られた。
「始めてください」
(24+(−87)×2=−150)
(ワシに数学をやらせるなあ!)
(24+(−87)×2=−126?・・・・−150)
(24+(−87)×2=−150)
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・終わり)
(何これ、直出来ちゃう。10分もいらないわね)
開始50分後
「止めてください。」
マークカードが回収された。
「休憩です。次は1時から理科です。」


P.M.1:00
「始めてください」
開始50分後、
「止めてください。」
マークカードが回収された。
「次は社会です。」
社会の問題の本とマークカードが配られた。
「始めてください」
(日本史は・・・225ページから!)
(なんちゅう厚さや・・・)
(おいおい225って一体)
(名古屋遷都は・・・・3番かな?)
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
(ヨーロッパ史は432ページから!!)
開始50分
「止めてください。」
マークカードが回収された。
「御疲れ様でした。」


10月1日(水曜日)、ネルフ本部、第4ケージ、
アスカは弐号機の前にシンジとレイを連れてきた。
「弐号機って赤いんだ」
シンジは見たまんまそのまま表現した。
「そうよ、でも、違うのはカラーリングだけじゃないわ!弐号機こそ、実戦向きに作られた、初のエヴァンゲリオン、制式機なのよ、所詮、零号機と初号機は試作機と実験機、アンタ達甘ちゃんなんかに簡単にシンクロするのが良い証拠よ」
アスカは仁王立ちで得意そうに言い放った。
「・・・貴女、何も知らないのね・・・」
少し呆れたようなその雰囲気は初めて見るものであった。
「何よ!」
アスカはレイにぐっと顔を近づけた。
「・・・零号機・初号機と弐号機以下の差異は素体そのものが違い、根本から異なる存在・・・零号機は、初号機タイプの試作機、弐号機は参号機以下の原型機・・・・それに、参号機以下の量産機と弐号機では、その構造が異なる。分類するならば、零号機・初号機、弐号機、参号機・四号機、量産機となる・・・」
「何が言いたいのよ!」
アスカは、自分の弐号機が、参号機以下の量産機よりも格が下だと暗に言われているのが分かり、湧き上った不満を言葉にしてぶつけた。
「・・別に・・事実を言っているだけ、零号機および初号機の開発者は、碇ユイ博士・・・弐号機は惣流キョウコツェッペリン博士・・・参号機以下の基礎設計は赤木リツコ博士・・・性能順には、初号機、弐号機、量産機、参号機・四号機、零号機となる・・・」
「何?アタシのママがこんな奴の母親に劣るって言うの!?」
碇ユイ博士の名は聞いたことがあるどころか、東京リサーチグループの科学者の歴代ランキング1位を11年間保持していて、歴代19位の惣流キョウコよりも格が上なのは分かっているが、何分、エヴァに関しては敵視と言って良いほどの存在、サードチルドレン碇シンジの母親であると言うことは、良く分からないが弐号機が量産機よりも性能が高いとしても、我慢のならない事であった。
「・・事実よ・・」
「冗談じゃないわよ!」
「・・・赤木博士に聞いてみれば?」
「ふん、」
アスカはリツコを問い詰めるつもりで、ケージを出ていった。
「あのさ、綾波」
「・・何?」
「さっきの本当?」
レイは軽く頷いた。


赤木博士研究室、
「リツコ、説明して!」
既に報告を受け、ケージでの一件をモニターしていたリツコはファイルを机の上において、答えることにした。
「ええ、分かったわ・・・先ずは座りなさい。」
アスカは言われた通り、椅子に座った。
「じゃあ、話すわね。本来のE計画では、エヴァは、初号機のみの戦力の予定だったわ、零号機は、初号機の試作機、で、弐号機は、エヴァテクノロジーの開発の為に作られた。」
それは、弐号機は、実戦向きに作られていない事を示している。
「で、零号機が完成、最後の実験の事故でユイ博士が死亡、これによって、初号機は未完のままになった。そこで、キョウコ博士の作っていた弐号機も実戦投入するべく計画を変更、弐号機は完成したが、こちらも事故が発生、キョウコ博士は精神崩壊。」
アスカは顔を顰めた。
「以後、データの解析に取り掛かったわ、その途中で、アスカに適正がある事が判明、セカンドチルドレンに選抜、で、データの解析ができたのは弐号機のみ、零号機と初号機は、多数のブラックボックスを抱えたまま。」
「で、私が、弐号機を元に、量産機を設計、その前段階として、参号機と四号機を現在建造中、もう直ぐ完成するわ」
「最初から目的が違ったって訳?」
「そうね、・・・・・母さんもマギを完成させたその日に死亡したし・・・・この分だと私ももう直ぐお迎えがくるのかしら」
「何馬鹿なこと言ってるのよ・・・・・ん?ファーストはいつ選抜されたわけ?」
「記録では、少なくともユイ博士の事故の前、初号機に乗る予定だったようね、但し、ファーストチルドレンという名称になったのは、セカンド以降のチルドレンを選出する事になってからよ」
「・・・サードは?」
「シンジ君は、レイの予備、まあ、今じゃ違うけど・・・で、最終設定は、初号機はシンジ君の方に合わせられたままになっていたようね、で、レイが起動実験で負傷、急遽選抜することになったと、その際の手続きがもたついた為に、シンジ君の到着は使徒襲来当日になったと、記録ではそうなっているわね」
「なんで?だったら、さっさと、サードを初号機に乗せれば良いじゃない、司令の息子なんでしょ」
「誰かが妨害していたのか、それとも司令の親心か・・・シンジ君の事を知ったのは、私も零号機の事故の後よ、」
「・・・・で、今の戦力は?」
アスカが一番聞きたかったことである。
「弐号機が群を抜いているわね、近接戦闘から遠距離までそつ無くこなす、初号機は、シンジ君の経験の浅さから、どうしても単純な動きしかできないわね、射撃も最悪だしね、対して零号機は、射撃などの支援が抜けてるわね・・・まあ、零号機の性能上もそれが良いんだけど」
アスカは自尊心を満たし笑みを浮かべた。
「リツコ、今度の使徒、アタシにやらせて」
「ミサトに言って、まあ、多分無理だろうけどね、1より1+1=1.2の方が良いわ」
アスカは不満そうな顔をして出て行った。


10月5日(月曜日)A.M.10:05、ネルフ本部第1発令所
「警戒中の巡洋艦はるなより入電、我、紀伊半島沖にて巨大な潜行物体を発見、データーを送る、確かめられたし。」
青葉が報告した。
「解析終了、パターン青!」
「総員第一種戦闘配置」
碇は不在で、冬月が指揮をとっている。


A.M.10:47、東名高速道路、12式大型発令車。
「先の戦闘によって第3新東京市の迎撃システムが受けたダメージは現在までに復旧率42%、実戦における稼働率は大してないわ。従って今回の迎撃は上陸直前の目標を水際で迎え撃ち一気に叩く!」
「初号機弐号機で交互に目標に対し波状攻撃、接近戦で行くわよ」
『はい』
『分かったわ』


A.M.11:01海岸、初号機。
エヴァ両機にアンビリカルケーブルが接続された。
『二人掛かりなんて趣味じゃないわ、どうしてアタシの日本でビュー戦なのにアタシ一人に任してくんないのよ〜』
アスカはたらたら愚痴を言っている。
『しょうがないわよ、負けられないんだから』
『使徒なんかアタシ一人で十分よ』
『99%より100%よ』
『まっ、仕方ないわね、でも、足ひっぱんないでよ!』
「う、うん」
『さあ、いつでもいらっしゃい』
弐号機はソニックグレイブを構えた。
海面に水柱が立ち使徒が海面に姿を表した。
「来た」
『あたしが先に行くわ!ちゃんと援護すんのよ!』
『レディーファーストよ!』
海面に現れた使徒に向かって初号機はパレットガンを発射した。弐号機は水中のビルを足場にして跳躍し、一気にソニックグレイブを使徒に振り下ろし真っ二つにした。
「すごい」
『どう?サード?戦闘は常に美しく無駄なく華麗に』
弐号機が初号機を振り向いた瞬間、二つに分かれた使徒其々分離し2体になった。
『何てインチキ!』
モニターのミサトは手に持つ受話器を握り潰した。


P.M.2:26、ネルフ本部作戦部視聴覚室。
「本日午前11時7分、目標甲の攻撃により初号機沈黙」
マヤが説明を続けている。
初号機が海中に逆さになって沈んでいる写真が映し出された。
「同8分、目標乙の攻撃により弐号機沈黙」
地面に頭からめり込んでいる弐号機の写真が映し出された。
「午前11時11分をもってネルフは作戦指揮権を断念、国際連合第2方面軍に移行」
NN爆雷投下の映像が流された。
「同15分、新型NN爆雷により目標を攻撃」
「また地図を書き直さなきゃならんな」
冬月がぼやいた。
焦げた使徒の写真が映し出された。
「これにより目標の構成物質の28%の焼却に成功」
「E計画責任者のコメント」
『無様ね』
「死んでるんですかこれ?」
アスカがスライドを指差しながら聞いた。
「足止めに過ぎんよ、再度侵攻は時間の問題だな」
「君達の仕事は何かね?」
「エヴァの操縦?」
アスカはそう言ったが、シンジは答えられなかった。
「違う、使徒に勝つ事だ。もう2度とこんな無様な姿はさらすな」
冬月は部屋を出て行こうとしたが、
「・・副司令・・」
レイが冬月を呼び止めた。
アスカ以外全員が驚いた。
「な、何だ?」
冬月もまさかレイに呼びとめられるとは、思わなかったので少しうろたえている。
「・・無様・・姿・様子のみっともない事。不恰好な事。体裁の悪い事・・・エヴァ両機の外見を無様と評価したものと思われます。しかし、チルドレンに課せられた義務は、使徒の殲滅であり、その方法は問わない筈です。当然、体裁に関する任務はありません。戦争において、外見を気にする者は愚か者です。人類の存亡が関わるのならば尚更の筈です。使徒への敗北を無様と表現したのならばこれは誤用です。使徒戦は敗北したわけではなく、未だに、使徒、エヴァ両機ともに存在しており、再び作戦権はネルフに戻っています。また、チルドレンの仕事は使徒に勝利する為だとおっしゃいました。これは勿論最優先事項であり正しい事ですが、第四使徒戦では、碇君は使徒殲滅を優先させましたが、撤退命令を無視した為に厳重注意処分となりました。つまり、チルドレンは作戦指揮官の指示通りにエヴァを操縦する事であり、その意味でセカンドチルドレンの発言には正当性があり、又、副司令の発言には問題点が、」
「いや、レイ、もう良い、確かにレイの言う事は正論だ。だが、ネルフと言う存在が社会の中に組み入れられている以上、社会のシステムに逆らう事はできんのだ。そして、社会のシステムを作っているもの全てが、正論によって動いているわけではない。いや、むしろ、正論で動いていない者の方が多いかもしれない。我々もそう言った輩に合わせるために、本心ではない事も言わなければいけない時もある。因みに、葛城1尉もあの後、厳重注意処分となった。分かったかね」
それ以上責められたくない冬月は、レイの言葉を遮って、昔教職についていた時のように諭すように弁解した。
「・・・はい」
(何故?私はこんな事を言ったの?言う必要は無いのに・・・)
さりげなく、自分は愚か者ではないと言っているのだが、レイの方は、もはや聞いちゃいねぇ
周囲では、アスカ以外、はらはらして、二人のやり取りも見守っていた。
冬月は出て行った。
但し、かなり不満そうな顔をしていた。ミサトはどうなるやら・・・
一方、アスカもレイに弁護された事で不満を又一層溜めた。


P.M.3:01、作戦部長執務室。
机の上には書類が山積みになっていて更に机に乗らない分がダンボールに詰めて10箱ほど積んであった。
しかし、ごみはどこへ行ったのだろうか?
「関係各省からの抗議文と被害報告書よ」
「どうせやるならここでやれって言うんでしょ。見なくても分かるわよ」
ミサトは椅子の上の箱をどかせて座った。
「後、これがUNからの請求書。で、これが東京帝国グループからのお手紙」
リツコは封筒を2通渡した。
「それと、減俸のお知らせ、副司令激怒してるわよ」
その理由の一部にレイがあるのだが、まぁ、ミサトの自業自得でしょう。
「・・・は〜、でも碇司令がいなかったのは不幸中の幸いね。」
「いたら即刻首でしょうね。これを見ること無しに・・まあ首になったら東京帝国グループが雇ってくれるらしいわよ。」
「・・・・エヴァぁの修復どの位かかりそう?」
「5日ってとこね」
「使徒は?」
「現在自己修復中、第2波は5日後とマギは予測しているわ。」
「・・・どっちも5日間は身動きできないってわけか」
「貴方の首が繋がる良いアイデアがあるんだけど・・要らない?」
リツコが出したフロッピーをミサトは直に受け取った。
「要る要る!要るに決まってるじゃない、流石は赤木リツコ博士」
「残念、私のアイデアじゃないのよ」
《マイハニーへ》
「・・・・」


10月5日(月曜日)P.M.5:01、ミサトのマンション
シンジが家に帰ると、とんでもない量のダンボールが積まれていた。
(なんだこりゃ?)
荷物は廊下や部屋にも積まれ家が狭くなっていた。
シンジは自分の部屋を空けると、部屋の中にはダンボールが山積みになっていた。
「なっ何だよこれ!」
「あ〜、帰って来たんだ。」
シンジは後ろのアスカを振り向いた。
「今日からここにあたしが住む事に成ったから。」
「へ?」
「あんたはお払い箱って訳よ」
アスカはシンジをびしっと指差した。
「あんたの荷物片付けといたから早くどっかやってよね。」
「ああ!!」
シンジの荷物はダンボールに詰められて廊下に転がされていた。
「にしても日本の家って狭いわよねぇ、それにこんなカギのついていない部屋でよく暮らせるわ。」
アスカは襖を開けたり閉めたりしながら言った。
「日本人の文化の根本が他人への思いやりだからよ。」
ペンペンを抱いてミサトが登場した。
「早速だけど、これから共同生活をしてもらいます。時間が無いから命令拒否は認めません。」
・・・
「「えぇぇぇええええええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!」」
二人の叫びがマンション中に響き渡った。



あとがき
色々とリツコが喋っていましたが、それらが全て真実であるとは限りません。
では、予定通り、アスカの初陣は負けてもらい、ユニゾンの為の同居へと持ち込みました。
レイの心の動きはまだまだ良くわかりません。
ふと思い出したので、ここに書きますが、シンジはユイの写真を第六話で初めて手に入れましたが、ただ、顔を知るだけで良いのならば、東京リサーチグループ系列の会社が発行している科学者ランキングと言う、歴代と現役の優秀な科学者のランキングと能力、主な功績が載っている本を見ると、第1ページ目にでかでかとページ半分ほどの写真が載っています。で、主な功績が11ページにも渡ると言うどこが、主な、なのか聞きたいくらいである。因みに現役第1位はリツコ、ちゃんと写真入で、歴代の方にもランクインしています。

次回予告
性格が余りにも違い過ぎる二人のユニゾンは全く成功しない。そんな中、代わりに行ったレイとでシンジはパーフェクトを出す。アスカは自らのプライドを護る為にレベルが低い二人を罵るが、ミサトに、叱られ切れて飛び出す。
シンジはアスカを追い掛け、一時はアスカも協力的な姿勢を見せるものの、やはり、自分のレベルを下げる事は出来ない。対してネルフが取った策は、レイと弐号機とのシンクロ、その成功はアスカを追い込む。
二人の心が触れ合い、大空に2体のエヴァが舞う
次回 第拾参話 瞬間、心、重ねて