文明の章

第拾壱話

◆アスカ襲来

9月19日(土曜日)P.M.1:00、国際連合海軍太平洋連合艦隊が新佐世保港を出港した。
戦艦、テンペスト甲板。
アスカが陸を眺めていた。
陸にはビルが建ち並び、車が激しく往来している。海面からは、旧市街の廃墟ビルがその頭を出している。金属資源の再利用にも使われたが、資源生産国の経済が持ち直したため、今では、特に邪魔にならない限り放置され、漁礁となっている。
(いよいよ明日は新横須賀か・・・)
日本は、母、惣流キョウコの出身国であり、そして、自分の戦場、即ち、活躍の場である。


夜、アスカは加持と空を見ていた。
「あ〜あ、明日はいよいよ日本到着か」
「新しい友達も一杯出来るさ、それにサードチルドレンは男の子だって言うし」
「馬鹿なガキには興味は無いわ、私が好きなのは加持さんだけよ」
「そりゃ光栄だな。」
アスカを一人の人間として扱う加持ではあるが、結局大人か子供かと言われれば子供の扱いをする。それが、アスカの不満であった。
「・・明日は港にミサトが迎えに来るって言うし、加持さんと一緒にいられるのも後12時間余りか・・」
「ミサト?葛城か?」
「知り合い?」
「ああ、大学時代の旧友だ。」
「そう・・・」
加持は懐かしむような顔をし、アスカは明らかに不満そうな顔をした。


9月20日(日曜日)、A.M.9:22、旧伊東沖海域。
船体に水中衝撃波が走った。
アスカは慌てて外に出た。
すると遠くで船が次々に破壊されていた。
「チャーンス」
アスカは急いでプラグスーツに着替えて弐号機に乗り込んだ。
「アスカ・・・行くわよ」
「エヴァンゲリオン弐号機起動!」
アスカは通信回線を開いた。
「提督、甲板にアンビリカルケーブルを出してください。」
『何をするつもりだ!?』
「飛翔!」
弐号機は大空へと舞った。
その直後、輸送艦は使徒により破壊された。
弐号機はフリーゲートのヘリポートに着地し、ヘリポートを粉砕し、また飛び上がった。
「弐号機、着艦しま〜す!!」
弐号機はオーバーザレインボーの飛行甲板に着地した。
空母を激しい振動が襲い、軽く沈む。
直にアンビリカルケーブルを接続し、プログナイフを装備して使徒に備えた。
新型のプログナイフでカッターナイフのように、刃を伸ばせるタイプである。
「さあ、来なさい」
前方から水影が接近してきた。
使徒が現われ弐号機に飛びかかった。
「食らえぇ!」
弐号機は使徒の頭部をプログナイフで切った後、飛び退いた。
使徒は飛行甲板一杯に乗り上げた。
「ふふふ」
水中専用の使徒は身動きが取れなくなった。
「一斉砲撃お願いします!」
『分かった』
周囲の戦艦、巡洋艦が使徒に対し一斉砲撃を掛けた。
ATフィールドは弐号機によって中和され、砲弾が次々に身体に突き刺さり、凄まじい絶叫を上げた。
暫く砲撃が続き、動かなくなった使徒を弐号機は3枚におろし、現れたコアを叩き割った。
「勝利!」
弐号機はブイサインをした。


P.M.0:11、新横須賀港、国際連合海軍太平洋艦隊が入港した。
港には使徒のサンプルを取りに来たネルフ関係者が既に待っていた。
アスカは船を下りた。
「加持さんは?」
アスカは辺りを見回したが加持の姿は見えなかった。
「ヤッホー、アスカ」
ミサトが手を振っている。
「ミサト久しぶり」
「貴女、背伸びたんじゃない?」
「身長だけじゃなくて、他の所もちゃんと大人らしくなってるわよ。」
アスカは胸を張り強調した。
「日本到着前に手柄を立てるとはあんた凄いわね。」
ミサトは空母の上に乗っかっている使徒を見た。
「まっこんなもんよ。アタシが来た以上、使徒なんかちゃっちゃとやっつけてあげるわよ」
「頼りにしてるわよ、じゃ行きましょうか。」
アスカはミサトの車に乗った。


P.M.2:24、ネルフ本部、
(ドイツ支部とはずいぶん違う、ピリピリしてる所と、のんびりしてる所が混在している感じ・・・)
(しっかし、広いわねぇ〜、ドイツ支部の何倍あるんだろ)
「ミサト、」
「何?」
「本部ってどの位広いの?」
「さあ?」
「さあって、ミサト・・」
まあ、分かっちゃいたが、ミサトはずぼら過ぎるわよなどとアスカは思った。
「レベルが低いと機密区画の大きさすら分からないの、私のレベルは4、7段階のレベルの真ん中・・・それでも、ドイツ支部の10倍以上あるはずよ」
「流石は本部ね・・・」
辺りの雰囲気が変わって来ている。
「レベルが上がって来ているのよ」
「幹部の部屋か・・・」
周りの部屋は殆どが幹部の執務室である。
「処でミサトの部屋は?」
「え?」
「あ、ここね」
運悪く、ちょうどミサトの執務室の前だった。
作戦部長葛城ミサト1尉と表示されている。
アスカは扉を開けた。
「あ、ああ〜!」
中は人が存在できる部屋ではなかった。
「・・・・」
アスカは絶句している。


総司令執務室前、
「いい、絶対に両司令に逆らっちゃ駄目よ、命令に従わなければ、エヴァぁのパイロットだって切り捨てるわよ。実際、シンジ君、サードチルドレンも一度抹消された事があるわ」
「・・・・マジ?」
アスカは、サードチルドレン抹消に驚いた。今まで、世界にたった2人、最近3人になったが、それだけしかいないチルドレンであり、作戦指揮者などは何千人でも変えは利くが、チルドレンに変えはいない、碇の噂は嫌でも耳に入ってくるが、命令違反くらいで、エヴァを下ろされる事は無いとタカを括っていたのだが、実例がいるとなると話は別である。
「だから、絶対に逆らっちゃ駄目よ」
アスカは頷いた。
因みに、サードチルドレンを抹消したのはミサトである。
「葛城1尉です。セカンドチルドレンを連れて参りました。」
重々しい扉が開いた。
アスカはミサトの執務室とは別の理由で絶句した。
凄まじく広く薄暗い執務室、そして、天井と床にはセフィロトの図が描かれている。
そして、その奥に威圧感を放ちまくっている碇がいつものポーズで鎮座していて、横には副官たる冬月が立っている。
(うっ)
「失礼します」
二人は執務室に入った。
(こ、この男が、ネルフ総司令、碇ゲンドウ・・・、ドイツ支部の司令とは余りにも次元が違いすぎるわ・・・軍事的権力は、大国の国家元首をも上回る)
「セカンドチルドレン、惣流アスカラングレーです。」
「セカンドチルドレン」
「はいっ」
「ここでは、生きている以上、こちらの命令には従ってもらう」
「はいっ」
(この男なら、3人しかいないチルドレンを切り捨てる事くらいするかもしれない)
「惣流君」
冬月が口を開いた。
「はい」
「期待している」
「はい」
アスカの中で、碇は絶対に敵に回してはならない存在、冬月は、まあそれなりに位置付けられた。


9月21日(月曜日)、ネルフ本部某所、
シンジとレイはミサトやリツコと一緒に先の海戦の映像を見ていた。
リツコは椅子に座り、ミサトはそのわきに立ち、シンジの左にレイが立っている。
「出撃より僅か48秒で使徒殲滅、危機回避能力、操縦テクニックどれを取っても完璧。・・・噂以上ねセカンドチルドレンの実力は」
「でも、何故あんな所に使徒が」
「輸送中の弐号機を狙った・・とも考えられるわね。」
リツコはコーヒーに口を付けた。
「凄いなあ、どうしてあんなふうに動けるんだろ?」
レイは、黙ったままだ。
「どんな人なんですか?セカンドチルドレンの惣流さんって?」
「あら気になる?」
「ええ、まあ」
「聡明な子よ、13歳でもう大学を出てるしね。」
「へ〜・・・・えっ!?大学!!??」
「ま、明日正式に手続きが終わったら紹介するわ。楽しみにしてて。」
ただ、誰も気付かなかったが、レイは何か不快感を感じていた。


9月22日(火曜日)、放課後、第3新東京市立第壱中学校廊下、
シンジの左をレイが歩き、2人の後ろをトウジとケンスケが歩いている。
「じゃあ後で、碇君、私・・先に行くから」
「あ・・うん・・」
レイは先に歩いていった。
「おい碇、何や今のは」
「今のって、何が?」
「綾波が用も無いのに自分から挨拶をしたって事だよ。」
道路を歩きながらもトウジはまだシンジに絡んできた。
シンジが一番左を歩いている。
「さてはお前らなんかあったな?」
「何かってなんだよ?」
「代わりになんかおごれよ、おらっ」
「なんでそ〜なる?」
「おい、トウジ、あれ見ろよ。」
ケンスケの視線の先には、クレーンゲームをしている美少女がいた。
「うお〜!激マブ!」
「可愛〜」
「あっ、ホントアイドルみたい」
シンジ達は気付いていなかったが、少女の髪止めは、どう見てもインターフェースだ。
エヴァの操縦時に頭につける物。脳内にシナプスを挿入するらしいが・・・危な過ぎるぞ、本当にやっているのか???
3人が見ていると、クレーンから鼠の人形が落ちた。
「ぐあ!」
「なによこの機械!壊れてんじゃない!!」
少女はクレーンゲームにやつあたりの蹴りを入れ、機械が凹んだ。
「あかん、ごっつ性格悪そーや」
(ミサトさんより凄いかも・・・)
「同感・・」
少女がこちらを振り向いた。
「ちょっと!あんた達さっきから何見てんのよ。」
「いや、べつに、あの・・・」
「100円ちょーだい」
少女は手を差し出した。
「へ?100円?」
「ゲーム代なくなちゃったのよ、安いもんでしょ一人100円ずつ」
「あほか!なんでワシらが・・」
「見物料よ、アタシのパンツ見たでしょ。」
「ま、まだみてへんわい!」
「あ、やだーひょっとしてお金持ってないなんてゆーんじゃないでしょうね。ダッサイ格好して100円も持ってないなんて・・・・」
少女は溜息をついた。
「このチャパツ女ぁー言わせておけばーー!ちょっと可愛いからってなちょーしこいてんやないぞ!」
「気安く触らないでよ!放して!」
少女がトウジを振りほどいたら、偶然少女の肘がヤバイ系のチンピラに当たってしまった。
「OH!NO!」
「あゴメン」
「ゴメンですむかい!折角最終面までいったんやぞ!どないしてくれるーオー!!!」
「なかしたろか!」
少女はいきなりチンピラの顔面に飛び蹴りを叩き込んだ。
「「「!!!!!!!!!!!!」」」
三人は心の絶叫を上げた。
「こっここここのガキぃー!!」
奥から十数人の不良達が出て来て、シンジ達も含めて取り囲んだ。
(ヤバイ!!)
「全く、大勢にならないと、こんなか弱い少女とすら喧嘩できないとは、情けなくて情けなくて」
自分をか弱いと表した少女はチンピラ数人を同時に相手に戦闘中。しかも優勢。
その時、白い車が物凄い速度で走って来てチンピラ二人を跳ね飛ばして急停車した。二人は数メートル空中を舞い地面に叩き付けられ、更にバウンドして合わせて十数メートル吹っ飛んだ。
(何?)
車からどこかで見たことがある男性が下りて来た。
「お前達、私の車に傷がついてしまったではないか、どうしてくれるんだ?」
「貴様!なめとんのか!こっちは二人重体やぞ!!」
1人が地面でのた打ち回っている。もう一人は意識が無く、真っ赤な液体が地面に広がっていく。
「車道に立っている馬鹿が悪い。」
いや、やり過ぎだ、と殆どの者が思った。
「しかも、どうやら中学生相手に大勢で取り囲むとは余りに酷過ぎないか?」
「じゃかあしいやったろやないか!!」
チンピラ達が一斉に飛び掛かった。
「馬鹿が・・・」
どうやったか分からないが、一瞬にしてチンピラ達全員が吹っ飛ばされた。
(((嘘!!)))
「あーー!!!」
少女は男性が誰だか分かった様で男性を指差して大声を上げた。
「もしかして統監!?」
(((統監!!!!!!!!!!!)))
「そうだよ。全く統監の顔もわからないとは、この馬鹿達は・・・中学校1年2年3年の社会の教科書全てに載っているのになぁ〜・・・小学校にも載ってるか・・・」
(だからなんで)
ケンスケは又同じ事を考えていた。
「処で君と、君ちょっと乗りなさい。」
シンジと少女が指名されて車の後部座席に乗せられた。
シンジが左側、少女が右側の座席に座った。
耕一はアクセルを踏み、車を走らせた。
(どうして統監が僕達を?)
少女も何か不可思議な顔をしていた。
「処で、碇シンジ君と惣流アスカラングレー君、」
(え?)
「「えぇーーー!!!!!!!!!」」
二人の声に驚き耕一はブレーキを踏んで急停車した。
「惣流アスカラングレー」
「碇シンジ」
二人は御互いを指差しながら向き合った。
「知らなかったのか」


1時間後、東京、東京プリンセスホテル7525階スイートスカイラウンジ
3人はここで食事をする事に成った。
耕一と向かい合わせに、シンジが左側の席アスカが右側の席に座っている。
シンジは緊張でがちがちになっていてアスカも多少緊張している様だ。
「今日は貸し切りにしたから別に周りに気にしなくて良いぞ。」
(貸切ー!ここを!)
シンジは辺りを見回した。食事を普通にするだけで桁が違う金額を取られそうな雰囲気である。
メニューが運ばれて来た。
「私は子羊をメインに・・・・・・・」
(知らない食べ物ばっかり・・・《涙》・・・)
「じゃあアルコール抜きのシャンパンを・・・銘柄は任せる」
因みにアルコール抜きなのは、二人が未成年だからと言う理由よりは、耕一が酒に弱いと言う事の方が大きい気がする。
「お、お任せします。」
「焼き具合はミディアムで」
その後、食事が運ばれて来た。
食事の味は途轍も無く美味しかった。
「さて、君達、エヴァのパイロットをこうして呼んだのは、幾つか理由があるのだが、」
「エヴァの情報ですか?」
アスカが真面目な顔で聞き返した。
「うむ、それも有るのだが、最大の目的はネルフを手に入れることだ」
(冗談だよね・・・。)
「まあ、今日の所は御付き合いの初めと言う事で」
耕一は二人のカップにシャンパン(アルコール抜き)を注いだ。


30分後、護衛ヘリを伴い数十機のヘリの大編隊でネルフ本部のヘリポートまで送ってもらった。
「とんでもない人だな・・・」
「当たり前ね。あの統監なんだから・・・」


エレベーターの中、
「処で、貴方本当にサードチルドレン?」
「う、うん」
「ああ、何たる事か、エヴァンゲリオン初号機の専属パイロットがこんなひ弱な凡人とは」
アスカは手を壁に当てて俯いてため息をした。
「・・・あのねぇ」
「はあ〜〜〜」
「な、何何だよ。」
エレベーターの扉が開きレイが乗り込んできた。
「綾波」
「へ〜この女がファースト、」
(史上初のチルドレン、でも、その実績は私よりも遥かに下、無愛想、無表情、命令には絶対忠実)
「人形みたいね」
「・・・碇君・・・」
レイは、シンジの左側に立った。
「アタシは、セカンドチルドレン惣流アスカラングレー、仲良くしましょ」
腰に手を当てて言っている。ある意味喧嘩を売っている。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「「「・・・・・・・」」」
「・・・碇君・・・」
漸くレイが口を開いた。
「何?」
「・・・セカンドチルドレンは私に話し掛けたの?」
アスカとシンジは沈黙した。
直ぐに、アスカのこめかみに青筋が浮かび、顔が赤くなった。
エレベーターが止まり扉が開くと同時にレイは出て行った。
「こおらあああ!!!!!」
アスカは更に赤くなって、拳を震わせている。


ネルフ本部某所
「あれ、アスカとシンジ君一緒?・・・まあ良いわ。正式に紹介するわね。惣流アスカラングレーさん、今日から弐号機で参戦してくれます。」
(アスカねぇ〜)
「セカンドチルドレン、惣流アスカラングレーよ」
「・・・そう・・・良かったわね・・・」
「きいいいいい〜〜〜!!!!」
「駄目よアスカ!」
レイに飛び掛ろうとしたアスカをミサトが羽交い締めにした。
「この子はこう言う子なんだから、ちゃんと仲良くしなさい!」
紹介はどたばたで1時中断されたが、ちゃんと再開された。


ネルフ本部総司令執務室、
「本当に波乱に満ちた船旅でしたよ。まさか使徒に海の上で出くわすとわね。」
加持はトランクを開けた。トランクの中にはケースに入った胎児状の物が入っていた。
「やはりこれのせいですか?既にここまで復元されています。硬化ベークライトで固めてありますが・・・間違い無く生きています。」
「人類補完計画の要ですね。」
「最初の人間アダムだよ。」
「・・・ところで・・・セカンドよりも遅いとはどういうことだ?」
「・・・ネルフの防諜はどうなってるんですか?襲われましたよ、まあ、もう犯行グループは、この世にはいませんが」
「襲われた?」
「知らないと」
「君は下がれ」
「はい」
加持が下がった後、碇は電話をかけた。
『はい』
「サンプルが襲われたと言うのは本当か?」
『間違い無いようです。間も無く報告が行くかと』
「犯人の身元は?」
『傭兵です』
「クライアントは?」
『加持が殺したため確証はありませんが、恐らくは、第3支部かアメリカ支部ではないかと』
「・・あの男が殺したのか?」
『はい』
「・・・・そうか、調査は続行しろ」
『了解』
碇は電話を切り、アダムを見詰めた。


P.M.6:31、ネルフ本部職員食堂。
ミサトの奢りで夕食を食べに来ていた。
「なんでも好きな物頼んでね〜、ここじゃ大した物無いけど。」
シンジはシーフードピザを頼んだ。レイはカレー、ミサトはスパゲティとビール、アスカはドリンクだけの様だった。
そして四人で席についた。
ミサトの右にシンジ、シンジの反対側にレイ、その左にアスカが座っている。
「しっかし、アスカってばやっぱ凄いわよね。新米のシンちゃんとは実力が違うわ。」
「あったりまえでしょ、こちとら小さい時から乗ってるんだから。」
その時、ミサトの後ろから男性がそっと近付きミサトの頭を抱き込んだ。
「やッ、なッ、誰よ、止めて!」
「加持さん」
「なっ!」
「相変わらず昼間っからビールか・・・腹出っ張るぜ」
ミサトは加持を振りほどいた。
「なななんであんたがここにいんのよ!?」
「御挨拶だなあ、久しぶりに会ったのに。アスカの随伴でねドイツから出張さ」
加持はこけた椅子を元に戻した。
「そりゃ御苦労様だったわね。用が済んだんならさっさと帰りなさいよ」
「残念でした当分は帰る予定は無いよ」
「あっそ」
ミサトはあからさまに不満げな顔をして、加持はシンジの方を向いた。
「碇シンジ君て、君かい?」
「あっ、はい、どうして僕の名前を?」
「そりゃ知ってるさ、この世界じゃ君は有名だからね。勿論レイも有名だけどね。」
加持はレイの頭の上に手を置いた。
「何の訓練も無しにいきなり実戦でエヴァを動かしたサードチルドレンってね。」
「そんな・・・偶然です。」
「偶然も実力のうちさ。才能なんだよ君の」
アスカの視線が刺す様に鋭くなってくる。
「処で、君は葛城と同居してるんだって」
「ええ」
「こいつ寝相悪いだろ?」
「ええ、毎朝僕が起こしに」
「なななにいってんのよーー子供の前で!!」
ミサトは慌てて叫び、アスカは妙なポーズで固まっている。
「え?どうして子供の前だといけないんですか?」
「もう、あっちいきやがれ」
「ははは、またな」
加持は笑いながら去っていった。


9月24日(木曜日)、第3新東京市立第壱中学校2年A組
シンジはアスカがエヴァのパイロットだったと言う事をトウジとケンスケに話した。
「ぬあにいいいい!!!!!!」
「あの女がエヴァのパイロットだったやてーー!!」
「うん・・・」
「やっぱエヴァのパイロットって変わり者が選ばれるのかな?」
「・・・」
(それどう言う意味だよ)ミリタリー&カメラおたく、年中黒ジャージの熱血男、超鈍感、3人の中で一番まともなシンジが不満に思うのは当然である。「ま・・・わしらは2度と会う事もあらへんやろけどな、センセは仕事やからしゃーないわな。ほんま同情するで」
その時、前の扉をアスカが開けて入って来た。しかもアスカは第3新東京市立第壱中学校の制服を着ていた。
3人は大きなショックを受けた。
教室中が盛り上がる中、3人のその表情は、まるで世界が終わったかのようだった。


朝のホームルーム。
「惣流・アスカ・ラングレーです。宜しく。」
アスカは満面の笑みを浮かべて言った。


あとがき
アスカ登場、ようやく主役が揃った。良かった良かった・・・・でもな〜まだまだ先は長いぞこれは・・・
耕一がネルフに接触を図っています。果たして、耕一の狙いは本当にネルフを手に入れることなんでしょうか

次回予告
連邦統一模擬試験。6人の男女が苦悩?する。
弐号機の自慢を始めるアスカ、しかし、レイの発言は、それを根底から揺るがし、アスカを怒らせる事になる。
リツコはアスカにエヴァの基本設計に関して話す。
第七使徒襲来、アスカの独断先攻な行動が、ピンチを招いてしまう。
初の分離合体能力を有する目標に対し、加持の発案で、エヴァ2機によるユニゾンを試みる。
果たして、性格が反対の二人にユニゾンは可能か?
次回 第拾弐話 傲慢