ヤシマ作戦の成功から一月が経った。 街の主要部分は復興され、また街が活気を取り戻しつつあったが、まだ防衛施設の回復には至っていなかった。 9月2日(水曜日)A.M.7:10、ミサトのマンション、 シンジは程よく焼けたトーストを頬張り、右横ではペンペンが朝食の鯵を食べていた。 襖が開き寝起きのミサトが出てきた。 髪はぼさぼさ、服も皺だらけ妙齢の女性がこんなので良いのだろうか・・・と言う格好である。 「おはよ〜〜」 ミサトは冷蔵庫からエビチュビールを取り出して一気に呑んだ。 「−−−かぁーーやっぱぁこれよねぇー!」 いつもの事ではあるが、余りにも酷いミサトのライフスタイルに不満を隠せないシンジは露骨に表情に出した。 「何その顔は!?日本人の朝は昔からお酒と味噌汁って決まってるのよ。」 「ミサトさんがでしょ」 シンジはムスッとした顔で返した。 「大体、今日の朝御飯の当番は誰でしたっけ?」 「ごっめ〜ん」 やはりいつもの通り全然悪く思っているように見えない。 「・・ミサトさんが未だに一人身な理由が分かりました」 「悪かったわね、がさつで」 痛い所をつかれてミサトは顔を顰めながら返した。 「ずぼらとアルコール依存症もでしょ」 ミサトは複雑な表情をした。 恐らくはずぼらの方ではなく、アルコール依存症のほうに関連しているように思える。 「・・処で、今日の面談本当に来るつもりですか?」 シンジは話を変えることにした。 「勿論、私がシンジ君の保護者代わりですからね。」 「・・・」 「何?お父さんに来てもらいたいの?でもね〜司令が来たら副司令もおまけで付いて来るでしょ。」 想像、第3新東京市立第壱中学校、面談室、 「碇君とその保護者の方お入り下さい。」 老教師の声でシンジは碇と冬月と一緒に面談室に入った。 碇の威圧感に押されながら老教師はなんとか話を始めた。 「えっと、碇君の成績は転校して、いきなり5番ですから・・・とても、良い、・・良くて、志望する、第2新東・・・第3新東京高等学校への進学は、頑張れば、進学科にも十分可能です。はい。た、たぶん」 「そうか、それは良かったな」 「ああ、問題無い。」 碇の眼鏡が光った。 (何故光る?) 想像終わり。 シンジは気が重くなった。 「どう?」 シンジはとんでもない父親を持った不幸を泣きたくなった。 やがて、トウジとケンスケが迎えに来てシンジは家を出た。 ミサトは電話を取った。 「・・今、家を出たわ、ガード宜しく」 『了解』 ミサトは電話を机の上に置き溜め息をついた。 「・・・アルコール依存症か・・・」 呟きは虚空に消えた。 A.M.11:00、第3新東京市立第壱中学校2−A、 轟音を響かせてミサトの車が学校の駐車場に入ってきた。 あれだけ無茶と言うより無謀な高速運転をしていては、ハイブリッドカーの意味がないような・・・ 「いらっしゃったで!」 トウジが慌てて窓から身を乗り出した。 「カメラ、カメラ!」 ケンスケはカメラを構えた。 ミサトはドリフトをしながら駐車枠に車を収めた。 地面にタイヤの跡がくっきりと残っている。 「おお〜〜!!ミサトさんや!!」 ミサトが車から降りてきた。 正十字のイヤリングやペンダントをしている。 ミサトはサングラスを取り、トウジやケンスケにブイサインをして笑みを見せた。 クラスの男子の大部分が色々と叫んでいる。 「やっぱええわ〜、シンジはあんなべっぴんさんと一緒に暮らせて羨ましいわ〜」 「・・苦労してるよ・・」 トウジとケンスケが同時に溜息を付いた。 「「よっしゃ〜!地球の平和はお前に任せた、やから、ミサトさんはワシに任せろ!」」 トウジとケンスケが同じ事を良い、同時にシンジの背中を叩いた。 「バッカみたい」 ヒカリがぼやいた。 レイは小説を読みながら、横目で、三人を見た。 A.M.11:42、第3新東京市立第壱中学校面談室。 「相田君とその保護者の方お入り下さい」 ケンスケとケンスケの父親の相田サトシが入ってきた。 「お掛けください」 二人は椅子に座った。 「相田君の成績はまずまずですね、相田君の志望校はどこになるのかね、この成績ならば第3新東京市立第壱高校普通科も十分ねらえるが」 「先生!第3新東京市立第壱高校普通科から、地球連邦大学戦略学部は狙えるでありましょうか?」 「無理です」 断言された。 「では、第3新東京市立第壱高校進学科からならば狙えるでしょうか?」 「まず無理ですね、それは、中間テストで洞木さんに勝てと言っているようなものですね」 「そ、そこまででありますか?」 「ケンスケ、私は、早稲田だぞ」 「ぐ、親父・・・」 「先生、私は、使徒襲来以後、忙しくまともに息子に構ってやれません、しかし、夢はかなえてやりたいのです。どうか愚息を宜しく御願いします」 相田サトシは、深く頭を下げた。 ・・・・ ・・・・ ・・・・ 「洞木さんとその保護者の方お入り下さい」 ヒカリとヒカリの姉、洞木コダマが入って来た。 「お掛けください」 「姉の洞木コダマです。」 「洞木さんは、クラス委員長としてクラスを上手にまとめ、成績も常に2位を取り続けています。第3新東京市立第壱高校進学科も先ず間違い有りません」 「あの・・・先生・・・その、鈴原は?」 「鈴原君ですか・・・・公立高校進学そのものがかなり難しいですね、」 「・・・そうですか」 「ヒカリ、その鈴原君に勉強を教えてあげれば?」 「お姉ちゃん!」 「だって好きなんでしょ、いっしょにいたいんでしょ」 ヒカリは真っ赤になって俯いた。 ・・・・ ・・・・ ・・・・ 「碇君とその保護者の方お入り下さい。」 老教師の声でシンジはミサトと一緒に面談室に入った。 「ネルフ作戦本部長の葛城ミサトです。今日は碇シンジ君の保護者代理としてきました。」 「お掛け下さい」 シンジは左側の椅子にミサトは右側の椅子に座った。 「碇君の成績は優秀で転校してきていきなり5番を取りました。志望校の第3新東京高等学校は、普通科はまず間違い有りません。進学科も碇君自身の頑張り次第では十分可能です。欠席早退が少し目立ちますがまあこれは仕方が無いでしょう。友達も出来てクラスによく溶け込めていますよ。」 「そうですか。」 「碇君の志望校はどこかね?」 「特には決めていません・・・」 「だめよ〜シンちゃん、自分のことなんだからはっきりしないと」 「・・・使徒が現れ続けるとすれば、僕が選べるほど候補の学校が有るわけじゃありませんし・・」 非現実的な話だが、それが現実である事にミサトは顔を顰めた。 「そうですか・・・これが碇君の成績データーと此方は学校からの通信です。」 ミサトはそれらを受け取って二人で部屋を出た。 出るとリツコとレイが待っていた。 「リツコ!」 「同じよ。」 リツコとレイは面談室に入って行った。 「ネルフ技術本部長の赤木リツコです。本日は綾波レイの保護者代理として来ました。」 レイは右側リツコは左側の椅子に座った。 「綾波さんの成績に関しては、全く言う事がありません。志望校はよく分かりませんが日本中で行けない学校は有りませんが・・・欠席があまりに多過ぎるのですが・・・もう少しなんとか成りませんか?」 「不可能です。」 リツコは言い切った。 「そうですか・・・特令で出席日数が足りなくても卒業できますがやはり、」 「構いません。」 「そうですか・・・・・・これが綾波さんの成績データーと此方は学校からの通信です。」 成績データーには1の文字が大量に躍っていた。全国順位にも関わらず100番台がたまにある程度である。 リツコはそれらを受け取って二人で部屋を出た。 ・・・・ ・・・・ ・・・・ トウジが一人で入ってきた。 「鈴原君、君の成績では、公立高校進学は難しいな」 「やっぱそうですか・・・・」 「上手く行けば、スポーツ推薦を取れるかも知れないが・・・」 「先生、未だ考えさせてもろうてええですか?」 「未だ1年近い猶予がある。大いに考えなさい」 「はい」 超高空、専用機 窓から見下ろされる地球、南極海が禍々しい赤に染まっている。 碇が、窓際の席に座っている。 「ここ、宜しいですかな?」 アジア系の男が碇に尋ねた。 碇は無言で返した。 男は碇の横に座った。 「朗報ですよ。アメリカと日本を除く全ての理事国が追加予算を承認しました」 「議会も自分が生き残る為ならば金を惜しむまい」 「使徒はもう現れない、それが彼らの主張でしたからね」 「君の国はどうなのだ?」 「第2次整備計画は未だ生きています。八号機から建造に参加する予定です。それよりも、日本政府はどうなんですか?」 「・・・・通常予算は他のどの国よりも支払いは良い、だが、追加予算は、お断りだそうだ・・・」 「やはりそうですか、日本は、国会が拗れると大変ですからね・・・しかし、戦略自衛隊の高度な技術といい、日本重化学工業のジェットアローンと言い、日本は、独力で使徒と戦おうとしているんでしょうか?」 「戦略自衛隊はあくまで対人、日重の玩具では話にならん」 「しかし、存在するだけで、ネルフの立場が揺らぐんじゃないですか?」 「問題ない」 「そうですか・・・・・」 9月10日(木曜日)A.M.7:10、シンジは程よく焼けたトーストを頬張った。横ではペンペンが朝食の鯵を食べていた。 襖を開けて制服でびしっと決めたミサトが出て来た。 シンジはトーストをペンペンは咥えていた鯵を思わず落としてしまった。 玄関、 「今日は旧名古屋に行って遅くなるから、夕飯は何か出前を取って。じゃあ、行ってきます。」 「い、いってらっしゃい。」 シンジとペンペンは顔を見合わせた。 A.M.8:30、第2東名高速道路清水IC上空東京帝国グループのヘリ編隊。 「今日は日本重化学工業の試作品の発表会か」 「ネルフ諜報部が動いていると言う情報もあり、裏工作がある可能性も」 榊原が報告した。 「やはり予算がらみか」 「多分そうだと思いますぅ。」 コトミが答えた。 横にネルフの高機動ヘリが見えた。 「噂をすればNERVだ・・・」 旧名古屋市、旧名古屋港跡上空、ネルフのヘリ、 「で、今回の事、戦自は絡んでるの?」 眼下には多くのヘリが止まっている。 「戦自?いいえ、戦略自衛隊の介入は認められず」 「通りで好き勝手やってるわけだわ・・・てっことは、政府はノータッチ?」 「いいえ、関与しているわ」 「どう言うこと?」 「今回の一件、日本政府の責任者が、大曽根通産大臣なのよ」 「通産大臣?防衛大臣じゃないの?」 「日重の玩具、本当に玩具扱いされてるわね」 「本当?」 「半分は、与党の一部の派閥がかなり手を入れるわ、最も、利権狙いなのは見え見えだけどね」 「日本政府か・・・・何考えてんのか、さっぱり分からないわ」 A.M.10:40、旧名古屋市元名古屋港跡地、日本重化学工業の試作品展示会場。 記念パーティー会場。 先程から延々とJA(ジェットアローン)に関する説明がされていた。 「質問を宜しいですか?」 「これは、これは、御高名な赤木リツコ博士、どうぞ。」 「動力機関を内蔵とありますが?」 「ええ、JAの大きな特徴です。核分裂炉を搭載する事で最高180日間の連続戦闘が可能です。」 得意そうに言っている。 「しかし、格闘を前提とする接近戦において動力機関を内蔵するということは危険過ぎます。」 「5分しか動けない決戦兵器よりはマシだと思いますがねぇ。」 「くっ、外部操作では判断に遅れが生じますが」 「暴走させた挙句、精神汚染を発生させる物よりははるかに人道的と考えますがねぇ」 「それを押さえるのが人の心とテクノロジーです。」 「まさか、御冗談を、あの怪物を人の心でどうにかなると?そんな事だから、国際連合はまた余分な予算を使わなければならない、某国では1億人近い餓死者が出ようとしているのですよ。」 「なんと言われてもうちの主力兵器以外は使徒は倒せません。」 「ATフィールドですか?それも時間の問題ですよ。ネルフ、ネルフ、という時代はもう終わったんですよ。暴走してしまう決戦兵器など、ヒステリーを起こした女性と同じです。手におえません。」 会場中から笑いがこぼれた。 「質問をして良いか?」 耕一が手を上げている。 「こ、これは地球連邦統監皇耕一陛下、ど、どうぞ」 「勿論、破壊されたら放射線や放射性物質を撒き散らす事に成るわけだな。」 「当然そうなりますが、その可能性は全く有りません。」 「使徒の等価戦力は推定で12艦隊以上なのだがJAは12艦隊とは言わずとも10艦隊を相手に破壊されずに勝てるのかな?」 「現時点では無理ですが、いずれ其処まで行く予定です。」 「では、NN爆雷の直撃には堪えられるかな?確か、使徒は耐えたよな、」 「はい」 「で、エヴァの攻撃で使徒は倒されたと、赤木博士、エヴァは攻撃のみに特化した兵器ではなく防御も同等クラスかな?」 「いえ、ATフィールドを考えれば、むしろ、防御に特化していると考えられます」 「なるほどね、で、そのエヴァを大破させるだけの使徒の攻撃はNN兵器より強いと推測されるわけですね」 「そうとも考えられますね」 「ふむふむ、どうだ?今からNN兵器をぶつけてみるか?」 「ま、まだそこまで対策は」 「つまり、まだまだ未完成品、そう言うわけだね」 「は、はい」 「まあ、製作発表会で完成祝賀会じゃなかったな、で、それはいつかね?」 「研究チームの発表では来年の暮れまでには」 「ふ〜〜ん、赤木博士、」 「はい?」 「エヴァの技術も進歩しているはずだが、来年の暮れには何分ぐらい動けるようになってるのかな?」 「さあ、どうでしょうか、可能性に過ぎませんが、来年の半ば頃には、パイロットが連続して戦える時間を超えます」 「ほうほう、まあ、子供という事を考慮しても数時間か、あの力が数時間動き続けたら、すごいな」 「ぐぐぐぐ、しかし、暴走したときの被害は桁外れですよ」 「あら?その対策も同時に進めていますよ、暴走してしまう兵器は手に負えないのでしょうが、全く通用しない兵器は玩具としか呼べませんよ。その上、子供を戦わせる以上に、放射能汚染により数百万人を危険にさらすことの方が非人道的なのではないでしょうか」 「更に付け加えるとしたら、操縦者が中にいるわけでもなく、一人でもないのに、どうして人型なのかな?」 「え?それはあの」 「どちらかと言うと、対人戦の方が向いているような気がするが・・・破壊したら自分も死ぬと人間なら分かるし、それに、放射能がATフィールドを貫通するかどうか疑問だしな」 「そ、それはその」 耕一は掌を叩いた。 「ああ、なるほど、対人兵器だったのか」 「あら?そうだったんですか、いえ、すみませんね、大人げなくなく、エヴァのライバルかと思っていろいろと言ってしまい申し訳ありません。対人兵器JA開発責任者時田博士」 リツコが邪悪な笑みを浮かべている。 「そうですな、エヴァの消費電力を考えれば、リアクターを乗せても出力足りませんし、エヴァより弱いことは火を見るより明らかなのに、どうしてデカデカと自慢してるのかと思えば、なるほど、想定している敵が違ったわけですな。それに、来年の始めには東京帝国グループの総力を結集した対使徒専用特殊戦艦が完成しますし・・・まあ、JAとは違い対人よりも対使徒の方が向く、と言っても、対人にも流用可能というのが現状ですがね」 「それに、ATフィールドのことまで知っているならば、我々と同じく、サードインパクトに関することも知っていると思いますが・・・それから考えれば、安価だが勝てるかどうか分からない兵器よりも、たとえ国を傾けてでも、確実に勝てる兵器がほしいというのが実状だと思うが、どう考えているのかな?」 「そ、それは・・・」 「それに・・・今回のこのくだらないパーティーいったいいくら掛かったんでしょうな・・・それだけで結構な人数の命が救えるんじゃないですか」 その後も、更に耕一と復活したリツコの辛辣な攻撃は続いたが、結局時間だからと言う理由で時田は逃げた。 P.M.0:00、試運転が始まった。 ドームが開きロボットが歩き出した。 「へ〜ちゃんと歩いた。自慢するだけのことはあるようね。」 耕一がミサトの横に並んだ。 「これは統監、先ほどはありがとう御座いました」 「バカは困りますな、それに、赤木博士も感情的になると、冷静な判断を失うようですね」 「お恥ずかしいところを」 リツコは少し顔を赤くした。 「まあ、良いけど、本気であんな玩具で勝てると思ってるのかねぇ〜、一般人はそうは思ってないみたいだがね、出席者を見る限り」 耕一は窓の外のJAを見た。 「どう言うことですか?」 「文部省の役人がきていた」 「なるほど、厭味ですね、それは」 「チョッチ変じゃない?」 JAは速度を落とさずに此方に向かって歩いてくる。 「ヤバイ!」 天井が崩れ、JAが建物を破壊して突き進んだ。 「作った人に似て礼儀知らずな奴ねぇ」 「炉内温度上昇中!」 「制御棒作動しません!」 「ばかな・・・」 「危険です。」 「止まらんのか!?」 耕一は時田達に聞いた。 「全機能停止は?」 「既にやった。」 「まだ、全てを白紙にするコードがあるはずだわ。」 「私の権限外だ」 「統監命令だ、言え!」 「キボウです。」 「葛城君、エヴァを起動させてくれないか?」 「エヴァぁを?」 「予算は全て此方で出すから、あれを止めてくれ」 「でも放射能が・・」 「止まれば後は此方で宇宙空間に持っていって処分する。」 職員が機材を壊した。 「ここからの発信が止まれば手動でハッチが開きます。」 「ありがと」 P.M.0:31、旧名古屋上空エヴァ専用特殊大型輸送機、 特殊防護服を着込んだミサトがシンジに作戦を説明していた。 「シンジ君は私をJAの後方部に乗せるだけで良いわ。後は出来るだけ市街地に近づけない様にして」 「でも、危険ですよ。」 「やれるだけの事はやっとかないとね。」 ミサトはヘルメットを被った。 『投下用意』 「行くわよ。」 P.M.0:32、試運転会場。 「自然停止の確率は?」 「0.01%です。まさに奇跡ですよ。」 「炉心融解まで後3分」 「全く駄目です。」 時田は頭を抱えた。 「何てことだ・・・」 耕一はやり取りを見ていた。 「バカだ・・・」 耕一は落ち着いたままのリツコの横に戻った。 「で、止まるんだろ」 「ええ、炉心融解1秒前に」 「流石は赤木リツコ博士」 「私はプログラムを作っただけですよ」 「炉心融解まで後10秒」 「駄目か」 「制御棒作動!温度低下!やりました。止まりました!」 「奇跡だ、奇跡が起こったんだ!」 (奇跡は用意されていたんだよ) 耕一はリツコを見た。 夜、ネルフ本部、総司令執務室、 「葛城1尉の行動は予定外でしたが、結果は、シナリオ通りでした。」 「そうか・・・・ならば問題ない」 「ですが・・・日本政府の動きが気になります」 「それは、君の管轄ではないだろう」 冬月が言った。 「はい、失礼しました。」 9月11日(金曜日)、A.M.7:10、ミサトのマンション、シンジは程よく焼けたトーストを頬張り、右横ではペンペンが朝食の鯵を食べていた。 襖が開き寝起きのミサトが出てきた。 「おはよ〜〜」 ミサトは冷蔵庫からエビチュビールを取り出して一気に呑んだ。 「−−−かぁーーやっぱぁこれよねぇー」 「・・・・」 シンジは折角見直したのにまた嫌になった。 A.M.8:00、通学路 シンジはトウジとケンスケと一緒に歩いていた。 左から順にシンジ、トウジ、ケンスケである。 「どないしたんやシンジ?」 「ミサトさんてっさ、自堕落でだらしなくって・・・」 二人は溜息をついた。 「それって俺達には見せないミサトさんの本当の姿だろ。それを見せるってことは家族ってことだろ。羨ましいよ。」 「そうなのかな?」 「せや、」 「そうかもしれない・・・・行こう!」 シンジは元気を取り戻してまた歩き出した。
あとがき 耕一きついね。 早稲田大学は、1流総合大学として、羨望の対象となる大学です。それは、現実よりも遥かに大きいです。 地球連邦大学は、早稲田と同ランクの大学ですが、戦略学部と国際学部だけは、抜けていて1つ上のランクで、一橋や京都大学と同ランクです。 JAは、あくまで、対人目的に製造したものとしました。勿論表向きは使徒用ですが、 JAは、派閥闘争や、政治献金がらみで、政治家もかなり関わっていますが、政府は切り捨てています。 今回、シンジは、ミサトを家族として受け入れました。しかし、作戦部長とパイロットと言う関係との両立は、いつまで持つでしょうか・・・一つ崩れた時、両方を失う事になります。 漸く第1節が終わりました。そろそろ、耕一のネルフへの接触が激しくなってきます。 次回予告 国際連合軍太平洋艦隊を襲った第六使徒は、弐号機により即時殲滅される。 遂に、自称天才、実際秀才の美少女が来日、早くも大波乱が、そんな中、耕一が乱入する。 最初興味も無く完全無視をしていたレイも、五月蝿いアスカに対しいつも通りに淡々と対応した。しかし、それは、アスカの神経を逆撫でし、二人の関係は険悪なものとなる。 とんでもない荷物を運んだミサトやリツコの旧友、加持リョウジ、そして、加持の出現にミサトは頭を抱え込む事になる。 そして、第3新東京市立第壱中学校2−Aに転入したアスカ。 彼女の中学生生活が今始まる。 次回 第弐節 人と使徒 第拾壱話 アスカ襲来