シンジは辺りを見回した。 耳を突く蝉の鳴き声、人っ子一人もいない駅前、あの第3新東京市を訪れたとき途中で電車が止まった駅、 腕時計の日付は、丁度そのときのものである。 「・・・始まりの時か・・・ふふ・・戻ってこれた・・」 もう一度辺りを見回す。 「さぁ、裁判の始まりだ。検事は僕、裁判官も僕・・・そして死刑執行人もね・・・」 「・・・最初の被告人、愚かな女は・・・」 力を使い周囲を探す。 「・・見つけた。」 シンジはにやりと唇を歪めた後、ゆっくりと歩いて少し離れた大通りに移動した。 暫くその場で待っていると青いルノーが走って来た。 「被告人が自分からやってきたよ。」 愚かなミサトを鼻で笑う。 そして、ミサトのほうはシンジに気づいたのか急ブレーキをかけ急停止した。 「くくく」 笑いを堪える事ができない。 ドアを開けてミサトが降りて来た。 「碇、シンジ君ね」 「そうだ。葛城ミサトだな」 「え、ええ、そうよ・・」 何この子とでも思っているのかもしれない。 或いはあの司令の息子なら、ある意味似ているしそれもありえるか・・・などと自己完結しているのかもしれないが、 「お前は、これから僕たちの心を、そして、命を弄ぶ」 「はぁ?」 「自らに都合の悪いときだけ偽りの正義を振りかざしその罪を正視しようとしない」 この子やばいんじゃとでも思っているのか、かなりの汗をかき表情も相当に引きつっている。 「更には、その無能な指揮によって多数の犠牲を出し、無数の者を苦しめる。」 流石にむっとした表情に変わる。 「・・・決して許されることではない、判決は死刑だ。」 「あのねぇ、あんたそんなわけの分からないこといって」 「言い訳は無用だ。死ね」 シンジは問答無用でミサトを殴り飛ばした。 妙な音がしてミサトの体が宙に浮き、道路の反対側の商店へ飛んでいってシャッターを突き破った。 ゆっくりと歩み寄りシャッターに空いた穴から、血だらけになっているミサトを引きずり出す。 何を言っているのか分からない呻き声を漏らしている。 「ふん」 ミサトの体を地面に叩きつける。 口からは絶叫が漏れる。 「他愛も無い、所詮この程度か、」 サキエルが近付いているのか地響きが近付いてきた。 「簡単には死なせない、」 手をミサトの腹に突っ込み、内臓をかき回す。 壮絶な絶叫が耳を突く。 「これでいいだろう。苦しんで死ねる程度にしておいた。これはおまけだ。」 ミサトの手足の骨を砕き、再び絶叫がもれる。 「さようなら、ミサトさん」 最後のその言葉は笑みを浮かべながらの言葉であった。 ミサトのルノーの運転席に乗り込み走らせる。 「次の被告人は誰かな?」 やがてネルフ本部に到着しゲートをくぐる。 「さて・・ケージに向かうか、」 ケージに向かう途中のエレベーターで、リツコが乗り込んできた。 「・・貴方がサードね。・・・・・ミサトは?」 きょろきょろと見回すが当然いるはずも無い。 エレベーターが閉まる。 そして、外界から遮断され、エレベーターの電光表示がエラーを示す。 「あら?」 「くくく、赤木リツコ」 「何?」 呼び捨てにされ不機嫌になったのか強い口調で聞き返してくる。 「ん?なぜ私の名前を知っているの!?」 「自らの保身と母へのコンプレックスで、悪魔の計画、補完計画に協力した。」 「なっ!!?」 機密事項の計画の名が出て驚く、 「そして、捨てられると分かりきっていたにもかかわらず、愚かにも自ら偽りの恋を踊り、結果自らの破滅に道連れを作る。」 「な、なにを言っているの!!?」 心当たりはあるものの、一つぶっ飛んだ事を言われ、なぜそんなことをとわけがわからない部分もあって、大きな声をあげた。 「もはや、いかなることも免罪符とはなりえない、判決は死刑だ。」 もはや、何を言えばいいのか、言葉も見つからないようだ。 ポケットの中の何かを握り締める。おそらくは、拳銃かスタンガンかであろう。 シンジはリツコの胸倉をつかんでエレベータの壁に叩きつける。 「きゃ!」 そのまま腹部に強烈なパンチを打ち込む。 それによって内臓がつぶれ、凄まじい絶叫を上げ、エレベータの狭い密室に反響する。 血を吐き出す。 「どうだ、苦しいか?」 シンジは倒れ血を吐き続けているリツコの頭に足を乗せ力をかける。 ミシミシと骨がきしむような嫌な音がする。 「だが、お前が行った行為によってこれから苦しむものの苦しみからすればこんなものはたいしたものではない」 更に力をかける。 リツコはただ血を吐きながら悲鳴をあげつづけるだけである。 「ふん、心と同じで悲鳴も汚い・・・聞くに堪えられないな 」 「・・そう言えばこれはなんだ?」 リツコのポケットの中から、スタンガンを取り出す。 「スタンガンか・・自分で食らってみろ」 押し付けて、ボタンを押す。 リツコの悲鳴が響く、 暫くして白目を剥いて気絶した。 「・・・死ね、」 思い切り力をこめてリツコの頭を踏み潰した。 つぶれた脳が飛び散る。 空間が元に戻り、到着を知らせる音が鳴った。 リツコの死体をそのままにしてシンジはエレベーターを降りた。 ケージに到着した。 『・・・久しぶりだな、』 ケージ上方の司令室に碇が立っている。 その姿を見た瞬間、内でどす黒い炎が燃え上がった。 『・・赤木博士、どこにいる?』 ケージとその他の区画を遮断する。 「ばあさんは処刑したよ」 『・・何を言っている?』 「自らの保身と母へのコンプレックスで、悪魔の計画、補完計画に協力しそして、捨てられると分かりきっていたにもかかわらず、愚かにも自ら偽りの恋を踊り、結果自らの破滅に道連れを作った罪でね」 『シンジ、お前いったい何を』 碇の頭の中では凄まじい速さでさまざまな思考が巡っているだろう。 だが、そのいずれも答えには到達できない。 「・・碇ゲンドウ」 『何だ?』 「自らのために妻と再会を果たすためだけに、悪魔の計画補完計画を実行し、そして、これから世界を破滅させる。」 『・・・』 睨み付けて来る。 「どうした?」 「これから貴様は全ての者の命と心を弄ぶ、決して許されるようなことではない」 『・・・』 「当然判決は死刑だ。」 『・・何を言っている?』 シンジは宙に浮かび上がった。 『何!?』 そして、ATフィールドの剣を手に作り出し、司令室に特殊強化ガラスを豆腐か何かのように切り、碇がいる司令室の中に入る。 『・・・』 思考がパニックに近い状況になっているのかもしれない。 「くくく、そう簡単にはしねない、覚悟しろよ、これから苦しむものたちの苦しみをその一部でも味あわせてやる」 碇はよく分からないが、とにかくこのままでは拙いと考えたのか、逃げ出した。 「くくくくく、」 愚かな行動に、笑いがこみ上げてくる。 「ひ、開かん!」 扉が開かない、シンジが世界を遮断しているからである。 「どうした?」 シンジはゆっくりと歩み寄っていく。 「くっ」 碇は他の出口を求めて更に逃げた。 「くくく、無駄だよ、」 いくら逃げようともこのケージという閉鎖された空間から逃れることはできない。 シンジはゆっくりと碇を追った。 どれだけの時間がたったかはわからないが、碇は、ゲートの前にしゃがみこんで荒い息をついていた。 「くくく、もう追いかけっこは終わりかい?」 「くっ」 視線で威圧してくるが、そんなものは何の役にも立たない。 「そろそろ諦めるんだな」 荒い息をつき睨み付けて来るだけで逃げ出そうとはしない。 シンジは碇の胸倉をつかんで宙に持ち上げた。 「ぐ」 「ふん」 そして、床に叩きつける。 「ぐはっ!」 「くくく、」 その髭をつかんで、無理やり顔を上げさせる。 「ぐお」 壁に顔面を叩きつける。 「ははは、どうした?例えどんなことをしてでも妻に再会するんじゃ無かったのか?」 「ぐ」 血だらけの顔で、睨み付けて来る。 「ははは、睨み付けて威圧するしかできないのか?全く情けないなぁ!」 「そろそろ死ね、」 碇を壁に投げつけ更にATフィールドの槍を作り出し手足を貫き壁に固定させる。 ケージに悲鳴が響き渡る。 「さあ、死刑の執行だ」 ATフィールドでロンギヌスの槍を形作る。 碇の胸に押し当て、ゆっくりとゆっくりと突き刺していく。 苦痛を大きく長くするために。 絶叫がケージに響き渡る。 シンジは残酷な笑みを浮かべたまま碇の体を貫いた。 「くくく、どうだい?」 しかし、直ぐには死ねない。 槍をぐりぐりと動かす。 再び絶叫がケージに響く、 「・・とどめだ。自らの業を後悔して死ね」 もう一本ロンギヌスの槍を形作る。但し、先は二股に分かれず一本の状態である。 それを一気に心臓に突き立てる。 血が吹き出る。 「くくく、はははは、はっはっは!!」 シンジの笑い声がケージにこだました。