赤い海・・・赤い空・・・

補完された世界・・・人はすべてLCLとなった・・・

たった二人を除いて・・・



Retrogression

1.5話  未来の過去



ここは砂浜・・・ここに二人の子供がいる・・・

一人は碇シンジ・・・

一人は惣流・アスカ・ラングレー・・・

なぜ二人がここにいるのか?・・・それは誰にもわからない・・・

「海が・・・赤い・・・」

シンジは目を覚まして呟いた・・・

「誰もいない・・・この世界に僕一人・・・」

「もう・・疲れた・・・」

そう言うとシンジはまたその場に寝そべった・・・

そこで初めて隣にアスカがいるのに気がついた・・・

「アスカ・・・アスカがいる・・・」

シンジは藁にもすがる思いでアスカに近づくと、

「気持ち悪い・・・」

アスカが呟いた・・・

この時シンジはアスカに拒絶されたと思い再び希望を失った

「アスカ・・・」

シンジは立ち上がりアスカに馬乗りになって首に手をかけた・・・

ピチャ・・・

水のようなものがアスカの顔に落ちた・・・

「うぅ・・・ぼくには・・・できない・・・」

シンジはそのままアスカの隣に泣き崩れてしまった・・・



あれからどれくらいの時間がたったろうか・・・

シンジはいつの間にか眠っていた・・・

シンジが再び目を開くとそこには死んだはずのカヲルが立っていた

「カヲル君!!どうしてカヲル君が!?」

シンジは驚きのあまり跳ね上がってしまった。

「やあシンジ君、久しぶりだね。」

「・・・君はあの時僕が・・・」

「あの時はすまなかったねシンジ君」

「やめてよ!!そんな言葉で・・・僕があの時どんなに苦しい思いをしたと・・」

「シンジ君・・・。でもねシンジ君、僕は君に感謝してるんだよ。僕を使徒という呪縛から解き放ってくれた君にね。」

「僕は・・・カヲル君に生きてほしかった・・・」

「いいんだよシンジ君。僕はね、天使になったんだ。」

「天使・・・じゃあカヲル君は僕を迎えに来てくれたんだね!?」

「それは違うよシンジ君。」

「どうしてさ!!僕はもうこの世界は嫌なんだ!!この人のいない世界が!!連れて行ってよ・・・カヲル君のいる世界に連れて行ってよ!!」

「君はこの世界が嫌なのかい?この世界を望んだのは君なのに?」

「う、嘘だ!!僕はこんな世界望んでいない。僕は人のいる世界を望んだんだ!それなのに・・・」

「やっぱり君の心はガラスのように繊細だね・・・シンジ君、君は無意識のうちに誰もいない世界・・・つまり自分が傷つかない世界を望んだのさ」

「そ、そんな・・・・・じゃあ・・なぜカヲル君はここに来たのさ!!」

「君にチャンスをあげに来たのさ」

「チャンスなんていらないよ!今度は僕をあのときみたいに解放してよ!!!」

カヲルは少しだけ悲しそうな表情を見せた。

「シンジ君・・・話は最後まで聞くものだよ?君は今こんな世界にしてしまったことを心のどこかで後悔している。でもどうしようもない。だから僕がここで君に選択肢を一つ増やしてあげるのさ」

「選択肢?」

「そう。・・・過去に戻ってやり直すんだよシンジ君」

「・・・なぜ僕なの?」

「この世界には君しかいないからさ」

「嫌だよそんなの!!そんなのアスカにやらせればいいじゃないか!」

「シンジ君、僕は君にやってほしいのさ。僕はあの時『君たちには未来が必要だ』といったよね?君がもし、僕のことをまだ友達だと思ってくれているんなら僕の遺言をかなえてくれないか?」

「カオル君・・・」

「お願いできるかな?」

「で、でも・・・僕が行って何ができるって言うのさ・・・」

「君は一度全人類とひとつになっているんだよ。君はそのとき今回の出来事の全貌を知っているはずだ。それからこれは僕からのプレゼントだ」

カヲルが手を掲げると手の中から赤い強烈な光が出ではじめた。

そしてそれをそのまま前に立っているシンジの体に埋め込んだ。


「これは何?カヲル君」

「僕の中にあったアダムの魂さ。これが君を心の壁で守ってくれるよ」

「・・・・」

「大丈夫。君になら出来るよシンジ君」

「わかったよ・・カヲル君」

「すまないねシンジ君。君には人として生きてほしいんだよ」

「どうして?」

「人であるシンジ君が好意に値するからさ」

「そ、そんな」

シンジはなぜか赤くなる

「それじゃあ・・・そろそろ行くかい?」

「うん。お願い」

「では・・・」

カヲルはどこから出したのかそれほど豪華とも言いがたい・・だがどこか神秘的な剣を出した

「それは何カヲル君?」

「これが君の精神を過去に導いてくれるんだ」

「へぇー。どう使うの?」

「体のどこか一部分を刺すのさ」

「え!?」

「大丈夫だよシンジ君。痛くはないらしいからね」

「そうなんだ・・・でもあんまり気が進まないな・・・」

「それじゃあ右手を前に出して」

「う、うん」

「それじゃあ・・・行くよ?」

ゴク

シンジは思わず息を呑んだ

「はぁぁぁぁあ」

グサ!!!

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・!!」

最後のほうは声にならず、シンジの目からは光が失われていった

「シンジ君・・・行ったか・・・」

「さて僕はもう一仕事しないとな」

そしてカヲルは歩き出した・・・もう一人のところへ・・・




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