鋼鉄の処女

最終章 また会う日まで

【第壱中学校・校庭】
 “あと少しでこの茶番も終わり…。”
 校庭に佇む、銀色の髪の少年。

【人工進化研究所・掲示板】
 掲示板に張り出された一枚の紙。そこには、パイロット達それぞれの移転先が記されてあった。
 「決定事項よ。」
 「「「「「えっ?」」」」」
 「あんた達には各国の研究機関に行って貰います。期限などについては各々説明します。」
 「何や、それ!!」
 「現在、使徒の活動は沈静化しているけど、今後どの地域に出現するかわからない今、各機関でのエヴァに関する研究の拡大と防衛強化を図る為に上が決定しました。」
 淡々と説明するミサト。
 「文句言われても決定は変更されないわよ、鈴原君。」
 「ワシら当人やんか!!当人の意見も聞かんといて勝手こかれても聞けんわ!!」
 「私だってあんた達にこんな事言いたくないわよ!大の大人が14歳の子供つかまえて、よってたかってこんな事……。」
 ミサトは辛い胸の内を明かした。
 「あんた達にばかり辛い思いさせて申し訳ないと思ってる。子供に頼らなきゃいけない現状をどうする事もできない。大人の気持ちをわかれとは言わない。でも……。」
 ミサトは頭を下げた。
 「この通り……お願いします。」
 シンジ達は何も言い返せなかった。
 *「何か話が微妙に違ってないか?」
 「なんで子供じゃないとエヴァに乗れないんだろうな……。」  「大人が嫌いなのよ、きっと。」  「エヴァが?」  「多分……。」  「……みんな離ればなれかぁ……。」  「みんな帰って来れるよ。ここがみんなの故郷なんだし……。」  「綾波さんも……ここに帰ってこれるよ。」  「そうだ!タイムカプセル!みんなが帰って来れるように願掛けしようぜ!!」
 *「ん?こんな話あったか?」
 「タイムカプセル!」  「みんなが帰って来れたら掘り返すんだ!」  「私も?」  「当たり前だろ、みんなって言ってんだから。」  「のったで!」  「僕も!」  「じゃあ、私も。」  「よし、じゃあ各自入れる物を持って校門に2時間後に集合!!」 【第壱中学校・校門】  シンジがアスカとともに校門に到着すると、既に全員集合していた。そこにはもう一人……。  「ヒカリも?」  「うん、トウジに誘われて……。」 【第壱中学校・校庭】  シンジ達は校庭の木の傍にタイムカプセルを埋める事にした。  「ヒカリは何を入れるの?」  「内緒!今度掘り返す時に教えるわね。」  「そうそう、掘り起こしてからのお楽しみ。」  「アスカ、あのね……私もしばらくしたらこの街出るの……。」  「え?」  「いろいろあったから家族でもっと安全な所に引っ越すの。」  「そっか……。」  「みんなでここに帰ってこようね。」  「ヒカリ!」  思わずトウジが背後からヒカリを抱きしめた。  「トウジ……。」  頬をほんのりと紅く染めるヒカリ。  「アツアツ……。」  「相田!」  思わず言葉を漏らしたケンスケをアスカが嗜める。  「いいな……。」  レイも呟いた。 【人工進化研究所上の高台】  シンジははっとした。  “ここは?……前にもいたような……そうだ、やり直したんだ……。”
 *「やっぱり何かおかしいぞ?」
 シンジは深呼吸してから言った。  「僕はアスカと一緒に残る。」  レイは俯いた。  「さようなら……碇くん。」  レイは走り去って行った。  「シンジ。」  「ケンスケ……。」  「お前はいい奴だな。」  立ち去る足音。  「じゃあな!シンジ!」  ケンスケも去って行った。  「シンジ……。」  「ん?」  「カッコつけちゃって……でも、戻ってきてくれて嬉しい。」  アスカはシンジを抱きしめ、キスした。  「最後はシンジと二人きり。思い出は星の数ね。」 【人工進化研究所・正門】  正門に集合した5人のチルドレン。  「いよいよ世界に旅立つ日ね。」  「ワシは家のモンと一緒にアメリカに引っ越す。」  「俺はアフリカ大陸へ行く。」  「碇くんは日本に残るのね。」  「うん。みんな頑張ろうね、カヲル君の分まで。」  「「おう!」」  「「ええ。」」  「またいつの日か、みんなで会おう。」 【新横須賀港】  アスカとシンジが二人で船の上に佇んでいる。  「シンジとも、いよいよお別れか……。」  「アスカも元気でね。」  「私の事、忘れないでね。」  「そんなに僕の事を……アスカ。」  「シンジ……。」  二人はどちらからともなく抱き合っていた。  『まもなく、ボーディングブリッジが切り離されます。お見送りの方は船からお降り下さい。』  「じゃあ、行くよ。」  シンジはアスカから離れようとしたが。  「ダメ……。」  アスカはシンジを抱く手を離さなかった。  「わーっ、ちょっと待って!僕は降ります!」  出航する船の汽笛が鳴った。 【太平洋・洋上】  「アスカのせいで降りられなくなったじゃないか!」  「だって、名残惜しかったんだもん!」  「とほほ、日本が遠くなっていく。」  「このまま二人でドイツへ行こうか。」  「えー!?」