鋼鉄の処女

第7章 最後の戦い

【ネルフ本部・中央作戦発令所】
 再び警報が響き渡った。
 円盤使徒は次々と大気圏内に侵入してきた。
 「セントラルドグマへ通じる全隔壁を閉鎖しろ!」
 「Eブロックの隔壁を緊急閉鎖!」
 赤く点滅する照明。
 『メインシャフトを含め、Eブロックの全隔壁を緊急閉鎖します。』
 隔壁が閉まっていく。

【第三新東京市】
 戦闘機の攻撃を受けてもびくともしない[円盤使徒]。

【ネルフ本部・中央作戦発令所】
 機を狙っていたかのように立ち上がり、ゲンドウが声を張り上げる。
 「エヴァンゲリオン、全機出動!」

【箱根・外輪山の尾根】
 湖を見下ろすように出動した全機が横並びで一列に並ぶ。
 レイの零号機。
 シンジの初号機。
 アスカの弐号機。
 トウジの参号機。
 ケンスケの四号機。
 カヲルの伍号機。
 6体のエヴァンゲリオンがこれから戦う敵を前に雄雄しく立ち上がる。
 「街が破壊されていく……。」
 「どないする?攻撃の命令やぞ。」
 「住民は避難したから、生命の危険は無い筈。」
 「我々が攻撃を仕掛ければ、反撃は充分想像し得る。」
 「でも、やるしかないぞ。」
 「私達の街を破壊したんだから、やられたらやり返すのよ。」

 ポジトロンライフルを構える零号機。目標はラミエル。
 『撃たれる前に撃つのよ。』
 「わかってる!」
 だが、ラミエルの渦粒子砲のほうが早かった。寸前で避ける零号機。
 直後、ラミエルは別方向からビームを喰らって撃沈した。
 『だから言ったろ、撃たれる前に撃てって。』
 シンジの頼もしい声が聞こえてきた。
 *「アンタレスかよ!」
 「外は硬くたって、口の中まで硬くは無い筈!」  サンダルフォンの口の中にアスカはソニックグレイブを突き刺し、殲滅した。
 *「ブラックエンジェルズかよ!」
 「上ががら空きや!」   参号機がマトリエルの上に飛び乗り、パレットライフルを撃ち捲くって倒した。  「ここだ!」  四号機は分離攻撃してきたイロウルの円盤に飛び乗り、そのままイロウルに向かっていき、コアにソニックスピアを突き刺した。  「貰った!」  伍号機のポジトロンライフルの直撃を受け、レリエルは四散した。  “変だ……あまりに簡単すぎる気もする……。”
 *「まあ、再生怪人は弱いっていうのがお約束だからな。」
 シンジは感じた。  “来る……。” 【駒ケ岳山頂】  光の巨人が出現した。  「光の巨人だ……。」 【第三新東京市・上空】  地上に落下してくるサハクイエル。それを食い止めようとバックパックを背負った零号機がバーニアを噴かしながら押し返そうとしているが。  「駄目!力が足りない!碇くん!」 【駒ケ岳山頂】  光の巨人と対峙しているシンジの零号機。  「僕に何か話しかけようとしている……。」  『シンジ!何ボーッとしてんの!』  『早よ!綾波を助けェ!ボケッ!』  シンジの視界がホワイトアウトした。  薄いもやがかかった奥に、夕闇の街が広がっている。  どこからか、ゲンドウとユイがシンジに語りかけてくる。  「シンジ……。」  「母さん、これは現実なの?それとも夢?」  「シンジはもう充分戦った……もっと楽にしていいのよ……。」  「うん。」  「シンジ……。」  「父さん。」  「お前はもう立派になった。これからは一人で歩いていくんだぞ。」  「うん……。」  ゲンドウとユイの優しい声に安らぎを感じ、目を閉じるシンジ。その時。  「こら!逃げちゃダメでしょ!」  誰か女性の声が聞こえた。それは……。  「真辺先輩!?」
 *「ようやく出てきたか…記録はしているな。」
 はっと気付くシンジ。光の巨人はもういない。  アスカの声が聞こえてくる。  『シンジ!シンジってば!』  「…アスカ!」  『真上から落ちてくる!』  上を見ると、落下するサハクイエルとそれを防ごうとしている零号機がいた。  初号機の傍に弐号機、参号機、四号機、伍号機が駆けつけてきた。  「全機、フィールド全開!」  エヴァ全機のATフィールドが共鳴し、サハクイエルを押し返す。  「うりゃあああああ!」  シンジが気合をこめると、初号機はジャンプした。そのままサハクイエルに取り付き、プログナイフをコアに突き刺す。  サハクイエルはそのまま上空に吹っ飛ばされ、そこで爆発した。  初号機は零号機を抱きかかえながら着地した。  『ありがとう、碇くん。』  「どういたしまして。」  だが、サハクイエルを殲滅して気を抜いたその隙をついて、上空からアルミサエルが襲ってきた。  『碇くん!後ろ!』  「えっ!?」  初号機が振り返ったその瞬間、初号機をかばって飛び込んだ伍号機の胸にアルミサエルが突き刺さった。  「カヲル君!」  『こいつはちょっと厄介だ…機体に侵入してきた。』  伍号機の胸から何かが葉脈のように広がっていく。  『渚くん、機体を捨てて逃げなさい!』  『ちょっと待った……彼らは僕達と同じ知性を持った生命体のようだ…。』  「カヲル君、何でそんな事が……。」  『そうか!君達は操られていたのか!』  『渚くん?いったい誰と話しているの!?』  『もう、時間がない。後のことは任せたよ、真辺さん。』
 *「システム的におかしくないか?」
 伍号機は翼を広げて舞い上がった。  「カヲル君!どこへ行くの!?」  『こいつを殲滅するには‘死なば諸共’しかないようだ。』  『バカ!あんた死ぬ気!?』  『渚!戻って来い!』  『渚!』  『渚くん!』  みんなの呼び掛けを無視して伍号機はどんどん上昇していった。
 *「♪進め〜ジャイアントロボ〜立て〜ジャイアントロボ〜。」
 『アルミサエル、君が気にする事はないさ。生と死は僕達にとって同価値なのだから。』  大空の一点で閃光が輝いた。  同じ頃、手にしていた水晶玉を割られ、スペースブラックゴッドは融けて消滅した。