鋼鉄の処女

第3章 恋の駆け引き

第1話

【シンジの自宅・居間】
 シンジが着替えていると、アスカが乱入してきた。
 「あら、ママから置手紙?」
 シンジに抱きつくようにして手紙を見るアスカ。
 *「器用なやっちゃな。」
 「着替えの邪魔したら、遅刻しちゃうよ。」  「何々?シンジへ。今日は研究所の仕事で帰る事ができません。松代へ出かける為一泊します。食事はいつものように外で食べてください。母より。」  「久し振りの留守番で夜更かしもできるし。晩御飯はコーラとポテトチップにしようかな。」
 *「それがメシか!」
 「今夜はシンジの家に泊まる。」  「えっ?」  「襲ったら殴るからね。あと、夕食は私が作る。放課後、買出しに行こう。」 【第壱中学校・音楽室】   「別の約束があって、演奏会には行けそうにない。」  「仕方ないさ。僕一人で行くよ。」  「カヲル君、すまない!ごめん!」  「別の約束って誰?」  「えっ……誰って……。」  「碇くんと遊びたかったのに。」 【新吉祥寺・サンロード】  繁華街に腕を組んで歩いているシンジとアスカの姿が。  「その大きな荷物は着替えなの?」  「本気で泊るんだから。変な気、起こさないでね。」  「変な気ねえ。」  「さて、晩御飯は何にしようかな〜♪」  と言いながらいきなりクイズを出した。  「さあ問題です。料理の材料が手に入るお店と言えばどこでしょう?」  「食材といえば、SAYYOUかな……。」  「ぴんぽーん。」  「目的地はSAYYOUだね。」
 *「♪SAYYOU、SAYBOO、TAKASHIMAYAH!」
 早速SAYYOUに向かう二人。  その中でシンジは街行く人の動きの慌しさが少し気になった。 【サンロード・一丁目二番】
 *「♪イッチョメイッチョメ、ワーオ!」
 人々の喧騒が聞こえてくる。  「街頭のテレビに大変なものが映っているらしいぞ。」  「見に行ってみようよ!」 【サンロード・三丁目三番】
 *「♪一度はおいでよ三丁目。」
 街頭のオーロラビジョンにニュースが流れる。画面には光の巨人の映像。  「これが独自に入手しましたアダムの映像です。」  「悪魔の姿だぞ!何とおぞましい!」
 *「誰だ、この田所教授って?」
   「我々人類はどのような対策を取ればいいでしょう?」  「アダムの目的はイブとの接触じゃ。どこかに居るのだが未だ不明。人類は巨大ロボットでアダムの恋路を阻止するしかない。グフフフ……実はある秘密を握っている。視聴者の皆さんに伝えたくて、このような放送を……。」  言葉を遮るようにモニターにノイズが走って、何事も無かったようにキャスターが。  「大変失礼しました。お知らせのあとは、可愛い動物の赤ちゃん、パート2。」  「アダムか。」  「シンジって、そういうの好きね。」 【SAYYOU・生鮮食料品売り場】  夏野菜や色鮮やかな果物、鮮魚に精肉が並ぶ。アスカは生鮮野菜の棚を真剣に眺めている。シンジはその荷物持ちだ。  右手にキャベツ、左手にレタスを持って悩むアスカ。
 *「♪右手にピストル、左手に花束、唇に血の酒、背中に人生を…。」
 「これがレタスで、こっちがキャベツ……。」  今度はニシンとイワシをつまんで見比べる。  「えっと、こっちがニシンで、こっちがイワシ……。」
 *「やってTRYに出したらさぞ見物だな。」
 「どんな料理にするつもり?」  「材料を見てから決めるの。」  「大失敗のゲテモノ料理かな。」  「うっさいわね!火を通せば、なんだって喰える。」
 *「元気があれば、なんでもできる!」
 と、そこにトウジとヒカリが現われた。  「私達、これから夕食の仕度なの。」  「まさか!」  「同居生活に突入?」  「ちゃうちゃう!親が研究所勤めで留守やから、晩飯、付きおうてもろたんや。今夜だけやがな。」  「そうか、トウジもやる時はやる。うん、うん……。」  「シンジかて、惣流と何してんねん。」  「ちょっとね……。」  「アスカもお買い物?」  「シンジの家で夕食するの、一緒にどう?なんちゃってネ。」  「一緒に?」  「そうだよ、うちにおいで!アスカの実験料理より数倍、いや数百倍!数千倍!いい!」  「ムムムムッ。」  「そうねえ……。」  いきなりヒカリにスポットライトが。
 *「今週のスポッ…………トライト!」  ※「今週のビックリどっきりメカ、発進!」
 “アスカと碇君を見れば刺激になるよね。トウジ、時々静かになっちゃうし……4人で過ごせば気まずくならないし……。”  意識を戻すヒカリ。周囲の喧騒が戻ってくる。考えた末に。  「楽しいかも。」  「シンジが良かったら、ワシらそれでもええで。」  「決まったね。」  「私達、碇君の家にお邪魔します。」
 *「今宵、貴女の家にお邪魔します……It's Deamon's Night!」  ※「♪お邪魔しますます、お邪魔しますます、やぁ〜まだ、山田君。」
【シンジの自宅・シンジの部屋】  シンジはいきなりアスカをベッドの上に押し倒した。  「もう我慢できない!」  「やめて、いきなりはイヤ!」  「過ちだとわかっていても、僕のリビドーを抑える事は誰にもできない!これは青春の1ページなんだ!」  「ムードを考えんかい!ボケッ!段階を踏むんじゃ!」  アスカの蹴りを喰らうシンジ。  頭蓋後頭部を強打した碇シンジは一週間の後に意識を回復、治療に専念。1ヵ月後に社会復帰を果たしたが、エヴァのパイロットを降ろされ、除隊させられた。 シンジ「モラルの大切さが身に染みてわかりました……ガクッ……。」