【第壱中学校・廊下】 ぼんやりと廊下をうろつくシンジ。 「さて、次の授業は何だったかな?」*「呆れてものも言えんわい。」 ※「って言ってるじゃないですか。」【第壱中学校・テニスコート裏】 テニスコート裏に行くと、そこにはケンスケがいた。 「今日の体育はランニングだ。早く着替えてこいよ。」 【第壱中学校・校庭】 シンジが着替えて校庭に出ると、体操服に着替えた生徒達が準備運動を済ませていた。その中で、レイは新しい体操服がしっくりこないようだった。 「胸の辺りがキツイかな。」 「幼い顔してサイズだけは生意気なんだから。見て、このアスカ様には宝石のようなおみ足があるの。カラダはバランスが重要なのよ。」 「私には天から授かった才能があるもの。」 「アクションは私が一番よ!やるか、シュッ、シュッ、シュッ。」 アスカがシャドー・ボクシングをする。 「気を付けないと、男子が見ているわよ。」 ヒカリが注意するが。 「そうね、シンジは色ボケだし、鈴原も野獣むき出しって感じだしィ。」 「アスカの体操服なんか、何にも感じないよ。見慣れちゃってるからね。」 「そやそや、言うたれシンジ。誰がアスカなんぞ見るか、ボケ!」 「何ですって!」 激怒したアスカは反転、後ろ回し蹴りをシンジとトウジに見舞った。すっ飛ぶ男二人。 「碇君も鈴原も欲望の虜だわ!」 倒れたシンジの傍に、ここぞとばかりにカヲルが薔薇を背負って駆けつけた。*「♪薔薇が咲いた、薔薇が咲いた、真っ赤な薔薇が〜。」 ※「♪薔薇は薔薇は、気高く咲いて〜、薔薇は薔薇は、美しく散る〜。」「愛するシンジ君に鉄槌が下るとは。」 「カヲル君。」 「こんな形で罪を償う君を、僕は見捨てはしない。痛かったかい?」*「痛いですか〜?」「思ったより傷は浅いよ。」*「しっかりしろ、傷は浅いぞ!」「黒曜石のように美しい瞳。愛しているよ、シンジ君。」 「おいおい、男同士で愛を語っとんでぇ。」 「出たな、耽美男。」 「ヘンタイ。」 「不潔よ、不潔!」 すかさず、トウジ、アスカ、レイ、ヒカリがツッコミを入れる。 騒がしくなっていく中、ケンスケがやって来た。 「ハイ皆さん!今日のランニングはなんと!操縦者の適正訓練を兼ねているのです!」 妙に燃えているケンスケ。 「とうとう俺の時代が来た!相田ケンスケこそエヴァのパイロットにふさわしい!絶対!絶対!ぜーったい!」 【シンジの自宅・シンジの部屋】 アスカは黄色のワンピースで着飾った自分をシンジに見せていた。 「こんな服、どうかな〜。」 「洞窟探検なんだよ。」 「お出掛けなんだから、派手な格好したいじゃない。」 「泥で汚れるし、雨水で濡れるし、柵に引っ掛けて破れるよ。」 「シンジは女の子の気持ち、全然わかってな〜い。」 「だいたい、誰に見せるの?ケンスケ?トウジ?カヲル君?」 「もう、いじけちゃって子供なんだから。」 「帰んなくていいの?お家で心配するよ。」 「べーっ、だ!」 【第26番隧道・坑内】 幅5メートルほどの狭いトンネルで、弱い電球が所々に点いている。 ケンスケを先頭に歩く一同。 シンジ達は懐中電灯で足元を照らしている。 奥まで続く洞窟を見て、カヲルが感嘆の声を上げる。 「掘削した岩盤を支える構造物。まさに人類の英知だね。」 「巨大なジオフロントを作る為にこのトンネルを掘ったんだね。」 「こういうトンネルが大小合わせて、4096本掘ってあるんだ。」 「人間の力って凄い。」 「もっと明るくならないの?可愛いお洋服、見せたいのに。」*「入り口で全員に見せてるだろうが。」【第26番隧道・坑内・800m地点】 歩いているうちにシンジは先頭から遅れ、カヲルと二人になっていた。 「人のうなり声みたい……。」 聞こえる音をシンジはそう感じた。 「探検とは危険を冒して実際の場所を調べる事也。」 「この先には何があるんだろう。」 「シンジ君の横顔が愛らしい。」 「ありがとう。カヲル君も綺麗だよ。」 「君の笑顔、草原の中のひまわりのようだ。」 「……。」*「そこは薄暗い筈だが?」「思わず抱きしめたくなる。」 「ダメだって、変な気持ちになるから……。」*「お前、意味わかって言ってるのか?」【縦坑・エレベーター入り口】 「このエレベーターは定員2名。」 「二人ずつ乗って、ジオフロントまで降りよう。 「俺とシンジは別々に乗ろう。」 「僕が一緒に乗るのは……。」 【縦坑・エレベーター内】 シンジはカヲルと一緒に乗った。 カヲルはエレベーターに興味を示した。 「前時代的な昇降装置だね。」 「工事用のエレベーターだからね。」 「地球の中に進んでいる。」 「雄大な気持ちになるね。」 「目を瞑って。」 「え?」 「目を閉じるんだ、シンジ君。」 「うん……瞑ったよ。」 目を瞑るシンジの唇に自分の唇を寄せて、軽く口づけをするカヲル。 「僕からの友情の証……いいもんだろう?」*「カヲルはロシア系なのだろうか?」“不覚にも、感じてしまった……。”*「お前なあ……。」アスカ「ちょっと待った!何勝手にキスしてんのよ!こんなの認めないわ!」 【第26番隧道・坑内・800m地点】 アスカがシンジにこっそりと耳打ちする。 「シンジ。」 「ん?」 「手をつなごう。」 「どうしたの?」 「ね?手ぇ、つなごう。」 「あっ。」 言うが早いか、アスカはシンジの手を握った。 「流石は男の子、手が冷たい。」 「地下は冷えるから、アスカの手は湿っぽいね。」 「デヘヘヘ、誰も気が付いてない。」 「アスカ……。」 「なんか、ドキドキしてきちゃった。」 【縦坑・エレベーター入り口】 「このエレベーターは(以下同文)」 「僕が一緒に乗るのは……。」 【縦坑・エレベーター内】 シンジはアスカと一緒に乗った。 「思ったより深いね。」 「耳が痛い。気圧が変わっている。」 「それだけ深く潜っている。」 「怖い。」 「我慢。」 「怖いよ。」 「我慢、我慢。」 「怖いのに!」 「訓練だと思えば?」 「女の子が怖いって言ったら、何かする事あるでしょ。」*「怖いと言ってたのは嘘か!」「する事?女の子とする事……。」 「変な事想像している。」*「それは自分が望んでる事だろ?」「こうかな?」 おもむろにアスカの肩を抱くシンジ。 「きゃっ。」 突然の事に一瞬びっくりするアスカ。 「こういう事?」 「抱かれたら安心した。」 「アスカはどこまで本気なのか、この僕にもわからない。」 「私はいつでも本気よ……。」 アスカは小さく呟いた。 トウジ「なあ、ワシにも出番くれや。」 【縦坑・エレベーター入り口】 「この(以下省略)」 「僕が一緒に乗るのは……。」 【縦坑・エレベーター内】 シンジはトウジと一緒に乗った。 「シンジ、お前、綾波と惣流、どっち取んねん。」 「取るって、取らないよ。いつも通りで楽しいし。」 「惣流やなあ、シンジはよお!」 「アスカとの付き合いは長いし、いい友達だけれど……何だよ、トウジは綾波さんに興味があるの?」 「綾波て、なんか大人やろ。」 「そうかなぁ?」 「体型が平均より上やで。」 「トウジって、委員長の事が好きなんじゃないの?」 トウジの脳裏に浮き上がるヒカリの微笑み。 “トウジ、好きよ……。” 「すまん!許してくれぇ、ヒカリ!」 「やっぱりねえ……。」 「なあシンジ、綾波の事云々は絶対秘密やぞ。」 「僕らだけの秘密だね。」 「シンジは男や!」*「お前は高田延彦か!」「トウジって、オーバーだな。」 【フォッサマグナの分岐点】 道は二手になった。 「……右に行ってみよう。」 だが、扉を開けた途端、警報が鳴り響いた……。 洞窟を探検中、シンジはネルフ本部に入ってしまい、諜報部によって拘束された。 ネルフ勤務、人造人間エヴァンゲリオン、サードチルドレン・碇シンジは機密保持の為、10日間拘留後、第弐新大阪中学校に強制転校させられた。 【第弐新大阪中学校・教室】 黒板の前で緊張気味に立つシンジ。 担任の金パチ先生がシンジを紹介する。*「パチはパチもんのパチか?」「第三新東京市から越してきた転校生を紹介します。碇シンジ君。」 「碇シンジです……。よろしくお願いします。」