鋼鉄の処女

第1章 たのしい学園生活

第2話

【菓子パンのカド屋】
 「やっと、私の出番が来たようね。」
 *「だから、誰に言ってるんだ?」
 「アスカ、ここにいたんだ。」  シンジがアスカを見つけると。  「ぷわっ!」  「わっ!食べカス!」  アスカは何が気に入らないのか、食べていた酢イカの食べカスをシンジに吐きつけてきた。  「ぷわっ!ぷわっ!」  「やめてよ!」  「炎天下の中、か弱き美少女を待たせておいて!」
 *「それが美少女のする事か?」
 「ごめん。」  「早くしないと間に合わないわよ。」  「まだ時間たっぷりあるのに。」  「ユ★ザワヤの屋上に行きたいんだってば!」 【ユ★ザワヤ・屋上】  「ペンペンがいっぱいいる。」
 *「♪一羽のペンギンが二羽のペンギンに、三羽、四羽、五羽…十羽!」  ※「♪オウオウオウオウヤー!」
 「温泉ペンギンって、バイオ関係なのかしら。」  {そんなに見るんじゃねえよ。}
 *「ペ、ペンギンが…しゃべった!?」
 「なんか喋っているみたい。可愛い。」  「そうだ、ペンギン語を翻訳してみよう。」  {おい!俺は元々レギュラーなんだよ!}
 *「あるある探検隊!って、あいつら他局でも連呼してるけどいいのか?」  ※「あの番組が無くなったら‘イレギュラー’に改名したりして…。」
 「僕はアスカに会えて嬉しいです。」  {早くここから出せ!}  「お魚が食べたいです。」  「生イワシがいいかな?」  {ここから出してくれ!頼むよ!俺達は仲間じゃないか!}  「そろそろ行こうか。」  「うん……。」  {わー!アスカ!シンジ!待ってくれ!}
 *「俺は無実だぁ〜!」
【エントリープラグ内】  「結構カッコイイかも。」  その時、カヲルから通信が入った。  『シンジ君。』  「カヲル君、どう?」  『悦楽の時を楽しんでいるよ。』  「そう……。」
 *「何で悦楽なんだ?って思ってるようだな…。」
 『君と話がしたいな。』  「うん……。」  『外で待ってるよ。』  カヲルからの通信は切れた。
 *「♪俺は待ってるぜ〜。」
【ネルフ本部・伍号機ケージ】  ケージ前、伍号機の顔の前でカメラを持ち出すカヲル。  「二人で記念撮影だよ。」  「伍号機の顔って怖い……。」
 *「そもそも、あれに顔はあるのか?」  ※「それに、どこから頭なのか……。」
 「僕達の友情を祝して。」  「うん……。」  カメラのフラッシュが焚かれた。  「印画紙は思い出を美しいものに変えてくれる。」 【半水上都市・湖岸】  湖面近くのコンクリート桟橋の上に何故か白いアップライト・ピアノが置かれている。  カヲルはピアノの前に座り、シンジはその脇に。  何気なくカヲルの指が鍵盤に触れる。  「我思う、故に我在り……。」  叩かれた鍵盤はEの音を奏でた。  「僕は考える。この世界に存在を許された自分……。」  次の音はG。  「死んだ筈のロミオが起き上がる。聴衆は囁きあい、オペラ座は響動めきに包まれる。」  「演劇の話?」  カヲルの指が鍵盤を叩く。Fの音が響く。  「僕は亡霊かもしれないよ、どうする?」  「触ればわかるかも。」  確かめるようにカヲルの背中に触れるシンジ。  「大丈夫、カヲル君はここにいるよ。」  「君は僕にとって最愛の友人だよ。」  そういったカヲルの指がC音の鍵盤を叩いた。 【仙石原駅・改札口】  仙石原駅の改札前にいるシンジとカヲル。  後ろでは電車が駅を通り抜けている。  カヲルは顔いっぱいに笑顔を浮かべていた。  「今日は楽しかったよ。」  「うん……。」  「おやすみ、シンジ君。」  「おやすみなさい……じゃあ帰るね。」  シンジは背を向けて歩き出した。ふと気になって振り返ると、遠く改札からカヲルがこちらに向かって手を振っていた。その笑顔にシンジの心が癒される。  「おやすみ、カヲル君……。」  遠くで電車が走る音が聞こえてきた。 アスカ「これで邪魔者はいなくなったし、それじゃあ、真打の登場って事で。」 【エントリープラグ内】  「結構カッコイイかも。」  その時、アスカから通信が入った。  『シンジ!』  「何?アスカ。」  『後でお願いがあるんだけど……。』  「うん……。」  アスカからの通信は切れた。 【ネルフ本部・弐号機ケイジ】  カメラを持ち出してシンジに突きつけるアスカ。  「ねえ、記念撮影!」  「ケンスケのカメラ……いつの間に。」  「アスカの魅力全開!で撮ってね。」  カメラのシャッター音がして、アスカと弐号機は写真に収まった。  「見せて、私の生写真。ふーん……何だか物足りないよね。」  写真の中のアスカは弐号機の顔の前で横座りして品を作っていた。
 *「結構いける写真だと思うが……。」
 「行こうよ、見つかったら大変だから。」  「待って。」  と、アスカはシンジに背を向けると…。  「プラグスーツ脱いじゃうの!?」  何とアスカはプラグスーツの上を脱いでもろ肌を見せると、そのまま弐号機の頭に寄りかかった。  「撮って!」  「えーっ?」  「冷たいんだから早くしてよ!」  シンジはシャッターを押した。  「見せて!お!いい感じ。美女と野獣。」  「アスカ、胸をしまった方が……。」
 *「アスカはシンジを男として見ていない、という事か?」
【ネルフ本部・食堂】  食堂でくたびれているシンジとトウジ。対してケンスケは力が有り余っている様子。  「もう帰る時間か〜。うー、もっと見学したい!」  「アスカにカメラ貸したの?」  「そうだよ。」  「壊されても知らないよ。」  「アスカって、意外と可愛いじゃん。頼まれたら断れないよな。」  「ケンスケ、お前、物好きやな。」  「なあ、シンジ。アスカを俺にくれ。」  「「えーっ?」」  「ジョーク。取るわけねえよ、シンジの女だもんな。」  「うーん……。」  何故かシンジは唸る。 【新吉祥寺サンロード・花壇の前】  「ジャーン!」  シンジの前に登場したアスカはラフな服装に着替え、手にはファーストフードのジュースとバーガーを持っていた。  「全部着替えちゃったんだね。」  「運動した後はこれよ。」  「運動って、クラブ活動かよ……。」  「なーに、ぶつぶつ言ってるの?」  「鞄に制服を押し込んだらシワシワになっちゃうよ?」  「平気ですぅ。」  と言ってジュースを飲むアスカ。  「あーうまい!」 【シンジの自宅・居間】  テレビのチャンネルを回すアスカ。  『海は蒸発した。森林は焼き尽くされた。人類は地下へと移り住んでいった。残された水と空気は365日分だった。沖田は思った。あの星へ行こう。』
 *「ヤマトかよ!」
 『耕作さん、私達もうダメね。』  『愛子さん、希望を持つんだ。』  『貴方は初芝の課長、私は銀座の女。』
 *「島耕作かよ!」  ※「しかも、大町愛子って超大金持ちだった筈。」
 『今日は万能物干し竿。PVセブンのご紹介です。古い竿とはさようなら。宇宙素材チタン合金の採用により、敷布団は3枚、掛け布団なら5枚まで乾燥できるのです。』
 *「すごいねー、こりゃすごいよ!」
 『俺は銃社会に復讐してやる。』  テレビに飽きたアスカはリモコンを置いた。  「はぁ〜、なんだかする事無くなっちゃった。ねえ、何してんの?」  「アドベンチャーゲーム……。」  「面白いの?」  「いいから黙っていてよ。」  「つまんない。」  が、アスカは直ぐに何か思いついたらしい。  「ねえねえ……。」  「邪魔しないで。」  「あー!画面に女の子出しちゃって気持ちわりぃ!うりゃ!」  「わあ!何でキーボード触るの!?」  「うりゃ!」  「わあ!セーブデータが……。」  アスカはふざけてシンジを押し倒すとその上に馬乗りになった。
 *「マウントポジション・エロバージョンってか?」
 「私が教えてあげる。これが本物の女の子よ……。」  「え……。」  アスカはシンジの上に覆い被さった。アスカの二つの膨らみがシンジの胸に押し当てられた。  「どう?」  「うん……。」  「あと6年もすると、シンジも大人になっちゃうのよね。」  「だから?」  「大人になったら、こんな悪ふざけできないよね。」  アスカはシンジの耳に熱い吐息を吹きかけた。  「くすぐったいよ。」  「14歳の男の子、フッフッフ。」  「わー!ダメ!やめろってば!」  「オーッホッホッホッホッ!」  夜のしじまにアスカの高笑いがコダマした。