【菓子パンのカド屋】 「やっと、私の出番が来たようね。」*「だから、誰に言ってるんだ?」「アスカ、ここにいたんだ。」 シンジがアスカを見つけると。 「ぷわっ!」 「わっ!食べカス!」 アスカは何が気に入らないのか、食べていた酢イカの食べカスをシンジに吐きつけてきた。 「ぷわっ!ぷわっ!」 「やめてよ!」 「炎天下の中、か弱き美少女を待たせておいて!」*「それが美少女のする事か?」「ごめん。」 「早くしないと間に合わないわよ。」 「まだ時間たっぷりあるのに。」 「ユ★ザワヤの屋上に行きたいんだってば!」 【ユ★ザワヤ・屋上】 「ペンペンがいっぱいいる。」*「♪一羽のペンギンが二羽のペンギンに、三羽、四羽、五羽…十羽!」 ※「♪オウオウオウオウヤー!」「温泉ペンギンって、バイオ関係なのかしら。」 {そんなに見るんじゃねえよ。}*「ペ、ペンギンが…しゃべった!?」「なんか喋っているみたい。可愛い。」 「そうだ、ペンギン語を翻訳してみよう。」 {おい!俺は元々レギュラーなんだよ!}*「あるある探検隊!って、あいつら他局でも連呼してるけどいいのか?」 ※「あの番組が無くなったら‘イレギュラー’に改名したりして…。」「僕はアスカに会えて嬉しいです。」 {早くここから出せ!} 「お魚が食べたいです。」 「生イワシがいいかな?」 {ここから出してくれ!頼むよ!俺達は仲間じゃないか!} 「そろそろ行こうか。」 「うん……。」 {わー!アスカ!シンジ!待ってくれ!}*「俺は無実だぁ〜!」【エントリープラグ内】 「結構カッコイイかも。」 その時、カヲルから通信が入った。 『シンジ君。』 「カヲル君、どう?」 『悦楽の時を楽しんでいるよ。』 「そう……。」*「何で悦楽なんだ?って思ってるようだな…。」『君と話がしたいな。』 「うん……。」 『外で待ってるよ。』 カヲルからの通信は切れた。*「♪俺は待ってるぜ〜。」【ネルフ本部・伍号機ケージ】 ケージ前、伍号機の顔の前でカメラを持ち出すカヲル。 「二人で記念撮影だよ。」 「伍号機の顔って怖い……。」*「そもそも、あれに顔はあるのか?」 ※「それに、どこから頭なのか……。」「僕達の友情を祝して。」 「うん……。」 カメラのフラッシュが焚かれた。 「印画紙は思い出を美しいものに変えてくれる。」 【半水上都市・湖岸】 湖面近くのコンクリート桟橋の上に何故か白いアップライト・ピアノが置かれている。 カヲルはピアノの前に座り、シンジはその脇に。 何気なくカヲルの指が鍵盤に触れる。 「我思う、故に我在り……。」 叩かれた鍵盤はEの音を奏でた。 「僕は考える。この世界に存在を許された自分……。」 次の音はG。 「死んだ筈のロミオが起き上がる。聴衆は囁きあい、オペラ座は響動めきに包まれる。」 「演劇の話?」 カヲルの指が鍵盤を叩く。Fの音が響く。 「僕は亡霊かもしれないよ、どうする?」 「触ればわかるかも。」 確かめるようにカヲルの背中に触れるシンジ。 「大丈夫、カヲル君はここにいるよ。」 「君は僕にとって最愛の友人だよ。」 そういったカヲルの指がC音の鍵盤を叩いた。 【仙石原駅・改札口】 仙石原駅の改札前にいるシンジとカヲル。 後ろでは電車が駅を通り抜けている。 カヲルは顔いっぱいに笑顔を浮かべていた。 「今日は楽しかったよ。」 「うん……。」 「おやすみ、シンジ君。」 「おやすみなさい……じゃあ帰るね。」 シンジは背を向けて歩き出した。ふと気になって振り返ると、遠く改札からカヲルがこちらに向かって手を振っていた。その笑顔にシンジの心が癒される。 「おやすみ、カヲル君……。」 遠くで電車が走る音が聞こえてきた。 アスカ「これで邪魔者はいなくなったし、それじゃあ、真打の登場って事で。」 【エントリープラグ内】 「結構カッコイイかも。」 その時、アスカから通信が入った。 『シンジ!』 「何?アスカ。」 『後でお願いがあるんだけど……。』 「うん……。」 アスカからの通信は切れた。 【ネルフ本部・弐号機ケイジ】 カメラを持ち出してシンジに突きつけるアスカ。 「ねえ、記念撮影!」 「ケンスケのカメラ……いつの間に。」 「アスカの魅力全開!で撮ってね。」 カメラのシャッター音がして、アスカと弐号機は写真に収まった。 「見せて、私の生写真。ふーん……何だか物足りないよね。」 写真の中のアスカは弐号機の顔の前で横座りして品を作っていた。*「結構いける写真だと思うが……。」「行こうよ、見つかったら大変だから。」 「待って。」 と、アスカはシンジに背を向けると…。 「プラグスーツ脱いじゃうの!?」 何とアスカはプラグスーツの上を脱いでもろ肌を見せると、そのまま弐号機の頭に寄りかかった。 「撮って!」 「えーっ?」 「冷たいんだから早くしてよ!」 シンジはシャッターを押した。 「見せて!お!いい感じ。美女と野獣。」 「アスカ、胸をしまった方が……。」*「アスカはシンジを男として見ていない、という事か?」【ネルフ本部・食堂】 食堂でくたびれているシンジとトウジ。対してケンスケは力が有り余っている様子。 「もう帰る時間か〜。うー、もっと見学したい!」 「アスカにカメラ貸したの?」 「そうだよ。」 「壊されても知らないよ。」 「アスカって、意外と可愛いじゃん。頼まれたら断れないよな。」 「ケンスケ、お前、物好きやな。」 「なあ、シンジ。アスカを俺にくれ。」 「「えーっ?」」 「ジョーク。取るわけねえよ、シンジの女だもんな。」 「うーん……。」 何故かシンジは唸る。 【新吉祥寺サンロード・花壇の前】 「ジャーン!」 シンジの前に登場したアスカはラフな服装に着替え、手にはファーストフードのジュースとバーガーを持っていた。 「全部着替えちゃったんだね。」 「運動した後はこれよ。」 「運動って、クラブ活動かよ……。」 「なーに、ぶつぶつ言ってるの?」 「鞄に制服を押し込んだらシワシワになっちゃうよ?」 「平気ですぅ。」 と言ってジュースを飲むアスカ。 「あーうまい!」 【シンジの自宅・居間】 テレビのチャンネルを回すアスカ。 『海は蒸発した。森林は焼き尽くされた。人類は地下へと移り住んでいった。残された水と空気は365日分だった。沖田は思った。あの星へ行こう。』*「ヤマトかよ!」『耕作さん、私達もうダメね。』 『愛子さん、希望を持つんだ。』 『貴方は初芝の課長、私は銀座の女。』*「島耕作かよ!」 ※「しかも、大町愛子って超大金持ちだった筈。」『今日は万能物干し竿。PVセブンのご紹介です。古い竿とはさようなら。宇宙素材チタン合金の採用により、敷布団は3枚、掛け布団なら5枚まで乾燥できるのです。』*「すごいねー、こりゃすごいよ!」『俺は銃社会に復讐してやる。』 テレビに飽きたアスカはリモコンを置いた。 「はぁ〜、なんだかする事無くなっちゃった。ねえ、何してんの?」 「アドベンチャーゲーム……。」 「面白いの?」 「いいから黙っていてよ。」 「つまんない。」 が、アスカは直ぐに何か思いついたらしい。 「ねえねえ……。」 「邪魔しないで。」 「あー!画面に女の子出しちゃって気持ちわりぃ!うりゃ!」 「わあ!何でキーボード触るの!?」 「うりゃ!」 「わあ!セーブデータが……。」 アスカはふざけてシンジを押し倒すとその上に馬乗りになった。*「マウントポジション・エロバージョンってか?」「私が教えてあげる。これが本物の女の子よ……。」 「え……。」 アスカはシンジの上に覆い被さった。アスカの二つの膨らみがシンジの胸に押し当てられた。 「どう?」 「うん……。」 「あと6年もすると、シンジも大人になっちゃうのよね。」 「だから?」 「大人になったら、こんな悪ふざけできないよね。」 アスカはシンジの耳に熱い吐息を吹きかけた。 「くすぐったいよ。」 「14歳の男の子、フッフッフ。」 「わー!ダメ!やめろってば!」 「オーッホッホッホッホッ!」 夜のしじまにアスカの高笑いがコダマした。