鋼鉄の処女

第1章 たのしい学園生活

第1話

【第壱中学校・テニスコート裏】 
 カヲルは木の上で寛いでいた
 「選ばれし者の優越、か…。」
 「カヲル君、そんな所にいると毛虫に刺されるよ。」
 「シンジ君。放課後、研究所に行くんだろう?」
 「うん……。」
 「僕も行くよ。」
 「呼ばれたの?」
 「良かったら二人で行きたいな。」

【第壱中学校・プール裏】
 水着姿の女子がグラウンドに水を撒いている。
 *「グラウンドに水を撒くのに水着って何かおかしくないか?」
 カヲルは芝生の上に寝転びながら眺めていた。  「カヲル君、こんな所で何してるの?」  「あの女の子を眺めていたのさ。」  シンジはカヲルの視線の先にあるものを知って何故か赤面してしまう。  「エロスとは生の本能。個人の自己保存及び生殖に役立つ衝動。激しい肉体的欲求。性愛……。」  「何だか恥ずかしい気持ちになるよ。」  「校庭に立つ水着の少女。感じるものはあるかい?」  「何となく、いやらしい感じ……。」  「人はその衝動で生命の糸を紡いで来た。」  「うん……。」  「カラダの中に流れている人間の血さ。」
 *「高尚に語ってるが、ただのY談だろ。」
【ヤマノ楽器・店内】  バイオリンやヴィオラ、チェロやコントラバスといった弦楽器が展示された店内で、チェロに触れるシンジ。  「いい楽器だね、僕には勿体無い。」  「第三新東京市公会堂で行われる定期演奏会。二人で二重奏を奏でよう。僕がバイオリンでシンジ君はチェロ。」  「僕なんか無理だよ。」  「シンジ君と演奏したい。」  「でも……。」  「こういう話を知ってるかい?ピアニストは自分自身のピアノに憧れずにいられなくなる。」  「チェロはピアノとは違うよ……。」  「楽器の演奏は感情表現さ。」  「えっ?」  「人は誰でも、感情を全て、表に出す時がやってくる。」  「演奏会の二重奏か……。」  “カヲル君の誘いに応えるべきか……演奏会の舞台に立って、僕のチェロを聴かせるなんて……。”
 *「To be,or not to be…。」  ※「それが問題だ。」
【人工進化研究所・男子ロッカールーム】  プラグスーツを着込むシンジ。  “プラグスーツの素材って、薄くて裸と変わらない……。”  シンジとカヲルは等身大の鏡に全身を映した。  後ろからシンジの肩を抱くカヲル。  「カッコイイかも……カヲル君も似合っているよ。」  「僕はずっとこの時を待っていたよ。」  そう言ってカヲルはシンジを抱く力を強くした。  「人造人間エヴァンゲリオン。」  「そんなに強く抱きしめたら苦しいよ。」  「さあ行こう。天使の眠る洞窟へ。」 【ネルフ本部・C−2通路】  シンジは歩いていくゲンドウの姿を見つけて駆け寄った。  「父さん!」  「どうしたシンジ。ケージへ行かないのか?」  「……父さん、今まで悪い子でごめんなさい。これからは明るく元気な碇シンジになるよ。」  「済まなかったな、シンジ。これからは仲良くしよう。」  碇ゲンドウとその息子シンジは仲良しになった。その後木曽の山奥で樵をして、互いに慈しみ合う良い親子になったという事じゃ。めでたしめでたし……。
 *「♪ぼうや〜、良い子だ、金出しな。」