鋼鉄の巨人

最終章 また会う日まで

 *「♪また逢う日まで、逢える時まで、別れのその後は、話し〜たくない〜。」
【進水式会場】  「人類が初めて人間を作り得た事は、大災害からの復興を成し、新しい時代への幕開けを記す、大きな一歩である。感動した!」
 *「やりすぎのような気がしないでもないが…。」  ※「この首相の母親は占い師かも?」
【メインストリート・オープンカーの車上】  凱旋パレードが行われている。人々に囲まれるシンジ達。  「このパレードの趣旨は、人造人間を完成させた科学への賞賛。」  「正に平和への祈り。」  「モンスターをやっつけたお祝いは?」  「勝利の凱旋か……。」  「好戦的だと思われるより、科学の進歩を祝う方が都合がいいんでしょう。」  「まーっ、冷めた物の見方。」  「じゃ何?『敵を倒したわ!嬉しー!』とか言うわけ?ねえ!?」  「勝てばいいのよ、勝てば!素直に喜びなさいよ!」
 *「勝てば官軍、負ければ賊軍。」
 「そういう人がいるから戦争が無くならないの!」  「地球の平和、守ってんのに!仲間に裏切られた〜あ。」 【人工進化研究所・掲示板】  掲示板に張り出された一枚の紙。そこには、パイロット達それぞれの移転先が記されてあった。  「E2計画・パイロット移転先……。」  「私達、世界中へ派遣されるんだ。」  「一人ずつ、別々の研究所か。」  「莫大な予算投じてるんだぜ、1国で賄いきれないさ。」  「また引越しか。」  「しゃーないな。ま、留学みたいなもんと思えば。」  「最後はパーッといきましょ!」 【人工進化研究所・中庭】  「あー、喰うた喰うた。満腹じゃ。」
 *「余は満腹じゃ。」
 「ケーキ10個食った上にローストビーフのお代わり……。」  「ンモォ〜!」  「宴たけなわという感じね。」  「幼馴染のアスカともお別れか。」  「新しい研究所ってどんなところかな。」  すると、ワルツが聞こえてきた。  「碇くん、踊ろう。」  「え?ここで?」  「可憐な美少女の誘いを断るつもり?」  「そんなつもりは……そうだね、踊ろうか。」  「ムムムッ、負けちゃいらんないわ!相田!」  「は、はいっ!」 【人工進化研究所構内・ダンス場】  レイとシンジは身を寄せ合って踊っている。  奥でアスカとケンスケも踊っている。  「私達、もうすぐお別れね。」  「今日はいい思い出になる。」  「また会えるといいね。」  「会えるさ、いつの日か……。」  「シンジったら、あんなにくっついちゃって……。こっちだって、くっついちゃうもんね、ほらっ!」  「あうっ、大胆すぎる、恥ずかしい。」  「シンジ、見て見て!」  「アスカったら、僕に当て付けて……。」  「私とアスカのどっちがいい?」
 *「究極の選択ってか?」
【人工進化研究所・正門】  エヴァが研究所から運び出されていく。その様子を静かに見送るシンジとケンスケ。  「なあシンジ。」  「ん?」  「一つ聞いていいかな?」  「いいけど。」  「うん……。」  「どうしたの、ケンスケらしくない。」  「あのな……。」  「何?」  「なんというか……。」  「大丈夫。どんな場所だってケンスケはやっていける。頑張ろうよ!」  「違う!そうじゃない!」  「ごめん。じゃ、何?」  「……惣流を俺にくれないか?」  二人の間に一瞬の沈黙が……。  「そうか……。」  「シンジには綾波がいる。惣流は俺が……どうだろう?」
 *「ん〜〜、どーでしょう?」
【シンジの自宅・居間】  チルドレン達のお別れパーティ。最後の夜に全員はしゃぎ過ぎて、ぐったりしている。  トウジが立ち上がった。  「ワシ、ヒカリに会いに行く。皆とはこれでお別れや。」  「シンジ君、さよならは言わないよ。」  トウジに続いてカヲルも帰っていった。 【人工進化研究所上の高台】  「夜景がこんなに美しいなんて。」  「僕達はこれで終わりか。」  「ここで別れよう。」  「碇くん、一緒に行こう……。」  “綾波さんの目は潤んでいる……アスカは夜景を見たまま動かない……ケンスケは本気だ……。”  シンジは少しして、心を決めた。  「僕は綾波さんと一緒に行くよ。」  「碇くん……。」  レイは溢れんばかりの笑顔になった。  「今まで楽しかった。元気でね。」  「じゃあな、シンジ。」 【人工進化研究所・構内通路】  「行こう、綾波さん!」  「碇くん!」  手を取り、走る二人。  “この瞬間を夢見ていた気がする……。” 【砂浜】  砂浜に寝そべっているシンジとレイ。  二人きりになれるところへ行きたい、というレイの願いで二人はここにやってきたのだ。  「ありがとう……綺麗な満月ね……。」 【夜空に浮かぶアスカの笑顔】
 *「♪空を見上げりゃ、そこにある。」
 『さよなら……シンジ。』  “さよなら……アスカ。”  アスカの姿は夜空に消えていった。  「ねえ……。」  「何?」  「私が、慰めてあげる。」  レイはシンジに覆い被さると、シンジにキスした。  “光の巨人は僕の幻影だった……。”  光の巨人がゆっくりと消えていく。  「僕はこの世界で彼女と生きていくよ。」 《十年後》 【シンジの自宅・玄関】  成長し、正装した鈴原トウジが立っている。  「迎えに来たで。早よせいや。」  玄関からシンジが現われた。昔の面影は残しつつも、すっかり大人になっている。  「悪い、仕度に手間取っちゃって。今、出てくるから。」  「お待たせ。」  シンジの妻となったレイが現われた。その腕には赤子が抱かれていた。  レイは幸せそうに微笑むのだった。