鋼鉄の巨人

第七章 最後の戦い

【ネルフ本部・中央作戦発令所】
 シンジのつぶやきと呼応するかのように、ロストしていた[使徒]が一斉にその姿を現した。
 ネルフもまた、その戦いに向け、慌ただしく動き始めた。
 「セントラルドグマへ通じる全隔壁を閉鎖しろ!」
 「Eブロックの隔壁を緊急閉鎖!」
 赤く点滅する照明。警報が鳴り響いた。
 『メインシャフトを含め、Eブロックの全隔壁を緊急閉鎖します。』
 隔壁が閉まっていく。
 [使徒]の出現地点は以前ロストした伊豆諸島・御蔵島沖、衛星軌道上、足柄山の3ヶ所。
 海域にはシャムシエルとガギエル、衛星軌道上にはアラエル、そして足柄山方面にはサキエルをはじめとした4体が控え
ている。
 それぞれ出現した場所は違えど、狙いはただ一点。第三新東京市。侵攻ルートがそれを物語っている。
 「やはり、目的地はここですね。」
 解析したデータから、日向が苦々しく呟いた。
 「まとめておいでなすったか!べらんめえ!」
 *「てやんでえ、ちくしょう!こちとら江戸っ子でい!職人気質のコーナー!:デーモン小暮閣下」
 「計算が追いつきません!」  「航跡予想の計算に変更。」 【第三新東京市】  戦車の攻撃をものともせず、そのまま踏み潰してしまうサキエル。なおも進撃を続ける。 【ネルフ本部・中央作戦発令所】  機を狙っていたかのように立ち上がり、ゲンドウが声を張り上げる。  「エヴァンゲリオン、全機出動!」 【箱根・外輪山の尾根】  湖を見下ろすように出動した全機が横並びで一列に並ぶ。  レイの零号機。  シンジの初号機。  アスカの弐号機。  トウジの参号機。  ケンスケの四号機。  カヲルの伍号機。  6体のエヴァンゲリオンがこれから戦う敵を前に雄雄しく立ち上がる。  「街が破壊されていく……。」  「どないする?攻撃の命令やぞ。」  「住民は避難したから、生命の危険は無い筈。」  「我々が攻撃を仕掛ければ、反撃は充分想像し得る。」  「でも、やるしかないぞ。」  「私達の街を破壊したんだから、やられたらやり返すのよ。」
 *「目には目を、歯に歯を……天魔伏滅!」
 サキエルを締め上げて活動停止させる初号機。
 *「おお、ナガタ・ロックUだ!」
 シャムシエルを殴り飛ばして撃沈させる零号機。  ガギエル殲滅に成功した弐号機。  イスラフェルを一刀両断にした参号機。  バルディエルを殲滅した四号機。  アラエルを宇宙で殲滅した伍号機。
 *「随分と簡単に勝っていくな。」
 “変だ……あまりに簡単すぎる気もする……。”  シンジは感じた。  “来る……。”
 *「♪来る〜、きっと来る〜。」  ※「クルクルのパー!」
【駒ケ岳山頂】  光の巨人が出現した。  「光の巨人だ……。」 【異次元空間】  「おのれ、地球人め。こうなれば、私自らゼルエルを操って戦ってやる!」  突如、滲むようにして空中に出てきた光の玉がゼルエルの中に飛び込んで消えた。 【駒ケ岳山頂】  光の巨人と対峙しているシンジの初号機。  「僕に何か話しかけようとしている……。」  『シンジ!何ボーッとしてんの!』  『早よ!綾波を助けェ!ボケッ!』  シンジの視界がホワイトアウトした。  薄いもやがかかった奥に、夕闇の街が広がっている。  どこからか、ゲンドウとユイがシンジに語りかけてくる。  「シンジ……。」  「母さん、これは現実なの?それとも夢?」  「シンジはもう充分戦った……もっと楽にしていいのよ……。」  「うん。」  「シンジ……。」  「父さん。」  「これからは一人で歩いていきなさい。」  「……。」  ゲンドウとユイの優しい声に安らぎを感じ、目を閉じるシンジ。その時。  “うきゅ?起きろ〜〜!!”
 *「今の声は何だ?」
 はっと気付くシンジ。光の巨人はもういない。  レイの声が聞こえてくる。  『碇くん!碇くんってば!』  「…綾波さん!」  零号機がゼルエルの下敷きになって大ピンチになっている。  「うりゃあああああ!」  シンジの雄叫びと供に初号機が突進し、ゼルエルに渾身のラリアットを喰らわせる。
 *「WHIIIIIII!!!」
 ゼルエルは爆発し、異次元より襲来したブラックゴッド軍団は壊滅した。