【第三新東京駅】 「この町に、若き才能の集う音楽堂が所在する。」 「コンサートホールの舞台に立つなんて、胸がドキドキする。」 【国立音楽劇場・コンサートホール・舞台上】 「綾波さんが来ている……。」 「楽器の音って大きい……。」 「綾波さんが演奏を聴いている、僕のチェロを聴いている……。」 「楽器が弾けるって凄い、あの碇くんがザルツブルグの天才少年に見える。」*「天才少年はいいが、なぜにザルツブルグ?」レイは想像した。天使のような羽を広げている自分を抱き上げるシンジを。 「もし、あの服装で抱きしめられたら、全身の毛穴が開いて、体液が蒸発してしまうかも……。」*「もう少しロマンチックな言い方はできんのか?」【国立音楽劇場・ロビー】 「演奏、感動した。お花を渡そうと思って……。」 「ありがとう。」 「今日の碇くん、凄く良かった。その服もカッコイイ。」 「綾波さんも綺麗だよ。」 「碇くんみたいに楽器が弾けたらいいな。」*「♪もしも、ピアノが弾けたなら……。」「泣いているの?」 「ちょっと感じちゃっただけ。それから、お願いがあるの。」 「どんな?」 「その服、少しだけ抱きしめていい?」 「歓迎するけど……。」 レイをそっと抱きしめるシンジ。 「碇くん、汗かいている。」 「舞台は暑かったんだ。」 「薔薇の香水の匂いがする。」 「カヲル君だ。」 シンジの後ろからカヲルが現われた。 「着替え終わったら、三人で紅茶を愉しもう。」 【カフェテラス・店内】 「シンジ君のチェロは、人間の歓喜を歌い上げる為にある。」 「物心付いた時からバッハを聞いていた。今日は上手く弾けてよかったよ。」 「碇くんの紅茶、飲んでみたい。」 「僕が口を付けたカップだけど?」 「飲んでみたいの、ねえいいでしょ?」 「うん……。」 シンジは自分のカップをレイに渡した。 「……これって、誘われているサインなのかな……。」 「願いを叶えてあげよう。僕と彼女のどちらを選ぶ?」 【砂浜】 「足の裏で砂がはじけるよ!」 はしゃぐレイ。 「転ばないように気を付けて!」 「♪Rollin’ Rollin’転ばぬように、Rollin’ Rollin’気を付けて。」 「濡れてもいいの!だって碇くんと一緒にいるんだもの。」 「綾波さんは僕がいいの?」 「海に入っていると、生きている感じがする。」 「大きな波が来るよ!」 シンジが警告を発したが、結局二人は波を被ってしまった。 「濡れちゃったね。」 「この陽射しなら、すぐ乾くよ。」 上に着ていた衣類を脱いで近くにあった物干し場に吊り下げた。 「新しい自分になったみたい。海へ来てよかった。」 下着姿のレイはベンチの上で笑った。 「ずっと、こうしていたいな……。」