【人工進化研究所・自動販売機コーナー】 「碇くん。」 自動販売機コーナーでシンジが一息ついていると、そこにレイがやってきた。 「綾波さん。」 「どうかな?」 「え?」 「私のプラグスーツ。」 「似合ってるよ。」 「そう。まあ、こんなもんかな。」 「嬉しい?」 「まあね。でも、仕事だから。」 「ふーん。」 「あんまり見ないでよ。」 「じゃ、見ない。」 「この建物の中を探検してみたいな。」 「僕はここにいるから、綾波さんは好きに見学すればいいよ。」 だが、レイはそのままシンジの傍に座った。 「…探検はやめたの?」 「…道がわからないから。」 「まだ時間あるよ。行ってくれば?」 「もういいの。」 「綾波さんって変わってるね。」 「碇くんの傍がいい。」 「これから行く所は、何もかもが大きいんだ。潰されないように注意してよ。」 「大丈夫!」*「会話がかみ合ってないような気がするが…気のせいか?」【人工進化研究所・インクライン地上駅】 「はい、みなさん、隣の席を見てください。お友達は揃いましたか?」 「「「「「「はぁーい!」」」」」」*「小学生の遠足かよ!」「前方安全確認。出発進行。」*「♪運転手はミサトだ、車掌はリツコだ。」「わ、落ちていく。」 「びっくりだねー。」 「こんなん乗るの、初めてやなぁ。」 「降りる速度が速い。」 「これから起こりうる事象に興味をそそられるよ。」 「本日はゲヒルン・インクラインをご利用頂きまして、誠に有難うございます。地下900メートル、ジオフロントまでの所要時間は5分でございます。」*「♪バスガイドになったミ・サ・ト。」窓いっぱいにジオフロントの風景が広がる。 「うわっ!凄い!凄すぎる!」 「森と湖、モノレールと自動車道路、どえらい贅沢な基地やな。」 「どう、これがジオフロントよ。」 「アスカ、得意げだね。」 「ジオフロント……メモメモと。」 「人は開拓者精神に満ち溢れている。」 「地面の直径は6キロメートル。空洞の高さが約1キロ。地上で何か起きたら、みんなここへ移住するのよ。」*「何かって、例えば遊星爆弾による放射性物質汚染か?」と、モニターに伊吹マヤの顔が映った。 「ネルフへようこそ。これから皆さんはネルフ本部、地下のケージまで来て頂きます。与圧室を通過後、操縦者は実機に接触。見聞終了後、試験的な搭乗を行います。零号機、綾波レイ。初号機、碇シンジ。弐号機、惣流・アスカ・ラングレー。参号機、鈴原トウジ。四号機、相田ケンスケ。伍号機、渚カヲル。ケイジ内は安全第一で行動してください。」 【ネルフ本部・開発部ドック・与圧室】 「耳が痛い……。」 「壊れそう……。」 「おぅ、こわ!」 「エアロック?」 「楽しみだね……。」 「ドア外れそう。」 【ネルフ本部・エヴァンゲリオンケージ】 「なんて大きいんだ。これが大人達を夢中にさせる物の正体か……。」 「6機揃うと、神の存在を実感できるわね。」 「ロボットのような物は生きているんですか?」 「知りたい?秘密よ。」*「それは秘密です。」 ※「それはね…ヒ・ミ・ツ。」「人造人間エヴァンゲリオン……。」 「私にとってエヴァは良い思い出。シンジ君のお父さんと過ごした時間。」 「リツコさん、楽しそうですね。」 「夢中で駆け抜けていった。そんな感じかな。」 『赤木博士、コンソールまでお越し下さい。』 「シンジ君、またね。」 「口紅の匂い……。」*「匂いに敏感な奴だな。」 ※「匂うな…(山さん風)。」【エントリープラグ内】 「結構カッコイイかも。」 その時、レイから通信が入った。 『碇くん。』 「綾波さん、どうしたの?」 『……後で話があるの、それだけ。』 レイからの通信は切れた。 【ネルフ本部・零号機ケイジ】 ケージ前、零号機の顔の前でカメラを持ち出すレイ。 「記念撮影。」 「その為に僕を呼んだの?」 「そうよ。」 「しかもケンスケのカメラだし……。」 「相田くん、優しいの。」 「ケンスケの奴……ちょっと悔しいかも……。」 「シャッター押して。」 「うん……。」 【第三新東京環状線・人工進化研究所前】 ベンチに並んで腰掛けているシンジとレイ。 「あの……。」 「何?」 「うちの両親は研究所勤めで、帰りがいつも遅くて、僕は留守番ばかりしていた。綾波さんのうちはどうなの?」 「一人暮らしだから。」 「一人?両親は?」 「聞いてどうするの?」 「ごめん……。」 「……。」 「こういうのって、どう聞いたらいいかわからなかったから。」 「いいのよ……。」 「傷ついたの?」 (無言)*「♪ム・ゴ・ん……色っぽいね。」「碇くんってさぁ……。」 「ん?」 「惣流さんと仲いいよね。」 「アスカとは幼馴染で、一緒によく遊んだから。」 「そう。」 「アスカのお母さんも研究所勤めで忙しいんだよね。」 「……。」 「ごめん……。」 「碇くん。」 「ん?」 「私も夜一人だから遊ばない?」 「え?」 「でも、今夜はダメ。何時の日か、二人で出かけようよ。」 「うん……。」 【第三新東京環状線・車内】 「あら、お邪魔だったかしら?」 車内でシンジとレイはアスカと一緒になった。 「こんにちは、惣流さん。」*「夜だぞ。芸能人か、君は?」「アスカよ、アスカ!」 アスカとレイの間に激しく火花が散った。 「今日は楽しかったわね。なんか遠足みたいだったし。」 「転校してきたばかりで電車の乗り方まで教わっちゃった。」 「混んでいて大変だった……。」 「二人とも仲良しですこと。」 「仕事だから。」 「そうそう仕事。研究所のね……。」 「よく言うわ。」 「それに碇くんといると落ち着くの。」 「僕って癒し系。」*「自分で言うな。」電車は小涌谷駅に到着した。 ホームに降りるレイ。 「ハッキリ言ってあげようか。あんた、シンジの事が好きになったんでしょ。」 「碇くんを好きに?ま、まさか。」 「ドキドキしているくせに。」 「あ、ああ、ありえないもん!」*「ぼく、ドラえもん。」 ※「こんなの、ありえなーい。」頬を赤らめてうろたえるレイ。バレバレだった。 「恋が始まると、突き動かされるわよ。自分では止められないもの。」 「じゃあね、碇くん。」 「うん、また明日。」 レイは逃げるように帰って行った。 【シンジの自宅・シンジの部屋】 夜。ベッドに横になっているシンジ。と、地震が起きた。 地鳴りに目が覚め、シンジはあたりを見回した。 「地震だ……。」 カーテンの隙間から光が差し込んでいるのに気付いたシンジは、立ち上がってカーテンを開けた。 「眩しい……。」 窓の向こう。人型のまばゆい光が山の向こうにそびえ立っている。*「…ビッグフットみたいだな。」上空をヘリコプターなどが飛び回っている。 途端、人型の光が音を立てて消えた。 「消えた……。」 【シンジの自宅・居間】 寝付けないシンジは居間に出てきてテレビをつけた。番組の話題はもっぱら人型の光の事。 『こちら現場です。第三新東京市に現われた光の巨人は、たった今、研究所の裏手の山へ消えました。』*「光の巨人なんて言ったらウルトラマンになっちまうだろうが。」「研究所だ……。」 心配になり、電話を架けてみるシンジ。 『ただいま回線が大変混雑しております。もうしばらくしてからお掛け直し下さい。』 「研究所に電話が通じるわけないか……。」 シンジは諦めて受話器を置いた。