【第壱中学校・廊下】 次の授業は体育。シンジが廊下を歩いていると、傍の普段使ってない教室に何故か人の気配がした。 「あれ?更衣室こっちになったのかな?」 シンジが耳を澄ましてみると、中からは女子の声が聞こえた。 「なんだ、女子が使ってたのか。」 シンジは自分の教室に戻り体操服に着替えて校庭に向かった。 ちなみに体育は男女別だが2クラス合同で、男子は2−A、女子は2−Bで着替える事になっていた。 【第壱中学校・校庭】 鉄棒の傍、トウジの視線は一点に釘付け。 「ほら、見てみい、あそこ。」 「どこ?」 「転校生が飛び跳ねとるやろ。」 「綾波レイ。」 「トウジはすぐ女子の方ばかり見る。」 「むっちゃ揺れてるで、胸。」 「そーやって女の事ばかり、あーやだやだ。」 「綾波さん、こっちよ!」 「はい!」 ヒカリの声の方に駆けて行くレイ。 「なあ、シンジよう。女の胸、触った事あるか?」 「えっ?」 「惣流の胸、どうやった?」 「やめてよ、そんな事しないってば。……トウジはどうなの?」 「ワシは無い!」 「威張って言う事か?」 「ワシはあの胸の重さを、柔らかい感触を、暖かい肌を、この手の平で受け止めてみたいんじゃ…実存主義でありたいんじゃ!」*「何が実存主義だ。困ったガキだ。」 ※「キルケゴールが泣いているかも?」シンジとケンスケは呆れている。 「ハイ!保健室に呼ばれた人は?」 アスカがやってきた。 「呼ばれてないけど、さっき行ってきた。」 「身体検査とカウンセリングやろ。ワシも呼ばれたで。」 「え?何々?」 「私達は選ばれたパイロットなのよ!」 アスカは誇らしく両手を腰において宣言した。 「パイロット?」 シンジ達には何の事かわからない。 「ボクちゃん、保健室に呼ばれてない!なんで仲間外れなの!?」*「オヨビでない奴!」 ※「こりゃまた失礼致しやした、と。」まあその後、ケンスケも保健室に呼ばれて仲間外れから解消されたのであるが、その辺は省略する。 【第壱中学校・プール裏】 「碇くん。」 「綾波さん。」 「教えて。」*「♪教えて、おじいさん、教えて、おじいさん〜。」 ※「おしえて、カミタマン。」「え?」 「碇くんのお父さん、研究所の偉い人でしょう?」 「そうだけど?」 「人間を作っているの?」 「父さんとは話しないから。」 「知らないんだ。」 「……。」 「ま、いいけど。」 「あの……他の人に聞いてみるといいよ、僕はよく知らないし。」 「そうかもね。」 「僕は教室に戻るから。」 【第壱中学校・廊下】 「碇くん、ちょっと待って!」*「♪ちょっと待って、PlayBack!PlayBack!」 ※「ちょっと待って、シャワー浴びてくる、ザーッ。」放課後。シンジが帰ろうとすると、それを引き留める声があった。 「何?綾波さん。」 「あ、あのね、私引越したばっかだからこの辺よくわからないの!だからね…。」 レイは両手を顔の前で合わせた。 「お願い!研究所に連れてって!」 「僕みたいな道案内でもいいの?」 「仕事だから。」 「仕事……。」 「そう、仕事。」 その時、扉が開かれ、アスカが入ってきた。 「ちょっと、シンジは私のもの。触らないでちょうだい。」 シンジの傍にレイがいると見るや、早速食って掛かるアスカ。 「仕事だから仕方ないでしょ。それに碇くんは物じゃありません。」 「ムカッ!絶対ダメェ!」 「終わったら返す!」 そう言って、レイはいきなりシンジの手を掴むと教室から駆け出して行ってしまった。 「コンチクショウ!覚えてろ!」*「♪覚えてろ〜、なんだてめえら、いいからやっちまえ!時代劇の三大用語。」【第三新東京環状線・車内】 シンジとレイは研究所に向かっていた。だが、混雑している車内でぎゅうぎゅう詰め。 「あの、カラダくっついてるんだけれど…。」 「次のにすればよかったかなぁ…。」 「あと、どれくらい?」 「もうすぐ着くよ。」 「混んでる電車、嫌い。」 「ごめんね。」 「碇くんが謝る事じゃないわ。」 車窓から第三新東京市の高層ビルが見える。 「どこか懐かしい街……。」 レイは何故かそう呟いた 【人工進化研究所・自動販売機コーナー】 「遅いな、綾波さん…。」 プラグスーツを着たシンジはジュースを飲んでいたが、レイが気になってロッカールーム前に戻った。 【人工進化研究所・女子ロッカールーム】 「…人の気配がしない…どこか行っちゃったのかな?」 学校の教室とこのロッカールームでは防音の程度に大きく差があったのだが…シンジは中に入ってしまった。 中にはプラグスーツの着方がわからなくて首をかしげている全裸のレイがいた。 「………。」 「………。」 無言で見つめ合う二人。そして、レイの美しい裸身を見て、シンジの理性の堤防が決壊し、自制心が流れ出た。 「あ、綾波さん!!」 シンジは思わずレイを抱きしめた。 「何するの!?やめて!碇くん!」 歴史の歯車が今、音を立てて崩れようとしている。碇シンジは勢い余って美少女に手をかけた。綾波レイは人類が存続を賭けた人造人間だったのだ。平凡な中学生は思春期の突発的な行動によってその計画を危機に陥れたのだった! 【国連本部・大会議室】 「すみません、すみません……。」 「すみませんで済めば、国連はいらねえんデゲスよ!!」*「ゲス!?下衆と申されたな!!」「綾波レイは傷つき、心を閉ざしてしまった。彼女にミーの国では100億ドルの研究費を費やしているのデース。」 「グラッチェ、グラッチェ、碇シンジ君、君はどこまで汚したんデスか?」*「お前、感謝してどないすんねん!?」「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……。」 嵐の吹きすさぶ砂浜……ボロボロの茶褐色のマントを纏い、杖をつくシンジ。 シンジ「一時の気の迷いが、歴史をここまで変えてしまうなんて……。」 そして、人類は滅亡した。