ここは第二東京市のとある電気店街。 シンジ、アスカ、トウジ、ケンスケ、レイ、カヲルの六人は全機種分が同時に新発売されるゲームソフトを買いにやってきた。 シンジが買うのはPlay−Station Hyper対応。 アスカが買うのはX−BOX 360EX対応。 トウジが買うのはSEGA−Galaxy対応。 ケンスケが買うのはPC−FX Ultimate対応。 レイが買うのはNINTENDO Wii2対応。 カヲルが買うのはNEO−GEO RETURNS対応。 「みんな機種がバラバラでよかったね。」 「そうね、他のゲーム機でやりたかったら誰かの所に遊びに行けばいいんだし。」 「ソフトも一つ買えばいいし、出費も少なくていいもんな。」 「全機種持ってるゲーマナはどうすんのやろな?」 「とりあえず、どれか一つに絞って、後はオークションとかで値下げ品を買うそうだよ。」 「逆に定価より高くなる可能性もあるのに…。」 等と言いながら六人がそれぞれ買ったゲームソフトを手にして、駅前の<カリフラワー>という文字が大きく書かれたビルにある大型ゲームソフト量販店から出てくると、僅かなお金をケチって予約しなかった者達が長蛇の列を作っていた。 「おいこら、何を勝手に割り込みしとる!後から来た奴は列の最後尾に並ばんか!」 列の中に一人、明らかに周囲の若者より一回り…いや、一つ半回りは年上の男が、並んでいる友人を見つけて割り込みしようとした若者に説教していた。 「やっぱり予約しといてよかったね。」 「もしかして売り切れで買えないかもしれないのに、だらだらと並んで待ってるなんてやってられないわよ。」 「物売るってレベルじゃねーぞ!なんてな。」 「ところでさ、一般的な家庭用ゲーム機がようやく世に出たのは俺達が生まれるより20年ぐらい前だったそうだけど、人気ソフトやゲーム機を巡っていろいろ事件が起きたらしいぜ。」 「事件?一体どんな事件があったの?」 「ゲームソフト強奪事件。」 とある人気RPGゲームソフトのPart3が発売される事になり、購入する為に発売日前日から長蛇の列ができた。勿論徹夜覚悟である。そんな事が許される筈も無い小中学生達は父親に頼んで列に並んで貰ったりしていた。 そして発売日、その日にやってきて運良くゲームソフトを購入できた小学生が、高校生に恐喝されてせっかく買ったゲームソフトを強奪される、という事件が発生したのだ。その犯人が果たして捕まったのかどうか、現在も不明である。 「裏技賞金事件というのもあったそうだ。」 裏技とは、ゲーム製作会社が意図的にゲームプログラムの中に組み込んだ隠しコマンド(ゲームスタート前あるいはゲームプレイ中、またはゲームオーバー後にボタンをある順番で押せば初期設定他が変化したりする)や、プログラムのバグ(ゲームプレイ中にある場面や場所で特定の操作をすると、本来ありえない現象が発生する)等の事である。 ゲーム雑誌はゲームの内容や攻略の他に裏技を紹介したりそれをクイズ(一つだけ嘘の裏技があって、それを当てる)にしたりしていたが、読者が独自に発見した裏技の投稿には賞金を出す事もあった。 そしてある日、ゲームをしていた小学生二人がその賞金の事で喧嘩をしてしまったのだ。原因は、ゲームをプレイしていた者と裏技を投稿した者が違ったという事。そして、その喧嘩の仲裁をした担任教師は二人から賞金を取り上げてしまったらしいが、ほとぼりが冷めた後にその賞金を返却したかどうか、今となっては定かでは無い。 「他には、故障タイマー事件とか。」 あるメーカーが新規参入した際に発売したゲーム機が無償修理期間を過ぎた後に故障して動かなくなってしまい、有償で修理しなければならなくなるという事象が続発したが、どうやらそれはメーカーの策略で、製造後ある一定時間が過ぎたらタイマーが作動して故障するように仕組まれていたのではないか?という憶測がNETを飛び交ったらしい。だが、真実は闇の中に葬られたままである。 「後は、ゲーム機買占め事件とかあったな。」 ある最新ゲーム機が発売されたものの、外国人ブローカーがアルバイトを使って大量のゲーム機を買占め、外国で転売していたのだ。その為、日本では発売直後に売り切れが続出し、日本人はなかなか購入できなかった、という事態が発生したのだ。転売目的での大量買占めは所謂ダフ屋行為と同じなので違法なのだが、その後外国人ブローカーが摘発されたかどうかは未だ明らかではない。 「芸能人が昔のゲームのクリアを目指す、とかいうTV番組があったの、知ってるか?」 「それって、ゲームをプレイする事でギャラを貰ってたって事?」 「ゲームしてお金が貰えるなんていい身分やな、その芸能人。」 「あ、でも、ゲーム雑誌も実際にゲームをプレイして記事を書くんだから、別に悪い事でもないと思うけど。」 「あーあ、私達は命懸けの仕事をしてお金を貰ってるのになぁ。」 と、その時、別の店から悲鳴…いや、怒号が聞こえてきた。 「ど、泥棒〜〜っ!!」 「…言ってた傍からゲーム強奪事件?」 だが、店から出てきたのは一人ではなく三人だった。しかも全員グレートーンの全身タイツと覆面をしていた。背中には盗んだ大量のゲームソフトが詰まっているであろう大きな風呂敷包みを背負っている。 「ゲッ、あんた達はジミダー!!」 「むむ、我々の組織名を知ってるとは、何者だ!?」 「そんな事はどうでもいい!ゲームソフトを奪って一体何をする気だ!?」 「フッフッフ、この街からゲームソフトが無くなればこの街は活気が無くなり衰退する。そこに我らの橋頭堡を築くのだ。」 「相変らず、名前の通り地味な作戦やな。」 「そんな事はさせないわ。みんな、チェンジよ!」 「「「「「おう!!!!!」」」」」 六人の少年少女達は全員両腕を胸の前でクロスさせてキーワードを発した。 「「「「「「装着!!!!!!」」」」」」 その瞬間、彼らの身体は光に包まれ、一瞬で強化スーツを身に付けた戦士姿に変わっていた。 「ファースト・ホワイト!」 「セカンド・レッド!」 「サード・ブルー!」 「フォース・グリーン!」 「フィフス・ブラック!」 「シックス・イエロー!」 「全員揃って…。」 「「「「「「新戦隊エヴァンゲリオン!!!!!!」」」」」」じゃじゃーん!!!!!! ジミダー達は慌て出した。 「お、おのれ、またしても我らの邪魔をする気か!?」 「当然!」 「ぬぬう…かくなる上は…全員逃げろ!」 まともに戦って敵う訳が無いのでジミダー達は逃げ出した。 ちょうど信号が変わって車が止まったので、陸橋下の横断歩道をジミダー達は一目散に走っていく。 「こらっ、待ちなさい!」 追撃する新戦隊エヴァンゲリオンの面々。だが、逃げの一手を選んだジミダー達の脚は意外と早い。 「くそっ、どうしていつもいつも我々の作戦実行時に奴らと出くわすんだ!?」 「そんな事知るか!?」 「お約束ってやつじゃないのか!?」 等と愚痴を溢しながら必死で逃げるジミダー達。だが、その前に三人の戦士が立ちはだかった。 「そこまでよ!」 「悪事はここで行き止まり!」 「観念しなさい!」 「な、何だ、お前達は!?」 思わぬ伏兵の登場に、ジミダー達は思わず怯んだ。 「シスター・ゴールド!」 「シスター・シルバー!」 「シスター・ブロンズ!」 「三人揃って…。」 「「「ミラクル・シスターズ!!!」」」ばばーん!!! 「こんなの聞いて無いぞ。」 「と、とにかく逃げるのが先だ!」 ジミダー達はすぐ傍のゲーム販売店に逃げ込んだ。と思ったら、もう一つの入り口からすぐに逃げ出した。 「逃げても無駄よ!」 と言われても、ジミダー達は逃げるしかない。 だが、北へ進んですぐのT字路に差し掛かった時、一人の戦士が現われた。 「な、何だ、お前は!?」 「愛の戦士、キューティー・マリーさ!」しゃきーん! 彼女は光り輝く銀のサーベルを掲げて名乗りを上げた。 またも思わぬ伏兵の登場に、ジミダー達は思わず怯んだ。 「これは予想外だ…。」 「構うな!」 ジミダー達はすぐ左に曲がって逃亡を続ける。 だが、大通りに出て右に曲がろうとすると、そこには二人の戦士が待っていた。 「待っていたわよ。」 「ここから先は通さないわ。」 「な、何だ、お前達は!?」 またしても思わぬ伏兵の登場に、ジミダー達は思わず怯んだ。 「エンジェル・オレンジ!」 「エンジェル・ピンク!」 「二人合わせて…。」 「「ラヴリー・エンジェル!!」」きらーん!! 「ええい、とにかく今は後ろの奴等から逃げるのが先だ!」 ジミダー達は左に曲がり、さらにその先の大通りを左に曲がって駅方向に逃げ出した。 横断歩道を渡り、さらに前方へ進もうとするが、そうすると右には警察署がある筈…。 ジミダーの一人がそれに気づいた時、何故か傍のトラックの上から三人の戦士が飛び降りてきて前を遮った。 「な、何だ、お前達は!?」 「ソルジャー・パープル!」 「ソルジャー・ブラウン!」 「ソルジャー・クリアー!」 「三人揃って…。」 「「「トリプル・ソルジャー!!!」」」ちゃらーん!!! またまた思わぬ伏兵が登場し、ジミダー達は思わず怯んだ。 「どうなってるんだ、これは!?」 「と、とにかく逃げろ!」 ジミダー達は傍の電機量販店に逃げ込んだ。そして店内を右往左往して、路地に出て、闇雲に駆けて行く。 路地を抜けるとそこは最初の大型ゲームソフト量販店のすぐ前。 と、メイドカフェのチラシ配りをしていた三人の女のコが何事かと振り向いた。 「…もはや最後の手段だ!」 逃げ回っていい加減、体力の限界に近づいていた三人のジミダー達は、何とメイド姿の三人の女のコを人質に取ろうとした。 だが、メイド姿の三人の女のコは軽くサイドステップしてそれをかわした。 「な、何っ!?」 驚くジミダー達。 「いきなり人に襲い掛かるとは、どうやらその得体の知れない姿のとおり、不埒な心を持つ者に違いないわね。」 「その振舞い、たとえマリア様が許しても、私達は決して許しはしないわ。」 「正義の裁きを受けなさい。」 メイド姿の三人の女のコはそれぞれ胸に着けていた紅薔薇、白薔薇、黄薔薇を天にかざした。 と、突如、天空から赤、白、黄の光が降って来て、メイド姿の三人の女のコをそれぞれ包み込んだ。 その三つの光が消えると、そこには強化スーツを身に付けた三人の美しき戦乙女がいた。 「な、何だ、お前達は!?」 「バラ・イーグル!」 「バラ・シャーク!」 「バラ・パンサー!」 「三人揃って…。」 「「「山百合戦隊サンバラカン!!!」」」どどーん!!! 気が付けば、ジミダー達を取り囲む正義の戦士達は全部で18人。 「「「………。」」」 18対3。 最近の戦隊ヒーローは6人で怪人1体を倒すらしい。一見、バランス的には悪くない数字ではある。だが、ジミダー達は他の悪の組織のように強化された怪人などではないのである。 “““こ、これじゃ、集団リンチじゃ………。””” 「かかれ〜〜〜っ!」 18人の正義の戦士達に一斉に飛び掛られ、いつの間に用意したのか一本のロープでジミダー達は三人纏めてぐるぐる巻きにされて捕縛された。 「こ、降参です〜。」 「盗んだゲームソフトは全て返します〜。」 「命ばかりはお助けを〜。」 こうしてジミダー達の地味〜な悪事は18人もの正義の戦士の登場という派手なクライマックスでその幕を閉じたのであった。 「悪は滅びた…。」滅んで無いって。 「正義は必ず勝つ!」お約束だから。 「ではまた来週!」そんな締めゼリフがあるか。 「それじゃあ、最後に全員で。」 「「「「「「「「「「「「「「「「「エイエイオー!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」 終劇 「………はい、オッケーでーす。」 「「「「「「「「「「「「「「「「「「お疲れさんでした〜〜〜。」」」」」」」」」」」」」」」」」」 18人の正義の戦士達がお互いに労を労った。 「ジミダーさん達もお疲れさんでした。」 シンジが労いの声を掛けて三人の戒めを解いてやった。 「「「いや、ホントーにお疲れさんだよ…明日は筋肉痛で起きれないかもな…。」」」 三人のジミダー達はお互いに肩を貸しながら何処へと歩き去っていった。 「後はケンスケの編集次第やな。」 「任せとけって。特殊効果とか効果音もいいツール用意してあるからな。」 「期待してるからね。」 そして、映画研究部は機材の撤収を始めた。誰もがいい作品が作れた事を確信して笑顔だった。 「………はーい、カァット!!!」 今度こそ、フィルムへの撮影は終了した。 「…さて、どうだったかな、みんな。面白かっただろ。」 「よく出来てるじゃないか。」 「特殊効果とかもバッチリだったと思うよ。」 「よっしゃ、主題歌作ろうや、主題歌!地球防衛バンド、再結成や!」 カヲル、シンジ、トウジは高評価だった。 だが、アスカは少々不満顔。 「どうしたの、アスカ?」 「出演者が多すぎるわよ!18人も出てきたんじゃ全然目立ってないじゃない!」 実は、アスカはケンスケの案にイの一番で賛成したのだが、どうやらそれは自分が目立ちたかったからのようだった。 「今更そんな事言ってもしょうがないじゃん。それより相田くん、あの効果音は何?」 マナは何が気に入らなかったのか? 「ちゃらーん、って、それじゃどっかの落語家と同じじゃない。変更してよ。」 「いや、他に用意していた効果音が無かったんだ。」 「効果音ぐらい大目に見なさいよ。大体、マナの方こそ何よ、あの格好!ソルジャー・クリアって、スケスケじゃないの!」 「大丈夫、あれはちゃんと中に肌色のレオタード付けてるもん。見えそうで見えないのがエロカッコイイのよ。」 「でも、脚本にはミラクル・シスターズとかキューティー・マリーとかラヴリー・エンジェルとかトリプル・ソルジャーなんて無いようだけど?」 レイの疑問も尤もだ。 「だって、私も出たかったんだもん。」 「俺達はマナに強引に誘われて…。」 「まあ、出番がある事は嬉しいけどね。」 ムサシとケイタはそう言って頭を掻いた。 「ケイタさんが出るなら私だって…。」 マリィはそう言いながら指をモジモジ…。 「私は、ノゾミにどうしてもってお願いされて…。」 「でも、そう言ってる割にはあの時はノリノリだったってコダマお姉ちゃんも言ってたよ?」 「余計な事言わなくていいのっ!」 ヒカリは顔を真っ赤にしてノゾミを追いかける。 「私は…ケンスケくんに誘われて…二人組だったから松風さんも誘ったんです。」 「本当はラヴリー・エンジェルだけ秘密のサプライズだったんだけど…。」 「ごめんなさい、私が霧島さんに話しちゃいましたぁ。」 ネネは笑顔でペコリと頭を下げた。 「いやいや、編集は大変だったけど、おかげで俺達全員で一つの映画を作る事ができたんだ。こんな嬉しい事はないよ。」 ケンスケはそう言って笑った。 きっと、文化祭での上映の際も好評を博すであろう。 その日を待ちわびるケンスケ、そして出演者とスタッフ一同だった。 「あ、そうだ、マナはあのゲーム、どの機種用を買ったの?」 「それが…今月お金がピンチで買えなかったの、うえぇぇーん。」 ゲーマナはさめざめと泣くのであった…。 超人機エヴァンゲリオン2 「新戦隊エヴァンゲリオンvs山百合戦隊サンバラカン」―――thanks to nike. 完 次回予告!? 「お姉さん、恥かしいぃーーー!」ズドドドドドドド……。 大音響で意味不明の言葉を喚き散らしながらキーボードを叩き壊す少年を止める事はできるのか!? 新戦隊エヴァンゲリオン 次回「倒せ!キーボード・クラッシャー!!」 イスラエルでとっととスピイィンン!! あとがき