今回の緒言:カエデは空手が出来た筈 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 今日は精神強化訓練の日。 カエデの前に胴着に身を包んだアスカがやってきた。 「阿賀野三尉、今日は何をするの?」 「本訓練は精神の強化です。従って、精神集中を要する武道を行います。」 「あ、いいわね。襲われた時に身を守る訓練にもなるし。」 「そうですね。ところで、貴女は合気道が得意と聞いたけど、その腕前を見せてもらえる?」 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「阿賀野三尉も合気道ができるの?」 「ふふふっ、どうかしらね。」 二人は正座して黙礼すると、立ち上がって構えた。 アスカはカエデの構えから、それが空手だとすぐにわかった。 カエデが拳、アスカが開手。 剛と柔、だが奇しくも二人が取った構えは同じだった。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― じりじりと間合いを詰める二人。 そして、両者ともあと半歩の間合いに来た時に動きを止めた。 と、カエデはニコッと笑って攻撃しようとした。 だが、その直前にアスカが一気に間合いを詰め、機先を制した。…かに見えたが。 「あ、シンジくんだ。」 カエデの一言でアスカは気をそらされ、気が付けば目の前にカエデの拳があった。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「阿賀野三尉、ずるいわ!」 「フフッ、まだまだね。」 と笑うカエデだったが。 「…あ、シンジ。」 「え、どこどこ?」 慌ててシンジの姿を探すカエデの背後で拳を握って額に血管を浮き上がらせるアスカがいた。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 今回の結言:柔の道は一日にしてならずぢゃ