Last Fantasy of Evangelion
           第一話 シンジからシンへ




 レスト暦2514年

 シンジがこの世界に来てから14年の月日が流れていた。

 シンジはアレクセイから貰った力と前の世界で手に入れた力を制御するのにそれだけの時間を要していた。

 シンジの外見は変わっていた。力を手に入れたときに髪は蒼みがかった銀髪へ、

 右目が紅左目が蒼のオッドアイへと変わり、もともと白かった肌は雪のような白さへと変わった。

 160cmほどだった身長は180cm位に伸び、トレーニングで無駄の無いしっかりした肉体になっていた。

 それだけ変わってしまった姿と前の世界とのことを断ち切るためシンジは名前も変えた。今はシン・アダムと名乗っている。




「はぁ、まだ半分か・・・。」

 シンはため息をついた。

 その後ろには三十体のオークが倒れている。

 二ヶ月前からシンはトレーニングの場所を霊峰エクロウム山に移している。

 シンジの手には2本の剣が握られている。

 右手の剣は静かに蒼く光り、左手の剣は紅く煌々と輝いている。

 その剣はアレクセイから貰った力の一つ、『創造』の力を使って作ったものである。

 蒼い剣をAngel's tear(天使の涙)紅い剣をSword of
DESTINY(運命の剣)と名付けた。

 普段はティアとデスティニーと呼んでいる。

「疲れたなぁ・・・まったく。」

 そう言いながら振るった二刀で四体のオークが切り裂かれる。

「ここに龍帝バハムートがいるって聞いてやってきたのに・・・。オークばかりじゃないか・・・」

 そう愚痴りながらもどんどんオークを倒していくシン。

 そして最後のオークを倒すとさらに山奥へと入っていった。




 しかし、さらに山奥へ行くと突然目の前に大きな洞窟が現れた。

 注意して中に入るシン。奥へ奥へと進んでいくと突然開けた所に出た。

 目の前には湖が広がっておりその真ん中にある陸地の所に一体の龍が眠っていた。

 ゆっくりとその龍に近寄るシン。その時目の前の龍がゆっくりと眼を開け、シンに話掛けてきた。

「不思議な雰囲気を持つ人の子よ。何故この地へ来た?」

 シンはその声に答える。

「龍帝バハムートと契約をするために・・・。

 まもなく復活すると言うダインを倒すためにはバハムート・・・貴方の力が必要なんです。」

 そのシンジの言葉を聞き、龍が体を起こす。

「いいだろう・・・と言いたい所だが口だけの者に我が力を貸す事は出来ぬ。

 我が力を欲するならば我にその力を示せ!」

 その言葉とともに炎を吐き出すバハムート。シンは飛び退いて腰の剣を抜く。

「行きます・・・四神覇王流『夢幻』」

 残像を残しながらバハムートに切りかかる。だがバハムートの爪に弾かれる。

「まだ甘いな。その位では効かんぞ?」

 シンの剣を弾いた爪でシンを弾き飛ばす。

 3mほど飛ばされたが空中でバランスを取り着地するシン。

 それを見てバハムートが感嘆の声を上げる。

「ほう・・・そうでなくては面白くない。」

 さらに炎の息を吐き出すバハムート。それをシンは魔法で迎撃する。

「我が内に眠りし魔力よ、冷気となって我が敵を討て・・・『アイスストーム』!!」

 その声とともにものすごい冷気が吹き荒れ、辺り一面が凍り付く。

 さらにシンは詠唱を始める。

「吹き荒れよ、神の息吹・・・『ゴッドブレス』!!」

 それにより巨大なバハムートの体が吹き飛ばされる。

「これ程とは・・・。久々に本気が出せそうだ・・・。」

 その声は突風の中でもシンの下へと届いた。

 次の瞬間、シンの身体が洞窟の壁の叩きつけられた。

 シンの起こした突風をものともせずバハムートの羽ばたきから起こった風がシンを吹き飛ばしていた。

「どうした、人の子よ?もう終わりか?」

 その言葉にシンの眼に光が戻った。

「ボクは負けるわけには行かない。ボクも本気でいくよ。」

 シンは立ち上がり二本の剣を地面にさす。

「我が封印されし力よ・・・今こそ開放せん!!」

 そのとたん先程の力とは比較にならない力がシンから吹き出した。

 その時バハムートは有り得ない感情を覚えた。その感情とは・・・恐怖。

「バカな!我が恐怖を感じていると言うのか!!」

 そしてその恐怖を押さえつけてシンに飛び掛る。

 しかしその爪がシンに届く寸前にバハムートの右前足(手)がシンの剣に切り飛ばされていた。

 一瞬何が起こったのかわからずにバハムートの動きが止まる。その一瞬が命取りだった。

 シンは一瞬にして間合いを詰める。そしてバハムートに切りつけた。

「四神覇王流『朱雀炎舞』!さらに、四神覇王流奥義『閃空爆裂刃』!!

 全てを飲み込め、光さえ逃さぬ闇の檻へ・・・『ブラックホール』!!

 これで終わりだ、光を司りし者よ、契約に従い我が敵を滅ぼせ・・・『セフィス』!!」

 最後の精霊セフィスの攻撃が止むと、そこには立っているシンと倒れているバハムートの姿があった。

 ゆっくりと眼を開けるバハムート。そして先程とは打って変わった静かな声で喋りだした。

「これ程とは、流石だな。人の子で我に勝ったのはそなたが最初だ。

 約束の通り我がそなたの力となろう。だがその前に一つ聞きたい。

 そなたなら確かにダインを倒せるかもしれぬ。

 だがその後余りにも強いそなたを人間が恐れ、刃を向けて来た時そなたはどうする?」

 その質問にシンが真摯に答える。

「ボクは人間を信じている。でも本当にそうなった時はボクは自分からこの世界を去る!」

 その答えにバハムートはゆっくりとうなずいた。

「いい答えだ。そこまで人間の事を思っているとは・・・。そなたの名は?」

「ボクはシン、シン・アダム。」

 シンが微笑みながら答える。

「そうか。シン、我は喜んでそなたの力となろう。」

 そういったバハムートとシンは契約をする。

「我、古の方法にもとずき彼の者と契約せん。我が名はシン・アダム。」

 シンが右手をバハムートに向けながらそう言うと、バハムートも詠唱を始める。

「我、古の方法にもとずき彼の者と契約せん。我が名はバハムート。」

 バハムートが再生した右前足(手)をシンの右手に合わせる。

 バハムートの体が輝きだし、ゆっくりと消えていく。

 それに従いシンの両腕に黒い紋様が浮かび上がる。

 その紋様もゆっくりと消えていく。




「ふう、やっと終わった。」

 シンはその場に座り込んだ。そのままシンはこれからの事を考える。

(精霊達との契約も終わった。ダインが復活するまであと1年・・・。さてどうしようかな・・・)

 その時シンジは前に立ち寄った村の酒場で聞いた話を思い出した。

(「そういえばさ、ネルフ学院てなんで出来たか知ってるか?」)

(「たしか・・・力を悪用しないように教育するためだろう?」)

(「それが違うらしいんだよ。聞いた話なんだけどさ、ずっと先のことらしいが、

 あのダインが復活するらしいんだよ。それを倒すための兵士の育てる学校らしいぜ。」)

(「それってマジかよ。全然違うじゃん。」)

 大体このような内容だった。

(そうか、ボク以外にもその事を考えてる奴がいるのか、って思ったんだよね。

 ・・・そうだ、ネルフ学院に行ってみよう。何か情報が掴めるかも知れない。)

 そこまで考えてシンは立ち上がった。

「よし、うまく転校手続き誤魔化して入ろう。確か18歳は二年だから二年にして・・・と。」

 シンは『創造』の力を悪用して、なんと偽造書類を作っている。

「・・・よし、後はこれをもって学院に行けば・・・」

 学院に着くには歩いて1ヶ月もかかるのだが・・・。

「闇よ、空間を切り裂き我を運べ・・・『テレポート』」

 シンの姿が消えると後には、あらゆる所が崩壊した洞窟だけが残っていた。







 神聖ネルフ王国 王都


「久しぶりに来たなぁ、何ヶ月ぶりだろう・・・?」

 バハムートとの契約を終えてすぐに、ネルフ学院への転入手続きをするためにネルフ学院の前まで来ていた。

 そのまま門番の所へ行くシン。許可を貰うと学院長室へと向かった。

 コンコン

 ノックをする。

 すぐに中から声が聞こえた。

「入れ。」

「失礼します。」

 といって中に入るシン。

 そこにはゲンドウとユイが居た。

「何のようだ。早く言え、出なければ帰れ!」

 よく分からないことを言うゲンドウ。ユイとの二人きりを邪魔されて機嫌が悪いらしい。

「ゲンドウさん、そんな事では言いたい事も言えなくなってしまいますよ。ごめんなさいねこの人は口下手だから・・・。

 で、彼方はこの学校の生徒ではないわね。用件は?」

 ユイはゲンドウをたしなめてからシンに話しかけた。

「あっはい、転入の手続きをしたいのですが。これが書類です。」

 そう言っていかにも本物っぽく書類を差し出す。

「そうですか、ちょっと見せてもらいますね。」

 と言って書類のチェックをするユイ。

「・・・・・・はい、大丈夫なようですね。では明日から登校して構いません。学院に付いたら職員室に行ってください。」

「わかりました、よろしくお願いします。」

 シンはお礼を言って学院長室を出た。




 そのまま決めておいたコンフォート17マンションへと向かうシン。

 その途中、路地からこんな声がかけられた。

「おい、兄ちゃん。結構金持ちじゃねえか。俺たちに恵んでくんない?」

 シンが即金でマンションの部屋を買っていたのを見ていたらしい。

 その声を無視するシン。

「おい待てって。聞こえてんだろ。」

 とさらに声をかけてくる男達。

 またも無視するシン。

 すると男達の一人が肩を掴んで凄む。

「おい、無視してんじゃねぇよ!!こっちが大人しいうちに金を出せばいいものを・・・」

 男が言葉を言い切る前にシンは男を殴り飛ばしていた。

 吹っ飛ばされた男は無様にのびている。

 それ以外の男達も一瞬何が起こったのか解っていなかった。

 すぐに状況がわかると男達が切れだした。

「てめぇ、みんなこいつを殺っちまうぞ!!」

 と周りの目も気にせずに武器を取り出す男達。

 そこで始めて男達にシンが声をかけた。

「・・・君達、死にたいの?」

 その言葉にさらに頭に血を上らせる男達。

「うるせえ、死ぬのはお前のほうだ!!」

 と言って、それぞれ持っている武器でシンに襲い掛かる。

「やれやれ、仕方ないな・・・。ティア、やるよ・・・。」

 そう言いながら抜いた剣の一振りで八人いた男のうち四人を弾き飛ばす。

「なっ!!」

 と驚いている男達をもう一太刀で切り伏せる。

「みね打ちだからすぐに目が覚めるよ・・・」

 シンはそう言うとその場から去っていく。

 後には倒れている男達と固まっている野次馬だけが残った。






 レイ・ロクブンギは商店街に買い物に来ていた。

「まったくアスカったらカヲルといちゃいちゃいちゃいちゃ・・・まったく見ている方の身にもなってよ。

 と彼氏いない暦18年らしい文句を言いながら買い物をしている。」

(やっぱり私がアルピノだからもてないのかなぁ)と言うのが最近の悩みである。

 実はゲンドウが怖くてみんな近寄ってこないだけだが・・・。

「はぁ、もうこんな時間かぁ・・・。そろそろ帰ろう。」

 家に向かって歩き出す。

 その時。

「おい、無視してんじゃねぇよ!!」

 と遠くから声が聞こえた。

 その辺りには人だかりが出来ている。

(なんだろう?)

 と近寄って見ると一人の少青年が男たちに絡まれていた。

 だがレイにはその事実よ青年の外見に惹きつけられていた。

(始めて逢った・・・私以外のアルピノの人・・・)

 だがその思考に邪魔が入った。

「うるせえ、死ぬのはお前のほうだ!!」

 と男達が武器を持って青年に襲いかかった。

(危ない!!)と目を瞑った。

 次に聞こえたのは何かが弾き飛ばされる音。

 その音が二度響き、その後静かになった。

 恐る恐る目を開けると蒼い剣を持った青年と倒れている男達が眼に入った。

(す、すごい・・・)

「みね打ちだからすぐに目が覚めるよ・・・」

 そう言い残して青年は去っていった。

 その後しばらくレイは青年が歩き去ったほうを見続けていた。






 シンは少し食料の買い物をしてからマンションへと向かった。

 コンフォート17マンションに着き自分の部屋に入った。

 シンの部屋は5階の一番端の501号室だった。

 部屋はそこそこ広く角部屋なので窓も多かった。

 備え付けの家具もあり、今日から過ごすのにまったく困る事は無かった。

 夕食も終えてシンは今、風呂に入っている。

「ゆっくりお風呂に入るのはいつ振りかな・・・?

 いつもは自分の魔法で出した水で体を洗ってばっかりだったからなぁ・・・。」

 その後、頭を洗って風呂から出た。

 すぐにベットに入っる。

(二週間ぶりのベット・・・気持ちいい)

 そして一通りベットの感触を堪能してから明日の事を考える。

(学校・・・。前の世界で行って以来だから14年ぶりか・・・。

 ・・・ダインを倒すために建てられた学校・・・。きっと何か情報があるはず・・・。がんばるぞ!)

 そしてシンは眠りに入った。

 明日学校で起こる騒ぎなど知るわけも無く・・・。




                      ……to be continued






 後書きっぽい物


 ヒエー書くのって大変ですねー。

 予定通りになんて進まない進まない。 (T_T)

 勝手にキャラが動くって気持ちがわかりました。

 ホントは今回から次回予告をつけようかと思ったけど、全然ダメダメだね。

 次回からは学園物っぽくなりそうです。

 でもちゃんと魔法とかも出します。 

 次回はもっとがんばって書きます。

 だから今回はこれくらいで勘弁してください。 m(__)m

 では、続きはまた次の機会に・・・。


 Ps:前回書こうと思って書き忘れましたが、この物語はLRS(の予定)です。
   LASやそれ以外が好きな人御免なさい。 m(__)m


 さらに書き足し:魔法の属性は大体見ればわかると思います。
         わからない方がいればメールをいただければちゃんと次回から説明いたします。



 今回出てきた設定に書いてない用語


 オーク:知能は低いが複数で行動し敵と見なしたものには手に持っている棍棒で攻撃する。 

 龍帝バハムート:世界が誕生したときから生きていると言われる龍。龍帝の名に相応しい力を持っている。
         シンへの敗北がはじめての敗北である。

 四神覇王流:シンが前の世界と今の世界の知識から作り出した剣術。

 夢幻:四神覇王流の剣技の一つ。残像を残しながら一瞬で敵を切り捨てる。

 朱雀炎舞:四神覇王流の剣技の一つ。炎を纏いながら突進する。

 閃空爆裂刃:四神覇王流の奥義。閃光のような速さで敵を切り刻む。