贖罪
第5話 外


 これを読む前に、YUKIさんの表と裏を読む事を薦めます。(その方が分り易いです)

 なお、その際にYUKIさんに表と裏の感想を送ると、表と裏の進みが早くなって、これも進みが早くなりますぜ! 皆様方!



 今は朝(この世界にも、時間の流れがあるらしく朝、昼、晩の区別があるらしい)

 台所でレイはシンジの為に、朝食を作っている。
 その様子はどことなく嬉しそうだ。
 お味噌汁に入れる小ネギを切りながら、鼻歌も歌っている。

「ふぁ〜おふぁよう・・・綾波」

 そこに徹夜開けで眠たそうなシンジが来た。
 レイはチョッと驚いて、振向いた為に、手元が少しズレてしまった。

「あ、碇君、おは、痛・・・」

 指先を少し切ってしまった。

「大丈夫?!」

 シンジは慌てて、レイの元に駆け寄る。

「指が少し・・・」

 指の先が少しだけ切れて、血が流れていた。

「どれ?・・・少しだけ切っちゃったね」

 レイがコクンと頷くと、シンジはレイの切った指を口に含む。

「あ・・・」

 レイの頬が赤くなる。

「・・・一応、応急処置をしとかないとね」

 シンジがレイの指から、口を離し、空中から包帯等を出して、レイの指に巻いた。

「あ、ありがとう・・・」

「どういたしまして・・・後は僕がやっとくから、綾波は座ってて」

 シンジは微笑みながら、レイに言うと、レイは真赤な顔をして頷き、台所のイスに座る。
 その後、シンジがレイの代わりに続きをした。(とはいっても、殆ど出来てたが)

 勿論、レイの怪我を気づかったシンジが、レイに食べさせてあげたと言うのはお約束である。



「さて、特訓はどうなってるかな」

 モニター室で、シンジがレイに向って言うと、レイは顔を赤らめたまま頷いた。

「うん・・・(食べさせてもらっちゃった・・・)」

 どうやら朝食の事を思い出しているらしい。

 モニターにはゲンドウとアスカのユニゾンの特訓の様子が映った。



「きいいいいい〜〜〜〜〜〜!!!!!」

ふん、こんな小娘・・・いや、猿とあわせられる訳が無かろう。

「もう2人とも、もっとあわせてよ〜」

葛城1尉、さっさと見切りをつけてレイを呼んで来い。

「ふん!こんな愚図に合わせてレベルを下げるだなんて!そんな事できるわけないでしょうが!」
「このような我侭娘にあわせる義理など無い」
「ぬあんですってぇええ〜〜〜!!!!」

ん?蹲って床にのの字を書き始めたぞ

「・・いじいじ・・」
「見苦しい!!」
「無様だ」

ん・・・泣き始めた・・・

「葛城1尉、作戦からセカンドを外してレイをいれろ」
「何ですって!!レベルが低いアンタが外れるのが当然でしょうが!!」
「お前ではレイと合わせることはできん」
「アンタよりゃ万倍マシよ!!」

暫く論争を続けたら、突然セカンドの右足が消え、凄まじい衝撃を感じて目の前が真っ白になった。
・・・そうか・・・蹴りか・・・目に見えないとは・・・・
・・・なかなかやるな・・・ふっ・・・・



「・・・・・・・あ、アスカらしいと言うか、何と言うか(僕の最初の時より全然ユニゾンないじゃないか)」

「・・・・・・・最初から、2人とも合わせる気がない状態でやってるから・・・」

 完全に呆れている二人が居た。

「でも・・・最後の弐号機パイロットの蹴り・・・凄まじかったわ・・・人間技じゃ無いみたい・・・(私は何もしてないハズなのに・・・サルだから?)」

 レイが不思議そうに言う。

「そ、そうだね・・・(自分で身を守れるようにしたんだけど・・・少し基本能力値を上げ過ぎたかな?)」

 シンジが少し冷汗をかきながら言う。

「どうしたの?」

 レイが不思議そうに尋ねる。

「え?・・・いや、その・・・あ、あんな攻撃を受けていたら、父さんは良くても、僕の身体が大変だろうなぁ〜って・・・ほら、出会いの時も最悪だったし、今回も父さんが合わせようとしないから、僕の時よりも、アスカの攻撃が激しくなってるし、僕の肉体の基本治癒力も上げた方が良いかな?って思ってさ・・・見てない時に、アスカの攻撃で死んじゃったら、元もこもないから・・・」

 シンジは自分の失敗を咄嗟に誤魔化す為にそんな事を言った。

 まぁ、誤魔化さなくてもレイなら簡単に許してくれるだろうが、そこは男のプライドと言うか、何と言うか、あまり好きな娘に失敗を知られたくないと言う心理が働いたのであろう。
 つい、誤魔化してしまったのだ・・・まぁ、言ってる事は間違ってないが・・・

「そう・・・私も、一応、基本治癒力だけは高めておいた方が良いと思うの(シンジ君の身体に傷が残るの・・・嫌だモノ)」

 レイがシンジに向って言う。

「そうだね・・・って、基本治癒力だけを?」

 シンジが不思議そうに訊く。
 治癒力だけを上げるのは結構難しい、普通は一緒に体力や抵抗力等も上がってしまう。
 それらを上げないで、治癒力だけ上げるのは結構な作業なのだ。

「そう・・・碇君の気持ちがより解り易いと思うの・・・それに、基本を上げるなら、そうしないと・・・」

 因みに、基本とつくのは、シンジ達が一度干渉すると、その後は、変更しない限り、そのままの能力値でいるのである。
 つまり、普段は干渉したときだけ、一時的に上がるようにしているのだが、基本を上げると、そのままの能力が定着してしまう事になり、下手をすると色々と問題が出るのである。

「一応、アレの精神(魂)は大人だから・・・基本体力や抵抗力まであげたら・・・(サルの攻撃が)効かなくなるし・・・平気になって、色々と大変な事になると思うの・・・私も手伝うから・・・」

「え?・・・あっ・・・ウッ・・・そ、そうだね・・・じゃぁ、基本体力や抵抗力なんかはそのままで、基本治癒力だけ、高めておこう(あのアスカ相手にそんな事をしたら・・・)」

 シンジは一瞬、『いやぁ〜ん』な想像をしてしまい、顔を赤らめたと思ったら、次の瞬間青くなった。

「?・・・えぇ・・・じゃぁ、抑えは私が調整するから・・・」

 そして二人はゲンドウ(シンジ)の肉体の調整を始め、終ると同時にゲンドウを覚醒させた。



うむ・・・天井が見える。

「気がついたのね、頼むから、アスカにあわせてあげてよこの通り」

葛城1尉は土下座までして来たか・・・ふむ・・まあ、そこまでするのなら、よかろう。

「問題無い」

そして、始める。
むっ、体が思う様に動かん、まさかこれがトップスピードか!
シンジ!私は父として情けないぞ!



「情けないって・・・仕様がないじゃないか・・・それまでずっと、一般人だったんだから・・・習い事なんてしてなかったし・・・趣味はチェロしかなかったんだし・・・それに、あの時まで、ほったらかしだったじゃないか・・・それに、父さんは僕の身体上手く扱えてないしさ・・・僕だったら、もう少しついていけたのに・・・」

 ゲンドウの文句に、モニターを見ているシンジは逆に文句を言い返している。(ゲンドウには聞えないが・・・)

「そ、そうね・・・無責任だわ(少し、抑える力が強すぎて、治癒力以外の基本値が下がっちゃったみたいなの・・・)」

 レイは、冷汗をかきながら、シンジに同意する。



「ぬお!」

バランスを崩してセカンドの方に・・・・

「う・・うむ・・・」

む?右手に何か柔らかい感触が・・・
・・・セカンドの胸か、
もみもみ

「まあまあだな」

ん?顔が真っ赤だぞ

「くたばれええ〜〜〜!!!!!!!」



「自業自得だね・・・事故で女の子の胸を触ったら、謝らないと・・・(しかも、暫く揉んでいるし・・・それでいて、あんな事を言えば・・・)」

 シンジはゲンドウのしでかした事に怒って言う。

「そうね・・・(そう言えば・・・あの時、シンジ君も・・・・・・でも、直ぐ謝ってくれたし・・・紳士だったわ・・・それにシンジ君なら・・・今だって・・・)」

 レイは昔の事を思い出し、時折り、頬を染める・・・最後は某委員長みたいに妄想に走っているみたいだが・・・お〜い、かえってきなよ(何所から?)

 その内にダメージで気絶している(抵抗力落ちてたし、パワーUPしたアスカの全力攻撃だったし)ゲンドウはネルフ付属の病院に運ばれて行った。
 少しして、ユイが部屋にやって来た。

「あ、母さんが来たみたいだ・・・『病院に行き』になった理由を聞いて、青筋立ててる・・・当然だな」

 シンジは今度はユイのモニターを見ながら呟いた・・・因みにレイはマダ、あっちの世界にイっている(何所の世界?)



「レイ、ちょっとアスカにあわせてみて」
「・・了解、」

振り付けを覚えてから、位置について始めたは良いけど・・・
アスカちゃん飛ばし過ぎよ、そんなのついて行ける人そうはいないわよ。
・・・・
・・・・
漸くフィニッシュ・・・・疲れた・・・

「どうよミサト!!これで、サードが悪いって分かったでしょ!!」

仁王立ちで大声で・・・全く・・・それが、14歳の女の子の行動?
戻ったら、私が教育してあげる事にしましょう。

「・・葛城1尉、用事があるのでこれで失礼します。」
「ん?・・・まあ、仕方ないわね」



「全く・・・アスカは・・・この時は、人に合わせると言う事を全然知らなかったからなぁ〜・・・しかも今回はもっと酷いぞ・・・全く合わせる気が無い・・・それに何とか母さんがアスカの動きについていけるから・・・もし、このまま母さんと組む事になったら・・・」

 シンジはアスカの行動を見て、呆れるのを通り越して、心配になっている。

「でも、まぁ、母さんなら、何とか拒否してくれるだろう♪(干渉はなるだけ抑えた方が良いだろうし)」

 どうやら、ゲンドウとは違い、ユイに対する信頼は大きいらしい。

「ん?・・・あ! またリツコさんが父さんの病室に!」

 一番小さいモニターを何気なくチラッと見たシンジが慌てて言った。

「!・・・入る前に、急いで覚醒させた方が良いと思うの!!」

 シンジの叫び声を聞き、慌てて戻ってきた(何所から?)レイがシンジに言う。
 二人は完全にリツコを警戒しているようだ。

「うん! 覚醒!!」



む・・・白い天井・・病院か?
ん?赤木博士が入って来たぞ。

「ふむ・・寝ているわね」

起きているんだが・・・まあ、良い、これはチャンスだ。



「確かに・・・そうだね・・・リツコさんの真意を知るチャンスだね」

 シンジが呟くように言う。

「一応、身を守れるように、一時的に身体能力値を上げてあげた方が良いと思うの」

 レイがシンジに助言する。

「そうだね・・・(悪寒も感じるし・・・)大人を押さえ込めるくらいに一時的に大幅UP!」

 リツコの妖しさに悪寒を感じたシンジが、ゲンドウの身体能力を一時的にUPさせた。



「くすくす・・やっぱり可愛い顔ね・・・」

・・・な・・・なんだ・・・

「そして、あの性格・・・」

・・・・・・・

「ユイさん譲りの容姿に、あの人譲りの性格・・・まさに私の理想ね」

・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・

「そして、シンジ君を手に入れるために作ったこの惚れ薬で」

注射器を取り出した。
・・・・・・・惚れ薬・・・だと・・・(滝汗)

「くすくす」

シーツを跳ね上げて、視界を奪い、注射器を奪う。瞬間的に、腕を取って、押さえ込む。

「きゃ!!」
「・・・惚れ薬とは、良い根性をしているな」
「く・・目覚めていたの」

注射を射す。

「じゃあな」
「な!?」

私は赤木博士を残して、その場を去った。



「ほ、惚れ薬・・・(滝汗)」

「と、とっても危ないトコだったの・・・(滝汗)」

 二人はリツコの謎の注射の正体が分り、滝汗を流す。
 そして、ゲンドウと入れ替わるようにユイが病室にやってくる。
 因みに、ゲンドウとはエレベーターの所で入れ違ったらしい。



病院に、あの人の様子を見に来たんだけど・・・

「・・あん・・はぁ・・・んっ・・」

・・・リツコちゃん声・・・何考えてるのよ・・・・



「・・・か、母さん・・・か、勘違いしているようだね・・・む、無理無いけど・・・(何か・・・蛇の生殺しのような・・・だって、リツコさんの声に・・・綾波のぉ〜〜〜あ、当っているって!!・・・膨張してしまった・・・(汗))」

 後ろから、慌てたレイに目隠しと言うか、頭を抱えられ、モニターの声しか聴いてないシンジが呟く。
 因みに顔は真赤で、一応健康的な反応はしているようである。(詳しくは聞かないように!)

「・・・アレや司令は信用無いみたいだから・・・(碇君は見ちゃ駄目・・・私以外の女性の、更に・・・なんて・・・)」

 レイも顔を真っ赤にしている。



・・・・はっ!
私は扉を開ける。

「はぅ・・・ひ・・・んんっ、レイ?」

リツコちゃん一人で・・・

「・・一人で・・・何をやっているの・・・」
「レイ・・こっちに来て奉仕しなさい」



「「・・・・・・・・・・・」」

 リツコのセリフに絶句する二人・・・

 少しの間硬直・・・

「でぇ〜〜〜〜!!! あ、綾波?!!」

 シンジが驚きの声を上げる。

「わ、私は知らない!・・・やった事も無いわ!」

 レイはシンジの頭を解放して、慌てて言う。

「で、でも・・・」

 画面を見たシンジは更に動揺を隠せない。(何が映っているか訊かないように・・・(爆))
 しかし、レイは本当に潔白である。
 なぜなら・・・

「た、多分、あの薬の所為なの・・・あの所為で、誰でも良くなっているの・・・そ、それに、そう言う相手は私じゃなく、司令か、伊吹二尉が・・・」

 自分の無実を証明する為に、レイがある意味、ネルフの秘中の秘(でも、公然の秘密になってたりして・・・)を言う。

「そ、そうだったの?・・・父さんとの事は、知っていたけど・・・(皆、噂してたし、あの教えてくれた技術部の男の人は、ふざけて、『・・・だから、将来のお義母さんによろしく』なんて、言ってたし)でも、マヤさんともって・・・(それって・・・)」

 シンジがレイに訊く。

「その・・・何回か・・・見たと言うか、聞いたの・・・その、赤木博士と伊吹二尉が・・・一緒に仮眠室に入って・・・その・・・あぁ言う声が聞えてきたの・・・あの2人の・・・が・・・で・・・更に・・・その・・・で・・・それから・・・」

 レイは、顔を真赤に染めながらも、無実を証明する為にリツコとマヤの『ぱぉ〜んで、ズド〜ンな』事情をシンジに必至になって話す。
(ごめんなさい・・・詳しく書いたら、期間限定の隠し部屋行きになるモノで・・・)

 勿論、聞いている(当然、モニターもチラチラと見ている)シンジは真赤になって、鼻の穴にティッシュを詰めているのはお約束なのである。

「だ、だから、赤木博士は、ネコ好きなの・・・でも・・・私は・・・」

「うん、うん、綾波が、そんな事はしないって信じているよ、うん(うぅ〜でも、のぼせちゃうヨ〜)」

 必至に、身の潔白を証明しようとするレイとそれを聞きながらも、ついモニターに目と耳が言ってしまうシンジ・・・多感な青少年である。

 そうこうしている内に、リツコはユイのスペシャルなテクニック(笑)により、落された・・・(何所へとは聞かないように)



「はぁ〜〜〜、一体どうなっているのよ・・」

今、リツコちゃんは、ベッドで寝ている。
・・・・気が重いわね。
異様なくらい感じてたし・・・

「・・ん、んん・・・」

目が覚めた様ね。

「・・・・レイ〜!!」
「きゃっ!」

いきなりリツコちゃんが抱き付いて来た。

「ん〜〜

な、何で頬を擦り付けるのよ!!

「レイちゃん、可愛ゆい

・・・・・・・・な・・ど、どうなってるのよ・・・

「うふふふふ

取り敢えず落とす。



 兎に角、ユイが再び、リツコにスペシャルなテクニック(笑)をふんだんに使い、リツコを再び、そして今度こそ、暫く動けないようにする為、徹底的に落とした。

 その様子を呆然として見ていた二人は、慌ててユイ用とリツコ用のモニターの電源を落す。

 それから、暫く硬直気味であった。

「(・・・あぁすると女の人って、喜ぶのかな・・・綾波も・・・はぁ! 何を考えているんだ・・・僕は・・・でも、綾波に・・・・・・)」

「(・・・・・・男の人にはどうするのかしら?・・・それが分かれば・・・碇君と・・・)」

 お互いをチラチラ見ながら顔を赤らめている。(暴走するなよ・・・くれぐれも)
 ど〜も、今回のユイ行動は、多感な青少年少女の精神を持つ二人には、かなりのアレな教育になっているようだ・・・(あ、悪影響になるかな?)

 一方、ユイはと言うと、碇に連絡し、今後の使徒戦を理由にゲンドウとアスカのユニゾン作戦続行と2人の同居に関しての指示をだし、更に、ある程度の飴は与えておこうと、食事の約束をしていた。

 しかし、シンジ達は今だお互いを恥ずかしそうにチラチラと見ていた。

「・・・えぇ・・と・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

 二人はマダ、あのショックから立ち直っていないようである。

 仕方ないので、唯一映っているゲンドウの方にシーンを移す。



「暴行とは良い根性をしているな」
「この変態が!!天誅よ!!」
「うう〜〜」

口論をしている横で葛城1尉は泣いている。暫く口論は続く。
・・・・・
・・・・・
むぅ・・しまった、ほれ薬、このセカンドに使ってやれば良かった。

「分かったわね!!」
「わからんな」
「きいいいいいいい〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」
「しくしく」



「わ!」「キャ!」

 アスカの雄叫び?で我に返る二人。

「あれ?・・・どうしたんだろ?」

「?・・・よく分らない・・・」

 とりあえず、二人はゲンドウのモニターを注意して見る事にした。



電話が鳴った。
ゆっくりと起きあがって、葛城1尉は電話を取った。

「はい・・・」
「はっ!?、い、碇司令!!な、何か!!?」

何?奴か

「は、はい、はい・・・は・・・ええ〜〜〜!!!」

何かあったのか?

「し、しかし、碇司令、アスカとレイのユニゾンは成功します」
「は、はい・・た、確かに・・・」
「し、しかし・・・」
「は、はい・・・それは・・・」

何の話をしているんだ?

「で、すが・・」
「・・・畏まりました・・・」

葛城1尉は、電話を切って、まるでこの世の終わりでも来たのかと言うような、大きな溜息をついた。

「・・・二人とも・・・碇司令からの直接命令よ」
「何よ?」
「ユニゾンは貴方達二人でやれって・・」
「な、なんですってぇ〜〜〜〜!!!!」



「そうだね、ユニゾンは、相手の事を考える事を教えるにはいい訓練だからね・・・」

 シンジはウンウンと頷いている。

「そうね・・・(碇君の苦労・・・少しは理解できるかしら?・・・出来なければ救いようが無いわ・・・)」

 レイは少し心配しながら呟いた。



「要するに・・・貴方達二人が協力できれば、連携プレーなどが可能になるから総合戦力が大幅に上がる。だから、その訓練も兼ねて・・」
「嫌よ!!大体、連携プレイ?ふん!笑わせるわね!!こんな奴足を引っ張る事以外できないでしょうが!!」
「・・・それから・・・この作戦失敗したら・・二人のチルドレン資格取り消すって・・」
「ぬあああああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜んんんんでえええええええすうううううってぇええええ!!!!!!!!!!!!!」

ぐお・・・鼓膜が破れるかと思った・・・
・・・・・
・・・・・
・・・・・

「あわせなかったら殺すわよ」

・・・目が据わっている・・・これは拙い・・・取り敢えず、素直に頷いておこう・・・
・・・・・・
むう・・・体がついていかん
こけた。

「きいいいいいい〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
「どぶこふぅ!!」


ぐ・・・ぐお・・・
・・・・・
・・・・・



 アスカがゲンドウに対して行った猛攻を、二人は呆然として見る

 ゲンドウが気絶した後も、何度も踏付けている。

「・・・碇君、何時もあんなだったの?」

 レイが恐る恐る尋ねる。

「え、い、いや、僕の場合、あんまり反抗しなかったから・・・ストレートくらいで終ってるよ・・・踵落としと平手打ちをして気絶させた後、あんなに踏み付けるような事までされた事ない・・・(と思う)」

「そう・・・耐久力・・・少し上げた方がいいかしら・・・(惨いわ)」

「そ、そうだね・・・少しは肉体的耐久力を上げた方がいいね(可哀想だし)」

 二人は初めてゲンドウに同情した。(お、恐るべし! 恐るべし!! アスカ!!!)



・・・良く生きているものだ・・・本当に・・・

「何この程度でたおれてんのよ!!」
「・・・貴様からの攻撃によるダメージだ・・・」
「ぬああんですぅってえええ!!!!」

ぎゃ、逆切れ・・・



「そ、そう言えば、母さんはどうしているのかな?(もうやってないよね・・・)」

 アスカの攻撃に少しビビッたシンジが、レイの方を見て言う。

「見てみましょうか・・・(流石に、終っているはず)」

 レイも流石に見るに耐えないらしい。

 二人は恐る恐るユイのモニターの電源を入れる。

「少し・・・良く分らないね・・・」

 シンジが呟く。

「記録を少し巻き戻してから、見てみましょうか?」

 レイが訊くとシンジが頷いたので、少し巻き戻す。

 チョッと巻き戻しすぎて、ユイが解毒剤を生成する前にリツコを落す瞬間が映ってしまい、再び真赤になる二人・・・(ユイさん・・・程々にね・・・もう遅いかもしれないけど・・・)



解毒剤を生成して投与した後、食堂に向かった。

「おお、レイ!良く来たな♪」
「・・・」

取り敢えず席につく。
司令は嫌われているのか周りの席には誰も座ろうとはしないわね。
まあ、もう良いか・・・久しぶりに、魚介類くらいは食べたいわね。
取り敢えず、お気に入りのシーフードピザ、10年経ったけど味の方はどうかしら?
・・・・・
・・・・・
美味しくない



「そう言えば・・・あそこのって、全然美味しくなかったよね」

 シンジが思い出したかのように言う。

「えぇ・・・」

 レイも同意する。

「何故だか知ってる?」

 シンジはレイに尋ねた。

「確か・・・赤木博士・・・とは言っても、あの若い方じゃなくて、【赤木ナオコ】バーさんと、あの時、司令だったアレが、自分達の研究費等の使い込みの為に(だったかしら?・・・噂で聞いた理由は)、予算が足りなくなったから、自分達があまり利用しない食堂の材料費から人件費まで、予算を殆ど削ってたらしいけど」

 レイはネルフ台所事情を話す。

「赤木ナオコさんて?」

 少し冷汗をかきながらシンジが訊く。

「赤木博士の母親でバーさん・・・化粧も凄く濃かった」

「綾波・・・」

 シンジは冷汗をかきながらも、微笑みながら、レイに呼びかける。

「何?」

「余り、そう言う人にバーさんって、言わない方が良いよ(気にしてる年頃のハズだし)」

 シンジが優しくレイに言い聞かせるように言う。

「そうなの?」

「うん、そうだよ、気を付けないと、首を絞められちゃうよ」

「え・・・あ・・・うん、気を付ける」

 レイは何か嫌なことを一瞬思い出し、冷汗をかきながら頷いた。

「でも、色々と削ったのか・・・(それじゃぁ不味くてあたり前だよ・・・もしかして、あの時、綾波があんまり食べる事に興味が無かったり、偏食気味だったのはその所為か・・・全く・・・)」

 シンジは、ゲンドウの(発案者はナオコらしい)身勝手な政策に少し怒りを感じた。



「・・食堂の経費削ったわね」

司令は跳び上がらんばかりにビクッとなった。

「・・職員に快適な食事を提供する事によって意欲を生み出す・・・分かってる?」
「う、うむ・・・も、勿論だ」

汗びっしょり

「じゃあ、どうすれば良いのか、分かるわね」
「う、うむ・・・任せておけ」



「流石、母さん・・・食は人間の三大欲求であり、楽しみの一つだからね・・・これを満たす事が出来れば、色々と作業効率も上がるんだよねぇ〜」

 元主夫だったシンジはユイの行動を誉める。

「・・・今なら、碇君の言う事、よく分る気がする」

「綾波・・・」

「碇君のおかげ・・・」

 レイはシンジに寄り添う。
 中々いい感じだ・・・
 二人は(アスカの制裁の終わった)ゲンドウの方を見る。



連日地獄なのだが・・・・


・・・そう言えば・・・シンジは、こんなきちがい猿・・・・いや、きちがいゴリラと一緒に住んでいたんだったな・・・

うむ・・・・・・

因果応報・・・自業自得なのか?


・・・・・ふぅ・・・・
・・・やるしかないか・・・・



 ゲンドウは、アスカと暮らしていく内にシンジに対して、同情するようになり、己が業に後悔をするようになっていったようである。

「・・・どうやら、少しづつ上手くいってるようなの・・・」

 レイがシンジに寄り掛ったまま、シンジに言う。

「そ、そうだね・・・(綾波って・・・柔らかいんだよなぁ〜・・・は! 駄目だ、落ち着け! 落ち着け!)」

 シンジがレイの体温を感じながら言った。(どうやら、今回のユイさんの行動の影響だな)

「そう言えば・・・ねぇ、碇君・・・」

 レイはモニターのアスカの様子を見ながら、思い出したかのように言う。

「なんだい?」

「何故、セカンド(猿人)は名前なのに、私(ヒト)は名字なの?」

 少し潤んだ瞳で見ながら、レイが尋ねる。

 現在、ゲンドウは、アスカから『サード』と呼ばれているが、あの時、シンジの方は『シンジ』と呼ばれており、シンジもアスカの事を『アスカ』と呼んでいた事を、連想で思い出し、羨ましくなったようである。

「え?・・・そ、それはそう呼ぶようにアスカに・・・もしかして、綾波も、名前の方で呼んで欲しいの?」

 途中で、ハッと気付いたシンジが訊くと、レイは恥かしそうに頷く。

 因みに、モニターの方では、特訓、最後の夜、等々、観念した(何に?)アスカが屈辱に耐え、ゲンドウに動きを合わせてた為、初めてユニゾンが上手くいっていたが、アスカの方は、ユニゾンの特訓の真意を全く理解せず、逆にゲンドウを恨んで居るようだった。

 で、シンジ達はと言うと・・・

「そっか・・・・・・・(かぁ〜〜)・・・・・・・じゃ、じゃぁ、れ、レ、レレレ、レイ!

 シンジが真赤になって、恥かしそうに一生懸命レイの事を名前で呼ぶ。

「は、はい・・・碇君」

 レイも恥かしそうに言うが・・・

「だ、だめだよ・・・綾な・・・いや、れ、レイも、その、あの・・僕の事、名前で呼んでくれなくっちゃ」

 シンジが赤くなりながらもレイに言う。

「う、うん、いか・・・いえ、し、シ、シンジ・・・君・・・(かぁ〜〜)

 レイが一生懸命、真赤になりながらシンジを名前で呼ぶ。

「う、うん・・・れ、レイ」

「は、はい・・・し、シンジ君」

 お互いに何度も名前を呼び合っている。(初々しいねぇ〜)

 その頃、流れているモニターでは、アスカが無理してあわせた事を理由に、ユイがゲンドウとアスカの同居続行の理由にすることを碇に告げて、碇がそれをミサトに指示していた。

「そ、そう言えば・・・あっちはどうなったのかしら・・・シンジ君(いか、いえ、シンジ君と名前で呼び合えるなんて・・・な、何だか・・・夫婦みたい・・・)」

「そ、そうだね・・・見てみようか・・・レイ(・・・綾、いや、とうとう、レイと名前で呼び合うようになるなんて・・・な、何だか・・・夫婦みたいだ・・・)」

 暫く呼び合った後、戻ってきた二人は、自分達の仕事を(ユニゾンで)思い出し、モニターを見る。

 未だテレがあるようだが・・・



作戦は成功した。

「ふぅ・・・これで、セカンドと漸く離れられるな」

・・・・
・・・・
・・・・
葛城1尉のマンションに呼び出された。

「・・なんだ?」
「今後の作戦上の遂行を考え・・・貴方達二人には引き続き一緒に暮らしてもらいます。」
「・・・なにぃ!!」
「えええええええええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」



 アスカの絶叫が響いた。

「・・・兎も角、上手くいきそうだね・・・レイ」

「えぇ・・・シンジ君・・・これはかなり良い手だと思うの・・・(あのパワーUPして、赤い猿人になった赤毛ザルと暮せば、いくら、アレでも、シンジ君の気持ちが、分っていくと思うの)」

 そして、少しの間沈黙が続く・・・

「きょ、今日はかなり遅くなったし、そ、ソロソロ寝ようか・・・レイ・・・(な、何か恥かしいな)」

「そ、そうね・・・ソロソロ寝ましょうか・・・シンジ君・・・(何か、新婚夫婦の初・・・きゃ!)・・・

 二人は恥かしそうに手を繋ぎ、寝室に行った。

 その夜・・・中々寝付けなかった二人が、お互いについ、ある事を思い出してしまい、そして、お互いに何をしようとしたかは・・・ココでは秘密であり、それがほぼ同時だった為、お互いを恥かしそうに見つめ合い・・・その後、何をしたかは、超一級の極秘である。

 因みに、次の日は・・・寝室から出てこなかった事を追記しておこう。



あとがき?

とりもち「まぁ、多少強引な展開でしたが・・・ドウでした?」

レイ「・・・や、優しかったの」(両手を頬に当てて恥かしそうに言う)

とりもち「それは良かった・・・(シンジ君、成長したな)」

レイ「でも・・・これ、落ちないの」(大きな布を持っている)

とりもち「そうですねぇ〜・・・新しいのに換えたらどうです?」

レイ「でも・・・(絆・・・)」(名残惜しそうにその布を見る・・・赤い点があるような)

とりもち「そっちは記念に取っておけば良いんです・・・大事に保管して」

レイ「・・・そうする」(丁寧に折りたたんでいる)

とりもち「では、私はそろそろ、YUKI さんのトコに行きますので・・・」

レイ「あ、これを持っていくと良いの」

とりもち「これを?」

レイ「えぇ・・・」

とりもち「レイちゃんは?」

レイ「シンジ君が呼んでるから・・・」

とりもち「ハイハイ、頑張ってね」

レイ「ぽぽぽぽ


あとがき
アスカ(こそこそ)
YUKI「・・何をやっておられるので?」
アスカ「くすくす、まあ、いずれ分かるわよ」
YUKI「はぁ・・・」
アスカ「くすくすくす」
とりもち「やあ、YUKIさん」
YUKI「あっ、とりもちさん」
アスカ「死ねぇ〜〜!!!とりもちぃ〜〜!!」
アスカ「スイッチ、オ〜ン!!」
YUKI「どあ!高圧電流か!!」
とりもち「ふふふ」
アスカ「な、なんで!へ、平気なの!?」
とりもち「ふ、レイちゃんから借りた長靴とカッパのおかげ」
とりもち「効かんわ〜!」(がしっ)
アスカ「ぐべべべべべべ!!!」
アスカ「・・・なぜ・・・」(パタ)
とりもち「一応、外側には流れてるんよ、未熟者」
YUKI「あぁ・・・危険だから、私には近付かないでね」
とりもち「う・・・回避する事しか考えてなかった・・・」
とりもち「私も未熟だったな・・・てな訳で、電流が消えるまでその辺を歩いています・・・」(とぼとぼ)
YUKI「今、とりもちさんは危険だから、皆に注意しなくては!」
アスカ「くぅ・・・とりもちに復讐するアイデア募集・・・」
アスカ「あて先はYUKIにでも出しといて・・・きゅう・・・」(気絶)
・・・・・
・・・・・
???「風邪引くぞ、」
パサ・・・アスカに毛布がかけられる。


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