ネオエヴァ11

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                             アダムの行方、それぞれの思惑?・・・




 新横須賀港

 弐号機が陸揚げされている。

 数人の屈強な海兵達に囲まれて、引き攣った顔の加持が、黒服の男達に引き渡される。

 その後、少し経ってから、シンジ達やミサト達が降りてくる。

 シンジ達を迎えに来のは、リツコとマヤとマコトだった。

 リツコは、ある程度安定期に入ったので、多少、出歩く事を許可されている。

 シゲルは、黒服の連中と加持を先に連れて行った。

「あぁ、そうそう、相田君のカメラとディスクは、一旦全部預かるわね」

 マヤが笑顔でそう言った。

「え〜・・・な、なんでですか?」

 嫌そうにケンスケが言う。

「検閲を一度通さないと、色々と問題が出るの・・・
 それともなに? 変なモノでも撮った?」

 マヤが笑顔で訊く。

「相田・・・渋ると、痛くない腹を、オヤジさん共々、また探られ、
また、オヤジさんに怒鳴られるぞ・・・そしたら、今度こそ全て没収じゃないのか?」

 シンが呆れたように言う。

「いぃ!・・・
 は、はい! これで全部です!」

 ケンスケは慌ててカメラの機材や、自分の分の魚や切り身ごとマヤに渡そうとする。

「ケンスケ、その発泡スチロールの箱はお土産の生ものお魚だろ・・・
 この場で見て貰って、返して貰いなよ・・・」

 シンジが呆れたように言う。

「あ、そうなの・・・じゃぁ、一応、そっちはこの場で見せてくれれば良いから」

 そう言って、マヤは中身を軽く見せて貰い、魚は返した。

 そして、カメラ機材は、ケンスケ自身がマヤの車に運んでいる・・・

「やれやれやな・・・」

 トウジが呟く。

「お帰りなさい・・・どうだった?」

 リツコが訊く。

「ドイツ支部の支部長が、プライドの塊で、目先も見えない大間抜けと言う事が、
よっくわかった」

 シンがそう言った。

「ところで、アスカがこっちに来ないのは?」

 リツコが不思議そうに訊く。

「あはははは・・・嫌われちゃったかな」

 シンジが冷や汗をかきつつ言った。

「まぁ、後で(シンジ君の)報告書を見せて貰うけど・・・
 じゃぁ、あっちはミサトと一緒でいいのね」

「まぁ、俺達とは暫く顔を合わせたくないだろうからな・・・」 

 シンがそう言った。

「じゃぁ、帰宅組の男の子達は私の車にね・・・
 マヤには一応、本部であの子のカメラ関係をを調べて貰うから、
アスカとミサトは日向君に任せていいかしら?・・・
 あっちは本部に行かないといけないから」

「はい、分りました・・・じゃぁ、赤木博士は、そのまま直帰で、どうぞ・・・
 後は僕達がやっときますんで・・・」

 マコトはそう言って、アスカ達の方に行った。

「じゃぁ、皆、行くわよ」

 シンジ達は、リツコの大きめの車に向かった。





「ま、兎も角、後は私に全て任せておけばイイのよ!
 パイロットの希望って事で、上申すれば、司令だって、無下には出来ないハズよ♪
 あんな連中の言う事を聞く必要なんかないんだから♪」

 ミサトは上機嫌で、アスカに言っていた。

「え、えぇ・・・そうね」

 実は、シンジ達がいなくなった後、ミサトは落ち込んでいるアスカに近付いて行き、
また色々と吹き込んだらしい・・・

『あいつ等は、貴女の操縦技術に嫉妬して、貴女を責めた』だの、
『戦闘に、多少の犠牲は付き物だから、気にする必要はない』だの、
都合のいい事を言って・・・

 自分の手駒にする為に・・・

「どうしたんです?」

 そこに、マコトがやってきて訊いた。

「べつにぃ〜♪」

 ミサトは上機嫌でそう言った。

「あれ?・・・そう言えば、加持さんは?・・・あれ?」

 アスカが、そこで初めて、加持が居ない事に気付いて、周りをキョロキョロ見ながら訊いた。

「あ、加持一尉は、チョッと所用がありまして、先に行きましたが・・・
(アレは、連行と言った方がいいかも)」

 マコトは冷や汗をかきながらそう答えた。

「じゃぁ、私達も、本部に行きましょう♪」

 ミサトは上機嫌で言った。

「じゃぁ、こちらに・・・」

 マコトは車に案内する。

 この後、自分が運転すると言うご機嫌なスピード狂のミサトに車をまかせて、
マコトとアスカは、ある意味、地獄を見たと言う・・・





 その頃・・・司令執務室

 そこには、ゲンドウ、冬月、加持が居た。

 加持にいたっては、厳重に拘束されているが・・・

「い、いやはや・・・は、波乱に満ちた船旅でした」

 冷や汗をかきつつ加持がそう言った。

「・・・そうか」

 ゲンドウが冷たく言った。

「い、行き成り使徒が襲って来るとは・・・」

「その為の最強のパイロットシンと、有能な指揮官シンジと言ったはずだったな・・・」

 ゲンドウの目は、かなり鋭い。

 逃げ出した事と、アダムを落とした事を、思いっきり責める目線である。

 勿論、冬月も似たような目で睨んでいる。

「い、一応、付近にブイはありますし、
トランクには発信機がつけてありますので・・・」

 言い訳をするように加持が言う。

「キミは・・・使徒の襲来の対処や、(表向き)委員会の計画を遂行している・・・
 このクソ忙しい我々に・・・ワザワザ、サルベージしろと言うのかい?」

 冬月が訊く。

「は、はぁ・・・(汗)」

 加持は引き攣ったまま、そう答える。

「しかも、早々に行なわないと、拙い事も判っているな・・・」

 ゲンドウが言う。

「はぁ・・・(汗)」

 加持の冷や汗が一段と酷くなる。

「しかも、何時、次の使徒が・・・急いで引き上げねば、サードインパクトが・・・
 更に、UNには極秘裏にしていたからな・・・これも極秘裏にするしかあるまい・・・
 UNには頼めない・・・だったら、何とかこっちで人員を割いて行なうか、委員会に頼むか・・・」

 冬月は、冷や汗を流しながら言う。

「・・・我々には余計な予算はないのだぞ・・・
 今もギリギリでやっているんだからな・・・」

 因みに、【アダムの幼体】は委員会とゲンドウの密命で、加持が運んで居たのである。

 つまり、委員会の了承の元の移動だったらしい。

 まぁ、そうでなければ、ワザワザ、アダムの波動により、
使徒の襲来を呼び寄せる事を警戒し、海路を使い、弐号機や太平洋艦隊の護衛まで、
つける事はなかったのであろうが・・・
(弐号機だけなら、キャリアーで運べば良いモンね)

「太平洋のど真ん中・・・しかも、対流が酷く、下手をすれば・・・
 その水圧により・・・」

 ゲンドウは難しそうな顔をする。

「中のモノは、消滅だな(そうなっていれば、逆に、委員会の計画も潰れ、助かるが・・・それは先ず無いな)」

 冬月も難しそうな顔をしている。

「い、一応、対核仕様のトランクですので・・・(滝汗)」

 加持は顔を青くして言う。

「だから、消滅しない可能性が高いと・・・だから、尚更、拙く、時間も無いのだろう・・・
 本能で所在の判る使徒と違って、我々は、その有効範囲の狭い発信機を手掛かりに、
探さねばならんのだから」

 片手で頭を押さえながら、冬月が言った。

「・・・もう良い・・・キミの相手をしているヒマはない・・・
 暫く、準備しておいた極上の部屋で、じっくり休んで居たまえ」

 因みにその部屋は独房と言うのだが・・・

「わ、分りました・・・」

 そして、黒服達が呼ばれて、加持は引き摺られて行った。

「拙いな・・・」

 ゲンドウが、何時ものポーズをとりながら、冷や汗をかいている。

「どうする?・・・このままでは・・・
 委員会に引き上げさせるにしても、アレが再び、こちらに来るとは限らんぞ・・・
 それに、次の使徒が目標を変え、海中でサードインパクトを起しかねないしな」

「しかし・・・今は、そこまでの人員を」

 プ〜ルル、プル、ル、ル、プ〜ルル・・・・(水戸黄門テーマと思って)

 2人が頭を抱えていると、行き成り、冬月の携帯が鳴る。

「誰だ?・・・この忙しい時に・・・」

 冬月はそう言いつつ、携帯をとる。

「誰かな? 今、私はいそ・・・ん?・・・
 おぉ! シンか・・・いや、そんな事は無いぞ」

 不機嫌そうだった冬月の声が行き成り良くなる。

「うむ、勿論、これは、特殊スクランブル回線だから、盗聴の心配は・・・
 あぁ・・・なに?・・・例のブツ?・・・な、なんと?! 本当なのか?!・・・
 あぁ・・・わかった・・・その件についても相談しよう・・・
 ん、あぁ、分っている・・・あぁ・・・じゃぁな」

 冬月はそう言って、携帯を切った。

「朋意君からか?・・・どうしたのだ?」

 ゲンドウが、まるで全ての問題が解決して、スッキリしたような顔の冬月に訊く。

「アダムのサルベージは、委員会に依頼してもかまわんようだ・・・」

 さっきとは違い、落ち着いた様子で、冬月が言う。

 どことなく微笑しているのは気のせいではないようだ。

「なに?!」

 ゲンドウが驚いた顔をする。

「詳しい事は、後でシンが来て説明してくれる・・・」

 冬月がそう言う。

「朋意くんが・・・そうか・・・なら、大丈夫だな・・・
 そうなれば、今回の事は即座に委員会に報告して置こう・・・
 で、あの大ポカをやらかしてくれた二流の三重スパイ加持はどうする?」

 ゲンドウの顔も先程と違い、落ち着いたものに変っている。

「その件について、相談したいそうだ・・・」

「そうか・・・では、暫くそのままだな・・・
 では、委員会に今回の失点の報告を入れる・・・
 大慌てでやらないと逆に疑われるからな」

 そう言って、ゲンドウはキールとのホットラインの回線を開き始めた。

 極秘裏に運ばれていた【アダム】が、諜報部員であり、
ゼーレのスパイ(スズ)でもある加持のミスにより、太平洋のど真ん中で、
ロストした事を、ワザワザ、報告する為に・・・





「これで良いか」

 車に乗る前にシンがどこかにかけていた携帯を切った。

「どうしたの?」

 シンジが、近付いてきて、不思議そうに訊く。

「ん?・・・あぁ、預かりモノは無事に受け取った事をね・・・
 なるだけ早く届けて欲しいらしいから、俺は、本部に一旦寄ってから、帰るよ・・・
 だから、俺は本部に向かうマヤさんの方に便乗させて貰う事にする」

「あ、僕は?」

 シンジが尋ねる。

「あぁ、報告は明日で良いらしいし、届けモノは、俺だけが行けば良いから・・・
 お土産を持って先に帰っててくれ・・・ナマモノだし」

「うん、わかったよ」

 シンジはそう言って頷く。

「ついでに、検査の終わった相田のカメラ機材も、受け取って、
今日か、明日にでも返してもらえるようにしてやるよ」

 シンは、ケンスケに向かってそう言った。

「あ、サンキューな・・・」

 ケンスケは驚いた顔をしたが、素直にそう礼を言った。

「じゃぁ、お土産の方は頼んだ」

 そう言って、シンはマヤの車の方に行った。

「じゃぁ、帰りましょうか・・・
 鈴原君達も、ウチのマンションの傍で良い?」

「は、ハイ! かまいまへん!」

 何故かトウジは気をつけの状態で、返事をする。

「は、はい、お、おねがいします」

 ケンスケも慌てて、そう答えた。

「あ、そう言えば、皆は?」

 シンジがリツコの車の方に行きながら訊く。

「え、夕方頃に、一旦、皆で家に来るそうよ」

「へぇ〜そうなんですか」

 シンジがそう答えると、トウジは心配そうに魚の入った箱を見ていた。

「あ、お魚は大丈夫よ、ウチには大きな冷蔵庫が二つもあるし・・・
 小さいのも片方は、確か殆ど空だから」

 リツコが微笑みながらそう言った。

「ほうでっか・・・ほいだったら、ワイはミカを待って、一緒に帰るかの」

 トウジは安心したように、そう言った。

「俺も、一緒にいるかな・・・オヤジも帰りが遅いだろうし・・・」

 ケンスケも便乗する。

「じゃぁ、ついでに、ケンスケの分は、煮物とかにしてやろうか?」

 シンジがケンスケに訊く。

「え?・・・良いのか?」

「まぁ、どうせ、色々と作る気だったし、ついでだよ」

「サンキュー♪」

 そして、シンジ達はリツコの運転する安全運転の車に乗って、帰って行った。





 司令執務室

「そう言う事ですので・・・セカンドチルドレンは、私にお任せください・・・」

 上機嫌のミサトの声が響いてた・・・

「・・・ほ、本当に、それが惣流君の希望なんだな・・・(なんと言う事だ・・・)」

 冬月が、渋い顔をしながら言う。

 ゲンドウは、いつものポーズでミサトとアスカを睨んでる。

 いや、実は、ただ、行き成りの予定外の事で、思考が停止し、
呆然としているだけだが、アスカにはそう思えた。

「は、はい・・・(汗)」

 青い顔のアスカは冷や汗をかきながら頷いていた。(ミサトの運転の所為?)

「はい、エヴァはパイロットのメンタリティが重要です」(わかっとったんかい!)

 ミサトはアスカを援護?するように言う。

「望まぬ指揮官の元では、実力を発揮できません・・・
 然るに、私はセカンドチルドレンの惣流さんとは、ドイツにいた時に面識が・・・」

 ミサトが、わかったような事を言いながら、説得をしていた。

 ミサトにとっては、上手くいけば、念願の使徒戦の指揮が取れると言う事であり、
それは、心の奥底から湧き上がる何かを満たす事につながる為、
力の入れようが違っていた。

 ミサトの熱の入った弁舌が暫く続く・・・



 暫くして・・・

「・・・再考して置く・・・今は下がれ」

 ゲンドウがそう呟くように言った。

「い、碇・・・」

 冬月が驚いたように呟く。

「では、セカンドチルドレンが気持ちよく戦える為に、何が最も大事か、
良く御考えの上での判断をお待ちしております」

 ミサトは(不気味な)笑みで、そう言った後、アスカを伴って出て行った。

「良いのか?・・・碇」

 ミサト達が出て行った後、冬月が訊く。

「・・・あそこで私が無理に言っても、結局は彼女・・・惣流君と他の子供達の間に、
大きな溝しか作らないだろう・・・
 良くも悪くも、彼女以外のチルドレンは、全て私関係だ・・・」

 シンジ、レイは子供・・・シンは・・・何だろね・・・(娘婿?)

「しかし・・・どうすると言うのだ?」

「・・・・・・(汗)」

 暫く、ゲンドウと冬月が悩んで居ると、秘書から、シンが来た事が告げられる。

「即座に入れてくれ」

 ゲンドウがそう言うと、ドアが開き、シンが入ってくる。

「どうしたんだ?・・・葛城作戦部長が、異様な顔で、不気味に笑っていたが・・・」

 シンが不思議そうに言う。

「じ、実はな・・・」

 冬月が、事の次第を説明した。



「・・・と言う訳で、どうするべきかを迷っているんだ」

「なるほど・・・」

 説明をきいていたシンが腕を組みながら、考え込む。

「シンは、どうするべきだと思う?」

 冬月が訊いて来る。

「・・・仕方ないなぁ〜・・・それなら、したいようにさせるしかないだろう・・・」

「「はぁ?」」

 シンの答えに、ゲンドウと冬月の目が点になる。

 実は、2人はてっきりシンが、アスカを説得をしてくれると思っていたのだ。
(チョッと・・・他力本願だよ・・・それ・・・)

 今までの経緯から見て、使徒に対するミサトの指揮能力は、
お世辞にも高いとは言えず、低い・・・いや、皆無としか思えない・・・

 それなのに、シンの答えは、これから仲間になるであろうチルドレンのアスカを、
平然とそんな人物に、任せると言うのと同じなのである。

 それは、無謀を通り越して、見捨てたように感じるからだ。

 いつものシンと比べると、『あんまりと言えばあんまりである意見』と、
思えるのだ・・・

「いや、しかしだな・・・それは・・・」

 冬月は言葉に困っている。

「一度くらいは、経験させた方が良いと思ってね・・・あの2人には・・・」

 シンがそう言った。

「どう言う事だ?」

 ゲンドウは、少し怪訝そうな顔をしながら、訊く。

「あの2人は、ある意味、俺達に敵意のようなモノを持っているし、
戦いをゲーム感覚でやっている感じだ・・・
 それが、ドイツの教育の所為にしろ、ゼーレの仕業にしろな・・・」

「「確かに・・・(あの支部長が、彼女(アスカ)にどんな事を吹き込んだか、予想が・・・)」」

 シンがそう言うと、2人は頷く。

「それに、司令の命令で、無理矢理、こちらの言う事をきかせるのは、
可能だろうけど・・・」

「確かに、キミ達が手を回したと思われて、惣流君との間に、確執が生まれるだろう・・・
 それはわかっているから、出来ないのだが・・・しかし・・・」

 ゲンドウが難しい顔をしながら、そう言った。

「そう・・・だから、今後の為にも、今は、あの2人には思うがままに、
させるしかない・・・」

 シンはそう言った。

「しかし・・・そうなると、あの葛城君の性格や能力上、惣流君に皺寄せが・・・」

 冬月が顔を顰めながら言った。

 確かに、かなり来るだろう・・・

「ただし、チルドレンは、自分で指揮官をかえれる事にすれば良いと思うんだ・・・
 そうすれば、一度でも、作戦部長の無謀な指揮を経験すれば、
やっていけないと思うハズだろう・・・
 あの資料を話半分にしたとしても、あの年でドイツで大学を卒業した程の才女が、
義理だけで、あの作戦部長の下に居る事を良しとはしないだろう・・・命がかかってるし・・・
(アレは、ドイツでは、指揮下にはいりたくない指揮官No.1だったらしいからな)
 無理矢理でなく、自分の意思でかえるのなら、文句は出ないだろう・・・」

「しかし・・・大丈夫か?・・・下手をすると・・・」

 ゲンドウは心配そうに言う。

「一応、俺達も、フォローするさ・・・
 まぁ、意地でもかえないようだったら、ある条件を出して、エヴァから降りて貰う」

「「ある条件?」」

 ゲンドウと冬月が訊く

「あぁ・・・【惣流キョウコ=ツエッペリン】をサルベージすると言うな・・・」

 ガタ!

 ゲンドウは驚いて立ち上がる。

「か、可能なのか?!・・・
 彼女は、ユイとは違い、
魂の一部と肉体を失っているんだぞ!」


 そう、中途半端に取り込まれた為、キョウコは、魂の大部分を弐号機の中に、
取り込まれてしまった。

 その為に、精神異常者のようになってしまって、自殺してしまったのだ・・・

 つまり、弐号機の中には、確かに、キョウコの魂の大部分があるが、逆に言えば、
既に、一部の魂と、肉体が無いと言う事である。

 ゆえに、完全に取り込まれていたユイの時とは違い、
サルベージは不可能だと思われていたのだ。

「おそらく・・・ドイツ支部のデータを覗かせてもらったが・・・
 条件をそろえれば、可能だと思うな・・・
 ユイさんの時と違い、弐号機は常に彼女の魂と共にあった・・・
 確かに、魂の一部は欠けていただろうが・・・
 逆に、彼女と共に居た為に補完で来ている可能性が高い・・・肉体の方は・・・
 封印していたレイちゃんの素体を利用させて貰うしかない・・・だろう」

 シンはそう説明した。

「レイの・・・素体を?」

 ゲンドウが驚いたように言う。

「あぁ・・・魂の欠片をレイちゃんに戻した後、あのままにして置くのは、
どうかとも思ったけど・・・
 処分するのもためらわれたから、現状維持のままだったよな・・・」

 シンが、少し辛そうに言う。

「あぁ・・・確かに・・・」

 ゲンドウは頷く。

「そうか・・・彼女の素体を・・・
(お前も・・・辛いのだったな・・・その事に触れるのは)」

 冬月は呟くように言う。

「・・・しかし・・・レイには何と?」

 ゲンドウが訊く。

「その時が来たら、俺が自分で説明し、説得する・・・よ」

「良いのか?」

「あぁ・・・お互いに避けては通れない道だろうかなね・・・」

 シンが少し辛そうな顔をする

「そうか・・・」

 ゲンドウも、辛そうな顔をした。

「ところで、そうなると、葛城君が、暴走しないか?」

 冬月が心配そうに訊いてくる。

「そうなれば、あの作戦部長を配置換えにする・・・もしくは、戦自かUNに叩き返すか、
クビにする良い口実を作れると思わないか?」

 シンがそう言った。

「しかし、そうなると・・・」

「おやっさんも言っていただろう・・・
 ココに、直接使徒と戦う関係の場所にいたら、彼女は目の前の事身勝手な復讐しか、
考えられず、周りを巻き込んで潰れてしまうと・・・
 だったら、別の視点から、人類を守る事の意味を考える機会を与えた方が良い・・・」

「それでは、彼女自身が潰れてしまう可能性が高くないか?」

「厳しい言い方かもしれないが、その時はその時・・・
 俺は全能でも、万能でも無いんだからな・・・
 しかし、もしもの時の為に、考えて居る事はある」

「何だ?」

 ゲンドウが訊く。

「あの間抜けなスパイ加持だよ・・・」

「「あれか?」」

 シンの答えに、ゲンドウ達は驚いた顔をする。

「あぁ、あの2人は、その昔付き合っていたんだろう・・・
 それに、何だカンだ言っても、惹かれあっているようだし・・・」

「あの男を、彼女の支えにするのか?・・・復讐心の代わりに・・・」

 ゲンドウが本当に難しそうな顔をする。

「一応、そう言う事になるかな・・・難しいけど・・・」

「しかし、危険過ぎないか?」

 冬月がそう言った

「あの男がスパイをやっている理由は知って居るだろう」

「あぁ・・・」

「まさか・・・」

 ゲンドウが頷き、冬月が何かに気付く。

「それをエサに、他の2足を完全に脱がせるか、ダミーにする」

「で、出来るのか?」

 ゲンドウが不安そうに言った。

「それはわからないけど、出来る限りの事はするさ・・・
(アレの性格上、難しいな・・・何だカンだと言って、勝手な行動をとりそうだし・・・)
 まぁ、もしもの時は、それ相応の対処を取らせて貰うけど・・・」(ヤル気か?)

 そう言ったシンの目は、何かを決意している目だった。

「そうか・・・では、彼の処遇は、朋意一佐に任せよう」(何時の間にか出世?)

 ゲンドウはその目を見て、真剣な表情でそう言った。

「は!」

 シンはゲンドウに敬礼する。

「では、葛城君の方はどうするのだ?」

 冬月が訊いて来た。

「・・・全チルドレンは有事の際以外では、自分の指揮官を選び、
変える事が出来るようにする・・・
 そうすれば、あの娘が、彼女の指揮下から離れたい時は、自由にかえられる」

 ゲンドウがそう言った。

「・・・何故、ワザワザそんな風にまどろっこしくするのだ?
 どうせ、惣流君以外は、シンジ君の指揮下から離れないだろうが、
葛城君がチョッカイをかけて来るぞ」

 冬月が不安そうに言った。

「下手な暴走を起す被害が出る前に離す為と、ゼーレだな・・・」

 シンが呟く。

「わかるか・・・」

 ゲンドウがニヤリとする。

「?・・・どう言う事だ?」

「つまり、『チルドレン全員から、そっぽを向かれるような者には、指揮は出来ないし、
今までの行動上、作戦参謀としても、使えない・・・計画の妨げにしかなら無い』と、
言って、彼女を解雇、もしくは別部所に飛ばすんだろ・・・」

 シンがそう言った。

「成る程・・・」

 冬月が納得した顔で頷く。

「ところで・・・朋意君・・・例のブツは?」

 ゲンドウがそう訊いて来た。

 確かに、アレはかなり重要なモノである。

「あぁ、ここだ・・・」

 シンが、背負っていたカバンから、ある包みをとりだし、中身を出す。

「チャンと、硬化ベークライトで固められているが、生きているぞ・・・
 全ての元凶・・・欲にまみれた身勝手な老人達の暴走の発端・・・使徒のもう一つの源・・・」

「あの第一使徒・・・アダムだな・・・」

 冬月がそう言った。

「あぁ・・・その本体だ・・・」

 シンがそう言った。

「本体?」

 冬月が不思議そうにそう言った。

「あぁ・・・残りの部分は、他の使徒を産み出す為に、別にしてあるんだ・・・
 これは、人類補完計画の要となる部分、切札とも言えるモノだ・・・
 本来なら、手放したくは無かっただろう・・・
 しかし、成長が奴等の想像より、早過ぎた為、地下のアレより、呼び寄せる波動が、
強くなりかけていたので、あいつ等はココに運ぶのを、良しとしたんだろう・・・
 こちらに来ないと、被害が自分達の所で出るからな・・・
 まぁ、奴等は、被害が自分達のところで無いなら、良いらしいから、日本で行ってるんだが・・・」

 シンがそう言った。

「そうか・・・そうだろうな・・・(奴等は基本的に、差別主義者だからな・・・)」

 ゲンドウは頷く。

「(そう言う裏事情もあったのか・・・だったら、頼まなくとも、自動的に来る事になったのか)
 で・・・どうするんだ?」

 冬月が訊いて来た。

「まぁ、ゼーレを誤魔化す為にも、同じ波動だけだす装置を作って、
あの位置に置き、これ(アダム本体)は、俺が処分しておくよ」

「で、出来るのか?」

 ゲンドウが驚いたように言う。

「あぁ・・・」

 シンは頷いた。

「分かった、任せる・・・」

 ゲンドウはそう言った。

「そう言えば、今、あのトランクの中には、何が入っているんだ?」

 冬月が疑問に思って、シンにそう訊いた。

「あぁ、あの中か・・・もう無いと思うぞ・・・」

 冷や汗を流しながらシンが言った。

「?・・・どう言う意味だ?」

 ゲンドウが訊く。

「いや、既にかなり離れたし、念の為にスイッチを入れたから、
海中で爆発したハズだし・・・」

 シンが言い難そうに言う。

「「はぁ?」」

 首を傾げる2人・・・

「いやぁ〜最初っから、こんなアクシデントトランクを紛失するような事があるとは思ってなかったから、
他人が大怪我をしない程度で、トランクが爆発するようにしておいたんだ・・・
(あの三重スパイは多少の怪我をするかもしれんかったが・・・)」

 シンがあっけらかんとそう言った。

「「・・・(汗)」」

 その言葉に冷や汗を流す2人・・・

「勿論、爆発させるのは、ココに運んでくる前に、だったんだけど・・・
 まぁ、結果オーライと言う事で・・・」

 シンは少し引き攣った笑みでそう言った。

「まさか、シンは最初っから、加持君をハメる気だったのか?」

「・・・・・・(汗)」

 そのシンの言葉に2人は冷や汗をかく。

「まぁ、一応・・・何せ、奴は自分の能力を過信し、更に自分の自己満足の為に、
トリプルスパイをやりつつ、本命の気を引く為とか、情報を得る為とか言いつつ、
多くの女性達を、喰いモンにしていやがったからな・・・
 それ相応の罰が必要だろう・・・」

 どことなく怒った様子で、シンが言った。

「(・・・う〜む・・・朋意君に、あの加持の淫らな交友関係の資料を見せたのは、早計過ぎたかな?・・・
 いや、奴の性癖上、そうしないと、レイやユイが危ない目に遭うかもしれんし・・・)」

「つまり、シンは、最初から、彼にお灸を多少すえる気だったと・・・
(まぁ、彼は何だカンだ言いつつ、情報を得る為だけや、自分の快楽の為だけに、
女性を食い物にしていたことも書いてあったしな・・・後、弱みに付け込んだりして・・・)」

 因みに、その報告書を書いたのは、加持に彼女を寝取られた男や、
娘に手を出された男が書いたらしい・・・(そ、それは・・・(^-^;))

 まぁ、大袈裟になっているだけで、少なくとも一部はその通りなのであろう・・・多分・・・

 戦自や国連の女性仕官達や、それに政府秘書達と、そう言う関係があるらしいし・・・

「確かに、あの男の能力と行動は、我々にとって、目に余る可能性が高い・・・
 そうなる前に、奴にかなりの弱味を作らせ、その行動をある程度、
我々がコントロール支配できるようにしようとした朋意君の行動は、
間違ってないだろう・・・
(そうだ! 下手をしたら、ユイやレイ達にも被害が来るかもしれんかったのだ)」

「あぁ・・・なら、あえて何も言うまいな・・・
(一応、ネルフ内の女性にはそれとなく注意を発しておくか・・・)」

 ゲンドウと冬月はそう言った。

「わかった・・・じゃぁ、俺はこれで帰るよ・・・
 アイツは数日閉じ込めておくべきだろうな・・・」

 シンがそう言った。

「その方が、いいだろうな・・・」

 冬月は頷く。

「あぁ・・・何時もすまないな・・・」

「俺に謝るよりも、早くレイちゃんに『お父さん』と呼ばれるように、
頑張って精進しろよ・・・」

 シンはそう言った。

「だそうだぞ・・・碇」

 冬月も突っ込む・・・

「う・・・(汗)」

 冷や汗をかくゲンドウ・・・

「じゃぁな・・・」

 シンはそう言って出て行った。

「・・・そう言えば・・・ユイ君達は、今日は何を買いに行ったのだ?・・・
 一般家庭レベルでは、結構な金額が動いたらしいが・・・」

「・・・知らんが、レイの為と聞いている・・・それに、七桁にはおよんでいない・・・
 許容範囲だ・・・(レイの貯金だけでも十二分以上にある)」

 少し、沈黙が続く・・・

「・・・そう言えば・・・ユイ君は『かわいい孫を早く見たい♪』とか言ってなかったか?」

「あぁ・・・若い内なら、『孫に【お姉さん】と呼んでもらえるかも知れない』とも、言っていたな」

「「・・・・・・・・・」」

 再び沈黙が続く。

「シンにそれなりの忠告をしてなくて良かったかな?」

「問題無い・・・」

「そ、そうなのか?(シンは結構、アレなんだぞ)・・・
 やはり、まだ早いだろうから・・・少し忠告を・・・」(アレって?)

 ゲンドウの言葉に焦る冬月は、シンの後を追おうとするが・・・

「・・・冬月先生・・・」

 ゲンドウが声をかけて止める。

「なんだ?」

 ニヤリとするゲンドウに、冬月は焦る。

「あの2人の間に生まれる子供は、かなり可愛いと予想出来ませんか?」

「む!」

 ゲンドウの呟きに、何かを想像する冬月・・・

「孫とは・・・可愛いものですよ・・・たとえ、何人いても」

「だ、だがな・・・」

 理性を総動員して(何故?!)、冬月が何かを言おうとするが・・・

「シンは、貴方の息子、もしくは、孫のような存在でしょう・・・」

「そ、そうだ、だからこそ・・・」

「やはり、冬月先生は、呼ばれるとしたら、『お爺ちゃま』・・・ですかな・・・」

「!!!」

 そして、その日、帰宅時間になるまで、
冬月が司令執務室から出る事は無かったらしい・・・

 冬月・・・墜ちたな・・・(爆)

                                 続く?





あとがき・・・

さて・・・次回、お待たせ、鈴原ミカちゃん(鈴原(妹))が登場予定!

ヒカリちゃんの最大のライヴァルですからねぇ〜(何の?)

え?・・・アスカ?・・・まぁ、もっと頑張りましょうって、事で・・・
(まぁ、あのお約束のイベントの為の試練が始まるし・・・)

まぁ、確実に順位は上がってます・・・

この調子で行けば・・・おっと、これ以上は一応中立の私からは・・・

では、次回をお楽しみに・・・



<デビ・トリの秘密の部屋>

デ「む〜」

鐘「どうしたんですか?・・・師匠?」

デ「いや、票の集計で、困った事が出て来てね」

鐘「困った事?・・・アスカの順位が上がったとか?」

デ「いや、確かに、それも(爆)困った事だが、もっと、深刻なやつだ」

鐘「どう言うモノです?」

デ「アンチ・票だ」

鐘「え?」

デ「つまりだな・・・マイナス票なんだ」

鐘「あぁ、等々来たんですか・・・」

デ「ウム・・・約3名に来ててな・・・本体の奴は一応、認めないらしい」

鐘「そうなんですか・・・」

デ「集計が面倒になると言って・・・(0以下になる存在もいるし)」

鐘「そうなんですか・・・(汗)・・・で、誰にきているんです?」

デ「主にミサトと、ケンスケと、アスカにだ・・・」

鐘「・・・・・・あ、アスカにも(笑)」

デ「ウム・・・結構来たらしいぞ・・・しかし、本体は、マイナス票は認めず、
 『他のキャラに入れてくれ』と言っ書いてた」

鐘「そうなんですか・・・」(残念そう・・・)

デ「まぁ、その代わり、上位者にかなり入ったがな♪」

鐘「おぉ! で、現在のトップは? ヒカリさんですか? ミカちゃんですか?」

デ「それは次回のお楽しみだ♪・・・しかし、本体メ・・・
  マジでアスカとの約束のイベントをやるらしい」

鐘「なんですか?」

デ「アスカとシンジが急接近するシナリオらしい・・・」

鐘「ま、マジですか?!・・・」

デ「マジらしいぞ・・・(汗)」

デ&鐘「う〜ん・・・」

 そして、デビ・トリと鐘護は考え込んでいた・・・(何故?)






アスカ「とりもちの奴、まあ漸くって感じねぇ…」
アスカ「でも、途中で止めたりとかしたら地の果てまででも追ってて殺すからね♪」
アスカ「まあ……今はいいとして…な〜〜んかあいつら気になるわね…
    何か手を打っておいた方が良さそうね…」
アスカ「……ぶつぶつぶつぶつぶつぶつ……」
シンジ「な、なんか、アスカが独り言を…」(汗)
レイ 「最近はいつもの事よ」
シンジ「…そうかなぁ?」
アスカ「にしても、加持さんが何で滅茶苦茶なことになってんのよ〜!」
レイ 「貴女…加持1尉が好きなの?」
アスカ「加持さんはアタシのあこがれの人よ」
レイ 「そう…加持1尉とラブラブになりたいのね」
アスカ「そんな誘導したって無駄よ、アタシはシンジ一筋なんだから
シンジ「あはは」(苦笑)
レイ 「……」
アスカ「それに…加持さんは、あんな……はぁ……」(わざとらしいほど盛大な溜息)
レイ (ぎゅっと拳を握る)
レイ (とりもち、弐号機パイロットが虜になるくらい加持1尉を魅力的にするのよ
    そうすれば…)
アスカ「な〜んか企んでない?」
レイ 「いえ、気のせいよ」
シンジ「でも…とりもちさんって加持さんのことも嫌いなのかな?」
レイ 「二人の間で何かあったみたいよ」
シンジ「あ、そうなんだ」
アスカ「まあ、とりもちだからねぇ〜」
シンジ(どういう意味なんだろ?)


加持 「やれやれ…こうなったか…」
リツコ「ずいぶんと大変みたいね」
加持 「まあね」
リツコ「でも、暫くおとなしくしているんじゃなかったの?」
加持 「それなりにおとなしくしてるさ」
リツコ「でも、通用していないようね」
加持 「そうみたいだが…いや、ひょっとしたら…と思うとぞっとするけれどね」
リツコ「確かにそうかもしれないわね」
加持 「ま、ほとぼりが冷めるのを待つのは慣れてるからな」
リツコ「あら、慣れているって言うことは、あれは本当のことなのかしら?」
加持 「さあてね、御想像にお任せするよ」
リツコ「まあ私にとってはどちらであっても構わないけれどね」
加持 「そうかい」
リツコ「ええ、」
加持 「ところで、この後ちょっとどうだい?」
リツコ「遠慮しておくわ」
加持 「なんだい、つれないなぁ」
リツコ「未だ少し仕事が残っているというのもあるけれど
    …さっきからこわ〜いお姉さんがこっちを見ているからね」
加持 「へ?」
ミサト「………」
加持 「や、やぁ」
ミサト「はぁ…」(溜息)
リツコ「じゃあ、私はお先に失礼するわね」
加持 「あ、ああ、又な」
ミサト「火遊びも程々にしとかないとホントにやけどするわよ」
加持 「…心得ておくよ」
ミサト「そう…ところで、加持君も随分酷い目にあってんのねぇ」
加持 「葛城ほどじゃないけどな」
ミサト「体験してみる?」
加持 「そうだな…葛城と一緒なら…それも良いかもしれないな」
ミサト「そ…マスタ〜何か持ってきて〜」
加持 「ま、いつまでも辛い時が続くって事もないだろ、のんびりと待てばいいさ」
ミサト「そうかもしんないわね」
加持 「とりあえず、俺も飲み直すかな」