09





 ブリッチ

 ココに来るまでに、シンとアスカが、ケンスケの大はしゃぎブリに呆れた為か、
2人の間にあったある種の緊張はなくなっていた。

 そして、先ず、大人の・・・と言うか、
ミサトがしゃしゃり出て、艦長と交渉を始めた。

 最初に身分を証明する為に、IDを見せるが、BWH、体重、年齢、『階級』のところが、
マジックで黒く塗りつぶされている。

「オヤオヤ、ボーイスカウト引率のお姉さんかと思ったが・・・
 どうやら、それはこちらの勘違いだったようだな・・・
(フン、自分の身分証に、このようなマネをしおって・・・偽造とか言って、追い返してやろうか)」

 艦長は嫌味ったらしく、ミサトに聞こえるように、副長に言った。

「ある意味、そうかもな・・・しかし・・・引率とは違って、居るだけ邪魔になるかもな」

 シンが小さい声でボソッと言う。

「あはは・・・それは・・・否定出来ないね(汗)」

 シンジもボソッと言う。

 因みに、相変わらず、ケンスケがその周りで、はしゃぎながら、
カメラを回しているので、2人の会話は、ミサト達には聞こえていない。
(聞えていたら、大変だったな)

「ご理解いただけて、幸いですわ・・・艦長」

 ミサトは嫌味を無視してそう言った。

「いやいや、我々も久しぶりに子供達の子守りが出来て、幸せだよ・・・
(このアマネルフ所属でなければ、即座に追い返してやるモノを)」

 艦長が皮肉を言う。(一応、体面があるのね)

 その後で、ケンスケはうろつき回り、ビデオを回している。

 副長とシン、シンジ、トウジの四人は、それを見ながら、冷や汗を流している。

「「「(連れてくるんじゃなかった)」」」

 シン達三人シン・シンジ・トウジの考えは、珍しくぴったり一致していた。

「この度は、エヴァンゲリオン弐号機の輸送援助、ありがとうございます」

 ミサトと艦長はケンスケを完全に無視して、会話を進めている。

 対した精神力?である。

「フン、我々国連軍は、何時から宅配屋に転職したのかな?」

 艦長が、副長に訊く。

「え・・・あ、はい、ぼ、某組織が結成された後だと思いますが・・・(汗)」

 副長はケンスケに気をとられて居たので、少し反応が遅れる。

「宅配屋だって・・・」

 シンジが呟く。

「おいおい・・・護衛じゃないのか?」

 シンがアスカにだけ聞こえるようにボソッと言う。

「フン、護衛に決まっているでしょ!・・・
 弐号機の重要性を考えれば!

 アスカがシン達に言う。

 アスカの声は艦長たちにも聞こえている。

 おかげで、さっきの嫌味の意味が無い。

「・・・お、玩具ひとつ運ぶのに、大そうな護衛だよ・・・
 太平洋艦隊、勢ぞろいだからな!

 艦長が気を取り直して言う。

「エヴァの重要度を考えると、足りない位ですが・・・」

 そう言いつつ、ミサトは、自分の身体をパンパン叩きながら、何かを探す・・・

 それから、ある事を思い出し、シンの方を見る。

「・・・あの、書類を出してもらえます?(そう言えば、私が持っていたんじゃなかったわ・・・)」

「・・・コレだな(シャシャリ出る位なら、最初から言て、受け取っとけよ)」

 呆れ顔のシンはそう言って、カバンから、ある書類を取り出して、ミサトに渡す。

「なんで、子供の方が持っているのかね?」

 それを見ていた艦長の嫌味がくる。

「(汗)・・・こ、この書類にサインを・・・」

 ミサトは書類を艦長の方に見せる。

「・・・まだだ!
 エヴァ弐号機及び同操縦者は、
我々がドイツ第三支部より、本艦隊が預かっている!
 キミ等の勝手は許さん!

 書類に目を通した艦長は、ミサトに怒鳴る・・・その横では・・・

「なんでアンタがそんなモン書類、持ってんのよ?」

 アスカがシンに言う。

「・・・お前、ドイツで、あの葛城三尉と暫く一緒に居たんだろ・・・
 わからないのか?」

 シンがアスカにボソッと言う。

「なるほど、ミサトだと忘れる可能性が・・・
 って、葛城三尉?!

 一瞬納得するアスカだが・・・ミサトの階級が知っていたモノよりも低いので、
つい大声をあげる。

「海の上では・・・・・・ん?」

 会話を続けていた艦長とミサトが止まり、アスカの方を見る。

 艦長は、どうしたのかと言う顔で、ミサトはバツの悪そうな顔で・・・

「・・・あ」

 アスカは口を押さえる。

「す、すいません、話を続けて下さい(汗)」

 シンジが止まっている艦長達に言う。

「と、兎も角、海の上では、黙って従って貰おうか・・・(三尉?・・・部長のクセに?)」

 気を取り直して、艦長が、そう言った。

「(な、何を話していたのよ!)わ、分りました・・・
 ですが、有事の際は、我々ネルフの指揮権、が最優先である事をお忘れなく」

 最後は何とか気を取り直しながら、ミサトがピシッと決め、外に出ようとする。

「よ、相変わらず凛々しいなぁ〜(三尉・・・ギリギリの線か・・・一体、何をやらかしたんだ?)」

 無精髭を生やした男が、ミサトに声をかけてくる。

 バサ・・・

 ミサトが持っていた書類を落とす。

「よ、久しぶり♪」

「加持先輩♪」

 アスカがころりと態度を変えて言う。

 加持はアスカに軽く手を振る。

「・・・か、加持、なんでアンタがココに・・・」

 ミサトが心底、嫌そうに言う。

「彼女の随伴でね・・・ドイツから出張さ」

 その男、【加持リョウジ】はそう答えた。

「加持君、キミをブリッチに招待した覚えはないぞ!

 艦長が怒鳴る。

「それは失礼を・・・では、新横須賀までの輸送をよろしくおねがいしますよ・・・
 葛城、食堂まで案内するから、ついてこいよ」






 エレベーター前

「最悪だわ・・・考えられる事態だったのに・・・」

 ミサトはブツブツ言っている。

「良く無いよね・・・このままじゃ」

 シンジがシンにこっそり訊く。

「あぁ、要求だけを突きつけて、相手と平行線をたどっただけだな・・・
 コレでは、有事の際に、意地とかが出て来て、被害は拡大するな」


 シンが冷静に判断を下す。

「それって、拙いんじゃないの?」

「そうだな・・・しかし・・・アレに知られないように・・・」

「アンタ達、何、話してるの」

 2人だけでこそこそ話しているシンとシンジに、アスカが声をかける。

「べ、別に・・・」

「ただ、『このエレベーター、皆で乗るには小さいな』って話しだ」

 シンジとシンはそう答えた。

「ふ〜ん・・・」

 アスカがそう言うと、エレベーターが来た。

 確かに、小さい・・・

「このエレベーターには、子供だけでも、5人位が限界だな・・・
 先に降りててくれ、俺とシンジは後から行くから・・・」

 シンジが言う。

「そやったら、ワシ、釣りしたいんで、甲板まで行こ思ってますから、
後でもえぇでっせ」

 トウジが言う。

「まぁ、それだったら、俺達も釣りをしたいから、一緒に釣れるトコにでも行こうか?
 しかし、相田の事があるからな・・・相田と先に行っててくれ・・・
 俺とシンジはそこのトイレによってから行くから」

 シンがそう言う。

「なんで、そこで、俺の事が出て来るんだよ」

 ケンスケが不満そうに言う。

「誰かがお前を見張っておかないと、絶対にお前は恥を振りまき、
更には海兵に捕まって、営倉行きになる」

「な、なんでだよ!」

 無自覚なケンスケが言う。

「・・・では、カメラを全部、俺達に預けるなら良いが」

「そ、そんな事、出来るはずないだろう!

 ケンスケが怒ったように言う。

「・・・言っとくけど、ケンスケのカメラとディスク・・・
 後で検閲されるよ・・・拙いモノ撮ってたら、やばいよ・・・」

 シンジがケンスケに言う。

「げ!」

 ケンスケは青い顔をする。
(拙いもん撮ったのか?)

「おいおい、そんな事を決めなくても、詰めれば皆で乗れるぞ・・・
 どうせだから、一緒に途中まで行かないかい?
 そうだ、俺がチャンと釣りの出来るトコを案内してやるよ・・・
 それに、離れて、迷子になったら大変だろう」

 加持が笑いながら、そう言った。

「加持一尉・・・久しぶりに会った彼女にセクハラをしたい気持ちは・・・
 察してやろう・・・だが、俺達を巻き込むのは、やめて貰えないか?」

 シンが呆れながら言う。

「「な!」」

 加持とミサトは別々の意味(爆)で、驚く。

 アスカも驚いた顔で2人を見る。

「加持・・・アンタねぇ〜」

 ミサトが加持を睨む。

「い、いや、俺は別に・・・(何で分ったんだ?)」

 加持は慌てて誤魔化そうとする。

「あ、アンタねぇ〜加持さんがそんな事する訳無いでしょう!!

 加持に憧れを持つアスカが、シンに怒鳴るように言う。

「だったら、チャンと余裕のある定員で行ってくれ・・・
 最初にキミ等3人、次にトウジとケンスケ、俺とシンジ君は、トイレによってから、
最後に行くさ・・・もしもの時は、ヘリの降りた甲板にでも居る・・・
 そう言う事セクハラをしないんならいいだろう・・・」

「な、なぜ、俺と葛城とアスカが最初なんだい?・・・それに酷いなぁ〜・・・
 キミは、まだ、俺がセクハラ目的で、エレベーターに、
すし詰めにしようとしたと思っているのかい?」

 加持が訊く。

「そうよ!
 加持さんがそう言う事をするハズないでしょう!」

 アスカが加持を庇うように言う。

「本当に、心配なら、最初に下に降りて待っているか、
先に降ろして、待たして置けば良い・・・
 最初からそうしないで、明らかにすし詰めなる事が分っているのに、
全員一緒に乗せようとする目的は、合法的に触りたいと言う事だろう・・・
 そうなったら、加持一尉以外の俺達は、キミアスカに八つ当たり的に、
罵られる事は分り切っている・・・
 なにせ、どう考えても、誰かはキミの身体に押付けられるからね・・・
 キミも不快だろう・・・そう言うのは」

「ウッ・・・」

 アスカは何も言えなくなる。

 今度は、シンは加持の方を見る。

「加持一尉・・・キミの一時の欲望を満たす為に、
俺達を犠牲にして欲しくはないな・・・」

「えぇ〜と・・・(汗)」

 ミサトに睨まれて、加持が冷や汗をかく。

「そう言う訳で、先に行ってくれ・・・俺とシンジ君はトイレに行ってから、降りるから」

「じゃ、そう言う事で・・・」

 そう言ってシンとシンジは戻って行く。

「・・・兎も角、食堂にでも、連れてってもらいましょうか?」

 ミサトに白い目で見られつつ、加持は皆を食堂に案内した・・・

 勿論、トウジとケンスケはその後、直ぐに甲板に行ったらしいが・・・





 ブリッチ

「Shit!
 子供が世界を救うと言うのか!・・・
 あんな子供に!」

 艦長が憎々しげに言う。

「時代が変ったんでしょう・・・議会もあのロボットに期待していると聞いています」

 副長がなだめるように言う。

「あんな玩具にか?!・・・馬鹿共め!
 そんな金があるなら、こちらに回せば良いんだ!」

「・・・どうやら、ココの艦長は、プライドだけで、
無駄に部下を殺して、喜ぶタイプのようだな・・・」(英語です)

 艦長が、弐号機の積んである輸送船オセローを見ながら、文句を言っていると、
行き成り後から、流暢な英語で、呆れたように言われた。

「誰だ!!」

 艦長が振り向くと、こそには、2人の少年がいた。

「き、キミ達は・・・」

 副長が慌てた様子で、言う。

「失礼・・・敵生体使徒の資料は回っているハズなのに、
それを全く理解して無いような言いぐさだったモノでね・・・」

 シンが軽く頭を下げながら言う。

「どう言う事だ!」

 艦長が頭ごなしに怒鳴る。

「1つききますが・・・艦長は、N2兵器でも倒せない相手に、
通常兵器だけで、どうやって、勝つ積もりですか?」

 シンが訊く。

「何を馬鹿な・・・そのような相手は」

 艦長は馬鹿にしたように言おうとするが・・・

「使徒・・・この存在を忘れましたか?・・・
 それとも、実際に部下を皆殺しにするまで、貴方は現実を認められないほど、
狭量なのですか?
 それとも・・・使徒の存在を知らされないほど、
貴方は議会に信用されて無いのですか?」

「・・・・・・」

 艦長は何も言えなくなった。

 下手な事を言おうものなら、自分の立場が無くなるからだ・・・

 先日、議会から回ってきた書類で、使徒の存在は知っている・・・

 信じられなかったが、それが、どんなに非常識な存在なのかも・・・

「先ほどは、私どもの、作戦部長が失礼をしたので、お詫びに来たのですが・・・
 その物言いに、私共は、認識を改めなければならないかとも考えています。
 失礼ですが・・・艦長も、あの作戦部長と同レベル、もしくはそれ以下の存在なのですか?
 海の漢とは・・・思っていたよりも懐の小さい存在なのですか?」

「ち、違うに決まっておる!

 艦長は、シンに怒鳴るように言う。

「では、もし、使徒が現れた場合、我々も協力させていただけませんか?」

 シンジがそう言った。

「どう言う事ですか?・・・失礼だが・・・キミ達にそれだけの権限があるのかな?
(よしんばあったとしても、協力するのは、こっちだろうが・・・)」

 副長がシン達に言う 

「指揮に関しては、彼女より、僕の方が優先順位が高いんです」

「?・・・それは、どう言う事だ?」

 艦長が不信に思って訊く。

「コレを見て貰えますか?」

 そう言って、シンジとシンが自分達のIDを見せる。

 ミサトのと違い、変な線は入っていない。

「「こ、これは・・・」」

 それを見て、艦長と副長は驚く。

「僕は、碇シンジ二佐・・・ネルフの指揮部長です・・・
 使徒に関する指揮権は、一応、世界ではネルフの総司令、副司令を除き、トップになっています」

「俺は、朋意シン・・・ネルフのパイロット兼技術者のようなモノだ」

 シンジとシンが簡単に自己紹介をして、IDを渡す。

「こ、こんな子供が・・・」

「信じられません・・・が、しかし、コレは本物です・・・」

 艦長と副長は驚く。

「すまないが、あまり見かけで判断しないで頂きたい・・・
 ネルフ本部は、年功序列ではなく、実力主義だ・・・
 世界を破滅から守る組織だから、なぜ、実力重視なのは、理解できるだろう・・・
 事実、このシンジ君の指揮の元、ネルフは、三回、使徒を撃退している・・・
 ろくな作戦無しに・・・」

 IDを返して貰いながら、シンが言う。

「では、さっきの作戦部長と言っていた女性は・・・」

 副長が言った。

「勿論、本物ですよ・・・ご存知のように、チャンと軍属経験もありますが・・・
 困った事に、その軍属だったと言うプライドに固執し、ろくな作戦も考えず、
直ぐ自分で指揮をとりたがり、色々と問題を起こしています・・・
(復讐心の事は持ちださない方が良いだろう)」

 呆れたようにシンが言う。

「(ネルフが、軍人に対しての不信感を持っているようなのは、やはり、その所為なのか?・・・
 確かに・・・出向したのが、あの【仲間殺しの黒き死神女】じゃぁ〜不信がられても・・・
 だいたい、何で、あの女には、国連上層部にコネがあるんだ・・・)」

 艦長はそう考えてた。

「一応、子供だけだと色々問題があり、大人が居ないと何かと話が進まないだろうと思いましたもので・・・
 軍属経験が有り、比較的ヒマだった彼女を連れて来たんですが・・・
 結果は逆効果でしたね・・・」

 シンジがすまなそうに言う。

「で、何を言いたい?」

 艦長が訊く。

「もし、使徒が現れた場合、意地を張らず、即座にこの艦に電源を準備させ、
あの艦から、この艦に弐号機を移して下さい・・・
 コレはネルフからの要請です」

「・・・それは、我が艦隊は、役立たずと言う事かね?」

 艦長が額をピクピクさせながら言う。

「そうではありません・・・使徒を倒す方法は二つ・・・
 ATフィールドと呼ばれるバリヤーの限界を超えた物理的攻撃力で攻撃する事・・・
 この場合、余程のエネルギーが無いと、倒せませんし、
それは事実上、この艦隊の程度の電力や設備では、不可能に近いです」

「それは、資料にも書いてあった!・・・
 だが! ネルフはそれを、既に三度も、
殲滅しているではないか!!」


 艦長が怒鳴る。

「落ち着いて下さい・・・もう一つの方法・・・
 つまり、あのATフィールドを、無効化し、物理的攻撃で、倒す方法・・・
 ネルフがとっている方法はこちらです」

「なに!」

「艦長、公開資料にありましたよ」

 副長が耳打ちする。

「う・・・(そ、そう言えば・・・)しかし、何故、ネルフは、
そのATフィールドを無効化できるのだ!

「その為のエヴァ・・・そう言えば分りますか?」

 シンジが言う。

「あ、あの玩具が?!

 艦長が侮蔑を篭めて言う。

「エヴァを玩具とは言って欲しくないな・・・
 あれは、ネルフの、人類の希望をめて造られたモノだ・・・
 貴方達は、御自分の艦隊を、役立たずの張子の玩具扱いされて、平気なのか?」

 シンが少し怒ったように言う。

「何だと!」

 艦長はカチンと来る。

「艦長、お待ちください・・・どう考えても、こちらが悪いんですから・・・」

 副長が艦長を宥める。

「しかし、こいつは、我が艦隊を侮辱」

 艦長はシンを指差しながら文句を言おうとするが・・・

してません!・・・艦長が、あのエヴァを侮辱しているように、
他人から艦隊を侮辱されたら、自分はどう思うかと、彼等は言っているんです・・・
 今の貴方は、その程度も考えられないんですか!
(あの女を直接見たからといって・・・)」

 副長は、艦長を睨んで言う。

「ウッ・・・」

「(副長の方が冷静で、話が通じるみたいだ・・・)話を続けてよろしいですか?」

 シンジが訊く。

「どうぞ・・・艦長は黙ってて下さいね」

 副長が答え、艦長に念を押す。

「つまり、エヴァはATフィールドを無効化させる為の兵器です・・・
 その特性上、特別な適正を持つ子供しか扱えないそうなのです・・・」

「この辺は、俺が説明しよう・・・
 エヴァはATフィールドを使って、使徒のATフィールドを中和している・・・
 そして、そのATフィールドを発生させる為には、
俺達のようにある種の能力を持った柔軟な子供が必要らしいと言う事だ・・・」

 シンがシンジの説明を補足するようにそう言った。

「そ、それは、ネルフの極秘ではないのかね?!

 驚いたように副長が言う。

 艦長も驚いたような顔をしている。

「そうです・・・この事が漏れると、私達、エヴァのパイロットの資質のある子供達は、
愚かな組織に狙われ、下手をすれば・・・言うまでもないですね・・・
 しかし、そのくらい話さないと、貴方達の信頼は得られないでしょう・・・
 逆に言えば、私達は、貴方達をそれだけ信じていると言うことです・・・
 簡単に外に漏らしたりしないと・・・」

 シンジは真剣な顔で言った。

 艦長は、そのシンジとシンの顔を、目を見る。

「・・・(こ、この目は)」

 暫くして、艦長の顔が緩む。

「・・・どうやら、ワシは頭に血が上って、何も見えてなかったようだな・・・
 先程の暴言、許して頂きたい」

 艦長が態度を一変させ、シンジ達に深々と頭を下げた。

「い、いえ、頭を下げる必要はありません・・・
 出来れば、もし使徒が現れた場合、協力させて貰ってよろしいでしょうか?」

 シンジがそれに驚き、少し恥かしそうな顔をして、艦長に言った。

「いや、協力するのはむしろこっちだな・・・電源の方は、いつでも出せるように準備させておく・・・
 そして、もしもの時は、我が艦を、即座にオセローへ近づける・・・
 それで、他に無いかね?・・・あれば、協力は惜しまん」

 艦長が訊く。

「もし、出来るなら、他の艦は回避に専念して下さい・・・
 そして、もし援護攻撃をしてくれるのなら、ATフィールドを無効化出来てから、
お願いします」

 シンジはそう答えた。

「わかった・・・その旨を今より各艦に伝えて、徹底させよう・・・」

 艦長は頷きながらそう答えた。

「「それでは、よろしくお願いします」」

 シンジとシンは艦長に敬礼をして、下がった。





「・・・そうだったな・・・
 なんだかんだ言っても、実際にあの非常識なバケモノと戦っているのは、
あんな年端もいかない子供達だったのだな・・・
 あのドイツの『仲間殺しの黒き死神女』の盲目的な部下では無く・・・
 すまんな、副長、直ぐ熱くなり易い馬鹿な艦隊提督兼艦長で・・・」

 シン達が居なくなって、艦長がぽつりと言った。

「いえ、貴方をサポートするのが、私の役目ですから・・・」

 副長はそう言い返した。

「しかし・・・あの目は、瞳の輝きは似ていたな・・・」

 艦長がぽつりと言った。

「あのドイツのテロ鎮圧の時、無謀な作戦の所為で、巻き込まれて亡くなった・・・
ご親友の息子さんにですか?」

「あぁ、セカンドインパクトで亡くなった一番の親友・・・その息子にだ・・・
 あれも、良い奴だった・・・連合いと子供を亡くしていた俺は、
アレを本当の自分の息子みたいに思っていた・・・
 良い奴は、気を付けておかないと・・・直ぐ天に召されてしまう・・・
 ネルフの作戦部長は信用ならんが・・・あの少年は・・・」

 艦長は何かを懐かしむような顔をしていた。





「あれ?・・・シン君、何所に行くの?」

 エレベーターでない方に行くシンを見て、シンジが訊く。

「あぁ、チョッと用があってな・・・悪いが、先に行っててくれないか?
 二、三分で、追いつくから」

「え・・・なんだったら、付き合うけど?」

 シンジはそう言ってシンの方に近付く。

「いや、それよりも、相田の馬鹿が、変な事を仕出かさないかの方が心配だ・・・
 先に行って、見張っててくれ」

 シンはそう言って、やんわり断った。

「そう・・・じゃぁ、先に行ってるね」

「あぁ、すまない」

 そして、2人は別れた。





 その頃、食堂では・・・

「だいたい、司令の権力を笠に着ちゃってさぁ〜」

 ミサトが加持とアスカに愚痴っていた。

「そいつ、そんな事しているわけ?」

 アスカが呆れたように言った。

「そうなのよ・・・だいたい、戦術の何たるかも知らないくせにさぁ〜」

 ココに、当事者や、関係者反論する者が居ない?のを良い事に、ミサトはシンジの事で、
ある事?、ない事、言っていた。(ほぼ無い事・・・)
            
「・・・(オイオイ、俺が知っている調べたのとまるっきし違うぞ・・・)」

 加持は冷や汗をかきつつ、苦笑いをしていた。

「で、あのサードはどんな奴なの?」

 アスカはシンの事についても聞き出そうとした。

「それがさぁ〜」

 ミサトの自分的主観の完璧に誤った情報は、
アスカにどんな影響を与えるのであろうか?





 何所かの部屋・・・

「・・・よし、居ないな・・・あそこか・・・ふむ・・・確か・・・
 コレを落とさないように押さえながら」

 カチン

 何かが開いた音がした

「あった、あった・・・おいおい、睨んだりするなよ・・・元凶・・・今は休眠しておけ・・・
 よし・・・さて・・・もしもの時があるからな・・・
 コレと入れ替えてと・・・」

 パタン

「これでよし・・・と・・・
 アレは、自分の実力に過信し、いい加減な事をしているからな、
この位の失敗をしとかないとな・・・
 口だけの約束しかしないだろうし、必ず、
『自分の目で確かめないと気がすまない』と言って、
皆に迷惑をかけるだろうからな・・・さて、戻るか・・・」

 そう呟いた影は、その部屋から消えていった。






 甲板

 数人の海兵に混じって、トウジが釣をしており、
ケンスケは、相変わらず、その近くで、騒ぎながら、戦闘機等をカメラに収めていた。

「やぁ、トウジ、釣れてる?」

 シンジがトウジに話しかけた。

「おぉ! センセか、そやの〜ぼちぼちって、トコかいの・・・
 そういや、師匠はどないしたんや?」

 一緒に居ると思っていたシンが居なかったので、トウジが訊く

「チョッと遅れるってさ・・・」

「なんや、師匠、便秘なんか?」

 トウジが軽口を叩く・・・が・・・

「悪かったな・・・チョッと体調を崩しただけだ」

 トウジの死角から、そんな声が聞こえた。

 トウジが慌ててそっちの方を見ると、
何時の間にか、シンジとは別の方から、シンが来ていた。

「し、師匠(汗)」

 トウジは、引き攣りながら冷や汗を流した。

「・・・どうでも良いが、軽口を叩く位だ・・・
 そりゃもう大漁なんだろうなぁ〜」

 シンがニヤリとしながら言う。

「い、いや、ほいが・・・(汗)」

 焦っているトウジを尻目に、シンはクーラーボックスを覗く。

「ほっほ〜・・・・・・・・・(汗)」

 しかし、その中には、雑魚、二、三匹・・・

 しかも、食べれるかどうか疑わしい物ばかりである。

 更に、小さいし・・・

 シンは、他人の事ながら、冷や汗をかく。

「・・・なぁ、シンジ」

「なに?」

「このまま、鈴原が家に帰ったら、どうなると思う?」

 突然、シンが訊く。

「・・・さぁ?・・・多分、ミカちゃんに、笑われるんじゃない?」

 シンジはあっさりそう言った。

 因みに、シンジとミカは、既に知り合いである・・・

 一応、ミカがまだ病院に入院していた時、シンジも、シンに案内して貰って、
ヒカリやレイと一緒に、お見舞いに行ったらしい。

 まぁ、その時、トウジがシンジにからんだ事を知って、ミカは必死にシンジに謝り、
シンジが微笑みながら、『気にしないで良いよ』と言ったエピソードもある。

 そのシンジの微笑みを見て、ミカが少し赤くなった事や、ミカが退院した次の日、
何故かトウジがボロボロ状態で、学校にやって来て、何故か、一度許して貰って、
済んでいたハズなのに、シンジを殴った事を、再び、必死に謝っていたのは、
お約束であろう。

 また、彼女が通っている小学校が、シンジ達の中学校の傍にあるので、
シンジと知り合ってからの彼女は良くトウジと登下校するようになった。

 そのお陰で、結構会っているのだ・・・

 そして、ヒカリと会う度に、顔は互いににこやかなハズなのに、何故か、その間で、
火花が散っていると、言う話もあるが・・・その原因のであると考えられるシンジは、
何故かその事をわかっていない。

 まぁ、これは、まったくの余談ではあるが・・・(現在、投票の一位と二位だし)

「ウグ・・・(汗)」

 トウジは冷や汗を流す。

「いや・・・この鈴原の行動パターンから言って、妹のミカちゃんに、
今夜のおかずを、いや、明日の朝くらいまでのおかずを約束したはずだ・・・
 この"どでかいクーラーボックス"が、その証拠だ・・・」

 トウジの持って来ている大きなクーラーボックスを指しながら、シンが言った。

 確かにデカイ・・・

「あう・・・(汗)」

 ズバリ、トウジの行動は、ズバリその通りであったりする。

『お兄ちゃん!・・・絶対に大漁ね♪(碇さんに、良い所をみせてね♪)』

 と言っていたミカは、別の意味でも期待をして居るらしいが・・・

「それは大変だね〜・・・ミカちゃんは、期待して待ってるだろうしねぇ〜」

 ウンウンと、シンジは頷きながら言う。

「あぁ・・・今ごろ、ミカちゃんは、レイちゃんや、委員長達にも、
自慢しているハズだ・・・『大漁です』とか言いながら・・・」

 シンはそんな事を言う・・・まぁ、実際にそうなのだろうから・・・仕方ないが・・・

「あう、あうあうあう(汗)」

 シンとシンジの嫌味攻撃にタジタジのトウジ・・・

「鈴原・・・勿論、竿の予備は持って来たんだよな」

 シンが訊く。

「そ、そらぁ〜・・・もう一本くらいは・・・」

「一本より、二本の方が、つれるとは思わないか?」

「え?・・・じゃぁ、僕は出来ないの?」

 シンジがつまらなそうに言う。

「いや、釣竿はシンジが使えよ・・・俺は・・・」

 シンが、何かを見ながら、ニヤリとして言った。






 別の所・・・

「あ、加持さん、こんな所にいたんだ♪」

 愚痴魔と化した食堂のミサトをほったらかして、
アスカが先に逃げ出していた加持のいる外に来た。

「ん・・・あぁ、アスカか・・・どう思う?・・・
 朋意シン君と碇シンジ君を?」

 加持はアスカの方をチラリと見ると、海を見ながら訊いた。

「ふん、つまんない奴等ですよ!
 親とかの権力で、良い気になってるだけじゃ無いんですか?」

 アスカがそんな事を言う。

「オイオイ、あんまり、葛城の言う事を鵜呑みにするなよ・・・
 アイツは愚痴になると、自分主体で事実を多少ひん曲げるからな・・・
(まぁ、葛城にとっては事実なんだろうが・・・)」

 加持が呆れたように言う。

「でも、火の無い所に、煙はたたないって言うでしょう」

 フンとしながら、アスカが言う。

「まぁ、そうだが・・・(葛城・・・パイロット間に不和のタネを蒔いてどうする)
 しかし、朋意君、サードのシンクロ率は平均90%を軽く超えているそうだし、
事実、彼は、ATフィールドを自在に操って、あのシンジ君の抜群の指揮の元、
既に、3体もの使徒を倒しているし・・・
 更に、フォースであるシンジく」

「なんですって!!」

 加持の言葉を遮ってアスカが怒鳴る。

「え?」

「サードのシンクロ率!」

 アスカが加持を睨みながら言う。

「・・・し、知らなかったのか(ま、拙ったか・・・)」

 驚いた顔で、加持がアスカの方を見る。

「本当なのね・・・クッ!

 その行動で、事実である事を理解したアスカは、踵を返して、何所かに走って行った。

「・・・拙かったなぁ〜・・・アスカが、朋意君を敵視していたのは、
既に知っていたからだと思ったが・・・
(だから、シメに『彼等から学ぶ事が多いぞ』と言おうと思ったのにな・・・)
 葛城・・・誘爆剤は、お前の愚痴だったんだからな・・・多分・・・
 俺は知らんぞ」

 加持は、責任転換をして、呟いていた・・・

 やはり、このカップルは、似た者同士なのであろうか?

                               続く





 あとがき?

 さて・・・次回はどうなるかな?・・・(使徒は確実に出てくるだろうけど)

 兎も角、今回はココまでッス・・・(早く続きを書かねば・・・)

 では、またぁ〜!


 デビトリの部屋

デ「クククク」

鐘「おや?・・・師匠、どうしたんです」

デ「実はな、これを見てみろ・・・面白いぞ」

鐘「・・・何の投票です? ココの人気投票ですか?
 (おや?・・・アスカ・・・ゲンドウさんにも負けてるけど)」

デ「うむ・・・結構前から、本体がヤッテル『シンジ君のお相手第二ヒロインは誰が良い?』の中間その1だ」

鐘「こ、これは・・・プププ・・・アスカ・・・大変ですね」

デ「あぁ・・・折角、本体にプラス票を貰っていたのになぁ〜・・・」

鐘「最下位に近いですね・・・」

デ「しかし、何故、ウケ狙いとしか思えない男達に負けてるんだ?
  ココは流石に、驚いたぞ・・・(本体も頭を捻ってたし・・・)」

鐘「さ、さぁ・・・私にはなんとも・・・(汗)」

デ「まぁ、感想一通に一票だからな・・・」

鐘「アスカが出て来なかった分、不利だったと?」

デ「いや、出て来るか分からない、マユミやマナは結構上位だし・・・」

鐘「マナは、出る事は決まってるんでしょ?」

デ「あぁ・・・まぁ、正式に発表して無いけどな・・・」

鐘「・・・アスカファンからの感想・・・少ないっすね〜」

デ「・・・しかし、ここには、根強いアスカファンが居ると聞いていたのだが・・・
 (どうやら、これをあまり読んでないらしいな)」

鐘「根強い、ゲンドウファンとかは居ますけどね・・・」

デ「まぁ、これからが勝負だろうな・・・( ̄ー ̄)ニヤリ」

鐘「一応、まだ、中間その1ですからね・・・( ̄ー ̄)ニヤリ」

2人「「(追い上げる事が出来るかな?)」」

 なんか挑発するような事を考えている2人・・・アスカの行動はいかに?



アスカ「なによなによ、いったいなんなのよ!!?」
アスカ「何でこの惣流アスカラングレー様がそんなに低いのよ!!!」
アスカ「ま…多少は仕方ないわよ、ここの構成考えたらね…」
アスカ「でも、いくら何でも、髭眼鏡よりも下ってどういう事よ!!?」
アスカ「む…シンジもファーストもいないじゃないのよ!どこいったのよ!」
アスカ「…とりもち!アタシのファンがちゃんとついてくるような話にするのよ!」
アスカ「どっかで聞いてんでしょ!分かったわね!」
……
……
シンジ「やっぱり、荒れてるね…」
レイ 「…そうね」
シンジ「思わず逃げちゃったけど…どうしよ」
レイ 「……」
シンジ「ああ…後が怖いけど、今でていく勇気は無いなぁ…」
レイ 「そうね…」
シンジ「アスカがあんまり荒れないようになると良いな…
    アスカが荒れると僕が苦労しちゃうんだよなぁ…」(溜息)
レイ 「碇君は私が護る」
シンジ「ありがとう、綾な……」(汗)
アスカ「…し〜ん〜じ〜、」
シンジ「な、なにかな?あすか?」(汗汗)
レイ (二人の間に入る)
アスカ「ホントなら殴っときたいところだけど、勘弁してあげるわ、だから今すぐに何か作りなさい」
シンジ「え?それで良いの?」
アスカ「ファーストもつきあうのよ」
レイ 「…問題ないわ」
アスカ「気が収まるまで食べるのよ」
シンジ「分かったよ」
………
………
シンジ「も、もう食べられないよ」
レイ (ふらふら)
アスカ「あによ〜アタシの気はま〜だ、ずぇ〜んずぇん収まってないのよ〜」(お酒入ってます)
シンジ「そ、そんなこと言ったって」
アスカ「たべらんないんどぁったら、のむのよ〜」
シンジ「の、飲むって」
アスカ「ファーストはもっと飲むわよね」
レイ (こくり)
シンジ「あ、綾波〜もうだめだよ〜」
アスカ「ぬぁ〜にいってんのよ〜、すぇ〜っかくのんでぇんのとめんじゃぬぁいわよ〜」
レイ (ぱた)
シンジ「綾波〜」


加持 「ふむ…俺はどう思われているのか…どうやら少なくとも好かれてはいないみたいだな」
リツコ「そうかもしれないわね」
加持 「…何か手土産持って挨拶がてらに、考えを探りに行くか」
リツコ「でも、嫌われていたりしたらそれを表に出すかしら?」
加持 「その時はそれを読みとるだけさ」
リツコ「それで、その時はそれからおとなしくしているのかしら?」
加持 「さぁてね、その時考えるさ」
リツコ「やけども種類によっては大変なことになるわよ」
加持 「重々承知しているよ」
リツコ「いったいどこからそんな言葉がでてくるのかしらね」
加持 「ところで、手土産は何が良いかな?リッちゃんになら猫の小物にするんだけどね」
リツコ「さぁ…私には見当もつかないわね」
加持 「気に入りそうなものを探してみるかな」
リツコ「何か良さそうなものが見つかると良いわね」
加持 「そう言ってもらえて嬉しいよ」