08
「・・・まぁ、気分転換と言う訳でだな」
冬月がシンに書類などを渡しながら言った。
「・・・だ、大丈夫なのか?・・・本当に」
シンが不安そうに訊く。
「・・・それは分らんな・・・
一応、表面上は、本人も、無意識での行ないとは言え、
それを反省しているようだったしな・・・それなりに罰も与えた。
しかし、まぁ、なるだけ、戦闘行動に関らせない方が、無難とは思うが・・・」
冬月はそう言った。
「それは、分るが・・・・
それなら、なおの事、今回はついて来ない方が、良いんじゃないのか」
「まぁ、それもそうだが、彼女以外は、何かと忙しいし、都合が悪いのだ・・・
一応、ドイツからの者は、彼女の知り合いだし・・・
何かの切っ掛けになってくれると良いと思ってな」
「成る程・・・・・・
そうだ、その代わり、一般人を同行者として、連れて行っても良いかな?」
シンが訊く。
「ん?・・・それは、まぁ、許可は出せるとは思うが・・・なぜだ?」
「まぁ、『一般人に見られていることで、一応、歯止めにならないかな』と思って・・・
何だかんだで、外面は気にしているようだからな・・・」
シンがそう答えた。
「成る程・・・そう言う事か・・・
人数的に2人だけなら、同行を許可できるとは思うが・・・
出来るなら、ネルフ関係者の子弟にしてくれ・・・その方が、何かとな・・・」
冬月は納得しながらも、念を押すかのように、そう言った。
「・・・まぁ、念を押さなくても、どうせ、俺達の知り合いには、
そう言う関係しかいないだろう」
少し考えて、シンが答えた。
「そ、そうだったな・・・」
コード707等で呼ばれる学校の事情を思い出し、少しバツが悪そうに冬月が言う。
「気にすんなって・・・
じゃぁ、レイちゃんとシンジ君と話し合って、
2人ほど選んで、連れて行くから・・・」
「あ、それと・・・一応、エヴァの電源ソケットも持って行ってくれ・・・
一応、空母で使える奴を準備してあるから」
冬月が思い出したかのように言う。
「え?・・・ワザワザ、どうしてだ?・・・そのくらい」
「ドイツ支部が、載せておらんらしいのだ・・・」
冬月が呆れたように言う。
「へ?・・・なんで?」
シンが驚いたように訊く。
電源ケーブルが無ければ、内部電源のみの活動しか出来ないし、
その電源が切れれば、エヴァもただの木偶人形と化してしまうのである。
「碇や本部に対する嫉妬だよ・・・
それに、今まで、さんざん威張りちらしていたセカンドチルドレンの成績も、
お前があっさり抜いたから・・・」
冬月が呆れたように言った。
昔から、ドイツ支部長は、
『セカンドチルドレンの方が、本部のファーストチルドレンよりも、
シンクロ率が高く、格闘センスも高い』
と言って、本部から他の支部にまで威張り散していたのである。
あの時のゲンドウの目的は、自分に都合の良いサードインパクトであり、
戦闘能力とか、チルドレンの成績など別に気にしていなかったので、
そのドイツ支部長の嫌味にも平然としていた。
その事がドイツ支部長の機嫌を、更に悪くしていき、
その嫌味やセカンドの自慢話をエスカレートさせていったのである・・・
だが、ゲンドウが、本部にはシンが昔から居たと言う事にし、様々な事情により、
今まで、隠して育ててきたと言う事にして、使徒の来る数週間前に、
突然、彼の存在、そのシンクロ率の成績及び、
彼が(技術部で、表向きに)どんな仕事をしたかを発表した。
彼こそが、本部で正式に教育を受けたチルドレンとして・・・
その途端、シンのシンクロ率などの成績や、発明、開発、改良及び、
使徒殲滅の実績により、他の支部はこぞって本部を褒め称えた。
更に、ゲンドウは自分の手柄では無い事で威張らないと言う事を、
確り、頭に入れられていた為、その事を、全く威張らなかった。
それどころか、今まで、サードチルドレンの存在を隠して来た事を、理由付きで、
誠意をこめて、他の支部に逆に謝ったのである。(ゼーレ対策の為にも・・・)
今までの傍若無人な態度から一変し、その全く威張らず、控えめな態度のギャップが、
他の支部に大いに受け、ゲンドウは、その時までとは全く違い、かなりの支持を得る事になった。
そして、逆に今まで、いつも他の支部に、チルドレンの成績の記録だけで、
散々、本部や他の支部に威張り散らして来たドイツ支部長が、逆にゲンドウと比較され、
冷たい目で見られるようになり、完全に道化のようになってしまったのである。
つまり、ドイツ支部長に言わせれば、
『見下していた日本人の司令ごときに、完全にはめられた』
と言う訳である。
更に、本部に意地悪をする為に、要請があった弐号機の本部移送を渋っていると、
その能力を他の支部に疑われるだけでなく、上層部である人類補完委員会から、
直々に自分の所に命令サタがきて、これ以上、セカンドチルドレンと弐号機の移送を渋ったら、
今までの地位から、何から、全て捨てねばならない状態になってしまったのである。
それで、嫌々ながらも、本部に弐号機を移送しなければならなくなったので、
仕返しとばかりに、輸送は海の上なのに、B型装備で、電源も、内部電源以外、
全く無しの状態で送ったのである。
それが、また、自分の首を絞める事になるとは考えずに・・・
「お、横暴・・・更にバカだな・・・
何の為にネルフがあるのかと言う表向きの理由さえ、忘れている。
下手をすれば、自分達が、散々、自慢していたセカンドと弐号機を、
無駄に捨てる事になるぞ・・・本当にゼーレのお膝元なのか?」
シンが呆れて言う。
「あの支部長は、プライドが高く、元来、ドイツがゼーレのお膝元であるのに、単なる支部、
更に自分は、白人なのに、単なる支部長であるのにも関らず・・・
離れた島国の方が、本部、更に日本人のクセに、ネルフ総司令である事で、
碇を目の仇にしているからな・・・
色々積もって、先が見えなくなっているんだろう」
「まだ、問題山積だな・・・わかった・・・何とかしよう・・・
必要と思ったモノを、後で纏めて書いて渡すから、代わりに準備しておいてくれ」
そう呆れたように言って、シンは出て行こうとするが・・・
「そうそう、おやっさん・・・もっともらしい建て前は、兎も角、
本当のところは、何なんだ?・・・
あの作戦部長を首にもせず、部署も変えず、単なる降格及び減棒六ヶ月程度の処分ですまし、
更に、戦闘になる可能性が高い所に、ワザワザ連れて行かねばならない理由は?」
出口付近で、立ち止り、そう訊いた。
「・・・やはりお前には隠し事は出来ないか・・・先ず、ゼーレの老人共の目がある・・・
一応、そろそろ、外にだしとかないと、色々とな・・・それに、スズが来る・・・
一言で言えば、大人の汚い都合だよ・・・」
暫く考えて、冬月はそう答えた。
「なるほど・・・だいたい、わかった・・・」
シンはそう言って、出て行った。
学校・・・放課後
「・・・あいつ等は?・・・まだ帰ってはいないだろう」
「・・・う〜ん、何所、行ったんだろう・・・」
校庭の掃除が終わって、シン達が会話をしている。
「一旦、教室に戻って、洞木さんにでも訊くか?・・・」
因みに今日のレイは、ヒカリと当番が一緒で、教室らしい。
まぁ、ゴミ捨てだけは諸々の事情で、シンと一緒の時しかやらないらしいが・・・
(トラウマ?)
「あ、ねぇ、キミ、2−Aの相田か、鈴原がドコにいるか、しらない?」
シンジが、その辺で、本を読みながら、下校しいる男子生徒に尋ねる。
「え?・・・あの2人?・・・なんで?」
結構、あの2人は有名人である。
「チョッと用があってさ」
シンが答える。
「ふ〜ん・・・あの2人だったら・・・今なら、確か、あっちの校舎裏に居ると思うけど?」
「サンキュー」
「ありがとう」
そして、2人は校舎裏に向った。
「ん?・・・さっきのは、朋意と碇・・・って、拙い!」
その男子生徒は、慌てて、シン達とは逆側から校舎裏へ走って行った。
校舎裏近く・・・
「でも、何をしているんだろうね?」
シンジがシンに訊く。
「さぁ〜・・・俺は、知らんが・・・
そういえば、何故か、慌てて校舎裏から出て行く生徒がいなかったか?」
シン達が歩いて来ていると、何故か校舎裏から、
慌てたように、十数人の生徒達が出て行った。
「そうだね・・・女生徒も居たけど・・・もしかして、告白劇が・・・」
前史に比べれば、他人のそう言う事に対しては、若干分るようになったが、
自分の事にはまるっきり鈍いシンジがそう言った。
「それにしては、人数多くなかったか?・・・」
似たようなモンであるシンは、不思議そうに言った。
「そう言えば・・・覗きかな?」
2人が校舎裏に着くと、トウジとケンスケがちょうど、戻ってくる。
「おぉ、碇たちじゃないか」
ケンスケがワザとらしく声をかけて来る。
「い、いやぁ〜師匠にセンセやないけ・・・
ど、どないしなはったんでっか?」
ちょっと、ぎこちない様子で、トウジも声をかける。
因みに、トウジは土下座事件?の後、
何故か、シンを師匠、シンジをセンセと呼んでいる。
「何をしてたんだ?・・・今日、お前等は、ココの当番じゃないだろう」
シンが訊く。
「へ?(汗)・・・ひ、昼を食べてただけだけど・・・」
「そ、そや・・・(汗)」
どうやら、例の事はシン達には内緒であるらしい。
(そうでなかったら・・・殴られているか・・・)
「ワザワザ、校舎裏で?・・・それだったら、帰って家で食べれば良いのに・・・
散らかるし、掃除の人に迷惑がかかるよ」
シンジがそう2人に言った。
「さ、最近、流行っているんだ・・・そ、それに、散らかしてないぞ・・・(汗)」
大きなカバンを持っているケンスケ・・・
「そ、そや、他にも、人がいたでっしゃろ、ゴミは自分らで、持っていくんや(汗)」
一応、パンなどの空き袋を見せるトウジ・・・
「「ふ〜ん・・・(何か、怪しいな)」」
シンとシンジは、ケンスケ達を怪しんでいる目で見る。
「と、ところで、何か用事があったんじゃないのか?」
ケンスケが慌てて訊く。
「そうだった・・・今度の日曜日あいてる?」
シンジが訊く。
「今度の日曜日?・・・
って、明日の日曜だろ、駄目駄目、俺は用事があるから・・・
(それに朋意とは、一緒には居辛いし・・・(汗))」
ケンスケが手を振りながら言う。
それに、ケンスケには少し、負い目のようなモノがある為、
シンやレイの近くには、居辛かった。(外伝も参照)
しかし、内容も聞かずに断った事が、後悔する事になるとは知らなかった。
「明日でっか・・・一応、ワイは空いてまっせ」
「じゃぁ、鈴原と洞木さんで、良いか・・・まぁ、無難かな?・・・
よし、鈴原、明日、昼前に、学校のグランドに来てくれないか?」
シンがそう言った。
「それは、えぇですけど・・・なんぞ、あるんでっか?」
「まぁ、面白いところに連れってってやろうかと思ってな」
「ほう!・・・師匠達のお供でっか・・・是非、ついていきまっせ♪」
「これで、何とか人数はそろったな・・・
漢と漢の約束、鈴原、違えるなよ」
ニヤリとしながらシンが言った。
「わかってま!」
胸を叩きながらトウジがそう言った。
結構、トウジの操縦法を覚えて来たシン・・・
シンジはそれを面白そうに見て居る。
トウジとシン達が話している間に、
ケンスケは、荷物を持って、こっそり離れていく。
「で、ドコに行くんでっか?」
「あぁ、太平洋、海だ・・・」
「海でっか?・・・そらぁ〜中々でっけど・・・何でまた?」
トウジが不思議そうに訊く。
「うむ、太平洋艦隊、旗艦空母【オーバー・ザ・レインボー】に用事があって、
一日だけ乗り込みに行くんだが・・・
どうせなら、『気分転換に、友達でも連れて行ったらどうだ』と言う事になってな。
定員2人様で、誘う事になったんだ・・・
そうか、一番興味のありそうな相田は用事があるのか・・・」
シンが呟くように言った。
「残念だね・・・でも、チャンと頭数はそろったし、これ以上連れて行けないから、
ちょうど良いんじゃない?」
シンジがシンに言った。
「そうだな・・・」
シンも同意する。
「なぁ!!!」
ケンスケは、それを聞いて、硬直する。
「じゃぁ、そういう事で、日曜日にね、トウジ」
「じゃぁ、遅れるなよ・・・鈴原」
「分かってま!」
シン達は、教室に戻って行く。
「海かぁ〜・・・久しぶりやなぁ〜釣竿でも持って行こか・・・」
「トウジ!!」
ケンスケがトウジに詰め寄る。
「な、なんや」
いきなりで、驚くトウジ・・・
「か、代わってくれ!!」
「お、おまはん、用事があったんとチャウンけ?」
冷や汗をかきつつトウジが言う。
「だから、その用事と言うのが、
その【オーバー・ザ・レインボー】を、
新横須賀港に撮りにいくんだよ!」
「ほか・・・がんばってな」
トウジは応援する。
「だぁ〜!!
だから、乗れるんなら、乗りたいんだよ!
代わってくれ!!」
「ほんなこつ言うたかて、漢と漢の約束やし、
ワシには師匠との約束を違える事は出来へん!」
「そ、そこをなんとか・・・」
「だいたいやな、綾波ん写真、売らん代わりに、師匠達の顔写真を売っとんのも黙っとんだけでも、
ワシはえろ〜譲歩しとんじゃ・・・これ以上は加担せん!」
しかし、トウジは譲らない・・・(変な写真は無いだろうな・・・)
もしかして・・・シン達は分ってて、やったんじゃなかろうか?(^_^;)
その後、暫く、2人の言い合いが続いたと言う。
日曜日・・・学校の校庭
「・・・・・・おい、同行するのは、鈴原と・・・洞木さんじゃなかったか?」
シンが、そこに居たトウジとケンスケに訊く・・・
「へ・・・あぁ・・・なんや、交代してもろたらしいでっせ・・・」
釣の道具と大きなクーラーボックスを持ったトウジが、少し呆れたように言う。
「そ、そうなんだ!・・・委員長は急な用事が出来たらしくってさ(汗)」
何故かビデオカメラと大量のディスクを持ったケンスケは、
冷や汗を流しつつそう言った。
「あれ?・・・用事があったのは、ケンスケもじゃないの?」
シンジが訊く。
「い、いやぁ〜・・・お、俺の予定は潰れちゃって・・・(汗)」
「ふん・・・思いっきり、怪しいな」
「ヴ・・・(瀧汗)」
実は、あの後、『シンとの漢の約束』と言う事で、ガンとして引かないトウジと交代する事を、
諦めたケンスケは、今度はヒカリに泣き付いて交代して貰ったらしい。
最初の内は、ヒカリも断っていたが、余りにも見苦しく頼んでくる為、
最後には呆れながらも、交代してくれたらしい・・・
最も、ヒカリは昨日の夜に、交代した事をレイに電話で伝えたので、
予めケンスケが来る事を、シン達も知っていたのはあるが・・・
シンが聞いた説明では、ヒカリとケンスケが、
交代した所為で、レイは付いて来ない事になっているらしい。
だから、嫌味の1つでも言いたかったのであろう・・・
そして、今日、レイは、ユイとヒカリとミカと、四人で、
急遽、お買い物に行く事になったらしい・・・
ヒカリが来れない事が分って直ぐに、レイはユイに誘われたのである。
最初の内は、レイは渋ったものの、ユイの何事かの耳打で、顔を赤くし、
お買い物に変えたらしい。(何を買いにいくんだ?)
最も、その事実をシンは知らないのだが・・・
「まぁ、良い・・・おい、相田」
「な、何でしょう(汗)」
「そのカメラで、色々撮るのはかまわ無いが・・・あんまり、変なモンは撮るんじゃねぇ〜ぞ・・・
カメラごと没収されようと、営倉にぶち込まれようと、俺達は知らんからな・・・」
シンは忠告する。
「わ、わかってるよ」
ケンスケは冷や汗をかきつつ答えた。
「ところで、師匠」
「なんだ?」
「あの別嬪はん・・・どっかで見た事が・・・」
トウジが少し離れた所にいるミサトを指しながら言う。
「あぁ、あれが、あの作戦部長殿だよ・・・
一応、大人が付いて行かないといけないだろうからな・・・」
「他に居なかったんでっか?」
トウジは顔を顰めながら言う。
ミサトが、あの戦いの時で、それしか方法が無かったにも関らず、
3人を助ける為にエントリープラグに保護する事を反対していた事は、
ヒカリから聞いて知っていた為である。
まぁ、あの時は、シンジの足を引っ張る事しか考えてなかったから、
自業自得であるが・・・
「あぁ、忙しいらしくてな・・・まぁ、司令達にキツク言われ、罰も与えられたから、本人もあの時の事は、
充分反省しているらしいから・・・」
シンは肩を竦めながら言う。
「そうでっか・・・」
そうこうしていると、電源ソケットを抱えたUNのヘリが降りて来た。
「風が凄いや・・・」
シンジが呟く。
「じゃぁ、乗ろうか・・・」
そう言って、シン達はヘリに乗り込んだ。
太平洋・上空・・・
「凄い、凄い!
まさか、このMil−55b輸送ヘリに、
乗れるなんて!!
やっぱり持つべきモノは友達だよな!!」
ケンスケがヘリの中でハシャギながら、カメラを回している。
立ち上がってあっちこっち撮りたいのだろうが、シートベルトで、固定され、
また、隣にUNの兵が居るので、そこまでは出来ないらしい。
「・・・良いんでっか?・・・撮っても・・・」
UNの兵が思いっきり迷惑そうにしているので、トウジがシン達に訊いて来る。
「まぁ、一応、この位は良いだろうが・・・(煩い)」
「ネルフでなく、UNのヘリだし、
元々、公式資料とかで、出回っているし・・・でも(煩い)」
ケンスケを呆れたような顔で見ながら、シンとシンジが答える。
因みに、シン、トウジの釣りの道具(主にクーラーボックス)、シンジと並び、
その向いに、UNの兵、ケンスケ、トウジと並んで座っている。
ミサトは、暴走していたとは言え、殺しかけたりして、
ある意味、敵視したり、されている子供達の傍には居辛いらしく、
無理を言って、サブパイロット席に座っている。
暫くして、太平洋艦隊がその眼下に見えて来た。
「あ、艦隊が見えてきたよ」
シンジが窓から艦隊を見ながら言った。
「なに!! ぬおぉぉぉ!!
と、トウジ、代わってくれ!
ココじゃ、アレだけを撮れない!!」
ケンスケが騒ぐ。
「じゃっかぁ〜しいわい!!・・・
だいたい、お前が、最初に、そこが、えぇちゅうたんやろが・・・」
最初に乗る時、ケンスケは、
『景色を見るよりも、中が良く撮れる真中が良い』
と言って、真中に座ったらしい。
「それに、今更、席を代わるのはじゃまだ・・・止めとけ・・・
UNの軍人さんも、迷惑そうだぞ・・・(無論、俺達も)」
トウジとシンが言う。
UNの兵も心底迷惑そうな顔をしていた。
文句を言わないのは、相手がネルフ関係者と一緒にいるからだろう。
「えぇ〜〜〜〜〜・・・」
ケンスケはまるでこの世の終わりのような顔をする。
「あぁ〜(汗)・・・だったら、僕が代わりに撮ろうか?・・・
一応、それ、初心者でも大丈夫な奴だろ」
シンジが、ケンスケに言う。
「おぉ! やはり持つべきモノは友達だな!!
早速、頼む!!」
「ハイハイ・・・」
シンジは呆れながらも、カメラを受け取って、外の艦隊を撮る。
で、前のパイロット席では・・・
「よく、あんな老朽鑑が浮いていられるわねぇ〜・・・」
ミサトが艦隊を見ながら、ぽつりと呟いた。
「な、何を言っているんですか!
我が艦隊の旗艦、【オーバー・ザ・レインボー】は、
セカンドインパクト前に建造されたとは言え、十二分に現役鑑です!」
ミサトの呟きを聞いたパイロットが、怒って言う。
「え?(汗)」
自分の所属している艦隊にプライドを持っているのだから、当然だろう。
「建造されて、まだ、20年も経ってないのに、あのタイプの鑑が老朽艦にされたら、
金がいくらあっても足りません!!
だいたい、あのタイプの空母にまだ退役艦には一隻も出てないんですよ!!
そもそも、最初の原子力空母【エンタープライズ】は・・・」
確かに、世界初の原子力空母【エンタープライズ】でさえ、
壊れてなければ、2015年にもまだ充分現役艦である。
軍属経験があるくせに、ミサトはこう言う事にも勉強不足だったようだ。
その後、散々パイロットに戦艦等のウンチクを交えながら、怒られるミサト・・・
「・・・しゅ、しゅいません」
パイロットの迫力に、ミサトは何も言い返せず、
小さくなって、謝ることしか出来なかった。
その頃・・・空母のブリッチでは、艦長と副艦長が双眼鏡で、
シン達が乗っているヘリを見ていた。
「ふん、好い気なもんだ・・・ガキの使いが、玩具のソケットを運んできおったぞ」
艦長が憎々しげに言う。
「(ガキの・・・か、アレが所属しているネルフの所為で、こちらの予算とかが減って、
苛立っているのは分るが・・・しかし、結局、我々人類は、あの使徒とか言う敵生体を倒す為に、
子供達をネルフに所属させ、戦場に立たせなければならなかった・・・
それを、艦長は分っているのか?)」
副長は複雑な顔で見ていた。
そして、空母の別の場所でも、1人の女の子が、
何故か艦隊を一回りして降りて来るヘリを見ながら、不敵に笑っていた。
ヘリが甲板に降りて、ドアが開いて、シン達が降りて行く。
「うわぁ〜・・・ま、待たんかい!」
トウジがヘリのプロペラの風で、日除け用の帽子を飛ばされ、
釣の道具を持ったまま、それを追い掛ける
「凄い、凄い、すご〜〜〜い!!」
ケンスケが、降りる時にメモリーを入れ替えたカメラを回しつつ、
雄叫びを上げ、日本の恥を振りまきながら、海兵達に笑われている。
シンジとミサトは恥ずかしそうに、ケンスケから、少し距離をとって行く。
とは言っても、2人の間にも、それなりの距離があるが・・・
シンは、シンジの後を、何かを読みながらついて行く。
そして、あと、チョッとっで、トウジが帽子に手がかかるところで、
誰かが、その帽子を踏んだ。
それは中々の美少女であり、レモン色のワンピースを着ていた。
トウジは一瞬ムッとしたが、多分、止めてくれたんだろうと思って、気を取り直す。
「おう、スマンな・・・む・・・も、もう、えぇから、どけてくれ」
トウジが帽子に手をかけるが、その娘は、足を除けず、
それどころか、トウジを無視して、ミサトに話し掛けはじめる。
「ヘロウ、ミサト、元気してた?」
その足元では、トウジが必死に帽子を取ろうと必死になっている。
「ま、ね・・・貴女も背、伸びたんじゃない?」
ミサトは微笑みながら、その娘に答える。
「足、どけてあげたら?」
シンジがボソっと言う。
「そ、他のところも、チャンと女らしくなっているわよ」
しかし、その娘は無視して、ミサトと話しを続ける。
「そだ、紹介するわ、彼女が【惣流・アスカ=ラングレー】・・・
エヴァンゲリオン弐号機専属パイロット、セカンドチルドレンよ」
「え、えぇかげんに」
そのアスカが、勝ち気そうな笑みを浮かべ、トウジが文句を言おうと、
顔をあげた途端、一陣の風が・・・
そして、思いっきりスカートがまくれた・・・
パン! パン! パン! パシ!
ヒョイ、ヒュン! ドカ!
「いつ・・・な、なにするのよ!!」
トウジが文句を言う前に、甲板にコシを打って、
押さえているアスカが涙目で、書類を読んでいたシンに怒鳴った。
「ん?・・・なに甲板で座ってるんだ?・・・って、キミはだれだ?」
シンが驚いたようにアスカに言った。
因みに、トウジ、ケンスケ、シンジは一発づつ、張り手を喰らったのだが、
シンは無意識で、アスカの張り手を受け止め、そのまま流れるように投げたのである。
「流石、師匠・・・漢や・・・無意識でも、隙があらへん」
トウジが、頷きながら言う。
「シン君、流石だね・・・(僕は避けるヒマなかったよ)」
シンジも感心しながら言う。
「って言うか、何で、朋意の奴は、モノを読みながら、
あんな事が、意とも簡単に出来るんだよ・・・」
ケンスケが叩かれた頬を押さえつつ言う。
「こ、このぉ〜〜〜!!」
アスカがシンに向っていく。
張り手、パンチ、蹴り・・・アスカは凄まじい勢いで、エスカレートしていき、
様々な攻撃をするが、シンは意とも簡単に避けていく。
「あ、あの攻撃を・・・凄い」
ミサトは、初めて見たシンの格闘能力に驚く。
「あ、アンタね!
大人しく叩かれなさいよ!!」
汗をかきつつ、アスカが理不尽に怒鳴る。
「何故だ?・・・行き成り襲ってくるとは、キミは何者だ?」
書類を横目で見ながら、シンが呆れたように訊く。
どうやら、ミサトの紹介を聞いて居なかったらしい。
「見物料よ! 私は惣流・アスカ=ラングレー!
エヴァンゲリオン弐号機の専属パイロットよ!」
それでもやまないアスカの攻撃・・・シンは上から見れば、円を描くように避けている。
「何の見物料だ?・・・
だいたい、セカンドチルドレンが、何故、俺を襲う?」
本当に呆れたようにシンが言う。
「私のパンティ見たでしょ!」
アスカは攻撃をしながら怒鳴る。
「ん?・・・俺は、見とらんが?・・・
それに、露出狂のパンツなぞ、別に見たくもないし」
確かに、スカートが捲くれた時、シンは書類を見て居たので、
アスカのパンティは見てない・・・
「「「確かに・・・見て無いね(な)」」」
シンジ達(ミサトを除く)は納得顔で頷きあっている。
「だ、誰が露出狂よ!」
アスカが顔を赤くして怒鳴る。
「こんな風の強い場所で、簡単に捲くれ上がるようなスカートを穿いて、
更に、今、思いっきり足を上げてまで、攻撃をしているところがだ・・・危ないぞ・・・
俺には見えなくとも、周りには見せ放題だな・・・集ってきてるぞ」
確かに、シンは、当たり難いように、軸足の方に逃げている為、
見え難いだろうが(見えるかもしれないけど)・・・
他の周りの連中には見せ放題だろう・・・
「ななな!!」
アスカはスカートを押さえて、慌てて周りを見る・・・
確かに、周りに海兵達が何時の間にか集って来て、口笛を吹いていた・・・
「しかし・・・この資料は容姿以外、当てにならないな・・・
その位の状況判断もできんとは・・・とても、聡明とは言いがたい」
どうやらシンが読んで居たのはアスカの資料らしい。
(と言う事は・・・知っててわざと?)
「あ、アンタねぇ〜!」
アスカがシンを睨みながら言う。
「ふむ、さらに直ぐ熱くなる・・・か・・・
全くドイツ支部はいい加減な事しか書いてないな・・・
それ以上やるなら、俺も本気で相手をするが・・・それでも良いのか?」
書類を肩にかけていたカバンに入れつつ、シンがアスカを睨み返す。
「し、シン君、よしなよ(汗)」
シンジが止めようと声をかける。
「ミサト!
いったいコイツは何なのよ!!」
アスカは、シンを指差しながら言う。
「か、彼が、サードチルドレンよ・・・」
ミサトが簡単に紹介する。
「コイツが!」
アスカがシンをまるで親の仇を見るような目で睨む。
「どうでも良いが・・・俺達は早くブリッチに行かなければならないんだがな・・・
(この態度・・・ドイツ支部での教育のやり方が目に浮かぶ・・・
さて、どうやって・・・)」
シンが少し呆れたような様子で言う。
どうやら、アスカを試していたらしい。(何の為に?)
「そ、そうね・・・じゃぁ、いきましょうか・・・」
ミサトはその場でのこれ以上のぶつかり合いを回避すべく、そう言って歩き出す。
子供達はそれについて行った。
それを離れた場所で見ていた男がいた。
「ひゅ〜・・・あのアスカの攻撃を、いとも簡単に・・・
どうやら、彼は、噂通り・・・いや、それ以上の存在みたいだな・・・
(要注意人物か・・・)」
男はそう言って、歩き出した。
あとがき?
某所・とある部屋にて・・・
?「ん?・・・キミは誰だ?」
ア「惣流・アスカ=ラングレーよ! とりもちはどこ!」
亮「ふむ・・・私は、【水城亮次】だが・・・あの人は、今ココにいないぞ」
ア「どこ行ったのよ!」
亮「どうやら、最近、仕事が忙しいらしくてな・・・
朝早くから出て、夜は日付が変わるくらいに帰って来ているが?」
ア「なんですってぇ〜?!」
亮「まぁ、休みも殆ど無いらしいからな・・・」
ア「のわりには、小説出してんじゃない!」
亮「まぁ、睡眠時間を削っているからな・・・」
ア「なんて奴!」
亮「まぁ、兎も角・・・これ以上、怒らせて、暴走させ無い方が身のためじゃないかな?」
ア「どう言う意味よ!」
亮「いや・・・デビトリさんの支配率を上げると・・・
キミの機体が、アレになる可能性も・・・」
ア「あれって?」
亮「・・・これ」
何かの資料を見せる・・・顔が青くなるアスカ・・・
ア「そ、それは・・・い、嫌(汗)」
亮「企画はデビトリさんだよ・・・現本体は一応、不許可を出してるけど・・・
これ以上、刺激すると・・・」
ア「クッ・・・わ、わかったわ・・・(いかに、デビトリだけに、ダメージを与えるかが、
これからの議題ね・・・)・・・今回は、帰るわ」
去って行くアスカ・・・
謎な場所にあるデビトリの部屋
鐘「時に師匠・・・それはなんですか?」
デ「うむ・・・本体に一応止められた企画書だ・・・面白いのに」
鐘「どれどれ・・・プ・・・凄く、面白いじゃないですか!」
デ「だろ!」
鐘「でも、何で許可が出ないんですか?」
デ「『母親が帰って来るとは言え、流石にそこまでやったら、
アスカがかわいそうじゃないか』と言ってな・・・」
鐘「えぇ〜良いじゃないですか・・・某大○君みたで・・・」
デ「ジャ○アント○ボのな!・・・
しかも、シンジ君とは違い、某大○君みたいに肩に乗るんだ・・・確り!」
鐘「そりゃぁ〜いいやぁ〜目立つし!・・・って、あれ?・・・
そうなると、シンジ君はどうするんです?」
デ「彼は、指揮官だから・・・別に機体が無くても」
鐘「なるほど・・・しかし・・・おしいですね」
デ「まぁ、アスカの事だ、自爆して、私の支配率を上げてくれるだろう・・・
そうなれば、本体は私だ♪」
鐘「そうすれば、全力でGO! ですね( ̄ー ̄)ニヤリ」
デ「あぁ・・・全力でGO! だ・・・[壁]`∀´)Ψゥヶヶヶ」
そして、怪しい会合が進んで行く・・・アスカ・・・どうなる?!
アスカ「や〜〜っとこさ、この惣流アスカラングレー様の登場ね!」
シンジ「良かったね」
レイ 「漸くね…」
アスカ「全く、これもそれも、み〜んなあいつが悪いのよ」
レイ 「…良いの?」
アスカ「こんなに遅かったのよ、愚痴くらい言う権利はあるわよ!
まあ、遅いとは言え登場したから半分は水に流してあげるわ」
シンジ「残り半分は?」
アスカ「そんなの決まってるじゃない、」
シンジ「ははは」(苦笑)
アスカ「さて…これからは…いかにして奴だけを叩くか…ぶつぶつぶつ…
あ、いや、奴を叩くだけよりも、あれを持ち上げるという方法も
組み合わせた方が…ぶつぶつぶつ…」
レイ 「…ところで、碇君、」
アスカ「…ぶつぶつ…機嫌取りも必要か…」
シンジ「何?」
アスカ「…今度、ケーキ何か持って行くか……ぶつぶつ…」
レイ 「ガギエルが来るのよね」
シンジ「あ、そう言えばそうだね」
アスカ「奴はアタシの獲物よ!とんないでね」
シンジ「べ、別にとろうなんて思ってないよ」
アスカ「なら良いわ」
レイ 「でも、原作では二人で倒したのではないの?」
アスカ「アタシが操縦して倒したのよ、シンジは手伝っただけよ」
シンジ「ま、まあそうだね」
レイ 「そう…良かったわね」
アスカ「あんかむかつくわねぇ〜、まあ良いわ、
アタシが出てきたからにはこれからは大きな顔はさせないわよ
かならずやLASにしてやるわ!」
シンジ「ははは」(苦笑)
レイ (とりもちがどう出るのか楽しみね)
冬月 「うむ、やはり、肌の色の違いが出ているな」
碇 「その様な物に拘るなどと言ったことでは話にならん」
冬月 「全くだな…まあ、色々とあったが、これで、弐号機も本部に来ることになったな」
碇 「ああ、戦力はそろった」
冬月 「先はまだまだ長いがな」
碇 「そう言うことだな」
冬月 「しかし…すんなりいくかな?セカンドの性格からすると、
ぶつかる以外の選択肢は無かろう。初対面からしてこれだからな」
碇 「ぶつかることは避けることは出来ないだろう。だが、その結果どう言うことになるのか…」
冬月 「なるほど…ちなみにどう思う?」
碇 「…さあな」
冬月 「そうか…まあ、どちらかというとセカンドの行動にかかっているな」
碇 「そうだな」
冬月 「ところで一つ気になったのだが、使徒が来るわけだが…葛城1尉は大丈夫か?」
碇 「……、展開次第では拙いかもしれんな」
冬月 「何事もなければいいが…」